試験前や勉強前の緊張を、音楽でほぐすには?落ち着く曲を15〜20分「聞くだけ」にする6つの手順(音楽と試験不安のメタ分析と、体のストレス反応は減らなかった実験)

模試や資格試験の前になると、胸がざわついて勉強が手につかない。机に向かっても「落ちたらどうしよう」が頭から離れない。そんなとき、好きな曲を聞いて気持ちを落ち着けている人は多いと思います。音楽で不安をやわらげる研究はたくさんあり、学生の試験不安にしぼった分析もあります。ただ、わかっていることと、まだわかっていないことの差が大きいテーマです。両方をふまえた使い方を紹介します。
3行でわかる
- 学生の試験不安を調べた10本の比較実験(681人)をまとめた分析では、音楽で不安が下がった。音楽を聞くだけの方法(6本・460人)では効果量0.50の中くらいの差だった。
- ただし研究はどれも小さく、出版の偏りも見つかった。試験の点数が上がるかは確かめられていない。人前で話すストレスの前に落ち着く曲を聞いた実験では、不安の感じ方に差がなく、ストレスホルモンはむしろ高かった。
- 使い方は「落ち着く曲を選ぶ」「勉強の前に15〜20分、目を閉じて聞くだけにする」「聞く前と後の緊張を0〜10で記録する」。読む勉強の最中に歌詞のある曲を流すのは避ける。
01 悩みの正体試験前の緊張は、音楽でほぐせる?
ほぐせる可能性はあります。音楽を聞くと、心拍などの体の反応と、不安の感じ方の両方が下がりやすいことが、多くの比較実験から報告されています。ただし試験の場面の研究はまだ少数です。
試験前の緊張は「試験不安」と呼ばれ、心配ごとが頭を占めるだけでなく、心臓がどきどきするなど体にも出ます。音楽は、この体の高ぶりを下げ、気持ちをほかへ向けることで、不安をやわらげると考えられています。
ストレス全般については研究が多く、104本の比較実験をまとめた分析では、音楽は体のストレス反応にも、気持ちのストレスにも効果がありました[2]。一方、「試験の前」にしぼった研究は10本ほどで、まだ小さな研究が中心です[1]。
02 科学的にわかっていること音楽を聞くと、試験不安はどれくらい下がる?
聞くだけの方法で中くらいの差が出た分析があります。ただ研究が小さく、偏りも見つかっています。ストレスの体の反応が減らなかった実験もあり、点数への効果はわかっていません。
Zouら(2026)[1]
中学生から大学生まで、学生の試験不安への音楽の効果を調べた10本の比較実験(681人)をまとめた分析。全体では音楽で不安が大きく下がった(効果量1.21)。ただし、演奏や作曲など自分で音楽をする方法(4本)の効果が大きく、落ち着く曲を聞くだけの方法(6本・460人)では0.50だった。聞く方法は1回7〜30分で、1回きりか短い期間のものが多かった。
対象: トルコ・中国・アメリカ・ナイジェリアの学生 / 限界: 研究はどれも30〜145人と小さく、参加者を盲検化(どちらの群か知らせない)できた研究はわずか。出版の偏りを示す結果も出た。点数への効果は分析していない。
de Witteら(2020)[2]
音楽でストレスが減るかを調べた104本の比較実験(9,617人)をまとめた分析。音楽は、心拍や血圧などの体の反応(効果量0.380)と、不安や落ち着かなさなどの気持ち(0.545)の両方を下げた。体の反応では心拍への効果が大きかった(0.456)。
対象: さまざまな場面で行われた比較実験 / 限界: 試験前の学生にしぼった分析ではない。
Thomaら(2013)[3]
スイスの20〜30歳の女性60人を3つに分け、人前で話す・暗算をするストレス課題の前に、①落ち着く合唱曲を聞く ②水の流れる音を聞く ③静かに休む、のどれかをしてもらった。ストレスの感じ方と不安、心拍には3つの間で差がなかった。ストレスホルモン(コルチゾール)は、音楽の群で最も高く、水の音の群で最も低かった。一方、もう1つの体の指標は、音楽の群で静かに休んだ群より早く元に戻った。
対象: 健康な女性60人 / 限界: 試験ではなく実験室のストレス課題。曲は研究者が選んだ1曲だけ。
İnangilら(2020)[4]
トルコで、初めての病院実習を控えた看護学生86人を3つに分けた。音楽の群は、照明を落とした部屋で目を閉じ、トルコの伝統音楽の器楽曲を15分聞くことを、週3回・2週間行った。音楽の群と、筋肉を順にゆるめる体操の群は、不安(その時の不安)の点数が下がり、何もしない群との間に差が出た。ふだんからの不安の強さ(性格としての不安)には差がなかった。
対象: 看護学生86人(平均19.7歳、8割が女性) / 限界: 筆記試験ではなく実習前の不安。音楽と体操の差はくらべていない。
Linnemannら(2018)[5]
ドイツの研究チームが、18〜34歳の60人に1週間、1日6回、音楽を聞いたかとストレスを記録してもらい、機器でも聞いた時刻と長さを測った。20分以上音楽を聞いたあとは、ストレスが低いと答える傾向があった。ストレスが下がる関係は、聞いてから少し時間をおいて現れた。
対象: 60人 / 限界: 記録をくらべた研究で、音楽がストレスを下げたかどうか(因果関係)はわからないと著者らも述べている。
音楽で試験の点数が上がるかを確かめた研究は、ほとんど見つかりませんでした。次の手順は「緊張をやわらげて、勉強や試験に向かいやすくする」ための使い方です。強い不安が何週間も続く、眠れない、体調をくずすといったときは、一人で抱えずに相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。
03 今日からできる小さな一歩緊張をほぐすための音楽は、どう聞く?
落ち着く曲を選び、勉強や試験の前に15〜20分、ほかのことをせず目を閉じて聞きます。聞く前と後の緊張を0〜10で記録し、自分に合うかを確かめます。
「落ち着く曲」を2〜3曲選んでおく
研究で使われたのは、ゆったりした器楽曲や合唱曲など、落ち着くための曲でした[1][3][4]。自分が聞いて呼吸がゆっくりになる曲を選び、プレイリストにまとめておきます。気分が上がる速い曲がよいかは、研究でははっきりしません。
所要 10分(最初の1回)
勉強や試験の前に、15〜20分「聞くだけ」の時間をとる
座って目を閉じ、音楽に耳を向けます。看護学生の実験では、目を閉じて15分聞きました[4]。日常の記録の研究では、20分以上聞いたあとにストレスが低い傾向がありました[5]。スマホを見ながらではなく、聞くことだけをします。
所要 15〜20分
聞く前と後に、緊張を0〜10で書く
「0=まったく緊張していない、10=最も緊張している」として、聞く前と聞いた後に数字をメモします。人によっては下がらないこともあるため[3]、自分の場合を記録で確かめます。
所要 1分
本番の前に、ふだんの日に何回か試す
試験当日に初めて試すのではなく、模試や勉強の前に週2〜3回試して、緊張の数字が下がる曲と長さを見つけます。研究でも、1回きりより何回か続けた方法がありました[4]。試験会場でイヤホンを使えるかは、試験のルールを確認しておきます。
所要 週2〜3回×15分
聞き終えたら、音楽を止めて勉強を始める
緊張をほぐす音楽と、勉強中の音楽は分けて考えます。文章を読む勉強の最中に音楽を流すと理解が少し下がり、歌詞のある曲が最も不利だったという研究があります。詳しくは音楽を聞きながらの勉強の研究を見てください。
所要 0分
緊張が下がらない日は、別の方法を足す
2週間記録しても数字が変わらないなら、音楽にこだわらず、息をゆっくり吐く呼吸や、不安を書き出す方法を試します。実習前の実験でも、筋肉をゆるめる体操で音楽と同じように不安が下がりました[4]。
所要 5〜10分
04 続けるためのコツ音楽で落ち着く習慣を、どう続ける?
記録で効いているかを確かめながら、短く続けます。不安の原因が「準備が足りない」ことなら、音楽より勉強のやり方を変える方が近道です。
- 記録は2週間分たまったら見返し、聞く前と後の差が大きかった曲を残します。
- 不安の中身が「覚えていないかもしれない」なら、音楽で気持ちを落ち着けたあと、思い出す練習で準備ができていることを確かめる方が、安心につながりやすいかもしれません。
- 本番で緊張して力を出せなかった経験がある人は、試験本番の緊張から立て直す研究も参考になります。
- モーツァルトを聞くと頭がよくなるという話は、追試で確かめられていません(モーツァルト効果の研究)。音楽は「頭をよくする」ためではなく、「緊張をほぐす」ために使います。
05よくある質問
試験前に音楽を聞くと、緊張はほぐれる?
ほぐれる可能性はあります。学生の試験不安を調べた比較実験をまとめた分析では、落ち着く曲を聞くだけの方法でも、不安が中くらい(効果量0.50)下がりました。ただし研究は小さく、出版の偏りも見つかっています。人前で話すストレスの前に曲を聞いた実験では、不安の感じ方に差が出なかったので、自分で記録して確かめるのが確実です。
試験前に音楽を聞くと、点数は上がる?
確かめた研究はほとんど見つかりませんでした。研究で測られていたのは不安の点数で、試験の成績ではありません。音楽は緊張をやわらげるために使い、点数を上げる準備は思い出す練習などで行います。
どんな曲を、何分聞けばいい?
研究で使われたのは、ゆったりした器楽曲や合唱曲など落ち着くための曲で、聞く時間は1回7〜30分でした。看護学生の実験では、目を閉じて15分聞いています。日常の記録の研究では、20分以上聞いたあとにストレスが低い傾向がありました。まずは落ち着く曲を15〜20分から試してください。
勉強中にも音楽を流しっぱなしでいい?
文章を読む勉強では、音楽を流すと理解が少し下がり、歌詞のある曲が最も不利だったという研究があります。緊張をほぐす音楽は勉強の前に聞き、勉強を始めたら止めるのがおすすめです。
出典
- Zou, H., Liu, C., Luo, J., Chen, Y., He, Y., & Liu, Y. (2026). Effects of music-based interventions on test anxiety in students: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology, 17, 1922862. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1922862
- de Witte, M., Spruit, A., van Hooren, S., Moonen, X., & Stams, G. J. (2020). Effects of music interventions on stress-related outcomes: a systematic review and two meta-analyses. Health Psychology Review, 14(2), 294–324. https://doi.org/10.1080/17437199.2019.1627897
- Thoma, M. V., La Marca, R., Brönnimann, R., Finkel, L., Ehlert, U., & Nater, U. M. (2013). The effect of music on the human stress response. PLoS ONE, 8(8), e70156. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0070156
- İnangil, D., Şendir, M., Kabuk, A., & Türkoğlu, İ. (2020). The Effect of Music Therapy and Progressive Muscle Relaxation Exercise on Anxiety Before the First Clinical Practice in Nursing Students: A Randomized Controlled Study. Florence Nightingale Journal of Nursing, 28(3), 341–349. https://doi.org/10.5152/FNJN.2020.19075
- Linnemann, A., Wenzel, M., Grammes, J., Kubiak, T., & Nater, U. M. (2018). Music Listening and Stress in Daily Life—a Matter of Timing. International Journal of Behavioral Medicine, 25(2), 223–230. https://doi.org/10.1007/s12529-017-9697-5


