AIの答えが間違っていて、誤ったまま覚えてしまった。どう覚え直す?訂正と記憶の研究

AIの説明で覚えた内容が、教科書と違っていた。模試で自信を持って書いた答えが、実はAIの間違いだった。気づいたとき、「どこまで信じていいのか」と不安になる人は少なくありません。研究からわかるのは、誤って覚えたことは訂正できること、ただし「違う」と知るだけでは残りやすく、なぜ違うかまで確かめて思い出し直す必要があることです。
3行でわかる
- 人は、もともと正しく知っていたことでも、読んだ文章の誤りを覚えてしまうことがある。誤りは訂正された後も、一部が残りやすい。
- 52の効果をまとめたメタ分析では、誤りだと告げるだけの訂正より、なぜ違うのかを詳しく示す訂正の方が効果が大きかった。誤った説明を自分で補強すると、誤りは残りやすくなった。
- 立て直しは、①一次資料で正しい答えを確かめる ②「誤→正、違う理由」の訂正カードを作る ③誤った説明を読み返さない ④日をあけて正しい答えを思い出す ⑤同じ回答から覚えた所も点検する、の5つ。
01 悩みの正体AIの間違いを覚えてしまうのはなぜ?
人は、読んだ内容の正しさを、読みながら確かめるとは限らないためです。もともと知っていたことでも、読んだ誤りに置き換わることが実験で確かめられています。
AIの説明は、文章がなめらかで、自信がありそうに書かれています。そのため、内容の正しさを確かめる前に「わかった」と受け入れやすくなります。
誤りの入った物語を読ませる実験では、2週間前の一般常識テストで正しく答えられていた問題でも、物語の誤りをそのまま答える人がいました。最も自信を持って正解していた問題でも同じことが起きました[2]。知っているから大丈夫、とは限らないのです。
そして、AIは間違えます。どれくらい間違えるかは分野で大きく違い、全体の誤り率を示した研究はまだありません。ただ、たとえば文献リストを作らせた研究では、実在しない文献がかなりの割合で混じっていました[1]。
02 科学的にわかっていること誤って覚えたことは、正しく覚え直せる?
覚え直せます。ただし、誤りだと知るだけでは一部が残りやすく、なぜ違うのかを詳しく示す訂正と、後で正しい答えを思い出す練習が効果を高めます。
WaltersとWilder(2023)[1]
ChatGPTに42のテーマで短い文献レビューを書かせ、出てきた636件の文献を1件ずつ確かめた。実在しない文献は、GPT-3.5で55%、GPT-4で18%だった。実在する文献でも、巻・ページ・年などの重大な誤りが、GPT-3.5で43%、GPT-4で24%にあった。
対象: 2023年4月時点のGPT-3.5とGPT-4 / 限界: 調べたのは文献の書き方だけで、AIの答え全体の誤り率ではない。今のAIでは数字が変わっている可能性がある。
Fazioら(2013)[2]
参加者は一般常識の問題に答え、2週間後に誤りを含む物語を読み、その後もう一度テストを受けた。前のテストで正しく答えていた問題でも、物語の誤りをそのまま答えることがあった。この影響は、もともと知っていた事実と、知らなかった事実で同じ程度だった。
対象: 一般常識テストと物語を使った実験の参加者 / 限界: 誤りは物語の中の一般常識で、AIや教科書の内容そのものではない。
MarshとFazio(2006)[3]
物語に誤りがあると事前に警告しても、誤りを覚える量は減らなかった。読みながら誤りを見つけるたびにキーを押させると、誤りを覚える量は減ったが、なくなりはしなかった。
対象: 3つの実験の参加者 / 限界: 実験室で短い物語を読む課題。読者は内容の正しさを自分からは確かめにくいが、1文ごとに意識させれば確かめられる、と著者らはまとめている。
Chanら(2017)[4]
誤情報を打ち消すメッセージの研究をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。52の効果、6,878人分を合わせると、訂正には大きな効果があった(d=1.14〜1.33)。それでも誤りは訂正後に残った(d=0.75〜1.06)。誤りだと告げるだけより、詳しく説明する訂正の方が効果が大きかった。参加者が誤情報を支持する理由を自分で考えると、誤りは残りやすくなった。
対象: 主に報道などの誤情報を使った実験 / 限界: 勉強の内容を調べたものではない。詳しい訂正の比較には研究数がごく少ない区分もある。
Butlerら(2008)、Metcalfe(2017)[5][6]
一般常識の選択問題の実験で、答えた後に正しい答えを示すと、間違えた答えを直しやすくなった。自信のないまま正解した答えの記憶も、正解を示さない場合の2倍残った[5]。間違いから学ぶ研究をまとめたレビューでは、自信を持って間違えた答えほど訂正されやすく、なぜ間違えたかの分析を含む訂正が重要だとした[6]。
対象: 一般常識の問題を使った2つの実験と、関連研究 / 限界: 短い一般常識の問題が中心で、長い説明を誤解した場合とは条件が違う。
ここで紹介した研究の多くは、実験室で短い文章や問題を使ったものです。AIで資格や語学を学ぶ社会人を、直接調べた研究ではありません。手順は、わかっていることを独学に当てはめたものです。
03 今日からできる小さな一歩AIの間違いを覚えた後、どう覚え直せばいい?
一次資料で正しい答えを確かめ、「誤→正」と違う理由を1枚に書きます。誤った説明は読み返さず、日をあけて正しい答えを思い出す練習を2〜3回します。
正しい答えを、一次資料で確かめる
教科書、公式のテキスト、法令や規格の原文など、元になる資料で確かめます。同じAIに「本当?」と聞き直すだけでは、確かめたことになりません。文献を作らせた研究では、実在しない文献が混ざっていました[1]。
所要 5〜10分
「誤→正、違う理由」の訂正カードを作る
1枚に「誤: 〜」「正: 〜」「なぜ違うか: 〜」を1行ずつ書きます。誤りだと告げるだけより、詳しく説明する訂正の方が効果が大きく[4]、なぜ間違えたかの分析を含む訂正が大事だとされています[6]。
所要 3分
誤った説明を読み返さない・補強しない
AIの誤った説明は、ノートから消すか線で消し、何度も読み返さないようにします。誤った情報を支持する理由を自分で考えると、誤りは残りやすくなりました[4]。「なぜそう思ったか」は、訂正カードの1行だけにとどめます。
所要 2分
日をあけて、正しい答えを思い出す
翌日・3日後・1週間後に、カードの「正」を隠して答えを書き出します。誤りは訂正後も一部が残りやすいため[4]、1回の訂正で終わらせません。答えた後に正しい答えを確かめると、記憶は残りやすくなります[5]。
所要 1回1〜2分
同じAIの回答から覚えた所も点検する
間違いが見つかった回答の、ほかの数字・用語・出典にも印をつけ、手順1で確かめます。読みながら誤りを探すと、誤りを覚える量は減りました[3]。警告を知っているだけでは減らなかった点に注意します。
所要 10〜15分
AIの答えのうち、特に確かめたいものを表にしました。表の分け方は、上の研究をもとにこの記事で整理したものです。
| AIの答えの中身 | 確かめ方 |
|---|---|
| 論文・本・出典の名前 | 図書館や論文データベースで実在を確かめる。実在しない文献の例が多く報告されている[1] |
| 数字・年・条文の番号 | 教科書や原文で1つずつ照合する。実在する文献でも巻・ページ・年の誤りが多かった[1] |
| 自分がすでに知っているつもりの内容 | 知っていても誤りを覚えることがある[2]。違和感があれば、その場で印をつける |
| 試験に出る定義・公式 | 覚える前に教科書の表現と比べる。違えば教科書を優先する |
04 続けるためのコツAIの間違いをまた覚えないためには?
AIの答えは「確かめる前の下書き」として扱い、覚える前に一次資料と照合する手順を決めておきます。AIを使うことをやめる必要はありません。
- AIで調べた内容には「未確認」の印をつけ、一次資料で確かめたら印を消してから覚える。
- 訂正カードは1か所にまとめ、週1回、「正」を隠して答える。
- AIの説明でわかった気になる理由は、AIの説明でわかった気になる研究の記事にまとめています。
- 使う前・使っている間・使った後の確認は、AIで勉強するときのチェック表が使えます。
05よくある質問
一度間違って覚えたことは、正しく覚え直せますか?
覚え直せます。記憶の研究では、間違えた後に正しい答えを示されると、その答えが後まで残りやすくなりました。自信を持って間違えた答えほど、訂正されやすいこともわかっています。ただし誤りは訂正後も一部残りやすいので、日をあけて正しい答えを思い出す確認をします。
「この答えは間違い」とメモするだけでは足りませんか?
足りない可能性があります。52の効果をまとめたメタ分析では、誤りだと告げるだけの訂正より、なぜ違うのかを詳しく示す訂正の方が効果が大きくなりました。正しい答えと、違う理由を1文で書き添えるのが研究に合っています。
AIの答えは、どれくらい間違っているのですか?
分野やAIの種類で大きく変わり、全体の誤り率を示した研究はまだありません。2023年の研究では、ChatGPTが作った文献リストのうち、GPT-3.5では55%、GPT-4では18%が実在しない文献でした。数字・固有名詞・出典は、一次資料で確かめる前提で使います。
出典
- Walters, W. H., & Wilder, E. I. (2023). Fabrication and errors in the bibliographic citations generated by ChatGPT. Scientific Reports, 13, 14045. https://doi.org/10.1038/s41598-023-41032-5
- Fazio, L. K., Barber, S. J., Rajaram, S., Ornstein, P. A., & Marsh, E. J. (2013). Creating illusions of knowledge: Learning errors that contradict prior knowledge. Journal of Experimental Psychology: General, 142(1), 1–5. https://doi.org/10.1037/a0028649
- Marsh, E. J., & Fazio, L. K. (2006). Learning errors from fiction: Difficulties in reducing reliance on fictional stories. Memory & Cognition, 34(5), 1140–1149. https://doi.org/10.3758/BF03193260
- Chan, M. S., Jones, C. R., Hall Jamieson, K., & Albarracín, D. (2017). Debunking: A meta-analysis of the psychological efficacy of messages countering misinformation. Psychological Science, 28(11), 1531–1546. https://doi.org/10.1177/0956797617714579
- Butler, A. C., Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). Correcting a metacognitive error: Feedback increases retention of low-confidence correct responses. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 34(4), 918–928. https://doi.org/10.1037/0278-7393.34.4.918
- Metcalfe, J. (2017). Learning from errors. Annual Review of Psychology, 68, 465–489. https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010416-044022


