続け方・習慣

社会人の学び直しで挫折した。講座や勉強を途中でやめた後、どう立て直す?やめる理由と再開の研究

約7分で読めます

本棚と机のある19世紀の書斎
Photo: Miscellaneous Items in High Demand, PPOC, Library of Congress / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

資格の講座、オンライン講座、買った参考書。仕事をしながら始めた学び直しが、いつの間にか止まっていた。「やっぱり大人になってからでは無理だった」と感じている人もいるかもしれません。研究では、途中でやめる理由の多くは能力より、時間・仕事・家族の事情や「役に立つ実感」など生活の側にありました。理由に合わせて形を変えれば、再開できます。

3行でわかる

  1. オンライン学習を途中でやめる理由を調べた研究では、要因は69個に及び、本人・講座・生活環境の3つに分けられた。仕事や家族の事情は、やめる理由として何度も挙がっている。
  2. 米国の大学のオンライン講座の大人の受講者147人の研究では、職場の支えと、講座が自分に役立つという実感が、やめるか続けるかを特によく予測した。
  3. 約27万人の大規模実験では、計画を書かせるなどの短い働きかけで最後まで続く人は増えなかった。再開には、理由に合わせて量・支え・目的を作り直すことが必要。

01 悩みの正体社会人の学び直しは、なぜ途中で止まりやすい?

大人の勉強は、仕事・家族・お金など、勉強以外の責任と同じ時間を取り合うからです。研究で挙がるやめる理由の多くは、能力ではなく、こうした生活の側の事情でした。

学生のころの勉強は、生活の中心に置かれていました。社会人の学び直しは、仕事や家庭の予定のすき間で行います。繁忙期や家族の用事が1つ入るだけで、予定していた時間が消えます。

オンライン学習の研究をまとめたレビューでも、家族の責任や仕事の責任は、やめる理由として繰り返し挙がっていました[3]。年齢そのものが学ぶ力をどう変えるかは、大人の学び直しは不利なのかの記事にまとめています。

02 科学的にわかっていること一度やめた学び直しは、どう再開すればいい?

やめた理由を見分け、それに合わせて量・支え・目的を作り直すことです。大規模な実験では、計画を書くだけの短い働きかけは最初の1〜2週間しか効きませんでした。

LeeとChoi(2011)[1]

大学レベルのオンライン講座を途中でやめることについて、過去10年の実証研究をまとめたレビュー。やめる要因として69個が見つかり、「本人の要因」「講座・プログラムの要因」「生活環境の要因」の3つに分けられた。対策として、一人ひとりのつまずきを理解すること、質のよい課題と組み立てられた支援、生活環境や気持ちの問題への手当てを挙げた。

対象: 大学レベルのオンライン講座の研究 / 限界: 研究ごとに「やめた」の定義が異なり、要因の強さを数字で比べたものではない。

ParkとChoi(2009)[2]

米国中西部の大きな大学のオンライン講座で、途中でやめた人と修了した人、合わせて147人の大人の受講者を比べた。年齢・性別・学歴、家族と職場の支え、満足度と「講座が自分に関係がある・役立つ」という実感(関連性)を調べた。職場の支えと関連性が、やめるかどうかを特によく予測した。

対象: 米国の1つの大学のオンライン講座の受講者 / 限界: 1つの大学・147人の調査で、原因と結果を確かめた実験ではない。この記事では論文の要旨で内容を確認した。

Kizilcecら(2020)[4]

ハーバード大学・MIT・スタンフォード大学の247のオンライン講座で、2016年9月から2019年5月まで、26万9,169人を対象に行った実験。以前の小さな研究で効果が出ていた「いつどう勉強するか計画を書く」などの働きかけは、大規模にすると最後まで修了する人を増やさなかった。計画を書かせると最初の1週間の学習量は増えたが、1〜2週間で効果は薄れた。進み具合を定期的に聞いてもらう人を決める働きかけは、2週目にも学習量の差が残っていた(ただし修了率は上げなかった)。

対象: 世界中のオンライン講座の受講者(社会人に限らない) / 限界: 以前の研究で見られた大きな効果が再現されなかった研究。短い働きかけだけでは足りないことを示している。

オンライン学習を続ける要因を20年分の研究から整理したレビューでは、時間の管理に苦労することが早い段階でやめることと結びついていました。勉強量を現実的に見込んでいることは、続ける助けになっていました。「自分はできる」という感覚(自己効力感)も、続けることと関係する要因として挙がっていました[3]。

03 今日からできる小さな一歩挫折した学び直しを、どう立て直す?

やめた理由を4つの箱で振り返り、量を今の生活に合わせて減らし、目的と支えを作り直してから、確実にできる所で再開します。計画は2週間ごとに立て直します。

1

やめた理由を4つの箱で振り返る

下の表の「時間・生活」「支え」「役に立つ実感」「中身・難しさ」のうち、当てはまるものに印をつけます。要因は本人・講座・生活環境にまたがっていました[1]。理由がわかれば、変えるべき所もわかります。

所要 5分

2

1週間に使える時間を書き出し、量を合わせる

今の生活で本当に使える時間を、平日と休日に分けて書きます。前の計画より少なければ、週の量をそこまで減らします。勉強量を現実的に見込むことは、続ける助けになっていました[3]。

所要 10分

3

「仕事や生活のどこで使うか」を1行で書く

「来年の業務で使う表計算を、自分で組めるようにする」のように具体的に書きます。講座が自分に役立つ実感は、続けるかどうかを特によく予測していました[2]。使う場面に近い章から再開するのも一つの方法です。

所要 5分

4

1人に話し、進み具合を聞いてもらう

家族、同僚、上司の誰か1人に「今週は2章やる」と伝え、週末に聞いてもらいます。職場の支えはやめるかどうかを予測し[2]、進み具合を聞いてもらう人を決める働きかけは、ほかの働きかけより効果が長く残りました[4]。

所要 5分

5

一つ前の章から、確実にできる所で再開する

止まった所からではなく、少し前の解ける所から始めます。最初の数回で「できた」を確かめるための、この記事からの提案です。「自分はできる」という感覚は、続けることと関係する要因として挙がっていました[3]。忘れていた部分の覚え直しは、忘れた後の覚え直しの記事が参考になります。

所要 1回15〜30分

6

計画は2週間ごとに立て直す

計画を書く効果は1〜2週間で薄れていました[4]。2週間ごとに10分とって、できた量と次の2週間の量を書き直します。生活が忙しい時期は、量を減らしてもやめないことを優先します。

所要 2週間ごとに10分

4つの箱ごとに、当てはまりやすい例と、再開で変えることをまとめました。研究の要因をもとに、この記事で独学向けに当てはめた表です。

やめた理由の箱当てはまりやすい例再開で変えること
時間・生活残業や繁忙期、家族の用事で、予定していた時間が消えた週の量を今の生活で使える時間に合わせて減らす(手順2)
支え家族や職場に言っておらず、勉強の時間を守りにくかった1人に話し、進み具合を聞いてもらう(手順4)
役に立つ実感何のための勉強か、途中でわからなくなった仕事や生活のどこで使うかを書き、そこに近い所から再開する(手順3)
中身・難しさ途中で急に難しくなった、量が思ったより多かった一つ前の章から、確実にできる所で再開する(手順5)

04 続けるためのコツ再開した学び直しを、また止めないためには?

忙しい時期が来る前提で、「最低限これだけ」の量を決めておきます。止まりそうなときは、やめるか続けるかではなく、量を減らして続ける方を選びます。

ここで紹介した研究の多くは、大学のオンライン講座の受講者を調べたものです。独学で参考書を進める社会人や、日本の資格試験の受験者を直接調べた研究ではありません。手順は、わかっていることを独学に当てはめたものです。

05よくある質問

学び直しを途中でやめたのは、年齢のせいですか?

そうとは言い切れません。オンライン学習を途中でやめる理由を調べた研究では、仕事や家族の責任、職場の支え、講座が役立つ実感など、生活の側の要因が繰り返し挙がっていました。理由を見分けて形を変えれば、再開できます。

勉強の計画を立て直せば、今度は続きますか?

計画だけでは足りない可能性があります。約27万人のオンライン講座の実験では、計画を書かせると最初の1週間の学習量は増えましたが、1〜2週間で薄れ、修了する人は増えませんでした。計画は2週間ごとに立て直し、量・支え・目的もあわせて見直すのが現実的です。

一人で勉強しているので、支えてくれる人がいません。

職場や家族の誰か1人に、週1回進み具合を聞いてもらうだけでもかまいません。実験では、進み具合を聞いてもらう人を決める働きかけは、ほかの働きかけより効果が長く残りました。ただし修了率を上げるまでの効果は確認されていません。

出典

  1. Lee, Y., & Choi, J. (2011). A review of online course dropout research: implications for practice and future research. Educational Technology Research and Development, 59, 593-618. https://doi.org/10.1007/s11423-010-9177-y
  2. Park, J.-H., & Choi, H. J. (2009). Factors influencing adult learners' decision to drop out or persist in online learning. Educational Technology & Society, 12(4), 207-217. https://eric.ed.gov/?id=EJ860445
  3. Shaikh, U. U., & Asif, Z. (2022). Persistence and dropout in higher online education: Review and categorization of factors. Frontiers in Psychology, 13, 902070. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.902070
  4. Kizilcec, R. F., Reich, J., Yeomans, M., Dann, C., Brunskill, E., Lopez, G., Turkay, S., Williams, J. J., & Tingley, D. (2020). Scaling up behavioral science interventions in online education. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(26), 14900-14905. https://doi.org/10.1073/pnas.1921417117