模試・過去問の「点数予想」記録表。予想より低い点が続くときの使い方(点数の見積もりの研究から)

「今回は7割いける」と思って解いた過去問が、採点すると5割台。そんなことが続くと、自分の感覚が信じられなくなります。研究では、点数の予想が高くずれるのは珍しいことではなく、予想をくり返すだけでは直りにくいとわかっています。この記事では、そのずれを「次に何を勉強するか」を決める手がかりに変える記録表を用意しました。
3行でわかる
- 大学の授業の研究で、成績の下位4分の1の学生は、試験の点を実際より約15点高く予想していた。上位4分の1のずれは約2点だった。
- 予想をくり返すだけでは、予想も成績もあまり変わらなかった。前回の予想と結果を見直し、苦手な所と勉強のしかたを書く課題をした学生は、入学時の成績が低い層で、用語を書く課題の学生より約5点高かった。
- 使い方は、①前回の点を見てから予想する ②解いた直後にもう一度見積もる ③ずれが大きい分野だけ勉強のしかたを変える、の3つ。
01 悩みの正体模試の点が、思ったより低いのはなぜ?
点数の予想は、成績が低い人ほど高くずれやすいからです。授業の試験で、下位4分の1の学生は予想より約15点低い点をとっていました。前回の結果を思い出さずに予想していることも一因と考えられています。
「今回は7割はいける」と思って模試を受けたのに、返ってきたのは5割台。こうしたずれは、多くの学生に起きています。研究では、点数を予想する正確さをキャリブレーション(予想と実際がどれだけ合っているか)と呼びます。
BolとHacker(2012)のレビューは、くり返し確認されてきた傾向を2つ挙げています。1つは、成績の高い学生ほど予想が正確で、むしろ控えめに予想しがちなこと。もう1つは、解く前の予想より、解き終えた後の見積もりの方が正確なことです[2]。
Karacaら(2023)は、低い点が続く学生が予想を下げない理由として、先行研究から2つの説明を紹介しています。前回の点数を思い出さずに予想していること、そして「次は違うはず」と過去の結果を考えに入れないことです[1]。この記事の表は、前回の結果を予想の横に必ず書くことで、この2つを防ぐように作りました。
02 科学的にわかっていること点数を予想し続けると、予想や成績は良くなる?
予想するだけでは、予想も成績もほとんど変わりませんでした。成績が上がったのは、前回の予想と結果を見直し、つまずいた所と勉強のしかたを書く課題をした場合です。
Karacaら(2023)[1]
心理学入門の授業で、4回の試験の直前に、とれそうな成績を予想してもらった。1回目の試験では、成績の下位4分の1(28人)の予想は平均84.01点、実際は68.93点で、約15点高く予想していた。上位4分の1(25人)のずれは約1.9点だった。成績の低い学生のずれは学期を通してあまり縮まらず、予想への自信も下がらなかった。対面の授業で行った2つ目の研究(66人)でも同じ傾向だった。
対象: 米国マサチューセッツ大学ローウェル校の学部生110人(オンライン授業)と66人(対面授業)、各30問の選択式試験 / 限界: 1つの大学の1科目。全員のずれが少し縮んだ回もあったが、著者らは主に点数が上がったためとしている。
Angellら(2024)[3]
生物学入門の授業で、試験の数日前に、半数の学生には用語を定義する課題、残りには「前回の予想と結果を見直し、どこで外れたかを考える」「苦手な概念と、その理由と、どう勉強するか」などを答える課題を出した。入学時の成績が中央値より低い82人では、2回目と3回目の試験で、見直し課題の組の方が約5点高かった(80.2点と75.0点、82.8点と77.3点。効果の大きさ d=0.48と0.63)。成績の高い151人では差がなかった。
対象: 米国の小さな大学(セント・オラフ大学)の学生233人、5クラス / 限界: 予想の正確さが上がったのは、主に点数が上がったためで、予想そのものはあまり変わらなかった。見直しのどの部分が効いたかは分けられていない。
Westら(2024)[4]
単語の組を「覚える→テスト」を何回かくり返して覚える実験を3つ行った(実験1は3回)。毎回「どのくらい思い出せそうか」を予想した組と、最後の回だけ予想した組を比べた。予想の正確さは回を追って上がったが、その上がり方は2つの組で同じだった。著者らは、予想が正確になるのは予想の練習のおかげではなく、テストを受けて前回の結果を手がかりにできるからだと結論づけている。
対象: 米国のオンライン調査サービスで集めた参加者(実験1は80人を募集) / 限界: 短時間の単語の暗記で、何週間もかかる試験勉強ではない。
Pilottiら(2023)[5]
過去の試験問題で練習した後、期末試験の前と後に成績を予想してもらった。成績の低い学生は試験前に高く予想していたが、試験を解いた後の見積もりは正確になり、試験前の予想にもあまり自信を持っていなかった。著者らは、成績の低い学生は準備不足に気づいていないのではなく、「こうなってほしい」という願いで予想していると解釈している。予想のずれは、期末の成績をよく予測していた。
対象: サウジアラビアの大学で文章の授業をとる1年生の女子学生248人 / 限界: 1つの大学の1学期の調査。「願い」という解釈は、自信の低さからの推測。
ここで紹介した研究は、大学の授業や短い実験のものです。社会人が資格試験の模試で予想を記録して合格率が上がるかを確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。BolとHacker(2012)も、予想が正確になると成績が上がるのかは、ほとんど確かめられていないと述べています[2]。下の表は「予想を当てる練習」ではなく、「ずれをきっかけに勉強を見直す道具」として作った、この記事の提案です。
03 使える表点数の予想と実際は、どう記録して使う?
解く前に、前回の点数を見てから予想を書きます。解いた直後にもう一度見積もり、採点後にずれと理由を書きます。ずれが大きい分野だけ、次の勉強を決めます。
表1 模試・過去問の予想と実際の記録表(1回解くごとに1行)
| 日付・回 | 前回の実際 | 解く前の予想 | 解いた直後の見積もり | 実際 | ずれ(予想−実際) | ずれた分野と理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (記入例)10/20 過去問A | 58点 | 70点 | 62点 | 56点 | +14点 | 計算問題。解き方を覚えたつもりで手が止まった |
| (記入例)11/3 過去問B | 56点 | 62点 | 60点 | 61点 | +1点 | 用語は合った。長文は時間切れ |
記入例の数字は説明用で、研究の数字ではありません。「解く前の予想」は、必ず左の「前回の実際」を見てから書きます。前回の結果を考えに入れずに予想すると、高く外れやすいと考えられているためです[1]。
表2 ずれの読み方と、次にすること
| ずれ(予想−実際) | 考えられること | 次にすること |
|---|---|---|
| +10点以上が2回続く | 「わかったつもり」の分野がある | ずれた分野を、何も見ずに解き直す日を決める |
| +10点以上だが、解いた直後の見積もりは近い | 解いている間は気づけている | 解く前の予想の代わりに、直後の見積もりを次回の目安にする |
| ±5点以内 | 予想と実際がほぼ合っている | 今の勉強のしかたを続ける。記録は2回に1回でよい |
| −5点以下が続く | 控えめに見積もりすぎている | できている分野の勉強を減らし、時間を苦手な分野へ回す |
「+10点」「±5点」の線は、この記事で決めた目安で、研究で決まった数字ではありません。100点満点でない試験は、割合に直して使ってください。
表3 解く前の3分チェック(Angellら(2024)の見直し課題を、独学向けに短くしたもの[3])
| 問い | 書く例 |
|---|---|
| 前回、予想と実際はどれだけずれた? どこで外れた? | +14点。計算問題で、手順を思い出せなかった |
| いまいちばん自信がない分野と、その理由は? | 減価償却。公式を見れば分かるが、見ないと書けない |
| 今回、その分野をどう勉強した(する)? | 公式を隠して3問解いてから、解説を読んだ |
04 続けるためのコツ予想がなかなか当たらないときは?
当てることを目標にしないでください。予想を当てる練習だけでは正確にならないという研究があります。ずれた分野を見つけ、勉強のしかたを変えることに使います。
- 予想は1分で書く。考えこむほど「こうなってほしい点」になりやすい。
- 大きくずれた分野は、読み直しではなく思い出す練習で確かめる。わかったつもりが起きる理由は「わかったつもり」の記事で、時間をおいて確かめる表は覚えたかチェック表で紹介している。
- 模試の結果が悪かったときの直し方は、間違えた問題の直し方の記事へ。本番の時間配分は時間配分表と一緒に記録できる。
- ずれが大きいのは、能力が低いからではありません。成績の高い人でも、最初は外れることがあります。記録が3回ほどたまってから傾向を見ます。
05よくある質問
試験の点数を予想すると、成績は上がりますか?
予想するだけで成績が上がるという証拠は、今のところ弱いです。大学の授業の研究では、予想を何回くり返しても、成績の低い学生の予想はあまり正確になりませんでした。成績が上がったのは、前回の予想と結果を見直し、苦手な所と勉強のしかたを書く課題をした場合でした。
模試の点数を毎回高く予想してしまうのはなぜ?
前回の点数を思い出さずに予想したり、「次は違うはず」と考えたりすると、高く外れやすいと考えられています。また、成績の低い学生は、準備不足に気づいていないのではなく、願いをこめて予想しているという解釈もあります。前回の点数を横に書いてから予想すると、この影響を減らせます。
解く前の予想と、解いた後の見積もりは、どちらが正確?
研究では、解き終えた後の見積もりの方が正確なことが、くり返し確認されています。解いている間に、できた問題とできなかった問題に気づけるからと考えられています。直後の見積もりと実際の点がずれる分野は、とくに見直す価値があります。
出典
- Karaca, M., Geraci, L., Kurpad, N., Lithander, M. P. G., & Balsis, S. (2023). Low-performing students confidently overpredict their grade performance throughout the semester. Journal of Intelligence, 11(10), 188. https://doi.org/10.3390/jintelligence11100188
- Bol, L., & Hacker, D. J. (2012). Calibration research: Where do we go from here? Frontiers in Psychology, 3, 229. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2012.00229
- Angell, D. K., Lane-Getaz, S., Okonek, T., & Smith, S. (2024). Metacognitive exam preparation assignments in an introductory biology course improve exam scores for lower ACT students compared with assignments that focus on terms. CBE—Life Sciences Education, 23(1), ar6. https://doi.org/10.1187/cbe.22-10-0212
- West, J. T., Kuhns, J. M., Touron, D. R., Mulligan, N. W., Ariel, R., & Dunlosky, J. (2024). Increased metamemory accuracy with practice does not require practice with metamemory. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 78(7), 1280–1302(2024年オンライン公開). https://doi.org/10.1177/17470218241269322
- Pilotti, M. A. E., El Alaoui, K., Waked, A. N., & Kloos, H. (2023). Battling unawareness of one's test performance: Do practice, self-efficacy, and emotional intelligence matter? Behavioral Sciences, 13(3), 275. https://doi.org/10.3390/bs13030275


