やる気・心

勉強する意味が見えず、やる気が出ない。学んだことと自分の生活のつながりを書く方法(研究とやり方)

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書斎の机に置かれた開いた本とインク壺
Photo: ZemplinTemplar / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「これを覚えて何になるんだろう」と思うと、テキストを開く手が止まります。研究では、学んだ内容が自分の生活にどう役立つかを、自分で書き出す方法が試されてきました。興味や学び続ける力を支えた研究がある一方、成績への効果は小さく、効かなかった実験もあります。期待しすぎず、やる気の土台として使う方法です。

3行でわかる

  1. 学んだことが自分にどう役立つかを自分で書くと、人から「役に立つ」と言われるより成績と興味が上がった実験がある。自信のない人では、一方的に言われると、自分で書くより成績と興味が低かった。
  2. 大学の授業での大きな実験では、成績への効果は小さいか、差が出なかった。一方、授業への参加や、その分野を学び続ける割合は上がった。
  3. やり方は、①章が終わったら学んだことを1つ選ぶ ②自分の生活での使い道を具体的に10分で書く ③身近な人向けと交互に書く ④日常の使い道から書く ⑤章ごとに繰り返す、の5つ。

01 悩みの正体勉強の意味が見えないと、なぜやる気が出ない?

人は、学ぶ内容に「自分にとっての価値」を感じるほど、取り組み続けやすいと考えられています。役立ち方が見えないと、勉強は我慢するだけの作業になります。

研究では、学ぶ内容が今や将来の自分に役立つと感じる度合いを「有用性の価値(utility value)」と呼びます。これを自分で見つけてもらう方法が、高校や大学の授業で試されてきました。

独学では、先生が意味を教えてくれません。だからこそ、自分で意味を言葉にする時間をとる価値があります。

02 科学的にわかっていること役立ち方を書き出すと、やる気や成績は上がる?

自分で書く方が、人から言われるより効きました。ただし大きな実験では、成績への効果は小さいか差が出ませんでした。効果が出やすいのは、興味や授業への参加、学び続けることです。

CanningとHarackiewicz(2015)[1]

88人の大学生が暗算のコツを学んだ実験。8分で「このコツが自分の生活にどう役立ちうるか」を書いた人は、役立ち方の説明を読んだ人より、解けた問題が多かった(平均30.36問対26.48問)。自信のない人では、一方的に説明を読むと、自分で書いた場合より成績と興味が低くなった。

対象: 大学生88人(ほか2つの実験あり) / 限界: 1時間の実験室での課題。同じ論文の別の実験では、自信のない人には、日常の使い道を伝える方が向いていた。

HullemanとHarackiewicz(2009)[2]

高校の理科の授業で、学んだことと自分の生活のつながりを書く群と、内容を要約する群に分けた。つながりを書いた群では、うまくできる見込みが低かった生徒の、理科への興味と成績が上がった。

対象: 高校の理科の授業の生徒 / 限界: 論文の要旨で確認。うまくできる見込みが高い生徒では、同じ効果は報告されていない。

Harackiewiczら(2016)[3]

大学の生物学の授業で1,040人が、学期中に1〜2ページの文章を3回書いた。役立ち方を書いた群の成績は4点満点で平均2.81、要約を書いた群は2.76で、差は小さかった(効果量d=0.06)。家族で初めて大学に進んだ少数派の学生では、成績が0.51点上がり、他の学生との差が61%縮まった。

対象: アメリカの大学生1,040人 / 限界: 全体の効果はごく小さく、大きな効果は一部の学生に限られた。

Priniskiら(2019)、Asherら(2023)[4][5]

590人の実験では、書き出しの群と要約の群の成績に差はなかった。ただし書き出しの群の中では、自分向けと他人向けを交互に書いた学生(平均3.05)が、同じ型を3回書いた学生(2.85)より成績が高かった。2,505人の化学の授業の実験では、成績と興味に全体の効果はなかったが、2.5年後に理系を専攻していた割合は74%対70%と高かった。

対象: アメリカの大学生 / 限界: どちらも同じ研究グループによる研究。成績を上げる方法としての効果は、研究によってまちまちだった。

Shillingtonら(2025)[6]

オンラインの大学の授業で、1,243人を書き出しの群と対照の群に分けた。成績の差はなかった(100点満点で88.98対88.60、d=0.05)。一方、授業サイトの閲覧数(d=0.16)と授業への参加(d=0.18)は、書き出しの群が高かった。

対象: アメリカの大学の上級生物学の授業 / 限界: 新型コロナの時期の1つの大学での研究。やる気そのものは測っていない。

紹介した研究はすべて、高校や大学の授業の中で行われたものです。一人で学ぶ社会人を対象にした研究は見つかりませんでした。下の手順は、わかっていることを独学に当てはめた目安です。

03 今日からできる小さな一歩勉強の意味を書き出すには、どうすればいい?

章が終わったら、学んだことを1つ選び、自分の生活でどう使えるかを具体的に10分ほどで書きます。身近な人向けと交互に書き、章ごとに繰り返します。

1

章や単元が終わったら、学んだことを1つ選ぶ

「簿記」ではなく「減価償却」のように、具体的な1つに絞ります。大学の実験でも、授業で扱った概念を1つ選んでから書いていました[3]。広すぎるテーマだと、ありきたりな答えしか出てきません。

所要 1分

2

自分の生活や仕事での使い道を、例を挙げて書く

「役に立つ」で終わらせず、いつ・どんな場面で使えるかまで書きます。実験では8分で1〜3段落を書いていました[1]。人の書いた「この資格のメリット」を読むだけで済ませず、自分の言葉で書くのがポイントです。

所要 8〜10分

3

次は、身近な人にとっての使い道を書く

家族や友人がこの知識をどう使えるかを、手紙のように書きます。自分向けと他人向けを交互に書いた学生は、同じ型を繰り返した学生より成績が高くなりました[4]。どちらを書くか、その日に選んでかまいません。

所要 8〜10分

4

自信がないときは、日常の使い道から書く

「将来の仕事で役立つ」と大きく考えると、できるか不安な人には重くなりがちです。自信のない人には、日常の例を示す方が向いていました[1]。買い物・家計・会話など、身近な場面から書き始めます。

所要 意識するだけ

5

章ごとに繰り返し、書いたものを読み返す

大学の実験では、学期中に3回書いていました[3]。章が終わるたびに1回書き、やる気が落ちた日に読み返します。回数は研究で最適と決まったものではなく目安です。

所要 章ごとに10分

書くときは、次の4つの欄を使うと迷いません。ノートの1ページを4つに区切って使えます。

書く欄記入例書き方のポイント
今日学んだこと(1つ)簿記の「減価償却」本や講座の言葉で、具体的に1つだけ
自分の生活・仕事での使い道家電や車を買うとき、何年で価値が減るかの目安になる具体的な場面を1つ書く
身近な人にとっての使い道店を開いた友人が、設備の費用を年ごとに分けて考えるのに役立つ自分向けが書けない日はこちらだけでよい
次に使えそうな場面来月の家計の見直しで、大きな買い物を年数で割ってみるいつ・どこでを入れる

04 続けるためのコツ書き出しを、やる気につなげ続けるには?

成績がすぐ上がる方法ではないと知ったうえで、やる気が落ちた日に読み返す材料として使います。始める仕組みや休み方と組み合わせると、続けやすくなります。

やる気が出ない状態が2週間以上続き、眠れない・食欲がない・何をしても楽しくないといったつらさがあるときは、勉強の工夫より先に、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談先を頼ってください。

05よくある質問

「この勉強は役に立つ」と人に言われても、やる気が出ないのはなぜ?

言われるより、自分で考えて書く方が効きやすいためと考えられます。88人の実験では、自分で役立ち方を書いた人は、説明を読んだ人より問題を多く解けました。自信のない人では、役に立つと一方的に言われると、自分で書いた場合より成績と興味が低くなりました。

書き出すだけで、成績は上がりますか?

大きくは期待できません。1,040人の実験では全体の成績差はわずかで、590人や1,243人の実験では成績に差が出ませんでした。一方、授業への参加や、その分野を学び続ける割合が上がった研究があります。やる気を支える方法として使うのが現実的です。

社会人の独学でも使えますか?

一人で学ぶ社会人を対象にした研究は見つかりませんでした。紹介した研究は高校や大学の授業の中で行われたものです。手順は、その結果を独学に当てはめた目安として使ってください。

勉強法の早見表で「学ぶ意味(役立ち方)を自分で書き出す」の判定を見る
ほかの勉強法も50種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Canning, E. A., & Harackiewicz, J. M. (2015). Teach it, don’t preach it: The differential effects of directly-communicated and self-generated utility-value information. Motivation Science, 1(1), 47–71. https://doi.org/10.1037/mot0000015
  2. Hulleman, C. S., & Harackiewicz, J. M. (2009). Promoting interest and performance in high school science classes. Science, 326(5958), 1410–1412. https://doi.org/10.1126/science.1177067
  3. Harackiewicz, J. M., Canning, E. A., Tibbetts, Y., Priniski, S. J., & Hyde, J. S. (2016). Closing achievement gaps with a utility-value intervention: Disentangling race and social class. Journal of Personality and Social Psychology, 111(5), 745–765. https://doi.org/10.1037/pspp0000075
  4. Priniski, S. J., Rosenzweig, E. Q., Canning, E. A., Hecht, C. A., Tibbetts, Y., Hyde, J. S., & Harackiewicz, J. M. (2019). The benefits of combining value for the self and others in utility-value interventions. Journal of Educational Psychology, 111(8), 1478–1497. https://doi.org/10.1037/edu0000343
  5. Asher, M. W., Harackiewicz, J. M., Beymer, P. N., Hecht, C. A., Lamont, L. B., Else-Quest, N. M., Priniski, S. J., Thoman, D. B., Hyde, J. S., & Smith, J. L. (2023). Utility-value intervention promotes persistence and diversity in STEM. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(19), e2300463120. https://doi.org/10.1073/pnas.2300463120
  6. Shillington, K. J., Lo, S. M., & Hobbie, L. (2025). A utility value intervention to support student engagement in online upper-level undergraduate courses. Frontiers in Education, 10, 1636446. https://doi.org/10.3389/feduc.2025.1636446