勉強法

教科書が難しくて理解できない。読み進められないとき、どう立て直す?「混乱」と読み直しの研究

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机の上に開いた教科書とペン
Photo: Dquai / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

同じページを3回読んでも、意味がつかめない。先に進めず、教科書を閉じてしまう。独学ではよくあることで、頭が悪いせいではありません。研究からわかるのは、わからないときの混乱は解ければ学びにつながること、そして何度も読み直すより、わからない場所を特定して足りない前提を補う方が近道だということです。

3行でわかる

  1. 矛盾した説明で混乱した学習者は、混乱しなかった学習者よりテストの成績が高かった。ただし混乱が解けないまま続くと、学びの妨げになる。
  2. 4つの実験で、続けてもう一度読み直しても、成績はほとんど上がらなかった。自分の言葉で説明する方法は、64の研究報告をまとめたメタ分析で効果が確認されている。
  3. 立て直しは、①わからない場所を1文で書く ②直前までを自分の言葉で説明する ③足りない前提をやさしい資料で補う ④解けない混乱は印をつけて先に進む ⑤戻ったら閉じて書き出す、の5つ。

01 悩みの正体教科書を読んでも理解できないのはなぜ?

多くは、その文章が前提にしている知識が足りないか、文と文のつながりが省かれているためです。読む力そのものより、前提知識の差で理解が分かれることがわかっています。

教科書は、ある程度の予備知識がある読者を想定して書かれています。説明が省かれた部分を自分で補えないと、文字は読めても意味がつながりません。

文章のつながりを調べた研究では、予備知識の少ない読者は、説明を補ってつながりを明確にした文章の方がよく理解できました。一方、予備知識の多い読者では逆の結果も見られました[6]。同じ本でも、人によって「難しすぎる本」になりうるということです。

わからなくて手が止まる状態を、研究では「混乱(confusion)」と呼びます。混乱そのものは、学習の失敗ではなく、自分の理解と目の前の情報が食い違っているという合図です[3]。

02 科学的にわかっていることわからなくて混乱するのは、悪いこと?

混乱は、解けたときには学びを深める一方、解けないまま続くと学びを妨げます。また、すぐに読み直すだけでは効果は小さく、自分の言葉で説明する方法に効果が確認されています。

D'Melloら(2014)[1]

科学的な考え方を学ぶ課題で、画面上の先生役と生徒役のキャラクターが、わざと誤った意見や食い違う意見を出し、学習者にどちらが正しいかを判断させた。矛盾で混乱しなかった学習者では、学びへの効果はなかった。混乱した学習者は、選択式の事後テストと、学んだことを別の場面に使うテストで、成績がはっきり高かった。

対象: アメリカとドイツの研究者による2つの実験室の実験 / 限界: 混乱は本人の自己申告にはほとんど表れず、矛盾の直後の回答から測っている。同じ研究グループの別の研究では、矛盾を出すだけでは学習の伸びは高くならなかった[2]。

Lodgeら(2018)[3]

学習中の難しさと混乱の研究をまとめたレビュー(研究の整理)。混乱が学びに役立つうえで最も大事なのは、それが解消されることだとした。解けないまま続く混乱は、いら立ちや退屈につながり、学びに悪いと整理している。

対象: 混乱と学習に関する先行研究 / 限界: 著者ら自身が、研究結果はまだ一致していないと書いている。効いたのが課題の難しさか、混乱の感覚かも、はっきりしていない。

CallenderとMcDaniel(2009)[4]

教科書の章や科学雑誌の記事を使った4つの実験で、1回だけ読む場合と、続けてもう一度読む場合を比べた。いくつかの例外を除き、読み直しても選択式・記述式・要約のテストの成績は上がらなかった。読解力が高い人でも低い人でも、この傾向は変わらなかった。

対象: 教科書の章や記事を読む4つの実験の参加者 / 限界: 調べたのは「すぐに」読み直す場合。時間をあけた読み直しの効果は、この研究とは別の話になる。

Bisraら(2018)[5]

学習者に、読んだ内容や例題を自分の言葉で説明させる「自己説明」の研究をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。64の研究報告・69の効果量を合わせた平均の効果量はg=0.55で、中くらいの効果だった。人から説明を受ける場合と比べても、自分で説明する方に効果があった(g=0.35)。

対象: 教室や実験室での多くの研究 / 限界: 研究によって教科・年齢・説明させ方がまちまちで、効果の大きさには幅がある。

ここで紹介した研究の多くは、大学生が短い時間で学ぶ実験です。社会人が何か月もかけて分厚い教科書を読む独学とは条件が違います。手順は、わかっていることを独学に当てはめたものです。

03 今日からできる小さな一歩難しい教科書で止まったら、どう立て直す?

読み直しを繰り返す前に、わからない場所を1文で書き出し、直前までを自分の言葉で説明します。足りない前提はやさしい資料で補い、解けない混乱は印をつけて先に進みます。

1

わからなくなった場所に印をつけ、1文で書く

「どの段落の、どの言葉から、何がわからないか」をノートに1文で書きます。例: 「p.42の3段落目、『限界効用』が何を指すかわからない」。全体が漠然と難しい状態から、解ける大きさの問いに変わります。

所要 2分

2

すぐ読み直さず、直前までを自分の言葉で説明する

本から目を離し、わかった所までを人に話すつもりで声に出すか書きます。つまった所が、本当にわかっていない所です。すぐに読み直すだけでは成績はほとんど上がらず[4]、自分の言葉で説明する方法には効果がありました[5]。

所要 5分

3

足りない前提を、やさしい資料で補う

手順2で説明できなかった言葉を書き出し、入門書・用語集・前の章で意味を確かめます。予備知識の少ない読者は、説明が多くつながりの明確な文章の方が理解しやすいことがわかっています[6]。今の本が悪いのではなく、順番の問題です。

所要 10〜15分

4

15〜20分考えても解けなければ、印をつけて先に進む

ページに「?」の印を残し、次の節に進みます。後の説明や例題で前の部分がわかることもあります。解けない混乱を抱え込むと、いら立ちにつながり学びを妨げます[3]。時間は研究で決まったものではなく目安です。

所要 判断に1分

5

戻ったら、本を閉じて要点を3行で書く

印の場所に戻って読み直したら、本を閉じ、その部分の要点を3行で書きます。書けたら、章末問題を1問解いて確かめます。読む・思い出す・確かめるの流れは3Rシートの記事に表にしています。

所要 5〜10分

止まったときの状態ごとに、次の一手をまとめました。

今の状態次の一手
どこがわからないかもわからないわかる所まで戻り、1文ずつ説明してつまる所を探す(手順1・2)
知らない言葉が多くて進めない言葉を書き出し、入門書や用語集で先に意味を確かめる(手順3)
言葉はわかるが、話のつながりが見えない「なぜこの文の次にこの文が来るか」を自分で説明してみる(手順2)
20分考えても解けない「?」の印をつけて先に進み、後で戻る(手順4)
読めたつもりだが、自信がない本を閉じて3行で書き、問題を1問解く(手順5)

04 続けるためのコツ難しい本で挫折しないためには?

「?」の印と、解けた日付をノートに残します。混乱が解けた記録が増えると、わからない状態を「止まる理由」ではなく「次に調べること」として扱いやすくなります。

  • ノートの端に「わからないことリスト」をつくり、解けたら日付を書いて消す。
  • 印が1ページに3つ以上つくなら、その本は今の自分には早い可能性がある。前の段階の本を1冊はさむ。
  • 字を追うだけで内容が入らないときは、理解ではなく集中の問題かもしれない。読書中に心がさまようときの記事を参考に。
  • 人の勧める勉強法が合わない理由は、予備知識で効き方が変わる研究の記事にまとめています。

05よくある質問

難しい教科書は、わかるまで何度も読み直した方がいいですか?

すぐに読み直すだけでは、効果は小さいと考えられます。4つの実験で、続けてもう一度読んだ人の成績は、1回だけ読んだ人とほとんど変わりませんでした。読み直す前に、わからない場所を特定し、自分の言葉で説明してみる方が研究に合っています。

わからなくて混乱するのは、向いていない証拠ですか?

そうとは限りません。実験では、矛盾した説明に混乱した学習者の方が、混乱しなかった学習者よりテストの成績が高くなりました。ただし混乱が解けないまま続くと、いら立ちや退屈につながり、学びの妨げになると整理されています。

どれくらい考えてもわからなければ、先に進んでいいですか?

研究で決まった時間はありません。この記事では15〜20分を目安にしています。印をつけて先に進み、前提をやさしい資料で補ってから戻ると、混乱を解けないまま抱え込まずにすみます。

出典

  1. D'Mello, S., Lehman, B., Pekrun, R., & Graesser, A. (2014). Confusion can be beneficial for learning. Learning and Instruction, 29, 153–170. https://doi.org/10.1016/j.learninstruc.2012.05.003
  2. Lehman, B., D'Mello, S., Strain, A., Mills, C., Gross, M., Dobbins, A., Wallace, P., Millis, K., & Graesser, A. (2013). Inducing and tracking confusion with contradictions during complex learning. International Journal of Artificial Intelligence in Education, 22(1–2), 85–105. https://doi.org/10.3233/JAI-130025
  3. Lodge, J. M., Kennedy, G., Lockyer, L., Arguel, A., & Pachman, M. (2018). Understanding difficulties and resulting confusion in learning: An integrative review. Frontiers in Education, 3, 49. https://doi.org/10.3389/feduc.2018.00049
  4. Callender, A. A., & McDaniel, M. A. (2009). The limited benefits of rereading educational texts. Contemporary Educational Psychology, 34(1), 30–41. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2008.07.001
  5. Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018). Inducing self-explanation: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703–725. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9434-x
  6. McNamara, D. S., Kintsch, E., Songer, N. B., & Kintsch, W. (1996). Are good texts always better? Interactions of text coherence, background knowledge, and levels of understanding in learning from text. Cognition and Instruction, 14(1), 1–43. https://doi.org/10.1207/s1532690xci1401_1