やる気・心

テストで頭が真っ白になるのはなぜか。試験不安と「不安を書き出す」研究

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Pink Pearl eraser from Paper Mate.
Photo: ZooFari / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

家ではちゃんと解けたのに、本番で問題を見た瞬間に頭が真っ白になる。それは勉強不足や気持ちの弱さのせいとは限りません。研究では、不安が「目の前の問題に注意を向け続ける力」を奪うことがわかっています。「試験前に不安を書き出すと点数が上がる」という有名な研究もありますが、その後の大規模な追試では再現されませんでした。わかっていることと、まだ確かでないことを分けて紹介します。

3行でわかる

  1. 頭が真っ白になるのは、心配ごとに注意が奪われ、問題に集中する力が使いにくくなるためと説明されている。
  2. 238の研究をまとめた分析では、試験不安が強いほど成績が低い傾向があった。ただし関係の強さは小〜中程度。
  3. 「試験前に10分、不安を書き出す」は2011年の研究で効果が出たが、2018年の大規模な追試では再現されなかった。

01頭が真っ白になる正体は「注意の取り合い」

頭が真っ白になるのは、知識が消えたからではありません。「落ちたらどうしよう」という心配に注意が引っぱられ、問題を考えるための力が足りなくなるからだと説明されています。

Eysenckら(2007)の「注意制御理論」によると、不安は、目標に向けて注意をコントロールする働きを弱めます[1]。代わりに、気になる刺激や心配ごとに注意が向きやすくなります。

とくに弱まるのは2つの働きです。1つは、関係のない考えを押さえる働き。もう1つは、注意を切り替える働きです。「わからない問題から次へ移れない」「同じ心配がぐるぐる回る」のは、この状態に近いと考えられます。

ただし同じ理論は、不安があっても、より多くの努力で補えば成績自体は保たれることがある、とも述べています[1]。不安があること自体は、失敗が決まったという意味ではありません。

02科学的にわかっていること

試験不安と成績の低さには関係があります。一方、「試験前に不安を書き出す」方法は、最初の研究では効果が出たものの、その後の追試では効果が確認されていません。現時点では「条件しだい、確かでない」方法です。

von der Embseら(2018)[2]

1988年以降の238の研究をまとめたメタ分析(複数の研究を統合して分析する方法)。試験不安が強いほど、標準テスト・大学入試・成績平均が低い傾向があった。テストが難しいと感じることや、結果の重大さも、不安の強さと関係していた。

対象: 1988年以降に発表された238の研究 / 限界: 関係の強さは小〜中程度。「関係がある」ことを示すもので、不安が成績を下げる原因だと直接示したものではない。

RamirezとBeilock(2011)[3][4]

試験の直前に、テストへの不安や気持ちを10分書き出すと、成績が上がった。実験室では大学生20人がプレッシャーのかかる計算テストを受け、書かなかった組は正答率が12%下がり、書いた組は5%上がった。米国の9年生(日本の中学3年生にあたる学年)の生物の期末試験でも、不安の強い生徒で効果が見られた。

対象: 実験室2つ(大学生)と教室2つ(米国の9年生)の計4実験 / 限界: 実験室の研究は人数が少ない。数値は大学の広報記事[4]による。

Camererら(2018)[5]

2010〜2015年にNatureとScienceに載った社会科学の実験21本を、元の約5倍の人数で追試したプロジェクト。同じ向きの効果が確認できたのは13本(62%)で、RamirezとBeilockの研究は再現されなかった。

対象: 21本の実験の追試(事前に分析方法を登録) / 限界: 追試したのは元の4つの実験のうち1つ(実験2)だけ。2回の追試はどちらも効果が見られなかった(Myersら2021による整理[6])。

Myersら(2021)[6]

米国の大学で心理学の授業を受けた学生173人が、4回の本番の試験の前に、8分の書き出しと別の作文を交互に行った。不安の強さも試験の点数(書き出し後73%、別の作文後74%)も、ほとんど差がなかった。

対象: 米アイオワ州立大学の学生173人 / 限界: 1つの授業での結果で、すべての教室に当てはまるとは限らない。

Shenら(2018)[7]

試験不安の強い中国の高校生75人で、30日間、毎日20分、前向きな気持ちを書いた組は、その日の出来事を書いただけの組より、試験不安の得点が低くなった。

対象: 中国の高校生75人 / 限界: 「直前の書き出し」とは別の方法で、測ったのは不安の得点。試験の点数が上がったかは調べていない。

まとめると、試験直前の書き出しで点数が上がるかどうかは、今のところ確かではありません。研究の多くは大学生や高校生の学校の試験が対象です。資格試験を一人で受ける社会人に同じ結果が当てはまるかは、わかっていません。

03今日からできる小さな一歩

点数を上げる決め手はまだありません。それでも「心配が注意を奪う」という仕組みを知っておくと、真っ白になったときの立て直し方を前もって決められます。

1

本番形式で解く練習を週1回入れる

過去問や模試を時間を計って解きます。難しさや結果の重さを感じるほど不安は強い傾向があるので、本番の難しさを前もって知っておきます。

所要 30〜60分

2

「真っ白になったら」の手順を1文で決める

「手が止まったら、印を付けて次の問題へ進む」と書いておきます。注意の切り替えが苦手になる状態への、前もっての備えです。

所要 2分

3

試験前の書き出しは「試すなら」程度に

頭の中の心配を紙に書くと落ち着く人もいます。ただし点数が上がる保証はないので、合わなければやめて大丈夫です。

所要 5分

04続けるためのコツ

不安をゼロにすることを目標にしないのがコツです。不安があっても解ける手順を、ふだんの勉強の中で少しずつ増やしていきます。

  • 「緊張する自分はだめだ」と責めない。不安は、試験を大事に思っている証拠でもある。
  • 覚えた内容を本番で取り出しやすくするには、読み返すより思い出す練習が向いている。
  • 「わかったつもり」で本番に気づくのを防ぐには、わかったつもりの研究も参考になる。
  • 前日は詰め込みより眠ることも大切。睡眠と記憶の記事も参考に。

試験のたびに眠れない、体調を崩すなど、つらさが続くときは一人で抱えず相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などで話を聞いてもらえます。

05よくある質問

テストで頭が真っ白になるのはなぜですか?

心配ごとに注意が引っぱられ、問題に集中する力が使いにくくなるためと説明されています。Eysenckら(2007)の注意制御理論では、不安は目の前の課題に注意を向け続ける働きを弱めるとされます。能力が足りないからではありません。

試験の前に不安を書き出すと点数は上がりますか?

確かとは言えません。RamirezとBeilock(2011)では10分の書き出しで成績が上がりましたが、2018年の大規模な追試では効果が再現されず、173人の大学生の教室実験でも点数は変わりませんでした。気持ちを整える工夫の一つとして試す程度が現実的です。

試験不安が強いと成績は下がるのですか?

関係はあります。238の研究をまとめたvon der Embseら(2018)の分析では、試験不安が強いほど入試や成績平均が低い傾向がありました。ただし関係の強さは小〜中程度で、不安があれば必ず失敗するわけではありません。

勉強法の早見表で「試験の直前に不安を書き出す」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Eysenck, M. W., Derakshan, N., Santos, R., & Calvo, M. G. (2007). Anxiety and cognitive performance: Attentional control theory. Emotion, 7(2), 336–353. https://doi.org/10.1037/1528-3542.7.2.336
  2. von der Embse, N., Jester, D., Roy, D., & Post, J. (2018). Test anxiety effects, predictors, and correlates: A 30-year meta-analytic review. Journal of Affective Disorders, 227, 483–493. https://doi.org/10.1016/j.jad.2017.11.048
  3. Ramirez, G., & Beilock, S. L. (2011). Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science, 331(6014), 211–213. https://doi.org/10.1126/science.1199427
  4. University of Chicago News (2011年1月13日). Writing about worries eases anxiety and improves test performance(大学の広報記事。査読論文ではない). https://news.uchicago.edu/story/writing-about-worries-eases-anxiety-and-improves-test-performance
  5. Camerer, C. F., Dreber, A., Holzmeister, F., et al. (2018). Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015. Nature Human Behaviour, 2, 637–644. https://doi.org/10.1038/s41562-018-0399-z
  6. Myers, S. J., Davis, S. D., & Chan, J. C. K. (2021). Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom? Cognitive Research: Principles and Implications, 6, 44. https://doi.org/10.1186/s41235-021-00309-x
  7. Shen, L., Yang, L., Zhang, J., & Zhang, M. (2018). Benefits of expressive writing in reducing test anxiety: A randomized controlled trial in Chinese samples. PLOS ONE, 13(2), e0191779. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0191779