やる気・心

「『自分はできる』と唱えるとやる気が出る」は本当?前向きな自己暗示が裏目に出た実験と、その追試(効く・効かないの判定)

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部屋の壁にかかった鏡
Photo: ZemplinTemplar / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

試験の前に「自分はできる、自分はできる」と心の中で唱える。勉強の本や動画でよくすすめられる方法です。研究の判定は「当てにならない」です。自信の低い人がこうした言葉をくり返すと、かえって気分が悪くなったという2009年の実験は有名ですが、2020年の追試では再現されませんでした。そして、唱えるとやる気や自信が上がるという確かな根拠も、見つかっていません。

3行でわかる

  1. 「私は愛される人間だ」とくり返した実験(Woodら、2009年)では、自信の低い人はかえって気分が悪くなり、自信の高い人は少しだけ気分が上がった。
  2. この結果は、約225人と約237人で確かめ直した2020年の追試で再現されなかった。唱える組と唱えない組で、気分や自己評価に差が出なかった。
  3. 研究で支持されているのは、「次に何をするか」を言葉にする声かけ。スポーツの32件の研究のまとめでは、自分への声かけで成績が上がった(効果量0.48)。

01 通説の中身「自分はできる」と唱えると、自信がつくの?

「前向きな言葉をくり返すと、自信がつき、やる気が出る」という考え方です。多くの人が使い、効くと信じていることは、Woodら(2009)のアンケートでも確かめられています[1]。

「自分はできる」「私は合格する」のように、自分についての前向きな言葉をくり返す方法は、アファメーション(肯定的な宣言)とも呼ばれます。手帳に書く、鏡の前で言う、試験の前に心の中で唱える、などのやり方があります。

ただ、Woodらは論文の要旨で、こうした言葉が気分や自己評価を上げるという効果は、それまで確かめられていなかったと書いています[1]。広く信じられていることと、研究で確かめられていることは、別の話です。

なお、似た名前の「自己肯定化」は、自分にとって大切な価値(家族・友情など)について文章を書く方法です。「自分はできる」と唱える方法とは中身が違うので、この記事では分けて扱います。

02 科学的にわかっていること前向きな自己暗示は、本当に効く?

「自分はできる」とくり返すだけで自信ややる気が上がる、という確かな証拠はありません。一方、次の手順を言葉にする声かけや、自分の名前で呼びかける声かけには、効果を示した研究があります。

Wood、Perunovic、Lee(2009)[1]

アンケート1つと実験2つの研究。「私は愛される人間だ(I'm a lovable person)」とくり返した人のうち、自信(自尊心)の低い人は、くり返さなかった人より気分が悪くなった。自信の高い人は気分が上がったが、その差は小さかった。

対象: 2つの実験で、自信の高い人と低い人を比べた / 限界: 測ったのは、言葉をくり返した直後の気分と自己評価だけ。勉強の成績ややる気は測っていない。この記事では論文の要旨で内容を確認した。

FlynnとBordieri(2020)[2]

Woodらの実験を、2つの研究(約225人と約237人)で確かめ直した。前向きな言葉をくり返した組とそうでない組で、気分・その場の自己評価に差は出なかった。自信の低い人で悪化するという結果も再現されなかった。研究2では、目標を達成できたかも調べたが、差はなかった。

対象: 2つの研究の参加者 / 限界: 「害になる」ことは再現されなかったが、「効く」ことも示されなかった。この記事では論文の要旨で内容を確認した。

Hatzigeorgiadisら(2011)[3]

スポーツで自分に声をかける方法を調べた32件の研究(62の効果量)のメタ分析(多くの研究をまとめて分析する方法)。成績を上げる効果は中くらい(効果量0.48)だった。細かい動きの課題や、慣れていない課題で効果が大きかった。細かい動きの課題では、「ひじを伸ばす」のような指示の声かけが、「がんばれ」のような気持ちを上げる声かけより効いた。

対象: スポーツの課題 / 限界: 勉強での効果は直接は調べていない。声かけを練習してから使った研究ほど効果が大きかった。

Krossら(2014)[4]

7つの研究(合計585人)。緊張する場面の前に、「私は」ではなく自分の名前や「あなた」で自分に語りかけた人は、人前で話す課題などで第三者からの評価が高く、不安も小さかった。この結果は、もともと人前が苦手な人でも変わらなかった。

対象: 7つの研究(合計585人) / 限界: 試験や勉強そのものではなく、人前で話すなどの緊張場面での実験。この記事では論文の要旨で内容を確認した。

Hanselmanら(2017)、Serra-Garciaら(2020)[5][6]

自分の大切な価値について書く「自己肯定化」は、学校の成績の差を縮めると期待されてきた。しかし、前に効果が出た学校で同じ手順をくり返した大規模な追試では、効果は見られなかった(効果量0.10より大きい効果は否定できた)[5]。科学の成績の男女差を15分の介入で縮めたとされた2010年の結果も、データを分析し直すと、女子学生の成績はよくなっていなかった[6]。

対象: 学校での大規模な追試と、過去の研究データの分析し直し / 限界: 「自分はできる」と唱える方法とは別の方法。効く場面がある可能性は残る。

よく言われること研究での判定
「自分はできる」と唱えると、自信がつく当てにならない。効くことを示した研究がない[1][2]
自信の低い人が唱えると、逆効果になる当てにならない。2009年の結果は追試で再現されなかった[2]
次の手順を言葉にする声かけは効く条件しだい。スポーツでは効果あり[3]。勉強では未確認
自分の名前で語りかけると、緊張に強くなる条件しだい。人前で話す場面などで効果あり[4]

ここで紹介した実験は、大学生が数分間、言葉をくり返したり語りかけたりした直後を測ったものです。社会人が何か月も独学を続けるなかで、毎日唱えることの効果を確かめた研究は見つかりませんでした。

03 今日からできる小さな一歩「できる」と唱える代わりに、何と声をかける?

「できる」と唱えて気分が重くなるなら、次にやる手順を短い言葉にします。緊張するときは、自分の名前や「あなた」で呼びかけて、その手順を言います。

1

次にやることを、5〜10字の言葉にする

「できる」の代わりに、「まず例題を1問」「線を引いて読む」のように、手の動きがわかる言葉にします。スポーツでは、細かい作業ほど指示の声かけが効いていました[3]。

所要 1分

2

緊張したら、自分の名前で呼びかける

試験の前なら、「〇〇さん、最初の5分で全体を見よう」と心の中で言います。言い換えの例は、不安なときの「声かけ」言い換え表にまとめています。

所要 30秒

3

声かけを、ふだんの勉強で練習しておく

本番だけで使うより、練習で使ってからの方が効果が大きい傾向がありました[3]。問題集を解く前に、毎回同じ言葉を言ってから始めます。

所要 1日10秒

04 続けるためのコツ自信が持てないときは、どうする?

言葉で自信を作ろうとするより、小さく「できた」を積む方が確かです。できたことを記録し、失敗した日は自分を責めずに次の一手を決めます。

不安やつらさが長く続くときは、一人で抱えず、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などに相談してください。

05よくある質問

「自分はできる」と唱えるのは、やめた方がいい?

やめなければいけない根拠はありません。自信の低い人で気分が悪化した実験はありますが、追試では再現されませんでした。ただ、効くという確かな根拠もありません。唱えて気分が重くなるなら、次にやる手順を言葉にする声かけに変える方が、研究に合っています。

アファメーション(肯定的な宣言)を毎朝書くのは効く?

「自分は〜だ」と書き続けて自信や成績が上がるかを、きちんと確かめた研究は見つかりませんでした。似た方法として、自分の大切な価値を書く「自己肯定化」の研究がありますが、学校での効果は確かめ直しで出ないことが多く、はっきりしていません。

試験の直前に緊張したら、何と声をかければいい?

「落ち着け」「できる」より、「〇〇さん、まず1問目の条件に線を引こう」のように、自分の名前や「あなた」で呼びかけ、次の行動を言う方法があります。名前で呼びかける声かけで、人前で話す課題などの緊張が和らいだ実験があります。

勉強法の早見表で「「自分はできる」と唱える自己暗示」の判定を見る
ほかの勉強法も60種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Wood, J. V., Perunovic, W. Q. E., & Lee, J. W. (2009). Positive self-statements: Power for some, peril for others. Psychological Science, 20(7), 860–866. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2009.02370.x
  2. Flynn, M. K., & Bordieri, M. J. (2020). On the failure to replicate past findings regarding positive affirmations and self-esteem. Journal of Contextual Behavioral Science, 16, 49–61. https://doi.org/10.1016/j.jcbs.2020.03.003
  3. Hatzigeorgiadis, A., Zourbanos, N., Galanis, E., & Theodorakis, Y. (2011). Self-talk and sports performance: A meta-analysis. Perspectives on Psychological Science, 6(4), 348–356. https://doi.org/10.1177/1745691611413136
  4. Kross, E., Bruehlman-Senecal, E., Park, J., et al. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters. Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304–324. https://doi.org/10.1037/a0035173
  5. Hanselman, P., Rozek, C. S., Grigg, J., & Borman, G. D. (2017). New evidence on self-affirmation effects and theorized sources of heterogeneity from large-scale replications. Journal of Educational Psychology, 109(3), 405–424. https://doi.org/10.1037/edu0000141
  6. Serra-Garcia, M., Hansen, K. T., & Gneezy, U. (2020). Can short psychological interventions affect educational performance? Revisiting the effect of self-affirmation interventions. Psychological Science, 31(7), 865–872. https://doi.org/10.1177/0956797620923587