「好きなこと・興味のあることから勉強するとやる気が出る」は本当?興味と学習の研究でわかったこと(効く・効かないの判定)

「好きなことなら続く」「まず興味のある分野から勉強しよう」。独学のアドバイスでよく聞く言葉です。でも、好きなことが見つからない人や、好きで始めたのに途中で手が止まった人もいるはずです。研究を調べると、興味と成績には中くらいの関係があります。一方で、「好きなことさえ見つければやる気は尽きない」という考え方は、難しくなったときに興味を失いやすくすることが、実験で示されています。判定は「条件しだい」です。
3行でわかる
- 判定:「興味のあることから勉強するとやる気が出る」は「条件しだい」。興味と成績の相関はr=0.31(121件の研究のまとめ)で、関係はあるが、因果ははっきりしない。
- 「興味は決まっていて、見つけるもの」と考える人ほど、新しい分野が難しくなったときに興味が下がりやすかった(大学生の実験)。
- 興味は育てられる。熱意が増えた理由で最も多かったのは「その分野に慣れて詳しくなったこと」(35.2%)だった。
01 通説の中身好きなことから勉強すると、やる気は続く?
入り口としては悪くありませんが、続くとは限りません。研究が示しているのは、興味は「見つけるもの」より「育つもの」であり、難しくなる時期を前提にした方が続きやすい、ということです。
「好きなことをやれ」というアドバイスには、隠れた前提があります。好きなことは最初から決まっていて、見つかれば熱意はずっと続く、という前提です。
ところが独学では、どんな分野でも、基礎の暗記や難しい問題に当たる時期があります。そこで「本当は好きではなかったのかも」と考えると、やめる理由になってしまいます。
02 科学的にわかっていること興味がある人ほど、成績は伸びる?
興味と成績には中くらいの関係があります。ただし相関なので、興味が成績を上げたのか、できるから興味がわいたのかは区別できません。興味は、慣れや役立つ実感で後から育つことも示されています。
Schiefeleら(1992)[1]
18か国・121件の研究をまとめたところ、興味と学業成績の相関は平均でr=0.31だった(相関は−1〜1で表し、0.3前後は中くらいの関係とされる)。
対象: 121件の研究のまとめ(書籍の章。内容は後の論文の紹介[2]で確認) / 限界: 相関なので因果はわからない。1992年までの研究。
O'Keefe・Dweck・Walton(2018)[3]
5つの研究のうち研究1〜3で、「興味は決まっている」と考える人は、自分の興味の外にある分野に関心を持ちにくかった。また、好きなことが見つかれば、やる気は限りなく続くと予想しがちだった。新しい分野の学習が難しくなったとき、「興味は決まっている」という考えを持たされた人は、「興味は育つ」と考えさせた人より、興味が大きく下がった。
対象: 大学生など(難しくなった場面を調べた研究5は大学生。後の論文[4]の紹介) / 限界: 要旨と後の論文の紹介で確認した内容。測ったのは本人が答えた興味の強さで、成績や学習量ではない。短い実験室の研究。独立した再現研究は見つけられなかった。
Chenら(2021)[4]
アメリカの大学3〜4年生316人を対象にした調査では、「熱意は育つ」と考える学生ほど、熱意を高める工夫を多く使い、専攻への熱意が増えたと答えていた。熱意が増えた理由を書いた128人の回答で最も多かったのは「その分野に慣れて詳しくなった」35.2%。「もともと好きな部分に集中した」は7.0%だった。
対象: アメリカの大学生(調査316人、実験152人など) / 限界: 自己申告。1年後の追跡は約70人で、差はぎりぎり有意に届かなかった(p=0.053)。O'Keefeが共著者に入っている。
AsherとHarackiewicz(2025)[5]
統計を学ぶ大学生2,019人の7つの実験で、「学び方を選べるようにする」ことと「その内容が自分の目標に役立つと伝える」ことは、どちらもその場の興味を高めた。役立つと伝えた場合だけ、学生が授業の後も統計の講座や資料の情報を求めた。
対象: アメリカの大学生 / 限界: 1回の実験室での学習。要旨で確認した内容。
国による違いもあります。59の国と地域の生徒120万人のデータでは、興味・楽しさ・自信をまとめた「熱意」が成績を予測する強さは、個人主義の社会で大きく(0.32標準偏差)、集団主義の社会では小さめでした(0.21標準偏差)。集団主義の社会では、熱意に加えて親の支えも成績を予測していました[6]。
これらの多くは、アメリカの大学生が短い時間で答えた調査や実験です。社会人が何か月もかけて資格や語学を独学する場面で、そのまま確かめた研究ではありません。
03 今日からできる小さな一歩興味がわかない勉強を、どう始めればいい?
好きになるのを待たず、小さく触れて慣れることから始めます。難しい時期が来る前提で、そのときの合図と対処を先に決めておきます。
「難しくなるのは普通」と書いておく
ノートの最初に「どの分野でも難しい時期は来る。興味が下がっても、向いていない証拠ではない」と1行書きます。興味が育つと考えた人は、難しくなっても興味が下がりにくかったからです。
所要 1分
毎日少しずつ触れて、慣れる
熱意が増えた理由で一番多かったのは「慣れて詳しくなった」ことでした。最初の2週間は、毎日15分だけ同じ分野に触れます。
所要 15分
自分の目標とのつながりを1つ書く
「この内容は、自分の仕事や生活のどこで役立つか」を1文で書きます。役立つと知った学生は、学習の後も関連する情報を求めていました。
所要 3分
04 続けるためのコツ好きで始めた勉強に飽きてきたら?
興味が下がるのは、多くの場合「難しくなった」合図です。やめるかどうかは、難易度を下げたり、学び方を選び直したりしてから決めます。
- 学び方を自分で選ぶ。教材や順番を選べるようにすると、その場の興味と集中が高まった実験があります。
- 役立つ場面を書き出す。やり方は勉強する意味を書く方法の記事にまとめています。
- 飽きたときは難易度を見直す。勉強に飽きたときの立て直し方も参考になります。
- 「自分は伸びる」と信じる介入の効果は、平均すると小さい。考え方だけで変わると期待しすぎないことも大切です(マインドセットの記事)。
05よくある質問
好きなこと・興味のあることから勉強するとやる気が出るのは本当?
条件しだいです。興味と成績の相関は121件の研究のまとめでr=0.31と中くらいですが、因果ははっきりしません。また「興味は決まっていて見つけるもの」と考えると、難しくなったときに興味が下がりやすいことが大学生の実験で示されています。
興味がない分野でも、勉強するうちに好きになれる?
なれる可能性があります。アメリカの大学生の調査では、専攻への熱意が増えた理由で最も多かったのは「その分野に慣れて詳しくなった」(35.2%)でした。内容が自分の目標に役立つと知ることも、興味を育てる方向に働きました。
好きで始めた勉強なのに、やる気がなくなったらやめるべき?
すぐに決めなくて大丈夫です。新しい分野が難しくなると興味が下がるのはよくあることで、「興味は育つ」と考えた人は下がり方が小さかったと報告されています。難易度や学び方を見直してから判断します。
出典
- Schiefele, U., Krapp, A., & Winteler, A. (1992). Interest as a predictor of academic achievement: A meta-analysis of research. In K. A. Renninger, S. Hidi, & A. Krapp (Eds.), The Role of Interest in Learning and Development (pp. 183–212). Lawrence Erlbaum Associates.(書籍の章で、DOIはない。数値は出典2の紹介で確認)
- Kleespies, M. W., Doderer, L., Dierkes, P. W., & Wenzel, V. (2021). Nature Interest Scale – Development and evaluation of a measurement instrument for individual interest in nature. Frontiers in Psychology, 12, 774333. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.774333
- O'Keefe, P. A., Dweck, C. S., & Walton, G. M. (2018). Implicit theories of interest: Finding your passion or developing it? Psychological Science, 29(10), 1653–1664. https://doi.org/10.1177/0956797618780643
- Chen, P., Lin, Y., Pereira, D. J. H., O'Keefe, P. A., & Yates, J. F. (2021). Fanning the flames of passion: A develop mindset predicts strategy-use intentions to cultivate passion. Frontiers in Psychology, 12, 634903. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.634903
- Asher, M. W., & Harackiewicz, J. M. (2025). Using choice and utility value to promote interest: Stimulating situational interest in a lesson and fostering the development of interest in statistics. Journal of Educational Psychology, 117(4), 647–662. https://doi.org/10.1037/edu0000921
- Li, X., Han, M., Cohen, G. L., & Markus, H. R. (2021). Passion matters but not equally everywhere: Predicting achievement from interest, enjoyment, and efficacy in 59 societies. Proceedings of the National Academy of Sciences, 118(11), e2016964118. https://doi.org/10.1073/pnas.2016964118


