勉強法はどう選ぶ?研究でわかった「目的に合わせて組む」5つの手順

勉強法の本や動画は数えきれないほどあり、どれを選べばいいのか迷ってしまう。研究の答えは「まず効果が広く確かめられた2つ(思い出す練習と、間をあけた復習)を土台にし、目的に合わせて1つ足す。選ぶときは、楽に感じるかどうかを基準にしない」です。自分の勉強に合う組み合わせを作る手順をまとめました。
3行でわかる
- 10の勉強法を検討したレビューで、有用性が「高い」とされたのは、思い出す練習(自分でテストする)と、間をあけた復習の2つだけだった。
- 同じ研究群をまとめた242本・約17万人のメタ分析でも、上位は同じ2つだった(効果量0.85と0.74)。ただし研究の93%は事実を覚えるような学習の成績で、深い理解では効果が小さかった。
- 人は楽に感じる方法を「効く」と思いやすい。手順は①目的を決める ②土台の2つを入れる ③目的に合わせて1つ足す ④2週間は楽さで判断しない ⑤小テストの結果で見直す。
01 悩みの正体自分に合う勉強法は、なぜ選びにくい?
効く勉強法ほど、やっている最中は「できていない」と感じやすいためです。手ごたえの良さで選ぶと、効果の低い方法を選びがちになります。
画家の作風を見分ける実験では、1人の画家の絵をまとめて見るより、別の画家の絵と混ぜて見る方が、新しい絵を見分ける成績が良くなりました。それなのに参加者は、自分のテスト結果が逆を示した後でも「まとめて見る方が効く」と答えました[3]。
4つの研究を行った論文では、手間がかかると感じる勉強法ほど「効かない」と判断され、選ばれにくくなっていました。実際には、手間のかかる方法を選んだ人ほど、後まで覚えていた研究もありました[4]。米国の大学生177人の調査でも、過半数の学生がノートや教科書の読み返しをくり返し、自分でテストする学生は比較的少数でした[6]。
02 科学的にわかっていること効果が確かめられている勉強法はどれ?
思い出す練習と、間をあけた復習の2つです。年齢や学力、テストの種類をこえて効果が確かめられています。「なぜ?」と問う・自分に説明する・種類を混ぜる練習は「中程度」で、証拠がまだ限られています。
Dunloskyら(2013)[1]
10の勉強法を、年齢・学力・教材・テストの種類をこえて効くかで評価したレビュー。有用性「高」は思い出す練習と間をあけた復習。「中」は「なぜ?」と問う(精緻化質問)、自分に説明する(自己説明)、種類を混ぜる練習。「低」は要約、線を引く、語呂合わせ(キーワード法)、イメージ化、読み返し。
対象: 多くの実験と教室での研究 / 限界: 統計でまとめたメタ分析ではなく、専門家による評価。「中」の3つは、教室での検証がまだ少ないことが理由とされている。
DonoghueとHattie(2021)[2]
上のレビューが引用した研究のうち242本(1,619の効果量、169,179人)をまとめたメタ分析。全体の効果量は0.56。上位は間をあけた復習(0.85)と思い出す練習(0.74)で、最も低い要約と線を引く方法も0.44だった。事実を覚えるような「浅い」学習では0.60、深い理解では0.26と差があった。
対象: 1929〜2014年の研究、約86%が北米 / 限界: 成績の93%が浅い学習の測定で、著者らは「深い理解を目指すときに結果を当てはめないよう注意」と書いている。
Kirk-Johnsonら(2019)[4]
種類を混ぜる練習と、まとめる練習(研究1)、思い出す練習と読み直し(研究2・3)を比べた4つの研究。手間がかかると感じた方法ほど「効かない」と評価され、選ばれにくかった。研究3では、手間のかかる方法を選んだ人ほど、後まで覚えていた。
対象: 実験の参加者 / 限界: 実験室での短い課題で、実際の長い独学で同じことが起きるかは調べていない。
一方で、読み返しや線引きが「効果ゼロ」というわけではありません。上のメタ分析の著者らは、評価が低い方法も道具箱に入れる価値はあると書いています[2]。米国の大学生324人の調査でも、自分でテストすることと読み返すことの両方が、成績(GPA)の高さと結びついていました(相関の調査です)[5]。
03 今日からできる小さな一歩自分の勉強法は、どう組み立てればいい?
目的を1つ決め、思い出す練習と間をあけた復習を土台に入れます。目的に合わせて1つだけ方法を足し、2週間は手ごたえで判断せず、小テストの結果で見直します。
目的を1つ書く
今の勉強が「用語や単語を覚える」「仕組みや理由を理解する」「問題を解けるようになる」のどれに近いかを、ノートの1行目に書きます。方法の向き不向きは目的で変わります[1]。
所要 1分
土台の2つを入れる
どの目的でも、①本を閉じて思い出す時間と ②日をあけた復習を入れます。思い出す練習は読み返しとの比較の記事、復習の間隔は分散学習の記事と復習日の計算機で決められます。
所要 1回5〜10分
目的に合わせて1つ足す
下の表から、目的に合う方法を1つだけ選びます。一度にいくつも変えると、何が効いたのかわからなくなります。
所要 選ぶのに2分
2週間は「楽かどうか」で判断しない
効く方法ほど、最中は手ごたえが悪く感じます[3][4]。「疲れる」「進んだ気がしない」だけでは、元の方法に戻しません。
所要 2週間
小テストの結果で見直す
週に1回、何も見ずに問題を10問解き、正解数を記録します。前の週より上がっていれば続け、変わらなければ足した方法を入れ替えます。記録には勉強の記録シートが使えます。
所要 週1回15分
目的ごとに、土台の2つに足す方法を表にしました。評価はレビュー[1]によるものです。
| 目的 | 足す方法(評価) | 注意 |
|---|---|---|
| 用語・単語を覚える | 暗記カードで思い出す(高)(使い方) | 語呂合わせは向く教材が限られ、効果が確かめられたのは短い期間(低) |
| 仕組み・理由を理解する | 「なぜ?」と問う(中)(やり方)、自分に説明する(中) | 教室での検証はまだ少ない |
| 問題を解けるようになる | 種類を混ぜて練習する(中)(やり方) | 2013年時点で、研究はまだ始まったばかりとされた |
| 読んで全体をつかむ | 読み返し・線を引く・要約(低) | 単独に頼らず、読んだ後に閉じて思い出す |
04 続けるためのコツ選んだ勉強法を、迷わず続けるには?
方法を変えるのは一度に1つにし、判断は手ごたえではなく小テストの数字で行います。読み返しや線引きは、やめるより思い出す練習の前の準備として使います。
- 新しい勉強法の情報を見ても、今の2週間が終わるまでは入れ替えない。
- 線を引いたら、その後に本を閉じて線の内容を言えるか試す。読み返しを思い出す練習に変えられる。
- 「自分は視覚型だから図で覚える」のような選び方は、研究で支持されていない(学習スタイルの記事)。
- 各勉強法の判定は勉強法の効く・効かない早見表で一覧できる。
ここで紹介した研究の多くは、学生が短期間に事実を覚える実験です。社会人が何か月もかけて資格を独学する場面や、深い理解を目指す場面に、そのまま当てはまるとは限りません。手順は、わかっていることを独学に当てはめたものです。
05よくある質問
一番効く勉強法は何ですか?
1つに決めるなら、本を閉じて思い出す練習と、日をあけた復習の2つです。10の勉強法を評価したレビューで有用性が「高い」とされたのはこの2つだけで、242本の研究のメタ分析でも効果が最も大きい2つでした。
読み返しや蛍光ペンの線引きはやめた方がいいですか?
やめる必要はありません。単独では効果が限られますが、メタ分析では効果量0.44〜0.47と、効果がないわけではありませんでした。読んだり線を引いたりした後に、本を閉じて内容を思い出す時間を足すのがおすすめです。
自分に合う勉強法は、やっていて楽な方法を選べばいいですか?
楽さで選ぶのはおすすめしません。実験では、手間がかかると感じる方法ほど「効かない」と判断されやすい一方、実際にはその方が後まで覚えていた例がありました。2週間ほど続けて、小テストの結果で判断します。
出典
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- Donoghue, G. M., & Hattie, J. A. C. (2021). A meta-analysis of ten learning techniques. Frontiers in Education, 6, 581216. https://doi.org/10.3389/feduc.2021.581216
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the "enemy of induction"? Psychological Science, 19(6), 585–592. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
- Kirk-Johnson, A., Galla, B. M., & Fraundorf, S. H. (2019). Perceiving effort as poor learning: The misinterpreted-effort hypothesis of how experienced effort and perceived learning relate to study strategy choice. Cognitive Psychology, 115, 101237. https://doi.org/10.1016/j.cogpsych.2019.101237
- Hartwig, M. K., & Dunlosky, J. (2012). Study strategies of college students: Are self-testing and scheduling related to achievement? Psychonomic Bulletin & Review, 19(1), 126–134. https://doi.org/10.3758/s13423-011-0181-y
- Karpicke, J. D., Butler, A. C., & Roediger, H. L., III. (2009). Metacognitive strategies in student learning: Do students practise retrieval when they study on their own? Memory, 17(4), 471–479. https://doi.org/10.1080/09658210802647009


