やる気・心

SNSで他人の勉強量を見ると焦って手につかないのはなぜ?他人と比べる心理(社会的比較)の研究

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罫線入りのメモ帳と鉛筆
Photo: Jonas Petersson (UU) / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

SNSで「今日は10時間勉強した」「模試でA判定」という投稿を見る。焦るのに、なぜか自分の勉強は手につかない。それは意志が弱いからではありません。人は自分の位置を確かめるために、つい他人と比べます。研究では、比べた相手との差が大きすぎると、やる気が「追いつこう」から「あきらめよう」へ傾きやすいことがわかってきました。

3行でわかる

  1. 人は自分より上の人と比べやすく、比べると自分の能力の見積もりが下がりやすい。60年以上の研究をまとめたメタ分析の結論。
  2. 少し上の相手との比較は「頑張ろう」を強める。差が大きすぎると「あきらめる」気持ちが強まる。日常の5,400を超える比較の場面を調べた研究の結果。
  3. ただしSNSで落ち込むかは人による。10代63人の研究では、SNSを見た後に気分が悪くなったのは10%だった。

01 悩みの正体他人の勉強量が気になってしまうのはなぜ?

自分の実力は、物差しがないと測りにくいからです。人は自分の位置を確かめるために他人と比べます。心理学ではこれを「社会的比較」と呼びます。

独学には、先生もクラスメイトもいません。自分が進んでいるのか遅れているのか、教えてくれる人がいません。だから、SNSで見かけた他人の勉強時間や点数が、つい物差しになります。

ただし、投稿はその人の勉強のすべてではありません。本人が見せることを選んだ一部です。そこと自分の毎日を比べると、差は実際より大きく見えやすくなります。

勉強が手につかない理由は、比較だけではありません。課題の嫌さや、成果までの遠さも関わります。こちらは勉強を後回しにしてしまうのはなぜ?にまとめています。

02 科学的にわかっていること他人と比べると、やる気はどう変わる?

上の人と比べると、自分の評価は下がりやすくなります。相手が少し上ならやる気につながりますが、差が大きすぎるとあきらめにつながります。SNSでの影響の出方は、人によって大きく違います。

Gerberら(2018)[1]

60年以上の社会的比較の研究をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。比べる相手を上か下かの2択で選ばせると、脅かされていない状況では、人は自分より上の相手を選ぶ傾向がはっきりあった。比べた後は、相手が上なら自分の評価が下がる「対比」の反応が圧倒的に多かった。いちばん強く影響を受けたのは、自分の能力の見積もりだった。

対象: 実験室での研究が中心 / 限界: 「比べない」条件を置いた研究は少ないと、著者ら自身が述べている。

Dielら(2021)[2]

日常生活で起きた5,400を超える比較の場面を、その時々に記録してもらった研究(計画を事前に登録)。相手が少し上のときは「もっと頑張ろう」という気持ちが強まった。差が極端に大きくなると頑張る気持ちは弱まり、「あきらめる」気持ちが強まった。自分の力で変えられると感じている分野や、大事だと思う分野では、頑張る方向の動きが強かった。下の相手と比べると、力を抜く方向に動いた。

対象: 日常のさまざまな比較の場面(勉強に限らない) / 限界: 記録から読み取った関係で、比較を操作した実験ではない。

Yoonら(2019)[3]

SNSの使い方と抑うつ(気分の落ち込み)の関係を調べたメタ分析。SNSに使う時間(33本の論文、15,881人)やチェックの回数は、抑うつと小さな関連があった。SNS上で上の人と比べる傾向(5本、2,298人)は中くらいの関連で、使う時間より強く結びついていた。

対象: Facebookなどの利用者を調べた研究 / 限界: 相関の研究で、比べるから落ち込むのか、落ち込んでいるから比べるのかは区別できない。比較を扱った研究は少ない。

Verduynら(2015)[4]

実験室で、Facebookを見るだけの「受け身の使い方」をするよう指示された人は、積極的に使った人より、その後に気分が下がった。日常の記録を使った2つ目の研究でも同じ結果が出た。受け身の利用はうらやましさを強め、それを通して気分を下げていた。

対象: 実験室の実験と、日常の記録の2つの研究 / 限界: 後の研究では、見るだけの利用で気分が下がる人ばかりではないことが示された[5]。

Beyensら(2020)[5]

オランダの中等学校の生徒63人(平均15歳)に、1週間、1日6回、SNSの使い方と気分を答えてもらった(計2,155回)。見るだけのSNS利用の後、44%は気分が変わらず、46%は良くなり、10%は悪くなった。

対象: オランダ南部の1つの学校の生徒 / 限界: 人数が少なく10代だけ。大人の独学者に同じ割合が当てはまるかはわからない。

比べる相手と、起きやすいこと(研究[2][3]をもとに整理)

比べる相手起きやすいこと
少し上の相手「もっと頑張ろう」が強まる[2]
はるかに上の相手頑張る気持ちが弱まり、あきらめやすくなる[2]
下の相手安心して、力を抜きやすくなる[2]
SNSでいつも上の人を見る気分の落ち込みと結びつく(相関)[3]

ここで紹介した研究は、実験室の短い課題や、勉強に限らない日常の比較を調べたものです。何か月も一人で続ける独学で同じことが起きると確かめた研究ではありません。仕組みを知る手がかりとして読んでください。

03 今日からできる小さな一歩SNSで比べて焦ったとき、どうすればいい?

SNSを無理にやめるより、比べる相手と物差しを変えます。焦ったら差の大きさに気づき、比べる相手を「先週の自分」に替え、次の1回の行動に小さく直します。

1

焦ったら、誰と何を比べたかを1行書く

「毎日10時間の人と、週5時間の自分を比べた」のように書きます。差が極端に大きい比較だと気づくだけで、あきらめに傾いていると自覚しやすくなります[2]。

所要 1分

2

比べる相手を「先週の自分」に替える

勉強の記録を開き、先週と今週を並べます。差が小さい相手なら、頑張る方向の気持ちが残りやすいという研究[2]からの工夫です。記録のつけ方は勉強の記録の研究を参考にしてください。

所要 3分

3

勉強を始める前はSNSを開かない

見るだけの利用の後に気分が下がる人がいます[4]。自分がそのタイプかは、見た後に勉強が手につくかで確かめます。見るのは勉強を終えてからにします。

所要 0分(決めるだけ)

2の「先週の自分と比べる」は、研究の結果から考えた工夫です。この方法そのものの効果を確かめた研究ではありません。

04 続けるためのコツ比べて落ち込む日が続くときは?

比べてしまうのは、人の自然な心の働きです。比べた自分を責めずに、比べる相手を選び直します。つらさが長く続くときは、一人で抱えずに相談します。

  • 比べるのをゼロにしようとしない。人は上の相手を選んで比べる傾向があります[1]。やめるより、相手を選び直す方が現実的です。
  • 見る相手を減らす。差が大きすぎて焦るアカウントは、勉強期間だけミュートします。
  • 落ち込んだ自分を責めない。責める気持ちとの付き合い方は自分への思いやり(セルフ・コンパッション)の研究にまとめています。
  • 疲れ切っているなら休む。何をしてもやる気が戻らないときは勉強に疲れ切ったときの立て直し方も読んでください。

気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない日が続くなど、つらさが強いときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談先に連絡してください。

05よくある質問

勉強垢やSNSを見るのは、やめた方がいい?

一律にやめる必要はありません。オランダの10代63人の研究では、受け身でSNSを見た後に気分が良くなった人が46%、変わらない人が44%、悪くなった人が10%でした。見た後に手がつかなくなると気づいた人だけ、見る時間や相手を減らすのが現実的です。

自分より上の人と比べるのは悪いこと?

悪いとは限りません。日常の比較を記録した研究では、相手が少し上のときは「もっと頑張ろう」という気持ちが強まりました。問題は差が大きすぎるときで、頑張る気持ちが弱まり、あきらめる気持ちが強まりました。

下の人と比べて安心するのはどう?

気分は楽になりますが、同じ研究では、下の相手と比べたときは力を抜く方向の動きが見られました。安心は一時的に役立っても、勉強の量を保つ助けにはなりにくいと考えられます。

出典

  1. Gerber, J. P., Wheeler, L., & Suls, J. (2018). A social comparison theory meta-analysis 60+ years on. Psychological Bulletin, 144(2), 177–197. https://doi.org/10.1037/bul0000127
  2. Diel, K., Grelle, S., & Hofmann, W. (2021). A motivational framework of social comparison. Journal of Personality and Social Psychology, 120(6), 1415–1430. https://doi.org/10.1037/pspa0000204
  3. Yoon, S., Kleinman, M., Mertz, J., & Brannick, M. (2019). Is social network site usage related to depression? A meta-analysis of Facebook–depression relations. Journal of Affective Disorders, 248, 65–72. https://doi.org/10.1016/j.jad.2019.01.026
  4. Verduyn, P., Lee, D. S., Park, J., Shablack, H., Orvell, A., Bayer, J., Ybarra, O., Jonides, J., & Kross, E. (2015). Passive Facebook usage undermines affective well-being: Experimental and longitudinal evidence. Journal of Experimental Psychology: General, 144(2), 480–488. https://doi.org/10.1037/xge0000057
  5. Beyens, I., Pouwels, J. L., van Driel, I. I., Keijsers, L., & Valkenburg, P. M. (2020). The effect of social media on well-being differs from adolescent to adolescent. Scientific Reports, 10, 10763. https://doi.org/10.1038/s41598-020-67727-7