勉強中の眠気チェック表と2週間の記録表。眠気を9段階でつけて、慣れてしまった寝不足に気づく(眠気の物差しと睡眠制限の研究から)

寝不足が続いていても、勉強を始めると「意外と平気」と感じることがあります。ところが、睡眠を削る実験では、眠気の感じ方は最初の数日で上がったあとほとんど変わらず、頭の働きのほうは日ごとに落ち続けました。この記事では、睡眠研究で広く使われている9段階の眠気の物差しを、独学用のチェック表と2週間の記録表にしました。「眠いかどうか」の感覚だけに頼らず、数字と寝た時間を並べて見るための道具です。
3行でわかる
- 毎晩4〜6時間の睡眠を14日続けた実験では、頭の働きは日ごとに落ちたが、眠気の自己評価は最初に上がった後ほとんど増えなかった。寝不足は「慣れて感じにくくなる」ことがある。
- 一方で、9段階の眠気の物差し(KSS)は、反応の遅れや脳波とよく対応していた。7以上は特に注意したい目安になる。
- 勉強の前と30分後に眠気を1〜9で書き、前の晩に寝床にいた時間と並べる。15日目に表3で見直す。
01 この表でできること眠気を数字でつけると、何がわかる?
その日の眠気と、勉強の内容・寝た時間の関係が見えるようになります。ただし眠気の感覚は寝不足に慣れることがあるので、眠気の数字だけでなく、寝床にいた時間と小テストの結果も一緒に見ます。
ここで使うのは、カロリンスカ眠気尺度(KSS)という9段階の物差しです。スウェーデンの研究者が作り、睡眠や夜勤、運転の研究で長く使われてきました[2][5]。1が「とても冴えている」、9が「とても眠く、起きているのに大変な努力がいる」です。
数字にする理由は2つあります。1つは、眠気は場面で大きく変わるため、勉強の何をしているときに上がるかが見えること。もう1つは、「慣れた寝不足」を見逃さないために、数字と寝た時間を並べて確かめられることです。
02 表の根拠になった研究眠気の感じ方は、どこまで当てになる?
7以上の強い眠気は、反応の遅れや脳波の変化とよく対応します。ただし、睡眠不足が何日も続くと、感じる眠気は頭打ちになる一方で、頭の働きは下がり続けたという実験があります。
Van Dongenら(2003)[1]
健康な成人を、寝床にいる時間が毎晩4時間・6時間・8時間の群にくじで分け、14日間続けた。4時間と6時間の群では、頭の働きのテストの成績が日ごとに積み重なるように落ちた。6時間以下を続けた場合の落ち込みは、最大で2晩の徹夜に相当した。ところが眠気の自己評価は、最初に上がった後はわずかしか増えず、6時間と4時間の群の差もはっきりしなかった。著者らは、参加者が自分の頭の働きの低下にほとんど気づいていなかったようだと述べている。
対象: 21〜38歳の健康な成人48人(3晩の徹夜の実験を含む) / 限界: 実験室で管理された条件の研究で、勉強の成果を直接測ったものではない。
Belenkyら(2003)[3]
66人が7日間、寝床にいる時間を3・5・7・9時間のいずれかにして過ごし、その後3日間は8時間眠った。5時間と7時間の群は、反応の速さが落ちた後その低い水準で落ち着き、8時間の睡眠を3日とっても元に戻らなかった。3時間の群は回復の1晩目で大きく戻ったが、完全には戻らなかった。9時間の群は変わらなかった。
対象: 健康なボランティア66人 / 限界: 反応の速さを測る単純な課題の結果で、記憶や理解を測ったものではない。
Kaidaら(2006)[4]
33〜43歳の女性16人が、3日間、1日8回、KSSで眠気をつけながら反応の速さのテストと脳波の検査を受けた。KSSが高いほど反応は遅くなり、反応の見落としが増え、眠気を示す脳波も増えた。見落としとの相関は平均r=0.56だった。著者らは、KSSは脳波や反応の測定の代わりになりうるとしている。
対象: 健康な女性16人 / 限界: 人数が少なく、女性だけの研究。
Åkerstedtら(2014)[5]/ÅkerstedtとGillberg(1990)[2]
KSSの研究をまとめたレビューでは、7以上(6より高い値)の眠気は、運転の乱れや、起きているのに眠りの脳波が混じる状態と特に結びついていた。体を動かす・人と話す・明るい光を浴びると眠気は1〜2段階下がり、単調な作業を続けると1〜2段階上がった。著者らは、眠気の自己評価は機械で測る方法と同じくらい敏感で妥当だとしている。KSSの最初の研究(8人を一晩起こしておいた実験)では、眠気の体のサインがはっきり出たのは、「眠い」から「とても眠く、眠気と闘っている」の間まで眠気が強まってからだった。
限界: レビューの著者にはKSSの開発者が含まれる。体系的な文献検索をしたメタ分析ではない。
2つの結果は矛盾していません。その瞬間の眠気の数字は、反応の遅れとよく対応します[4][5]。けれども寝不足が何日も続くと、数字は頭打ちになり、落ち続ける頭の働きを映しきれないことがあります[1]。だからこの記事の表では、眠気の数字に加えて、前の晩に寝床にいた時間と小テストの結果を並べて記録します。
ここでの研究は、睡眠実験室で健康な大人を調べたものです。独学の成果そのものを測った研究ではありません。以下の表は、研究と矛盾しない形で、自分の眠気と睡眠を見える化するための道具です。
03 使える表眠気チェック表と記録表は、どう使う?
勉強を始めるときと30分後に、表1で眠気を1〜9から選び、表2に書きます。2週間たったら、表3で寝た時間・眠気・小テストを並べて見直します。
表1 眠気の9段階と、その日の勉強の目安。左の言葉は、KSSの開発者らの論文[6]にある英語の表現をこのサイトが訳したものです(正式な日本語版ではありません)。右の列は、研究をもとにこのサイトが独学向けに考えた目安です。
| 数字 | いまの状態 | 勉強の目安 |
|---|---|---|
| 1 | とても冴えている | 新しい範囲・難しい問題に使う |
| 2 | かなり冴えている | 新しい範囲・難しい問題に使う |
| 3 | 冴えている | 新しい範囲・難しい問題に使う |
| 4 | まあまあ冴えている | ふつうに勉強してよい |
| 5 | 冴えても眠くもない | 読むだけより、問題を解く・思い出して書くなど手を動かす勉強にする |
| 6 | 少し眠気のサインがある | 手を動かす勉強にする。読むだけの時間を続けない(単調な作業で1〜2段階上がる[5]) |
| 7 | 眠いが、起きているのに努力はいらない | 注意の目安。立つ・数分歩く・明るい所へ移るなどしてから再開する(体を動かす・光で1〜2段階下がる[5]) |
| 8 | 眠く、起きているのに少し努力がいる | 新しいことを覚えるのはやめ、短い復習で切り上げる。仮眠のとり方は昼寝の記事へ |
| 9 | とても眠く、起きているのに大変な努力がいる。眠気と闘っている | 勉強をやめて休む・寝る。車や自転車の運転はしない |
表2 2週間の記録表。紙に写すか、スマホのメモに同じ列を作ります。1日1行、1分で書ける量にしています。
| 日 | 前の晩に寝床にいた時間 | 始める時の眠気(1〜9) | 30分後の眠気(1〜9) | 勉強の種類(読む・解く・書く) | 小テスト・思い出せた数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 時間 分 | / | |||
| 2 | 時間 分 | / | |||
| 3 | 時間 分 | / | |||
| … | 14日目まで同じように書く | ||||
「小テスト」は、その日に覚えた所を本を閉じて5問だけ思い出す、程度で十分です。眠気の感覚とは別に、頭の働きを確かめる物差しになります。
表3 15日目の見直し表。記録に当てはまる行を探して、次の2週間にやることを決めます。
| 記録に見えたこと | 考えられること | 次の2週間にすること |
|---|---|---|
| 寝床にいた時間が6時間以下の日が続いているのに、眠気の数字はあまり変わらない | 寝不足が続くと、感じる眠気は頭打ちになり、頭の働きの低下に気づきにくい[1] | 眠気の数字ではなく、寝床の時間で判断する。まず寝床の時間を30分増やし、小テストの数を比べる |
| 読むだけの日に、30分後の眠気が2段階ほど上がる | 単調な作業を続けると眠気は1〜2段階上がる[5] | 読む時間を15〜20分で区切り、問題を解く・書いて思い出す時間をはさむ |
| 7以上の日が週に何度もある | 7以上は反応の乱れと結びつきやすい[5] | その時間帯には新しい範囲を置かない。時間帯の決め方は時間帯別の勉強メニュー表へ |
| 週末に長く寝ても、月曜の小テストが戻らない | 5〜7時間の寝床が1週間続いた後、8時間を3日とっても反応の速さは戻らなかった[3] | 週末の寝だめに頼らず、平日の寝床の時間を少しずつ戻す。戻し方は寝不足の後の立て直しへ |
| 寝床の時間は十分なのに、毎日7以上の眠気が続く | 強い眠気は睡眠時無呼吸やうつなどでも高くなる[5] | 自分で判断せず、医療機関に相談する |
表の目安は、出典の研究をもとにこのサイトがまとめたものです。「この数字なら必ず覚えられる」と確かめた基準ではありません。強い眠気や眠れない日が何週間も続くときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に相談してください。
04 続けるためのコツ眠気の記録を三日坊主にしないには?
書く場所と時刻を勉強の始まりに固定し、1行1分で終わる量にします。14日たったら必ず見直し、1つだけやり方を変えます。
- 勉強道具を開いたら最初に書く。「机に座ったら数字を1つ書く」と決めておくと、忘れにくい。
- 30分後の記録はタイマーに任せる。勉強を始めるときに30分のタイマーをかけ、鳴ったら数字を書いて続ける。
- 寝た時間は、寝床にいた時間でよい。正確な睡眠時間がわからなくても、寝床に入った時刻と出た時刻で十分。長い記録表は勉強する人の睡眠チェック表にあります。
- 変えるのは1つだけ。表3で当てはまる行が複数あっても、次の2週間は1つだけ試すと、何が効いたか比べやすい。
05よくある質問
寝不足に慣れたら、もう平気なのでは?
慣れたように感じても、頭の働きは戻っていない可能性があります。毎晩6時間以下の睡眠を14日続けた実験では、眠気の自己評価は最初に上がった後ほとんど増えませんでしたが、頭の働きのテストの成績は日ごとに落ち続け、最大で2晩の徹夜に相当しました[1]。
眠気の数字が低ければ、寝不足ではない?
そうとは限りません。その場の眠気の数字は反応の遅れとよく対応しますが[4]、寝不足が続くと数字は頭打ちになります[1]。だから表2では、寝床にいた時間と小テストも一緒に記録します。
眠いときはコーヒーを飲んでもいい?
この記事の研究はカフェインを調べていません。夜の睡眠との付き合い方はカフェインと睡眠の記事にまとめています。この記事の表では、まず立つ・歩く・明るい所に移るなど、眠気が1〜2段階下がったと報告されている方法を先に試します[5]。
出典
- Van Dongen, H. P. A., Maislin, G., Mullington, J. M., & Dinges, D. F. (2003). The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep, 26(2), 117–126. https://doi.org/10.1093/sleep/26.2.117
- Åkerstedt, T., & Gillberg, M. (1990). Subjective and objective sleepiness in the active individual. International Journal of Neuroscience, 52(1–2), 29–37. https://doi.org/10.3109/00207459008994241
- Belenky, G., Wesensten, N. J., Thorne, D. R., Thomas, M. L., Sing, H. C., Redmond, D. P., Russo, M. B., & Balkin, T. J. (2003). Patterns of performance degradation and restoration during sleep restriction and subsequent recovery: a sleep dose-response study. Journal of Sleep Research, 12(1), 1–12. https://doi.org/10.1046/j.1365-2869.2003.00337.x
- Kaida, K., Takahashi, M., Åkerstedt, T., Nakata, A., Otsuka, Y., Haratani, T., & Fukasawa, K. (2006). Validation of the Karolinska sleepiness scale against performance and EEG variables. Clinical Neurophysiology, 117(7), 1574–1581. https://doi.org/10.1016/j.clinph.2006.03.011
- Åkerstedt, T., Anund, A., Axelsson, J., & Kecklund, G. (2014). Subjective sleepiness is a sensitive indicator of insufficient sleep and impaired waking function. Journal of Sleep Research, 23(3), 240–252. https://doi.org/10.1111/jsr.12158
- Miley, A. Å., Kecklund, G., & Åkerstedt, T. (2016). Comparing two versions of the Karolinska Sleepiness Scale (KSS). Sleep and Biological Rhythms, 14(3), 257–260. https://doi.org/10.1007/s41105-016-0048-8


