勉強をサボった・試験に失敗した自分を責めてしまう。やる気を取り戻すには?自分への思いやり(セルフ・コンパッション)の研究

やると決めた勉強をサボってしまった。試験や模試の結果が悪かった。そんなとき「自分はだめだ」と責めるほど、次の一歩が重くなります。研究の答えは「責めるより、失敗を認めて自分に思いやりを向けた方が、次の勉強に向かいやすい」です。甘やかしではなく、立て直しのための考え方です。
3行でわかる
- 4つの実験で、失敗の後に自分へ思いやりを向けた人は、自信を持たせる言葉をかけられた人や何もしなかった人より、弱点を直したい気持ちが強く、難しいテストに落ちた後の勉強に多くの時間を使った。
- 先延ばしした自分を許せた大学1年生ほど、次の試験までの嫌な気分が少なく、次の試験前の先延ばしも少なかった。ただし成績まで上がるかは、はっきりしていない。
- 立て直しは、①事実だけを1行で書く ②友だちにかける言葉を自分に書く ③原因を「変えられる行動」で1つ書く ④24時間以内に10分だけ勉強する ⑤3日後に振り返る、の5つ。
01 悩みの正体自分を責めると、なぜ次の勉強が重くなる?
自分を責めると嫌な気分が長引き、その気分から逃げるために勉強をさらに避けやすくなります。責めることが「次はやる」力になるとは限りません。
サボった後や試験に落ちた後、「反省しないとまた同じことをする」と考えて、自分を強く責める人は少なくありません。けれど、先延ばしの研究をまとめた論文では、先延ばしをくり返す人ほど自分への思いやりが低く、それが先延ばしとストレスの結びつきを説明していたと紹介されています[3]。
ここでいう自分への思いやり(セルフ・コンパッション)は、自分の欠点やつまずきに、やさしく、受け入れるように、「誰にでもあること」として落ち着いて向き合うことです[3]。失敗をなかったことにしたり、言い訳をしたりすることとは違います。試験の後の答案の直し方は試験に落ちた後の立て直しの記事で扱っています。この記事では、その前の「気持ちの立て直し」を扱います。
02 科学的にわかっていること自分を責めないと、もっとサボるようになる?
実験では逆で、失敗を受け入れて自分に思いやりを向けた人の方が、改善に向けて動きました。ただし短時間の実験が中心で、成績が上がるかまでは確かめられていません。
BreinesとChen(2012)[1]
4つの実験で、自分に思いやりを向ける条件を、自信を高める言葉の条件や、何もしない・楽しいことを考える条件と比べた。思いやりの条件の人は、自分の弱点は変えられると考え、弱点を直したい気持ちが強かった。難しいテストに一度落ちた後は、次のテストの勉強に多くの時間を使った。著者らは「逆説的だが、失敗を受け入れる方が、自分をよくしようとする気持ちを高めるのかもしれない」とまとめている。
対象: 4つの実験の参加者 / 限界: 1回きりの短い実験。勉強に使った時間を測ったもので、次のテストの点が上がったかは示していない。調べた範囲では、同じ手順での直接の追試は見つからなかった。
Wohlら(2010)[2]
カナダの大学1年生を、1回目と2回目の中間試験にわたって追った。1回目の試験の勉強を先延ばしした自分を許せた学生ほど、試験の間の嫌な気分が少なく、2回目の試験前の先延ばしが少なかった。
対象: カナダの大学1年生 / 限界: 質問紙で聞いた調査で、許したことが先延ばしを減らした原因だとは言い切れない。
Sobhaniniaら(2026)[4]
大学生を対象に、自分への思いやりを育てるプログラムを試した11のランダム化比較試験(合計803人)をまとめた。瞑想や書く練習、オンラインの講座など3〜8週間のプログラムで、不安(g = −0.85)と落ち込み(g = −0.69)が対照群より減った。
対象: 19〜28歳の大学生803人 / 限界: 小さな研究が多く、追跡期間が短い。証拠の確かさは「中程度」。勉強の量や成績は調べていない。
Consiglioら(2026)[5]
オランダの1つの大学で、医学生117人を学士課程の間追った。最初の時点で自分への思いやりが高い学生は、学習への熱意も高かった(β = 0.58)。一方で、思いやりが熱意を通して成績を上げる流れは確かめられなかった。著者らは、本人の心の持ち方だけでなく、学ぶ環境も合わせて考える必要があるとしている。
対象: オランダの1つの大学の医学生117人 / 限界: 質問紙と成績の関連を見た研究で、実験ではない。
失敗の後に浮かびやすい考えと、研究から言えることを並べました。
| 失敗の後に浮かぶ考え | 研究から言えること |
|---|---|
| 厳しく反省しないと、またサボる | 自分を許せた学生ほど、次の先延ばしが少なかった[2] |
| 自分に甘くすると、やる気がなくなる | 思いやりを向けた人の方が、失敗後の勉強時間が長かった[1] |
| 「自分はできる」と思い込めば立ち直れる | 自信を高める言葉より、思いやりの方が改善の気持ちが強かった[1] |
| 気持ちさえ立て直せば成績も上がる | 成績につながる流れは確かめられていない[5] |
ここで紹介した研究は、主に大学生を対象にしたものです。社会人の独学や資格試験で同じ結果が出るかは、まだ確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩サボった・落ちた後、今日何をすればいい?
失敗を事実として認め、責める言葉の代わりに友だちにかけるような言葉を自分に書きます。そのうえで原因を行動で1つ決め、24時間以内に10分だけ勉強を再開します。
何が起きたかを、事実だけ1行で書く
「今週は予定の5日のうち1日しか勉強しなかった」「模試は合格点に20点足りなかった」のように書きます。「自分はだめだ」「意志が弱い」といった評価の言葉は書きません。失敗を認めることが、許すことの前提です。
所要 1分
同じ失敗をした友だちにかける言葉を、自分あてに書く
「忙しい週だったね」「ここまで続けてきたこと自体は消えないよ」など、友だちになら自然に言える言葉を2〜3文書きます。つまずきは誰にでもあると認め、やさしく受け止める練習です。
所要 3分
原因を「変えられる行動」で1つだけ書く
「性格がだめ」ではなく、「夜に回すと疲れて寝てしまう」「過去問を解かずに本番を迎えた」のように、次に変えられる形で書きます。思いやりを向けた人ほど、弱点は変えられると考えやすかったことと同じ向きです。
所要 3分
24時間以内に、10分だけ勉強する
手順3で決めた変え方を、10分の勉強で1回試します。量は少なくてかまいません。休んでいた期間が長いときは勉強を何日も休んだ後の再開の記事の手順も使えます。
所要 10分
3日後に、気分と勉強した日数を振り返る
「責める言葉が浮かんだ回数」と「勉強した日数」をメモします。責める言葉がまた浮かんだら、手順2に戻ります。気持ちが落ち着いても勉強が戻らないときは、やり方や時間の組み方を見直すサインです。
所要 3分
04 続けるためのコツまた自分を責めそうになったら?
責める言葉が浮かぶこと自体は自然です。浮かんだら書き換える手順を決めておき、気持ちの立て直しと勉強のやり方の見直しをセットにします。
- 「反省」と「自分を責めること」を分ける。反省は原因を行動で書くこと、責めるのは自分の価値を下げる言葉を使うこと。
- 自分への思いやりは、短いプログラムや自分でできる練習で育てられるとされる[3]。手順2を、つまずくたびにくり返す。
- 気持ちを立て直すだけで成績が上がるとは限らない[5]。勉強法の見直しも同時に行う。
- 試験の前に頭が真っ白になる不安については試験不安と「不安を書き出す」研究の記事、ほめ方とやる気の関係はマインドセット研究の記事で扱っています。
落ち込みや不安が2週間以上続く、眠れない日が続くなど、つらさが強いときは一人で抱えず、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や身近な医療機関に相談してください。
05よくある質問
自分に甘くすると、もっとサボるようになりませんか?
実験では逆の結果でした。BreinesとChen(2012)の4つの実験では、失敗の後に自分へ思いやりを向けた人の方が、弱点を直したい気持ちが強く、難しいテストに落ちた後に次のテストの勉強へ多くの時間を使いました。ここでの思いやりは、失敗をなかったことにするのではなく、失敗と認めたうえで責めないことです。
自分を責めるのをやめるだけで、成績は上がりますか?
そこまでは言えません。医学生117人を学士課程の間追った研究では、自分への思いやりが高い学生は最初の時点で学習への熱意も高かったものの、それが成績につながる流れは確かめられませんでした。気持ちを立て直したうえで、勉強のやり方や時間を見直すことが必要です。
落ち込みがずっと続いて、勉強どころではありません。
自分への思いやりを育てるプログラムは、大学生の不安や落ち込みを和らげることが、11のランダム化比較試験のまとめで示されています。ただ、つらさが2週間以上続くときや眠れない日が続くときは、一人で抱えず、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)や身近な医療機関に相談してください。
出典
- Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation. Personality and Social Psychology Bulletin, 38(9), 1133–1143. https://doi.org/10.1177/0146167212445599
- Wohl, M. J. A., Pychyl, T. A., & Bennett, S. H. (2010). I forgive myself, now I can study: How self-forgiveness for procrastinating can reduce future procrastination. Personality and Individual Differences, 48(7), 803–808. https://doi.org/10.1016/j.paid.2010.01.029
- Sirois, F. M. (2023). Procrastination and stress: A conceptual review of why context matters. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(6), 5031. https://doi.org/10.3390/ijerph20065031
- Sobhaninia, M., Rasuli, R., Hosseinian, S., & Abdollahi, A. (2026). The role of self-compassion interventions in reducing anxiety and depression among university students: A systematic review and meta-analysis. BMC Psychology, 14, 1334. https://doi.org/10.1186/s40359-026-05392-7
- Consiglio, P., Fokkens-Bruinsma, M., Opdenakker, M.-C., Jansen, E. P. W. A., & Fleer, J. (2026). Dual pathways from self-compassion and self-criticism to academic achievement: The roles of engagement and exhaustion. Perspectives on Medical Education, 15(1), 162–176. https://doi.org/10.5334/pme.1821


