家だと勉強に集中できない。研究でわかった「勉強する場所」の整え方(誘惑・音・目に入る物・時間帯)

机に向かったのに、気づけばスマホ、洗濯物、テレビ。家で勉強が進まないのは、あなたの意志が弱いからとは限りません。研究から言えるのは、我慢する力を鍛えるより、勉強する場所を先に整えるほうが続きやすいということです。この記事では、そのための手順を順番に紹介します。
3行でわかる
- 誘惑を「我慢する」より「目の前から取り除く」よう指導された学生のほうが、1週間の勉強の目標を達成できたと答えた(高校生126人・大学生159人の実験)。
- 周りの音は、読んで理解する勉強を小さいながら確実に邪魔する。いちばん邪魔なのは意味のわかる話し声と歌詞のある音楽(65件の研究のまとめ)。
- 手順は、①誘惑を取り除く ②音を選ぶ ③目に入る物を減らす ④同じ場所・同じ時間帯に始める ⑤ときどき別の場所で復習する、の5つ。
01 悩みの正体家だと集中できないのはなぜ?
家には、勉強以外のことを始めるきっかけが多いからです。きっかけが目に入るたびに我慢していると、勉強が「誘惑との綱引き」になります。
家は本来、休むための場所です。ソファ、テレビ、スマホ、家族の話し声。どれも「ほかのことをしよう」という合図になります。
自制心の研究では、誘惑は時間がたつほど強くなるため、強くなる前に場面そのものを変える工夫が効きやすいと考えられています。なぜ意志の強さより環境が大事なのかは、独学が続かないのは意志が弱いからかの記事で詳しく扱いました。この記事では、家の中でそれを実行する手順に絞ります。
02 科学的にわかっていること勉強する場所の何を整えればいい?
研究で確かめられているのは、誘惑を取り除くこと、話し声や歌詞を避けること、目に入る物を減らすこと、始める場面を固定することの4つです。
Duckworthら(2016)[1]
高校生と大学生を、①誘惑を目の前から取り除くよう教わる組 ②誘惑を我慢するよう教わる組 ③何もしない組に、くじで分けた。1週間後、①の組は②③より、自分で決めた勉強の目標を達成できたと答えた(効果量d=0.56〜0.63、中くらい)。②と③の差はほとんどなかった。大学生では、①の組は1週間に感じた誘惑も少なかった。
対象: 米国の寄宿制高校の生徒126人、米国の大学生159人 / 限界: 目標の達成は本人の自己申告で、測ったのは1週間だけ。目標は学生が自分で決めたもので、内容は人それぞれだった。
Vasilevら(2018)[2]
読みながら周りの音を聞く研究65件をまとめたメタ分析(多くの研究を統合する分析)。雑音・話し声・音楽はどれも、読んで理解する成績を小さいながら確実に下げていた(効果量g=−0.21)。下げ幅がいちばん大きかったのは、歌詞のある音楽(g=−0.35)と意味のわかる話し声(g=−0.34)だった。
対象: 子どもと大人の実験(大人と子どもで影響の大きさはほぼ同じ) / 限界: 多くは短い文章を読む実験室の研究。何時間も続く自宅の勉強で同じ大きさになるかはわかっていない。
Fisherら(2014)[3]
実験用の教室で、幼稚園児に理科の授業を6回行い、壁の飾りを多くした場合と取り除いた場合を比べた。壁の飾りが多いときのほうが、子どもは周りに気を取られ、授業から気がそれる時間が長く、学んだ量も少なかった。
対象: 米国の幼稚園児 / 限界: 注意を保つ力がまだ育っていない幼い子どもの研究。大人の独学に同じ大きさで当てはまるとは限らない。
Woodら(2005)[4]
別の大学へ移った学生を追い、運動・新聞を読む・テレビを見るといった習慣がどうなるかを調べた。習慣が転校後も続いたのは、それをしていた場面の特徴(たとえば誰と一緒にするか)が変わらなかったときだけだった。
対象: 米国の大学生 / 限界: 勉強の習慣を直接調べた研究ではない。ここから言えるのは「同じ場面が習慣を呼び出す」という仕組みまで。
SmithとVela(2001)[5]
覚えた場所と思い出す場所の関係を調べた研究をまとめたメタ分析。同じ場所の方が思い出しやすい効果は確かにあったが、思い出すときに覚えた場所を頭に思い浮かべると、その効果は小さくなった。
対象: 主に単語を覚える実験室の研究 / 限界: 何か月もかける資格の勉強で同じ差が出るかは確かめられていない。
どの研究も、学生や子どもを対象にした短い期間の研究です。仕事を終えてから自宅で何か月も勉強する社会人に、同じ大きさの効果が出るとは限りません。それでも、方向はそろっています。「我慢」より「場所」を先に整えるのが、研究に沿ったやり方です。
03 今日からできる小さな一歩家の勉強場所はどう整える?5つの手順
次の勉強の前に、①誘惑を取り除く ②音を選ぶ ③目に入る物を減らす ④始める場所と時間帯を決める、の順に整えます。⑤は週に1回で十分です。
誘惑を、手の届かない所へ先に動かす
スマホは別の部屋か、立ち上がらないと届かない場所へ。テレビのリモコンやゲーム機も視界の外に置きます。Duckworthらの実験で効いたのは「我慢する」ではなく「取り除く」でした。スマホの置き方は勉強中のスマホはどこに置く?で詳しく紹介しています。
所要 2分
読む勉強の時間は、話し声と歌詞を避ける
テレビや家族の会話が聞こえる部屋は避け、難しければ耳栓を使います。音楽を流すなら歌詞のない曲を小さめに。読む・覚える勉強ほど音の影響を受けやすいためです。BGMの選び方は音楽を聴きながらの勉強の記事にまとめています。
所要 1分
机の上と正面に、今日使う物だけを置く
テキスト、ノート、ペン以外は引き出しか箱へ。正面の壁に貼った予定表やメモも、勉強に関係ない物は外します。子どもの研究ですが、目に入る物が多いほど気がそれやすいという結果があります。
所要 5分
「この場所・この時間帯は勉強」と1つに決める
「夕食の後、ダイニングテーブルの窓側の席」のように、場所と時間帯をセットにします。毎回同じ場面で始めると、その場面が勉強を始める合図になりやすくなります。決め方はif-thenプランの記事の形が使えます。何時が向いているかは朝と夜、勉強に向いている時間はあるのかを参考にしてください。
所要 3分
週に1回は別の場所で復習し、試験前は勉強部屋を思い浮かべる
いつもの部屋だけで覚えると、試験会場で思い出しにくくなるおそれがあります。図書館や別の部屋で前の週の範囲を解き直し、本番の前には勉強した机を1分思い浮かべます。場所と記憶の研究は勉強する場所を変えると覚えやすいのかで紹介しました。
所要 週20分
家の勉強場所を整えるときに使える、チェック表です。研究で確かめられた度合いもあわせて書きました。
| チェック項目 | やること | 研究の確かさ |
|---|---|---|
| 誘惑 | スマホ・リモコン・ゲーム機を手の届かない所へ | 高校生・大学生の実験2つ(自己申告・1週間) |
| 音 | 話し声と歌詞のある音楽を避ける。耳栓も可 | 65件の研究のメタ分析(効果は小さいが確実) |
| 目に入る物 | 机と正面には今日使う物だけ | 幼稚園児の実験1つ(大人では未確認) |
| 場所と時間帯 | 始める場所・時間帯を1つに固定 | 習慣の研究(勉強そのものの研究ではない) |
| 本番への備え | 週1回は別の場所で復習、試験前に勉強部屋を思い浮かべる | 実験室の研究のメタ分析(効果は小さめ) |
04 続けるためのコツ整えた場所が崩れてきたら?
崩れるのは普通のことです。集中が切れた場面を1つだけメモし、次はその場面を変えます。全部を一度に直す必要はありません。
- 勉強が止まった日は、「何がきっかけで手が止まったか」を1行だけ書く(例: 通知が鳴った、家族がテレビをつけた)。
- 次の勉強の前に、そのきっかけを1つだけ取り除く。チェック表を毎回全部やろうとしない。
- 家でどうしても整わない日は、図書館などの公共の場所を「第2の勉強場所」として決めておく。
- 勉強が終わったら、次に使うテキストを開いたまま机に残す。次に座ったとき、すぐ始められます。
- 集中が切れたあとの戻り方は、勉強中にスマホを見て集中が切れたときの記事も参考になります。
05よくある質問
家で勉強できないのは意志が弱いからですか?
意志だけの問題とは言えません。Duckworthら(2016)の実験では、誘惑を目の前から取り除くよう指導された高校生(126人)と大学生(159人)は、我慢するよう指導された学生や何もしなかった学生より、1週間の勉強の目標を達成できたと答えました。場所を整える方が、我慢するより続けやすいと考えられます。
勉強中のBGMや人の話し声は、どのくらい邪魔になりますか?
65件の研究をまとめたVasilevら(2018)のメタ分析では、周りの音は読んで理解する成績を小さいながら確実に下げていました。いちばん邪魔になったのは、意味のわかる話し声と歌詞のある音楽でした。読む勉強の時間は、静かな場所か耳栓を選ぶのが無難です。
勉強する場所は毎日同じにした方がいいですか?
始める場所と時間帯は固定した方が、勉強を習慣にしやすいと考えられます。ただし覚えた内容が特定の場所に結びつきすぎないよう、ときどき別の場所で復習したり、試験の前に勉強した部屋を思い浮かべたりするのも役に立ちます。
出典
- Duckworth, A. L., White, R. E., Matteucci, A. J., Shearer, A., & Gross, J. J. (2016). A stitch in time: Strategic self-control in high school and college students. Journal of Educational Psychology, 108(3), 329–341. https://doi.org/10.1037/edu0000062
- Vasilev, M. R., Kirkby, J. A., & Angele, B. (2018). Auditory distraction during reading: A Bayesian meta-analysis of a continuing controversy. Perspectives on Psychological Science, 13(5), 567–597. https://doi.org/10.1177/1745691617747398
- Fisher, A. V., Godwin, K. E., & Seltman, H. (2014). Visual environment, attention allocation, and learning in young children: When too much of a good thing may be bad. Psychological Science, 25(7), 1362–1370. https://doi.org/10.1177/0956797614533801
- Wood, W., Tam, L., & Witt, M. G. (2005). Changing circumstances, disrupting habits. Journal of Personality and Social Psychology, 88(6), 918–933. https://doi.org/10.1037/0022-3514.88.6.918
- Smith, S. M., & Vela, E. (2001). Environmental context-dependent memory: A review and meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 8(2), 203–220. https://doi.org/10.3758/BF03196157


