オンライン講座は、教室で受ける講座より身につかない?社会人の学び直しで比べた研究(効く・効かないの判定)

仕事をしながら学び直すなら、オンライン講座が通いやすい。でも「画面越しだと身につかないのでは」「やはり教室で受けた方がいいのでは」と迷う人は少なくありません。研究の判定は「当てにならない」です。働く医療職などを対象にした研究をまとめると、知識の身につき方はオンラインと教室でほぼ同じでした。差を生んだのは、受け方より講座の中身の作りでした。
3行でわかる
- 医療職の学びを調べた201件の研究のまとめでは、インターネットの講座と、インターネットを使わない講座の知識の差は小さく(効果量0.12)、効果はほぼ同じとされた。
- 資格を持って働く医療職5,679人を含む16件のランダム化比較試験のまとめでも、オンライン学習は知識にほとんど差をもたらさないとされた(確かさは低い)。
- オンライン講座どうしを比べると、練習問題(効果量0.40)、やりとりの多さ(0.27)、フィードバック(0.68)がある講座ほど学びが大きかった。選ぶなら形式より中身を見る。
01 通説の中身「オンラインだと身につかない」と言われるのはなぜ?
画面越しだと先生に質問しにくい、集中が続かない、途中でやめる人が多い、といった印象からです。ただ「途中でやめやすい」ことと「受けた人の身につき方」は、別の問題として分けて考える必要があります。
教室の講座には、決まった時間に同じ場所へ行く仕組みがあります。先生や受講者の顔が見え、その場で質問もできます。オンライン講座にはそれがないため、身につきにくいと感じやすいのでしょう。
一方で、オンライン講座を途中でやめる人がいることも事実です。やめる理由と再開のしかたは、学び直しで挫折した後の立て直し方にまとめました。この記事では、最後まで受けた人の「身につき方」を比べた研究を見ていきます。
02 科学的にわかっていることオンライン講座と教室の講座、身につき方に差はある?
働く医療職などを対象にした研究のまとめでは、知識の身につき方にほとんど差はありませんでした。オンラインの方が少し上回った分析もありますが、研究ごとのばらつきが大きく、「ほぼ同じ」と読むのが妥当です。
Cookら(2008)[1]
医師・看護師・薬剤師などの学びを調べた201件の研究をまとめたメタ分析。インターネットの講座は、何も学ばない場合よりは大きく知識を増やした(効果量1.00、126件)。インターネットを使わない講座と比べると、知識の差は小さく(効果量0.12、63件)、技能(0.09、12件)や満足度(0.10、43件)でははっきりした差がなかった。著者らは「効果は従来の方法とほぼ同じ」とまとめた。
対象: 働く医療職と医療系の学生 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきがとても大きかった(I² 79%以上)。この記事では論文の要旨で内容を確認した。
Vaonaら(2018)[2]
資格を持って働く医療職5,679人を含む、16件のランダム化比較試験をまとめたコクラン・レビュー。オンライン学習は、従来の学び方と比べて知識にほとんど差をもたらさないとされた(11件、3,236人)。技能は、良くなるか悪くなるか判断できなかった(6件、2,912人)。
対象: 働く医療職(看護師587人、医師300人など) / 限界: 証拠の確かさは「低い」または「とても低い」と評価された。この記事では論文の要旨で内容を確認した。
PeiとWu(2019)[3]
医学部の学生を対象に、オンライン学習と教室の学習を比べた16本の論文(重複を除いて1,789人、9か国)のメタ分析。終わった後のテストの点では、オンラインの方が高かった(標準化平均差0.81、15件)。学習前後の伸びで比べた3件では、はっきりした差はなかった。著者らは「教室の学習の方が良いという証拠はない」とした。
対象: 医学部の学生 / 限界: 社会人ではない。くじで組を分けた方法を詳しく書いていない研究が多かった。
Cookら(2010)[4]
オンライン講座どうしで、作りの違いを比べた51件の研究(うち30件はランダム化比較試験)のメタ分析。やりとりが多い講座(効果量0.27、15件)、練習問題がある講座(0.40、10件)、フィードバックがある講座(0.68、2件)、内容のくり返しがある講座(0.19、2件)ほど学びが大きかった。オンラインの話し合いの場は、はっきりした差がなかった(3件)。
対象: 働く医療職と医療系の学生 / 限界: 多くの分析で研究ごとのばらつきが大きく、フィードバックとくり返しは2件ずつしかない。この記事では論文の要旨で内容を確認した。
| よく言われること | 研究での判定 |
|---|---|
| オンライン講座は教室の講座より身につかない | 当てにならない。知識の差はほぼなかった[1][2][3] |
| オンライン講座の方が身につく | はっきりしない。上回った分析もあるが、ばらつきが大きい[1][3] |
| 大事なのは講座の作り(練習・やりとり・フィードバック) | 支持されている[4] |
| オンライン講座は途中でやめる人が多い | 続け方の問題として別に考える(関連記事) |
ここで紹介した研究の多くは、医療職や医学部の学生を対象にしたものです。語学や資格の勉強を一人で進める社会人で、同じ結果になるかは直接確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩オンライン講座を選ぶとき、どこを見る?
オンラインか教室かより、「練習問題があるか」「答え合わせや解説で間違いがわかるか」「質問や見直しができるか」を見ます。足りなければ、自分で思い出す練習を足します。
講座の説明で、練習問題の有無を確かめる
各回に小テストや演習があるかを見ます。練習問題がある講座ほど学びが大きくなっていました[4]。
所要 5分
間違いがわかる仕組みがあるかを見る
解答と解説、添削など、自分の間違いに気づける仕組みがあるかを確かめます。フィードバックは効果が大きかった一方、調べた研究は2件だけでした[4]。
所要 5分
動画を見たら、閉じて3行で思い出す
練習問題が少ない講座でも、見終わったら画面を閉じ、要点を3行書き出します。動画の見方はオンライン講座の動画の見方、思い出す練習の効果はテスト効果の記事にまとめています。
所要 1回3分
04 続けるためのコツオンライン講座を最後まで受けきるには?
教室の講座にある「決まった時間」と「人の目」を、自分で作ります。受ける曜日と時間を固定し、進み具合を誰か1人に伝えるなど、続ける仕組みを講座の外に用意します。
- 受ける時間を予定表に入れて固定する(いつ・どこでやるかを決める研究)。
- 1回の量を、平日に使える時間に合わせて小さくする(社会人が勉強時間をつくるには)。
- 年齢を理由にあきらめない。大人の学び方は大人の学び直しのやり方にまとめています。
05よくある質問
オンライン講座と対面の講座、どちらが身につく?
働く医療職などを対象にした研究のまとめでは、知識の身につき方はほぼ同じでした[1][2]。差を生んだのは形式より講座の作りで、練習問題・やりとり・フィードバックがある講座ほど学びが大きくなっていました[4]。
オンライン講座で途中でやめないためには?
受ける曜日と時間を固定し、1回の量を小さくし、進み具合を誰かに伝えることです。オンライン講座を途中でやめる理由と再開のしかたは、学び直しで挫折した後の立て直し方の記事にまとめています。
ライブ配信と録画の講座では違いがある?
この記事で調べた研究のまとめでは、ライブか録画かを直接比べた結果は確認できませんでした。録画の講座でも、練習問題や見直しの機会がある作りかどうかを見るのがおすすめです[4]。
出典
- Cook, D. A., Levinson, A. J., Garside, S., Dupras, D. M., Erwin, P. J., & Montori, V. M. (2008). Internet-based learning in the health professions: A meta-analysis. JAMA, 300(10), 1181–1196. https://doi.org/10.1001/jama.300.10.1181
- Vaona, A., Banzi, R., Kwag, K. H., Rigon, G., Cereda, D., Pecoraro, V., Tramacere, I., & Moja, L. (2018). E-learning for health professionals. Cochrane Database of Systematic Reviews, 1, CD011736. https://doi.org/10.1002/14651858.CD011736.pub2
- Pei, L., & Wu, H. (2019). Does online learning work better than offline learning in undergraduate medical education? A systematic review and meta-analysis. Medical Education Online, 24(1), 1666538. https://doi.org/10.1080/10872981.2019.1666538
- Cook, D. A., Levinson, A. J., Garside, S., Dupras, D. M., Erwin, P. J., & Montori, V. M. (2010). Instructional design variations in internet-based learning for health professions education: A systematic review and meta-analysis. Academic Medicine, 85(5), 909–922. https://doi.org/10.1097/ACM.0b013e3181d6c319


