勉強法

試験の前にモーツァルトを聴くと点が上がる?「モーツァルト効果」の追試でわかったこと(効く・効かないの判定)

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ピアノの鍵盤
Photo: ermell / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「試験の直前にモーツァルトを聴くと頭が冴える」。資格試験の前に、そんな話を聞いたことがある人もいるでしょう。数分で済むなら試したくなるのは自然なことです。研究を調べると、もとの実験が調べたのは空間の課題だけで、追試では差が出ないことが多く、差が出たときも気分と覚醒で説明できました。判定は「当てにならない(試験の点を上げる根拠はない)」です。

3行でわかる

  1. 判定:当てにならない。1993年の実験で上がったのは「空間の推理の課題」の成績で、その効果も一時的とされた。
  2. 大学生206人の追試では差が出なかった。数字を逆から言う記憶の課題(36人)でも、モーツァルト・雨の音・無音で差はなかった。
  3. 差が出たときも、気分と覚醒(頭が起きている度合い)をそろえると消えた。試験前の時間は、思い出す練習と睡眠に使うほうが確実。

01 通説の中身モーツァルト効果とは、どんな話?

モーツァルトの曲を聴いた直後に、空間の課題の成績が少し上がったという1993年の報告が始まりです。それが「頭が良くなる」「試験に効く」という話に広がりました。

もとの実験では、大学生がモーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調(K.448)」を10分間聴いたあと、空間の推理の課題を解きました[1][2]。この手順を受けついだ研究では、主に「紙を折って切ったら、広げたときにどんな形になるか」を当てる問題が使われています[8]。

この結果はニュースで広まり、「モーツァルトを聴くと知能が上がる」という、もっと広い話に変わっていきました。研究者のあいだでは、もとの結果は「空間の課題での、わずかで一時的な改善」と紹介されています[8]。脳の話がついた勉強法を信じやすい理由も、あわせて読むと見分けやすくなります。

02 科学的にわかっていること追試をすると、効果は出る?

別の研究室の追試では、差が出ないことが多くありました。差が出た研究でも、曲を聴いて気分が上がり頭が起きたことで説明でき、モーツァルトだけの力とは言えません。

Steeleら(1999)[4]

大学生206人を3つの順番の組み合わせに分け、モーツァルトを聴くかどうかで、紙を折って切る課題の成績を比べた。直後のテストで、3つの組に意味のある差はなかった。著者らは、ほかの研究室でも効果が出なかった結果と一致すると書いている。

対象: 大学生206人 / 限界: もとの研究者が示した「効果が戻る手順」を確かめる設計で、条件はもとの実験と同じではない。

Steeleら(1997)[5]

大学生36人が、モーツァルト・雨の音・無音をそれぞれ10分間聞いたあと、9桁の数字を逆の順番で言う記憶の課題をした。3つの条件で意味のある差はなかった。回数を重ねるほど成績が上がる「慣れ」の効果だけがはっきり出た。

対象: 大学生36人 / 限界: 短い数字の記憶の課題で、勉強した知識を思い出す力は測っていない。

Thompsonら(2001)[6]

明るく元気なモーツァルトのソナタか、ゆっくりした悲しい曲(アルビノーニのアダージョ)を聴いた人と、無音で座っていた人で、空間の課題を比べた。成績が上がったのはモーツァルトを聴いた人だけ。ただし、楽しさ・覚醒・気分の差を統計でそろえると、その差は消えた。

対象: 実験の参加者 / 限界: 1回の実験室の課題。気分を上げる曲なら何でも同じになるかまでは確かめていない。

Silvaら(2020)[7]

ポルトガルの心理学科の学生51人が、単語を覚える前に音楽・環境音・無音を20秒ずつ聞いた(曲はメタル・電子音楽・ジャズ)。覚えた単語のテストでは、音楽が無音や環境音より良いとは言えず、「差がない」側を強く支持する結果になった。好きな曲でも同じだった。

対象: 大学生51人(平均19.9歳)と高齢者12人の予備調査 / 限界: 曲はモーツァルトではなく、聞いた時間も20秒と短い。

Giannouliら(2024)[8]

若い人159人と高齢者152人(計311人)が、モーツァルト・ヴィヴァルディ・グラスの曲と無音を約10分ずつ経験し、そのあと図形の並びや位置を覚える課題をした。モーツァルトのあとだけ、ほかの3つの条件より成績が良かった。好みの曲かどうかは関係しなかった。

対象: 311人 / 限界: 著者自身が「効果は小さい」と書いている。測ったのは短時間の図形の記憶で、試験の点ではない。

研究をまとめた分析では、1999年の時点で、モーツァルトと無音を比べた20件の発表を集めても、効果は1種類の空間の課題に限られ、ほかの課題には広げられないとされました[3][8]。2023年に別のテーマ(てんかん)でモーツァルト効果を分析した研究者は、もとの空間の課題の効果を「検出力の低い研究と、測定のゆがみによるもの」と評価しています[9]。

ここで紹介した研究は、どれも数分〜10分の曲のあとに行う、実験室の短い課題です。何か月も独学してきた内容を、本番の試験で思い出せるかを調べた研究は見つかりませんでした。

03 今日からできる小さな一歩試験前の時間は、何に使えばいい?

曲を聴く時間を、勉強した内容を思い出す練習と睡眠に回すほうが確実です。音楽は、気分を整えたいときに短く使う程度にします。

1

前の日は「思い出す練習」で終える

テキストを読み返すより、何も見ずに要点を書き出すか、問題を5〜10問解きます。読み返すより思い出すほうが残りやすいことは、思い出す練習の記事にまとめています。

所要 15〜30分

2

当日の朝は、確かめる項目を決めておく

起きる時刻・持ち物・最後に見る1枚のメモを、前の晩に決めます。手順は試験前夜と当日の朝のチェック表が使えます。

所要 前の晩に10分

3

聴くなら「気分を整える」と決めて短く

移動中に好きな曲を聴いて落ち着けるなら、それで構いません。差が出た研究でも、理由は曲で気分と覚醒が上がったことでした[6]。モーツァルトにこだわる必要はありません。

所要 移動中の数分

04 続けるためのコツ「聞くだけで効く」話は、どう見分ける?

何を測った実験か、別の研究室で同じ結果が出たか、の2点を確かめます。この2つで、多くの「聞くだけ」の話は見分けられます。

  • 測ったものを確かめる。モーツァルト効果で上がったのは空間の課題で、試験の知識ではありませんでした[1][3]。
  • 追試があるかを見る。最初の1本が目立っても、追試で差が出ないことはよくあります[4][5]。
  • 勉強中のBGMは別の話。勉強しながら聴く音楽の研究は歌詞あり・なしの記事、勉強用の音の研究はバイノーラルビートの記事にあります。
  • 本番の緊張が心配なら。緊張のとらえ方の研究は試験で緊張したあとの立て直しの記事にまとめています。

05よくある質問

試験の前にモーツァルトを聴くと点数は上がる?

当てにならないと考えるのが安全です。もとの1993年の実験が調べたのは空間の推理の課題で、試験で問われる知識の記憶ではありません。大学生206人の追試では差が出ず、9桁の数字を逆から言う課題でも差はありませんでした。

モーツァルト効果はまったくのうそ?

「うそ」とまでは言い切れません。311人を調べた2024年の研究では、モーツァルトのあとに図形の記憶の課題が少し良くなりました(著者も効果は小さいと書いています)。ただ、ほかの研究では、気分と覚醒(頭が起きている度合い)をそろえると差が消えました。

試験の前に好きな曲を聴くのはやめたほうがいい?

やめる必要はありません。気分が上がる曲で落ち着けるなら、それで構いません。ただし点数を上げる方法ではないので、聴く時間で思い出す練習や睡眠を削らないようにします。

出典

  1. Rauscher, F. H., Shaw, G. L., & Ky, K. N. (1993). Music and spatial task performance. Nature, 365(6447), 611. https://doi.org/10.1038/365611a0
  2. Rauscher, F. H., & Shaw, G. L. (1998). Key components of the Mozart effect. Perceptual and Motor Skills, 86(3), 835–841. https://doi.org/10.2466/pms.1998.86.3.835
  3. Chabris, C. F. (1999). Prelude or requiem for the 'Mozart effect'? Nature, 400(6747), 826–827. https://doi.org/10.1038/23608
  4. Steele, K. M., Brown, J. D., & Stoecker, J. A. (1999). Failure to confirm the Rauscher and Shaw description of recovery of the Mozart effect. Perceptual and Motor Skills, 88(3), 843–848. https://doi.org/10.2466/pms.1999.88.3.843
  5. Steele, K. M., Ball, T. N., & Runk, R. (1997). Listening to Mozart does not enhance backwards digit span performance. Perceptual and Motor Skills, 84(3), 1179–1184. https://doi.org/10.2466/pms.1997.84.3c.1179
  6. Thompson, W. F., Schellenberg, E. G., & Husain, G. (2001). Arousal, mood, and the Mozart effect. Psychological Science, 12(3), 248–251. https://doi.org/10.1111/1467-9280.00345
  7. Silva, S., Belim, F., & Castro, S. L. (2020). The Mozart effect on the episodic memory of healthy adults is null, but low-functioning older adults may be an exception. Frontiers in Psychology, 11, 538194. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.538194
  8. Giannouli, V., Yordanova, J., & Kolev, V. (2024). Can brief listening to Mozart's music improve visual working memory? An update on the role of cognitive and emotional factors. Journal of Intelligence, 12(6), 54. https://doi.org/10.3390/jintelligence12060054
  9. Oberleiter, S., & Pietschnig, J. (2023). Unfounded authority, underpowered studies, and non-transparent reporting perpetuate the Mozart effect myth: a multiverse meta-analysis. Scientific Reports, 13, 3175. https://doi.org/10.1038/s41598-023-30206-w