続け方・習慣

勉強が続かない理由を3つに分ける診断表。「できる力」「機会」「やる気」のどこが足りないかを6問で採点し、理由に合う手を選ぶ(行動を変える研究のCOM-Bモデルから)

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船の甲板に置かれた羅針儀(方位磁石)と海
Photo: ---=XEON=--- / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強が続かないと、つい「自分はやる気がない」とまとめてしまいがちです。でも、行動を変える研究では、行動が起きるには「できる力」「機会」「やる気」の3つがそろう必要があると考えます。時間がない、教材が難しすぎる、家族の前で勉強しにくい。足りないのがやる気ではないなら、気合いを入れ直しても続きません。この記事は、続かない理由を6問で採点し、一番低い所に合う手を選ぶための表です。

3行でわかる

  1. 行動を変える研究で広く使われるCOM-Bモデルでは、行動には「できる力(体と頭)」「機会(時間・場所・周りの人)」「やる気(考えたうえ・気分や習慣)」の3つが必要と考える。
  2. この3つ(6つの下位項目)を自分で採点する6問の質問票は、医療者1387人の全国調査などで信頼性と妥当性が確かめられた。ただし勉強で確かめた研究ではない。
  3. 表1で6問を採点し、表2で一番低い項目に合う手を1つ選び、表3で週1回、点数と勉強した日数を記録する。記録して進み具合を確かめると、目標を達成しやすくなることはメタ分析で示されている。

01 悩みの正体勉強が続かないのは、やる気だけの問題?

やる気だけの問題とは限りません。行動を変える研究では、行動には「できる力」「機会」「やる気」の3つがそろう必要があると考えます。どれか1つが欠けても、行動は続きにくくなります。

COM-Bモデル(Capability=できる力、Opportunity=機会、Motivation=やる気、Behaviour=行動の頭文字)は、行動を変える方法を考えるために英国の研究者が提案した枠組みです[1]。3つはそれぞれ2つに分かれます。

  • できる力: 体の力(体力・体調)と、頭の力(必要な知識や考える力)
  • 機会: 物理的な機会(時間・場所・道具など、自分の外にある条件)と、社会的な機会(周りの人や文化からの後押し)
  • やる気: 考えたうえのやる気(評価や計画)と、自動的なやる気(気分や衝動、習慣)

「続かない」を6つに分けて見ると、打つ手が変わります。時間がない人に必要なのは予定の組み直しで、やり方がわからない人に必要なのは学び方を知ることです。仕組みの話はここまでにして、03の表を中心に使ってください。

02 科学的にわかっていることCOM-Bモデルや記録の効果は、どこまで確かめられている?

COM-Bは行動の理由を整理する枠組みで、6問の自己採点票の信頼性も確かめられています。ただ、使えば行動が続くと確かめたものではありません。記録して進み具合を確かめる効果は、メタ分析で示されています。

Michieら(2011)[1]

行動を変える方法の枠組みを系統的に探し、19の枠組みを評価した。どの枠組みも、行動を変える働きかけの全体をカバーしていなかった。そこで、中心に「できる力・機会・やる気」の3条件(COM-B)を置き、そのまわりに9種類の働きかけ(知識を伝える、技能を教える、環境を変える、お手本を示す、ごほうびを用意する、など)を並べる「行動変容の輪」を作った。英国の禁煙対策と肥満対策の指針の中身を、この枠組みで安定して分類できた。

対象: 公衆衛生の政策や介入の分類 / 限界: 著者ら自身が、この枠組みを使えばより効果的な介入を作れるかは今後の研究が必要だと述べている。分類には判断が入ること、使いにくいかもしれないことも限界に挙げている。

Keyworthら(2020)[2]

COM-Bの6つの下位項目を自分で採点する、6問の質問票を作って確かめた。医療者13人と85人、社会経済的な地位の低い人214人で受け入れやすさを調べ、医療者1387人の全国調査で信頼性と妥当性を調べた。時間をおいて答え直したときの一致(ICC)は0.554〜0.833。6問の点数で、行動のばらつきの21〜47%を説明できた。

対象: 医療者と、社会経済的な地位の低い人 / 限界: 勉強の行動では確かめていない。著者ら自身が、ほかの集団で信頼性と妥当性をさらに確かめる必要があると述べている。

Michieら(2009)[3]

大人の運動や食事を変える介入の122の評価(合計4万4747人)をまとめたメタ回帰分析(多くの研究を統計でまとめ、効果の違いの理由を探す方法)。全体の効果の大きさは0.31。研究による効果の違いをいちばんよく説明したのは「自分の行動を記録する」技法だった。記録に、目標を決めるなどもう1つの技法を組み合わせた介入は、そうでない介入より効果が大きかった(0.42と0.26)。

対象: 大人の運動と食事の介入研究 / 限界: 勉強の研究ではない。研究どうしの効果のばらつきが大きかった。

Harkinら(2016)[4]

目標の進み具合を確かめるよう促す介入を、くじで組を分けて調べた138研究(1万9951人)のメタ分析。介入で進み具合を確かめる回数が増え(効果量1.98)、目標の達成も進んだ(効果量0.40)。結果を人に報告したり公開したりするとき、そして紙などに書いて残すときに、効果がより大きかった。

対象: 健康行動などさまざまな目標の実験 / 限界: 勉強の継続だけを調べたものではない。研究ごとに目標の種類や期間が異なる。

COM-Bは「理由を整理する道具」で、勉強を続ける効果を直接確かめた研究は見つかりませんでした。下の表の6問は、元の質問票の考え方を勉強向けにこのサイトが言い換えたもので、表2の打つ手もこのサイトの提案です。

03 使える表続かない理由は、どう見分ける?

表1の6問に0〜10点で答え、一番低い項目を見つけます。表2でその項目に合う手を1つだけ選び、表3に週1回、点数と勉強した日数を記録します。

表1 続かない理由の診断表(5分)。この1〜2週間を思い出して、0(まったく当てはまらない)〜10(よく当てはまる)で答えます。

分類質問点数(0〜10)
できる力(体)1 勉強する時間帯に、眠気や疲れで手が止まることは少ない例 3
できる力(頭)2 何をどの順番で、どんなやり方で勉強すればいいか分かっている。教材の難しさも合っている例 6
機会(物理的)3 勉強する時間・場所・教材が、決まった形でそろっている例 2
機会(社会的)4 家族や職場など周りの人が、勉強の時間を尊重してくれる(邪魔が入りにくい)例 7
やる気(考えたうえ)5 なぜ勉強するのか、いつまでに何ができればいいかがはっきりしている例 8
やる気(気分・習慣)6 勉強は、始めると気分が悪くない。または、考えずに始められる習慣になっている例 4

例の人は、3(時間・場所・教材)が2点で一番低い「機会が足りない」タイプです。この場合、やる気を高める工夫より、予定の組み直しが先です。同じ点数の項目が2つあれば、手を打ちやすい方を選びます。

表2 一番低い項目に合う手(このサイトの提案)。働きかけの種類は、COM-Bの「行動変容の輪」の9種類から対応するものを選んでいます[1]。手は1週間に1つだけにします。

一番低い項目働きかけの種類独学での手の例関係する記事
1 体(眠気・疲れ)環境を変える疲れの少ない時間帯に移す。夜は思い出す練習など軽い内容にする仕事のあとの夜の勉強、眠気チェック表
2 頭(やり方・難しさ)知識を伝える・技能を教える目的に合う勉強法を1つ決める。教材を1段やさしいものに替える目的別の勉強法の選び方、教材が難しすぎるとき
3 時間・場所・教材環境を変える勉強の時間をカレンダーに先に入れる。教材は前の晩に机に出しておくカレンダーに予定を入れる、家の勉強場所の整え方
4 周りの人環境を変える・お手本を示す家族に勉強する曜日と時間を伝える。同じ目標の仲間を探す勉強仲間がいると続く?
5 理由・目標知識を伝える・気持ちに働きかける勉強する理由と、試験日や期限を1行で書いて見える所に貼る勉強する意味を書く
6 気分・習慣ごほうびを用意する・環境を変えるいつもの行動の後に勉強を置く。好きなことを勉強のときだけにする習慣のきっかけ表、楽しみとセット作戦

表3 週1回の記録表(3分)。週の終わりに表1の6問に答え直し、打った手と勉強した日数を書きます。記録を紙などに残し、進み具合を確かめると目標を達成しやすいことが、メタ分析で示されています[3][4]。

週6問の点数(1〜6)一番低い項目打った手勉強した日数次の週にすること
例 1週目例 3・6・2・7・8・4例 3 時間・場所例 平日20時をカレンダーに入れた例 2日例 教材を前の晩に出す
例 2週目例 3・6・6・7・8・4例 1 体例 教材を前の晩に出した例 4日例 夜は思い出す練習だけにする

2週続けて同じ項目が一番低く、勉強した日数も増えないときは、その項目の別の手に替えます。一番低い項目が変わったら、手が効いたサインかもしれません。次の項目に移ります。

04 続けるためのコツ診断表を使っても続かないときは?

手を1つに絞り、1週間は変えずに試します。点数より、勉強した日数が増えたかで判断します。それでも変わらないときは、目標そのものを小さくします。

  • 手は1週間に1つ。いくつも同時に変えると、どれが効いたかわかりません。
  • 点数より日数を見る。表の点数は自分の感じ方です。判断は「勉強した日数」で行います。毎日の記録には勉強の記録の研究と使い方が参考になります。
  • 人に見せると効きやすい。進み具合を人に報告したり公開したりすると、効果がより大きかったという結果があります[4]。家族や勉強仲間に、週の日数だけ伝えるのも1つの方法です。
  • やる気の項目が何週間も0〜2点のときは無理をしない。気分の落ち込みがつらいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などに相談できます。

05よくある質問

勉強が続かないのは、やる気がないから?

そうとは限りません。COM-Bモデルでは、行動には「できる力」「機会」「やる気」の3つが必要と考えます。時間や場所がない(機会)、やり方がわからない(できる力)ことが理由なら、やる気を高めようとしても続きにくいままです。まず6問で、どこが一番低いかを確かめてください。

この診断表の点数は、どれくらい当てになる?

目安として使ってください。元になった6問の質問票は、医療者の調査などで信頼性と妥当性が確かめられましたが、勉強を対象に確かめた研究はありません。この記事の6問は、それを勉強向けにこのサイトが言い換えたものです。点数の高い低いより、一番低い項目を見つける道具として使います。

全部の項目が低いときは、どうすればいい?

全部を一度に直そうとせず、一番手を打ちやすい項目を1つだけ選びます。多くの場合は、時間や場所を先に決める「機会」の項目が手をつけやすいです。1週間たったら表3で点数を見直し、次の項目に移ります。

出典

  1. Michie, S., van Stralen, M. M., & West, R. (2011). The behaviour change wheel: A new method for characterising and designing behaviour change interventions. Implementation Science, 6, 42. https://doi.org/10.1186/1748-5908-6-42
  2. Keyworth, C., Epton, T., Goldthorpe, J., Calam, R., & Armitage, C. J. (2020). Acceptability, reliability, and validity of a brief measure of capabilities, opportunities, and motivations ("COM-B"). British Journal of Health Psychology, 25(3), 474–501. https://doi.org/10.1111/bjhp.12417
  3. Michie, S., Abraham, C., Whittington, C., McAteer, J., & Gupta, S. (2009). Effective techniques in healthy eating and physical activity interventions: A meta-regression. Health Psychology, 28(6), 690–701. https://doi.org/10.1037/a0016136
  4. Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025