テストで頭が真っ白になるのはなぜか。試験不安と「不安を書き出す」研究

家ではちゃんと解けたのに、本番で問題を見た瞬間に頭が真っ白になる。それは勉強不足や気持ちの弱さのせいとは限りません。研究では、不安が「目の前の問題に注意を向け続ける力」を奪うことがわかっています。「試験前に不安を書き出すと点数が上がる」という有名な研究もありますが、その後の大規模な追試では再現されませんでした。わかっていることと、まだ確かでないことを分けて紹介します。
3行でわかる
- 頭が真っ白になるのは、心配ごとに注意が奪われ、問題に集中する力が使いにくくなるためと説明されている。
- 238の研究をまとめた分析では、試験不安が強いほど成績が低い傾向があった。ただし関係の強さは小〜中程度。
- 「試験前に10分、不安を書き出す」は2011年の研究で効果が出たが、2018年の大規模な追試では再現されなかった。
01頭が真っ白になる正体は「注意の取り合い」
頭が真っ白になるのは、知識が消えたからではありません。「落ちたらどうしよう」という心配に注意が引っぱられ、問題を考えるための力が足りなくなるからだと説明されています。
Eysenckら(2007)の「注意制御理論」によると、不安は、目標に向けて注意をコントロールする働きを弱めます[1]。代わりに、気になる刺激や心配ごとに注意が向きやすくなります。
とくに弱まるのは2つの働きです。1つは、関係のない考えを押さえる働き。もう1つは、注意を切り替える働きです。「わからない問題から次へ移れない」「同じ心配がぐるぐる回る」のは、この状態に近いと考えられます。
ただし同じ理論は、不安があっても、より多くの努力で補えば成績自体は保たれることがある、とも述べています[1]。不安があること自体は、失敗が決まったという意味ではありません。
02科学的にわかっていること
試験不安と成績の低さには関係があります。一方、「試験前に不安を書き出す」方法は、最初の研究では効果が出たものの、その後の追試では効果が確認されていません。現時点では「条件しだい、確かでない」方法です。
von der Embseら(2018)[2]
1988年以降の238の研究をまとめたメタ分析(複数の研究を統合して分析する方法)。試験不安が強いほど、標準テスト・大学入試・成績平均が低い傾向があった。テストが難しいと感じることや、結果の重大さも、不安の強さと関係していた。
対象: 1988年以降に発表された238の研究 / 限界: 関係の強さは小〜中程度。「関係がある」ことを示すもので、不安が成績を下げる原因だと直接示したものではない。
RamirezとBeilock(2011)[3][4]
試験の直前に、テストへの不安や気持ちを10分書き出すと、成績が上がった。実験室では大学生20人がプレッシャーのかかる計算テストを受け、書かなかった組は正答率が12%下がり、書いた組は5%上がった。米国の9年生(日本の中学3年生にあたる学年)の生物の期末試験でも、不安の強い生徒で効果が見られた。
対象: 実験室2つ(大学生)と教室2つ(米国の9年生)の計4実験 / 限界: 実験室の研究は人数が少ない。数値は大学の広報記事[4]による。
Camererら(2018)[5]
2010〜2015年にNatureとScienceに載った社会科学の実験21本を、元の約5倍の人数で追試したプロジェクト。同じ向きの効果が確認できたのは13本(62%)で、RamirezとBeilockの研究は再現されなかった。
対象: 21本の実験の追試(事前に分析方法を登録) / 限界: 追試したのは元の4つの実験のうち1つ(実験2)だけ。2回の追試はどちらも効果が見られなかった(Myersら2021による整理[6])。
Myersら(2021)[6]
米国の大学で心理学の授業を受けた学生173人が、4回の本番の試験の前に、8分の書き出しと別の作文を交互に行った。不安の強さも試験の点数(書き出し後73%、別の作文後74%)も、ほとんど差がなかった。
対象: 米アイオワ州立大学の学生173人 / 限界: 1つの授業での結果で、すべての教室に当てはまるとは限らない。
Shenら(2018)[7]
試験不安の強い中国の高校生75人で、30日間、毎日20分、前向きな気持ちを書いた組は、その日の出来事を書いただけの組より、試験不安の得点が低くなった。
対象: 中国の高校生75人 / 限界: 「直前の書き出し」とは別の方法で、測ったのは不安の得点。試験の点数が上がったかは調べていない。
まとめると、試験直前の書き出しで点数が上がるかどうかは、今のところ確かではありません。研究の多くは大学生や高校生の学校の試験が対象です。資格試験を一人で受ける社会人に同じ結果が当てはまるかは、わかっていません。
03今日からできる小さな一歩
点数を上げる決め手はまだありません。それでも「心配が注意を奪う」という仕組みを知っておくと、真っ白になったときの立て直し方を前もって決められます。
本番形式で解く練習を週1回入れる
過去問や模試を時間を計って解きます。難しさや結果の重さを感じるほど不安は強い傾向があるので、本番の難しさを前もって知っておきます。
所要 30〜60分
「真っ白になったら」の手順を1文で決める
「手が止まったら、印を付けて次の問題へ進む」と書いておきます。注意の切り替えが苦手になる状態への、前もっての備えです。
所要 2分
試験前の書き出しは「試すなら」程度に
頭の中の心配を紙に書くと落ち着く人もいます。ただし点数が上がる保証はないので、合わなければやめて大丈夫です。
所要 5分
04続けるためのコツ
不安をゼロにすることを目標にしないのがコツです。不安があっても解ける手順を、ふだんの勉強の中で少しずつ増やしていきます。
- 「緊張する自分はだめだ」と責めない。不安は、試験を大事に思っている証拠でもある。
- 覚えた内容を本番で取り出しやすくするには、読み返すより思い出す練習が向いている。
- 「わかったつもり」で本番に気づくのを防ぐには、わかったつもりの研究も参考になる。
- 前日は詰め込みより眠ることも大切。睡眠と記憶の記事も参考に。
試験のたびに眠れない、体調を崩すなど、つらさが続くときは一人で抱えず相談してください。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などで話を聞いてもらえます。
05よくある質問
テストで頭が真っ白になるのはなぜですか?
心配ごとに注意が引っぱられ、問題に集中する力が使いにくくなるためと説明されています。Eysenckら(2007)の注意制御理論では、不安は目の前の課題に注意を向け続ける働きを弱めるとされます。能力が足りないからではありません。
試験の前に不安を書き出すと点数は上がりますか?
確かとは言えません。RamirezとBeilock(2011)では10分の書き出しで成績が上がりましたが、2018年の大規模な追試では効果が再現されず、173人の大学生の教室実験でも点数は変わりませんでした。気持ちを整える工夫の一つとして試す程度が現実的です。
試験不安が強いと成績は下がるのですか?
関係はあります。238の研究をまとめたvon der Embseら(2018)の分析では、試験不安が強いほど入試や成績平均が低い傾向がありました。ただし関係の強さは小〜中程度で、不安があれば必ず失敗するわけではありません。
勉強法の早見表で「試験の直前に不安を書き出す」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Eysenck, M. W., Derakshan, N., Santos, R., & Calvo, M. G. (2007). Anxiety and cognitive performance: Attentional control theory. Emotion, 7(2), 336–353. https://doi.org/10.1037/1528-3542.7.2.336
- von der Embse, N., Jester, D., Roy, D., & Post, J. (2018). Test anxiety effects, predictors, and correlates: A 30-year meta-analytic review. Journal of Affective Disorders, 227, 483–493. https://doi.org/10.1016/j.jad.2017.11.048
- Ramirez, G., & Beilock, S. L. (2011). Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom. Science, 331(6014), 211–213. https://doi.org/10.1126/science.1199427
- University of Chicago News (2011年1月13日). Writing about worries eases anxiety and improves test performance(大学の広報記事。査読論文ではない). https://news.uchicago.edu/story/writing-about-worries-eases-anxiety-and-improves-test-performance
- Camerer, C. F., Dreber, A., Holzmeister, F., et al. (2018). Evaluating the replicability of social science experiments in Nature and Science between 2010 and 2015. Nature Human Behaviour, 2, 637–644. https://doi.org/10.1038/s41562-018-0399-z
- Myers, S. J., Davis, S. D., & Chan, J. C. K. (2021). Does expressive writing or an instructional intervention reduce the impacts of test anxiety in a college classroom? Cognitive Research: Principles and Implications, 6, 44. https://doi.org/10.1186/s41235-021-00309-x
- Shen, L., Yang, L., Zhang, J., & Zhang, M. (2018). Benefits of expressive writing in reducing test anxiety: A randomized controlled trial in Chinese samples. PLOS ONE, 13(2), e0191779. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0191779


