思い出す練習(テスト効果)は、読み返すより覚えられるのか

テキストを何度も読み返したのに、数日たつと思い出せない。それは意志が弱いからではありません。研究では、読み返すより「本を閉じて思い出す練習」のほうが、1週間後まで記憶に残りやすいことが繰り返し確かめられています。
3行でわかる
- 本を閉じて思い出す練習は、同じ時間読み返すより、数日〜1週間後によく覚えている。
- 効果は、答え合わせをするとき・選択式より自分で書き出すときに大きい。
- 読み返しは「覚えた気分」を高めるが、長く残す効果は弱い。
01読み返すと「覚えた気がする」のはなぜ
読み返すと文章が見慣れて、すらすら読めます。その手ごたえを「覚えた」と感じやすいのですが、あとで自力で思い出せるかは別の話です。
ここで言う「思い出す練習」とは、教材を見ずに内容を書き出したり、問題に答えたりすることです。研究ではテスト効果と呼ばれます。
Dunloskyら(2013)は、学生がよく使う10の勉強法を検討しました。思い出す練習は「有用性が高い」、読み返しと蛍光ペンでの線引きは「有用性が低い」と評価されています[4]。
02科学的にわかっていること
実験でも、多くの研究をまとめた分析でも、思い出す練習は読み返しより長く記憶に残ります。ただし5分後のテストでは、読み返しのほうが良い結果でした。
Roediger・Karpicke(2006)[1]
短い文章を学んだあと、1週間後に思い出せた割合は、4回読んだグループで40%。1回読んで3回思い出す練習をしたグループは61%でした。
一方、5分後のテストでは読み返しが83%、思い出す練習が71%で、読み返しが上回りました。読み返したグループは「1週間後も覚えている」という自信も高めでした。
対象: 米ワシントン大学の学部生(実験2は180人)。英語の短い説明文(256語と275語)を使用 / 限界: 大学生が短い文章を覚える実験で、資格や語学などの長期の独学とは条件が違う。
Rowland(2014)[2]
61研究・159の効果量をまとめた分析で、思い出す練習は読み返しより効果がありました(効果の大きさ g=0.50、中程度)。
答え合わせありでは g=0.73、なしでは g=0.39。答え合わせなしで半分も思い出せなかった場合は、ほぼ効果がありませんでした(g=0.03)。
対象: 大学生が中心の実験室研究。教室での研究は含まない / 限界: 未発表の研究では効果が小さめ(g=0.25)で、発表済みの研究に偏って大きく見えている可能性がある。
Adesopeら(2017)[3]
練習テストの効果をまとめた別の分析でも、読み返しやその他の比較条件より、練習テストのほうが学習に有利でした。
対象: 練習テストと非テスト条件を比べた研究全般 / 限界: 効果の大きさは、テストの形式・学習者・研究の方法によって変わる。
03今日からできる小さな一歩
読み返す時間の一部を、本を閉じて書き出す時間に置き換えます。書き出したら、必ず答え合わせをします。
読んだら本を閉じて書き出す
1節を読み終えたら本を閉じ、覚えている要点を白紙に書きます。きれいにまとめなくて大丈夫です。
所要 3分
本を開いて答え合わせ
書けなかった所・間違えた所に印をつけます。答え合わせがあると効果が大きくなります。
所要 2分
翌日、もう一度思い出す
次の勉強の最初に、前日の内容を何も見ずに書き出します。印をつけた所から確認します。
所要 5分
04続けるためのコツ
思い出せないのは失敗ではなく、練習が効いている途中です。半分も出てこないときは、読み直してから短い範囲で試します。
- 思い出せなくても落ち込まない。読み返しの直後のほうが成績が良く見えるのは、研究でも同じです。
- 何も出てこないときは範囲を小さくする。答え合わせなしで半分以上思い出せないと、効果が出にくいためです。
- 選択肢を選ぶより、一言でも自分で書き出す。
- 読み返しをゼロにしない。読み返しは答え合わせの道具として使う。
05よくある質問
テスト効果とは何ですか?
教材を見ずに内容を思い出すと、そのことが記憶を強くし、あとで思い出しやすくなる現象です。点数をつけるための試験ではなく、思い出す練習そのものに効果があるという考え方です。
読み返しはまったく意味がないの?
意味がないわけではありません。5分後のテストでは読み返しが上回った実験もあります。ただ数日〜1週間後まで残すには、思い出す練習のほうが有利という結果です。
選択式の問題集でも効果はある?
効果はありますが、自分で答えを書き出す形式のほうが大きい傾向があります。選択式を解いたあとに、答えを見ずに理由を一言書くと、書き出す練習を足せます。
勉強法の早見表で「何度も読み返す」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249-255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Rowland, C. A. (2014). The effect of testing versus restudy on retention: A meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432-1463. https://doi.org/10.1037/a0037559
- Adesope, O. O., Trevisan, D. A., & Sundararajan, N. (2017). Rethinking the use of tests: A meta-analysis of practice testing. Review of Educational Research, 87(3), 659-701. https://doi.org/10.3102/0034654316689306
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students' learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266


