やる気・心

試験が近いのに、勉強以外のことをしてしまうのはなぜ?失敗しても傷つかないための「言い訳づくり」(セルフ・ハンディキャッピング)の研究

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開いた本とりんご、ノートパソコンが置かれた机
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

試験が近いのに、急に部屋を片付けたくなる。前の晩に遅くまで動画を見てしまう。友だちには「全然勉強してない」と言ってしまう。これは怠けではなく、心を守るための反応として研究されてきました。心理学では、失敗したときの言い訳を前もって作る「セルフ・ハンディキャッピング」と呼びます。この記事では、なぜそうなるのか、そして成績にどう響くのかを研究から整理します。

3行でわかる

  1. 試験前に勉強以外のことをしてしまう理由の1つは、失敗しても「能力が低い」と思わずに済むよう、前もって言い訳を作ること(セルフ・ハンディキャッピング)。自分の力に自信が持てないときに起きやすい。
  2. 言い訳は心を守るが、成績は下げる。カナダの大学生209人では、この傾向が強い人ほど授業の3回のテストすべてで点が低く、勉強のしかたも表面的だった。
  3. 減らす手がかりとして、「能力は伸ばせる」という短い文章を読んだ後に言い訳づくりが減った実験がある。ただし男子学生101人の実験室の研究で、全体の平均では差が出なかった。

01 悩みの正体試験前に、わざわざ勉強しない理由を作るのはなぜ?

失敗したとき、原因を「自分の能力」ではなく「準備不足」や「体調」のせいにできるからです。自分の力に自信がなく、結果で自分の価値が決まると感じるほど起きやすくなります。

全力で勉強して落ちたら、「自分には力がない」と認めることになります。勉強しないで落ちたなら、「時間がなかっただけ」と思えます。うまくいったときは「勉強しなくても受かった」と、むしろ自信になります。

このように、失敗の原因を能力以外に向けるため、自分で妨げを作ることをセルフ・ハンディキャッピングと呼びます[1][4]。研究の整理では、努力をしない、ぎりぎりまで勉強を延ばす、大事な試験の前に遊びに出かける、といった行動が例に挙げられています[4]。

起きやすいのは、自分を否定されそうな場面で、しかも自分の力がどのくらいかわからないときです[4]。資格試験の前は、まさにこの2つがそろいやすい場面です。

「嫌な気分から逃げる」先延ばしとは重なる部分もありますが、こちらは「失敗の意味を変える」ことが目的です。先延ばし全般の仕組みは勉強を後回しにしてしまうのはなぜ?にまとめています。

02 科学的にわかっていること言い訳づくりは、成績にどう響く?

言い訳づくりの傾向が強い学生ほど、成績が低いことが追跡研究でくり返し報告されています。勉強の習慣が悪くなることが、その理由の一部と考えられています。

BerglasとJones(1978)[1]

大学生に問題を解かせ、全員に「よくできた」と伝えた。解けない問題ばかりだったのに褒められた(成功がまぐれに感じられる)男子学生だけが、再テストの前に「成績を下げる」と説明された薬を選ぶ傾向を示した。2つ目の実験でも、男子では同じ結果がくり返された。

対象: 大学生(2つの実験) / 限界: 女子学生では予想どおりの結果が出なかった。薬は架空のもので、実際の試験勉強の場面ではない。

Zuckermanら(1998)[2]

学生を時間をおいて追跡すると、言い訳づくりの傾向が強い人は、問題から目をそらす対処を多く使い、成績が低かった。成績の低さの一部は、勉強の習慣が悪いことで説明された。傾向が強いと心の状態が悪くなり、心の状態が悪いとさらに傾向が強まる、という悪循環も見られた。

対象: 学生(追跡調査) / 限界: 質問紙と成績の関係を見た研究で、言い訳づくりだけが成績を下げたと断定はできない。

GadboisとSturgeon(2011)[3]

言い訳づくりの傾向が強い学生ほど、自分の力への自信が低く、テストへの不安が強く、勉強のしかたが表面的で、授業の3回のテストすべてで点が低かった。2回目・3回目のテストで、関係がより強くなった。

209人

カナダの大学で心理学の授業を受けていた学生(女性153人、男性56人)。

対象: カナダの大学生209人 / 限界: 傾向が説明した点数の差は「小さいが意味のある」大きさで、成績を決める主な原因ではない。

Törökら(2022)[4]

解けない問題を混ぜた知能テストの練習の後、本番で聞く音楽を「成績を上げる」から「成績を下げる」まで7段階から選ばせた。「能力は伸ばせる」という短い文章を読んだ組と「能力は変わらない」という文章を読んだ組で、全体の平均には差がなかった。もともと「能力は変わらない」と考えていた人では、「伸ばせる」の文章を読んだ後に、成績を下げる音楽を選ぶことが少なかった。

対象: ハンガリーの男子大学生101人(18〜55歳) / 限界: 実験室での1回の実験で、著者らも予備的な研究としている。「能力は伸ばせる」と伝える介入(マインドセット介入)の効果には、別の研究で議論がある。

これらは主に大学生を対象にした研究です。社会人の資格試験では、仕事や家庭の事情で本当に時間が足りないことも多く、勉強できなかったことがすべて言い訳づくりとは限りません。マインドセット介入の効果をめぐる議論は「頭がいいね」より「工夫したね」とほめるべきかにまとめています。

03 今日からできる小さな一歩試験前の言い訳づくりに気づいたら、どうする?

まず自分のパターンを書き出して気づくこと。次に、試験を「能力の判定」ではなく「今の準備の確認」と捉え直し、結果を勉強した量と並べて記録します。

1

自分の「試験前のいつもの行動」を3つ書く

片付け、夜更かし、「やってない」と言う、など。研究で挙げられた行動(努力しない・延ばす・前日に出かける)と見比べると、気づきやすくなります。

所要 3分

2

「この試験で確かめたいこと」を1行で書く

「合格できる力があるか」ではなく、「過去問の第3章が時間内に解けるか」のように、準備の確認として書きます。結果が自分の価値を決めるという感覚が、言い訳づくりの引き金になるためです[4]。

所要 2分

3

点数と勉強した時間を並べて記録する

模試や過去問の点数の横に、その前の週に勉強した時間を書きます。点数を「能力」ではなく「準備の量」と結びつけて見る練習です。

所要 1回1分

04 続けるためのコツ言い訳をしてしまった自分を、責めるべき?

責める必要はありません。言い訳づくりは、自分の力に自信が持てないときに心を守る反応です。責めるより、次の試験までにできる準備を1つ決める方が役に立ちます。

  • 早めに小さく試す。自分の力がわからないほど起きやすいので、本番の前に過去問を1回分解いて、今の位置を知っておきます。
  • 「全然やってない」と言いたくなったら、やったことを1つ言う。周りに予防線を張るより、「第3章までは終わった」と事実を言う方が、あとで結果と準備を結びつけて振り返れます。
  • 落ちた後の振り返りは別の記事で。結果が出た後の立て直しは試験に落ちた後の振り返り、自分を責めてしまうときは勉強で失敗して自分を責めてしまうときを参考にしてください。

不安が強く、眠れない・食べられない状態が続くときは、一人で抱えずに相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。

05よくある質問

試験前に部屋の掃除をしたくなるのはなぜですか?

理由の1つとして、失敗したときに「勉強時間が足りなかった」と思えるよう、前もって言い訳を作る心の働き(セルフ・ハンディキャッピング)が研究されています。自分の力に自信がなく、試験の結果で自分の価値が決まると感じるときに起きやすいとされています。単に勉強が嫌で後回しにしている場合もあります。

「全然勉強してない」と言う人は、本当は勉強しているのですか?

人によります。この記事で紹介した研究は、努力を減らしたり、成績を下げる条件を自分で選んだりする「行動」を調べたものです。口で言うだけの場合に同じことが起きているかは、ここでは確かめていません。言われた側が気にしすぎる必要はありません。

言い訳づくりをすると、成績は下がりますか?

下がる傾向が報告されています。カナダの大学生209人の調査では、この傾向が強い学生ほど授業の3回のテストすべてで点が低く、学生を追跡した別の研究では、勉強の習慣が悪くなることがその一部を説明していました。ただし、成績を決める主な原因というほど大きな差ではありません。

出典

  1. Berglas, S., & Jones, E. E. (1978). Drug choice as a self-handicapping strategy in response to noncontingent success. Journal of Personality and Social Psychology, 36(4), 405-417. https://doi.org/10.1037/0022-3514.36.4.405
  2. Zuckerman, M., Kieffer, S. C., & Knee, C. R. (1998). Consequences of self-handicapping: Effects on coping, academic performance, and adjustment. Journal of Personality and Social Psychology, 74(6), 1619-1628. https://doi.org/10.1037/0022-3514.74.6.1619
  3. Gadbois, S. A., & Sturgeon, R. D. (2011). Academic self-handicapping: Relationships with learning specific and general self-perceptions and academic performance over time. British Journal of Educational Psychology, 81(2), 207-222. https://doi.org/10.1348/000709910X522186
  4. Török, L., Szabó, Z. P., & Orosz, G. (2022). Promoting a growth mindset decreases behavioral self-handicapping among students who are on the fixed side of the mindset continuum. Scientific Reports, 12, 7454. https://doi.org/10.1038/s41598-022-11547-4