失敗するのが怖くて、過去問や模試を後回しにしてきた。どう始める?「点数をつけない1回目」からの6つの手順(練習テストと不安の研究)

過去問や模試を解けば、できていないことがはっきりしてしまう。それが怖くて「もう少しテキストを読んでから」と後回しにしてきた人は少なくありません。研究の答えは「失敗を避けるほど成績は伸びにくく、問題を解く練習は、不安に強い記憶も作りやすい」です。避けてきた時間は取り戻せます。この記事では、責めずに再開するための6つの手順を、点数をつけない1回目から順に紹介します。
3行でわかる
- 「失敗したくない」を目標にする人ほど成績が低い傾向があった(33,983人のメタ分析、教育の分野で相関 −0.14)。ただし相関で、原因かどうかはわからない。
- 教室で小テストを使うと成績は中くらい上がった(222研究・48,478人のメタ分析)。思い出す練習で覚えた人が強いストレスの後も成績を保った実験もあるが、追試では再現しなかった例がある。
- 再開は、①1回目は点数をつけない ②1単元10問だけ ③教科書を閉じて解く ④1問ずつ答えを確かめる ⑤目標は「前回の自分」 ⑥慣れたら本番形式、の6つ。
01 悩みの正体過去問を避けてしまうのは、なぜ?
悪い点を見ると「自分には無理だ」と感じてしまうので、その場面を避けたくなるからです。怠けではなく、自分を守ろうとする自然な反応です。ただ、避けるほど本番の準備は遅れます。
問題を解かずにテキストを読んでいれば、失敗を見ずに済みます。けれど読むだけの勉強は、わかった気になりやすく、本番で思い出せないことがあります(過去問から解くべきかの記事)。
失敗しても傷つかないよう、前もって言い訳を作ってしまう心の動きは「言い訳づくり」の記事で紹介しています。この記事では、避けてきた後にどう再開するかを中心に書きます。
02 科学的にわかっていること失敗を避ける勉強は、成績にどう関係する?
「失敗したくない」が目標の人ほど成績が低い傾向が、学校の研究で繰り返し見られています。一方、問題を解く練習は成績を上げました。思い出す練習の記憶がストレスに強いという実験もありますが、追試の結果は一致していません。
Van Yperenら(2014)[1]
学業・仕事・スポーツの98本の論文(33,983人)をまとめたメタ分析(複数の研究を統合する分析)。教育の分野では、「人より悪くなりたくない」という目標が強い人ほど成績が低く(相関 −0.14、55の効果量)、「前の自分より悪くなりたくない」も同じく低かった(−0.13)。反対に「できるようになりたい」という目標は、成績とプラスの関係だった(0.13)。
対象: 学生・社会人・選手の自己評価の目標と、成績や試験の点 / 限界: 相関の研究で、目標を変えれば成績が上がるとまでは言えない。関係の大きさも小さい。
Yangら(2021)[2]
教室で行われた222の研究(48,478人)をまとめたメタ分析。小テストを使うと、学業成績が中くらい上がった(効果の大きさ g=0.499)。効果の大きさは、正しい答えを返すかどうか、くり返しの回数、本番と同じ形式かどうかなどで変わった。
対象: 学校・大学の授業の研究 / 限界: 先生が小テストを用意した場面の研究。一人で過去問を解く独学で同じ大きさになるかは確かめられていない。
Smithら(2016)[3]
参加者は、読み直すか思い出す練習(練習テスト)で内容を覚え、24時間後に半数が強いストレスを受けてからテストを受けた。読み直した人はストレスで成績が下がったが、思い出す練習をした人は、ストレスの影響を受けなかった。
対象: 実験室で単語の一覧や絵を覚えた参加者 / 限界: 思い出す練習の組はもともと記憶が強かったため、練習方法そのものの効果かは分けられないこと、ストレスをホルモンで確かめていないことが指摘されている[4]。答え合わせつきの単語の組で7日後に調べた追試2件では、思い出す練習で覚えた記憶もストレスで下がり、再現しなかった[7]。
Itoら(2025)[5]
日本の医学生75人が、グループで臨床推理の演習をした後、成績にほとんど関わらないと伝えられたテストをグループで受けた。不安は、演習のとき(5段階で平均2.21)より、テストのとき(1.96)のほうが低かった。ほかの気持ちには変化が無かった。
対象: 日本の医学部の学生75人 / 限界: 比べる組の無い1回の授業での研究で、グループで受けたテスト。一人で解く場合にも不安が下がるかは調べていない。
紹介した研究は、主に学校の授業や実験室のものです。社会人が一人で資格試験を目指す場合に、同じ大きさの効果が出るとは限りません。また「間違えた後にすぐ正しい答えを見れば、読むだけより覚えやすい」という実験もあります[6](思い出す練習で何も出てこないときの記事)。
03 今日からできる小さな一歩避けてきた過去問を、どこから始め直す?
1回目は点数をつけない練習と決め、1単元10問だけ、教科書を閉じて解きます。1問ずつ答えを確かめ、目標は「前回の自分」に置きます。慣れてから時間を計る本番形式に進みます。
1回目は「点数をつけない練習」と決める
ノートの上に「練習・採点なし」と書いてから始めます。成績にほとんど関わらないテストでは不安が下がった報告があります[5]。合格判定や偏差値の出る模試は、まだ受けなくて構いません。
所要 1分
いちばん自信のある1単元から、10問だけ解く
1年分を通して解こうとすると、最初の失敗が大きく見えます。読み終えた単元の過去問を10問だけ選びます。くり返し解けるよう、量は小さく始めます。
所要 15〜20分
教科書を閉じて、わからなくても答えを書く
わからない問題も、空欄にせず「たぶんこれ」を書きます。研究で効果があったのは、見ながら解くことではなく、自分の頭から思い出して答える練習です[2][3]。
所要 手順2に含む
1問ずつ、正しい答えと理由を確かめる
正しい答えを返すかどうかで、小テストの効果は変わりました[2]。間違えた問題には印をつけ、正しい答えと理由を1行書きます。間違いの直し方は間違えた問題の直し方の記事にまとめています。
所要 10分
目標は「合格点」ではなく「前回の自分より1問多く」
記録するのは正解の数だけにし、次は同じ単元で前回より1問増やすことを目標にします。「失敗したくない」より「できるようになりたい」という目標の人ほど成績が高い傾向がありました[1]。
所要 1分
3回ほど続いたら、時間を計って本番形式で解く
本番と同じ形式で練習すると、小テストの効果は大きくなりました[2]。慣れてきたら、本番と同じ時間・形式で1回分を解きます。点数の見通しは点数予想の記録表で確かめられます。
所要 本番と同じ時間
04 続けるためのコツ悪い点が出ても、やめずに続けるには?
点数は「今の自分の実力」ではなく「次に覚えることの一覧」として扱います。比べる相手は他人ではなく、前回の自分です。
- 練習の点が低いのは、本番の前に穴が見つかったということ。間違えた問題を1週間後に解き直す。
- SNSや合格体験記の点数と比べない。比べて落ち込むしくみはSNSで比べて落ち込む理由の記事で紹介している。
- 本番で緊張して力を出せなかった経験がある人は、本番で緊張したときの立て直しの記事も参考に。
- 試験のことを考えると眠れない、動悸がするなどのつらさが続くときは、一人で抱えず相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。
05よくある質問
過去問は、テキストを全部終えてから解くべき?
全部終えるまで待つ必要はありません。教室の222研究をまとめた分析では、小テストを使うと成績が中くらい上がりました。読み終えた単元から10問ほど解き、間違えた問題をすぐ確かめるやり方なら、テキストの途中からでも始められます。
悪い点を見ると落ち込んで、やる気がなくなる。どうすればいい?
最初の数回は点数をつけず、正解の数だけを記録し、前回の自分と比べるやり方がおすすめです。「人より悪くなりたくない」という目標が強い人ほど成績が低い傾向があり、「できるようになりたい」という目標の人ほど成績が高い傾向がありました。ただし相関の研究です。
緊張しやすいので、問題を解く練習はかえって不安になりませんか?
思い出す練習で覚えた人は、強いストレスの後でもテストの成績が落ちなかった実験があります。ただし、条件を変えた追試では再現しなかった例があり、もともと記憶が強かっただけの可能性も指摘されています。不安が強い人は、点数をつけない短い練習から始めると取り組みやすくなります。
出典
- Van Yperen, N. W., Blaga, M., & Postmes, T. (2014). A meta-analysis of self-reported achievement goals and nonself-report performance across three achievement domains (work, sports, and education). PLoS ONE, 9(4), e93594. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0093594
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. https://doi.org/10.1037/bul0000309
- Smith, A. M., Floerke, V. A., & Thomas, A. K. (2016). Retrieval practice protects memory against acute stress. Science, 354(6315), 1046–1048. https://doi.org/10.1126/science.aah5067
- Wolf, O. T., & Kluge, A. (2017). Commentary: Retrieval practice protects memory against acute stress. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 11, 48. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2017.00048
- Ito, T., Nomura, O., Hirai, K., Ushikoshi, H., & Saiki, T. (2025). Reduced test anxiety among medical students in an extremely low-stakes examination. Medical Science Educator, 35(5), 2647–2652. https://doi.org/10.1007/s40670-025-02468-8
- Kornell, N., Hays, M. J., & Bjork, R. A. (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989–998. https://doi.org/10.1037/a0015729
- Klier, C., & Buratto, L. G. (2026). Does retrieval practice protect memories against the amnesic effects of stress? An evaluation of the role of stimulus difficulty. Frontiers in Cognition, 5, 1838176. https://doi.org/10.3389/fcogn.2026.1838176


