勉強する場所と時間帯の記録表。音・スマホ・時間帯を2週間くらべて、自分に合う組み合わせを見つける

家、カフェ、図書館。朝の出勤前、夜の寝る前。どこでいつ勉強するのが一番はかどるのか、迷う人は多いはずです。研究でわかるのは「平均するとこうなりやすい」という傾向までで、あなたに合う組み合わせまでは教えてくれません。この記事では、研究で影響がはっきりしている条件をチェック表にし、残りを2週間の記録で自分で確かめる表を紹介します。
3行でわかる
- 人の話し声や歌詞のある曲は、65研究のメタ分析で、読んで理解する成績を小さいながら確かに下げた(話し声で効果量g=-0.26)。まず音の条件をそろえる。
- スマホが近くにあるだけで頭が働かなくなるかは、研究で割れている。22研究のメタ分析では小さな悪影響(g=-0.14)だったが、元の実験を同じ手順でくり返した研究では差が出なかった。
- 時間帯の向き不向きには個人差がある。2週間、場所・時間帯・翌日に思い出せた数を1行ずつ記録し、結果のよい組み合わせを残す。
01 悩みの正体勉強する場所と時間帯は、どう決めればいい?
研究で影響がはっきりしている条件(音)を先にそろえ、研究で結論が割れている条件(スマホの置き場所・時間帯)は、自分の記録でくらべて決めます。
「朝型が勉強に向く」「カフェの方が集中できる」。どれも一理ありますが、研究が示すのは平均の傾向です。同じ条件でも、効く人と効かない人がいます。
そこでこの記事では、下の研究をもとに3枚の表を作りました。表1で始める前の条件を確かめ、表2に2週間記録し、表3で見直します。
02 科学的にわかっていること音・スマホ・時間帯は、勉強にどれだけ影響する?
言葉が聞こえる音は、読んで理解する成績を小さいながら確かに下げます。スマホの置き場所と時間帯は、研究の結果が割れているか、相関にとどまります。
Vasilevら(2018)[1]
背景の音と読解を調べた65研究のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。静かな条件にくらべ、音がある条件では読んで理解する成績が下がった(全体で効果量g=-0.21)。聞き取れる話し声(g=-0.26)と歌詞のある曲で、じゃまが最も大きかった。雑音(g=-0.17)や曲(g=-0.19)でも小さな悪影響があった。
対象: 大人と子どもの実験。大人と子どもで影響の大きさはおおむね変わらなかった / 限界: 1つ1つの効果は小さく、研究ごとに音の種類や大きさがちがう。
Böttgerら(2023)[2]
スマホを使うこと・近くにあることが頭の働きに与える影響を調べた22研究(43の効果量)のメタ分析。全体では小さな悪影響があった(g=-0.14)。記憶の課題では悪影響が見られた(g=-0.23)が、注意の課題では、はっきりした差は出なかった。北米の研究だけでは差が出なかった(g=-0.03)。
対象: さまざまな国の実験 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、使った場合と置いてあるだけの場合をまとめて分析している。
Ruiz PardoとMinda(2022)[3]
「スマホが机の上にあるだけで頭が働かなくなる」と報告した2017年の有名な実験を、事前に計画を登録したうえで同じ手順でくり返した。スマホを机の上・ポケットやかばんの中・部屋の外に置いた条件で、課題の成績に差は出なかった。
対象: 大学での実験。スマホの電源を入れた条件と切った条件も比べた / 限界: 1つの再現実験であり、スマホの影響がまったく無いことを示したものではない。
SmarrとSchirmer(2018)[4]
米国の大学生1万4894人の2年分のログイン記録を分析した。授業のある日とない日で活動の時間帯が30分以上ずれている学生が60%いて、ずれが大きいほど成績が低い傾向があった。夜型の学生は、朝・昼・夜どの時間帯の授業でも成績が低めだった。
対象: 米国の1大学の学生 / 限界: 相関を調べた研究で、時間帯を変えれば成績が上がるという因果までは言えない。授業の時間帯の話で、独学の時間帯を調べたものではない。
SmithとVela(2001)[5]
覚えた場所と思い出す場所が同じだと思い出しやすいかを調べた研究のメタ分析。場所の効果は確かにあったが、学ぶときに内容そのものに集中したときや、思い出すときに覚えた場所を頭の中で思い浮かべたときには、効果が弱まった。
対象: 偶然その場にあった環境と記憶の関係を調べた実験 / 限界: 効果を弱める条件があり、いつでも場所が決め手になるわけではない。
Harkinら(2016)[6]
進み具合を確かめる働きかけを調べた138研究(1万9951人)のメタ分析。確かめる回数が増えると、目標の達成も進んだ(d=0.40)。確かめた結果を紙などに書き残したとき、人に報告したときに、効果がより大きかった。
対象: さまざまな目標を扱ったランダム化実験 / 限界: 勉強の場所や時間帯を選ぶために記録した研究ではない。
03 使える表場所と時間帯を、どうやってくらべればいい?
勉強を始める前に表1の5項目を確かめ、表2に1回1行で記録します。2週間たったら表3で見直し、結果のよい組み合わせを「いつもの枠」にします。
表1 始める前の場所チェック表(1分)。研究の結果を、独学向けにこのサイトがまとめたものです。
| 確かめること | こうなっていればよい | もとになった研究 |
|---|---|---|
| 1 言葉が聞こえるか | 人の話し声や歌詞のある曲が、はっきり聞き取れない。聞こえるなら、耳栓をするか席を変える | 話し声・歌詞のある曲が最も読解のじゃまになった[1] |
| 2 スマホの置き場所 | どこに置いたかを決めて、表2に書く(机の上・かばんの中・別の部屋) | 影響は研究で割れている[2][3]。自分の記録でくらべる |
| 3 今の眠気 | 1(さえている)〜5(とても眠い)で書く。4以上が続く時間帯は候補から外す | 生活リズムと時間帯のずれは成績の低さと関係していた[4] |
| 4 本番の場所とのちがい | 試験会場とちがう場所なら、思い出す練習のときに、勉強した場所を頭の中で思い浮かべる | 場所を思い浮かべると、場所のちがいの影響が弱まった[5] |
| 5 記録の準備 | 表2を紙かノートに用意してある | 書き残すと効果が大きかった[6] |
表2 2週間の記録表(1回1行)。「翌日に思い出せた数」は、次の勉強の始めに、前回の内容を1分だけ何も見ずに書き出して数えます。はかどった気分だけでなく、数字でくらべるためです。
| 日付 | 場所 | 時間帯 | 音 | スマホ | 眠気 | 時間 | 翌日に思い出せた数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 例 10/14 | 例 家の机 | 例 朝6時 | 例 静か | 例 別の部屋 | 例 2 | 例 30分 | 例 用語8つ中6つ |
| 例 10/15 | 例 カフェ | 例 夜8時 | 例 話し声 | 例 机の上 | 例 3 | 例 45分 | 例 用語8つ中4つ |
表3 2週間後の見直し表。表2を並べて、当てはまる行を1つ選びます。「3回以上」は、1回だけの偶然で決めないための目安で、研究で決まった数ではありません。
| 記録に出ていること | 次の2週間にすること |
|---|---|
| ある組み合わせで、思い出せた数が3回以上多い | その場所と時間帯を「いつもの枠」にして、カレンダーに入れる |
| 話し声がある日だけ、思い出せた数が少ない | その場所は、読む勉強ではなく、単語カードなど短い作業に回す |
| スマホの置き場所で差がない | 無理に別の部屋に置かなくてよい。続けやすい置き方にする |
| スマホが机の上の日だけ、時間が短い・数が少ない | 次の2週間は、かばんの中か別の部屋に固定する |
| どの組み合わせも差がない | いちばん続けやすい場所と時間帯を選ぶ。条件より、続くことを優先する |
家の机まわりの整え方は家で勉強に集中できないときの記事に、カフェの雑音の話はカフェだと勉強がはかどる気がする理由の記事にまとめています。
04 続けるためのコツ記録を2週間続けるには?
1行を30秒で書ける量にし、くらべる条件は一度に1つか2つにしぼります。全部を同時に変えると、何が効いたのかわからなくなります。
- 条件を1つずつ変える。例えば最初の週は場所だけ、次の週は時間帯だけを変えます。
- 勉強する内容をそろえる。やさしい単元の日と難しい単元の日をくらべても、場所の差はわかりません。
- 書き忘れた日は空けておく。思い出して後から埋めると、数字が不正確になります。
- 見直しの結果を誰かに一言伝える。人に報告したときに、記録の効果が大きくなりました[6]。
ここで紹介した研究の多くは、短い文章や課題を使った実験室の実験か、大学の授業の記録です。社会人が何か月も独学するときに、どの場所と時間帯が最もよいかを直接確かめた研究はまだありません。だからこそ、自分の記録でくらべる価値があります。
05よくある質問
勉強中に音楽を聞くのはやめた方がいい?
読んで理解する勉強なら、歌詞のある曲は避けた方が無難です。65研究のメタ分析で、歌詞のある曲と聞き取れる話し声が、いちばん読解のじゃまになりました。歌詞のない曲の影響は、ほぼ0に近いと推定されました。気になる人は、記録表で音なしの日とくらべてみてください。
スマホは別の部屋に置かないとだめ?
研究の結論はまだ割れています。22研究をまとめた分析では小さな悪影響が見られましたが、有名な実験を同じ手順でくり返した研究では、置き場所による差は出ませんでした。机の上・かばんの中・別の部屋を記録表で試し、自分の結果で決めるのが確かです。
朝と夜、どちらに勉強するのがいい?
全員に共通の正解はありません。約1万5千人の大学生の記録を調べた研究では、夜型の学生は授業の時間帯にかかわらず成績が低めでしたが、これは相関で、朝に勉強すれば上がると示したものではありません。自分の眠気と翌日に思い出せた数を記録してくらべます。
いつも同じ場所で勉強した方がいい?
同じ場所だと思い出しやすいという効果はありますが、その効果は小さく、思い出すときに勉強した場所を頭の中で思い浮かべると弱まりました。試験会場が違っても、場所をひとつに決めすぎる必要はありません。
出典
- Vasilev, M. R., Kirkby, J. A., & Angele, B. (2018). Auditory distraction during reading: A Bayesian meta-analysis of a continuing controversy. Perspectives on Psychological Science, 13(5), 567–597. https://doi.org/10.1177/1745691617747398
- Böttger, T., Poschik, M., & Zierer, K. (2023). Does the brain drain effect really exist? A meta-analysis. Behavioral Sciences, 13(9), 751. https://doi.org/10.3390/bs13090751
- Ruiz Pardo, A. C., & Minda, J. P. (2022). Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica, 230, 103717. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717
- Smarr, B. L., & Schirmer, A. E. (2018). 3.4 million real-world learning management system logins reveal the majority of students experience social jet lag correlated with decreased performance. Scientific Reports, 8, 4793. https://doi.org/10.1038/s41598-018-23044-8
- Smith, S. M., & Vela, E. (2001). Environmental context-dependent memory: A review and meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 8(2), 203–220. https://doi.org/10.3758/BF03196157
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025


