社会人が勉強時間をつくるには?時間管理の研究でわかった「組む・守る・見直す」のやり方

仕事が終わるともう疲れていて、気づけば1週間、参考書を開いていない。「時間ができたらやろう」と思っても、その時間はなかなか来ません。研究から見えてくる答えは「空いた時間を探すのではなく、勉強の時間を先に予定に入れ、守り、週に1回見直す」です。この記事では、その手順を具体的にまとめます。
3行でわかる
- 158本の研究をまとめたメタ分析では、時間管理ができている人ほど学業成績が高く(r = 0.26)、生活の満足度も高かった(r = 0.43)。ただし多くは関係を見た研究で、原因とは言い切れない。
- 会社員71人のランダム化試験では、1日の時間管理研修で「時間を自分で扱えている感覚」が上がり、ストレスが下がった。仕事の成績は変わらなかった。
- やり方は、①勉強の時間を先に予定に入れる(組む)②割り込みから守る(守る)③週1回ずれを直す(見直す)の3つ。予定は守れる量にとどめる。
01 悩みの正体社会人に勉強の時間がないのはなぜ?
仕事や家の用事は時間が決まっているのに、独学には決まった時間がありません。そのため、ほかの予定が入るたびに、勉強の時間が後回しになりやすいのです。
時間管理の研究では、時間管理を「時間を組み立て(組む)、守り、状況に合わせて調整する(見直す)こと」と定義しています。時間管理の度合いを測る質問にも、「毎日決まった流れがあるか」「断れずに、ほかの用事に時間を取られることがあるか」「1日の予定を振り返るか」といった項目が入っています。
つまり「時間がない」の正体は、時間の量だけではありません。勉強の時間が予定として組まれておらず、守られておらず、崩れても直されないことが重なっている場合が多いのです。根性で時間をひねり出すより、この3つを仕組みにする方が続きます。
02 科学的にわかっていること時間管理をすると、勉強の成果は上がる?
時間管理ができている人ほど成績や満足度が高い傾向ははっきりしています。ただ、時間管理を教えて成績まで上がるかは、研究で結果がそろっていません。
Aeonら(2021)[1]
時間管理についての158本の研究をまとめたメタ分析。時間管理ができている人ほど学業成績が高く(76本・約3万人、r = 0.26)、仕事の成績も高かった(r = 0.25前後)。満足度や心の健康とのつながりはさらに強く、生活の満足度とは r = 0.43だった。著者らは、時間管理は成績よりも、むしろ心の満足度を高めると述べている。
対象: 学生・社会人を含む158本の研究 / 限界: 多くは関係を見た研究で、時間管理が原因かどうかはわからない。研究によるばらつきも大きい。
Liuら(2026)[2]
大学生の時間管理と学習成果の関係を調べた31本の研究(合計13,506人)をまとめたメタ分析。時間管理と学習成果には中くらいの関係があった(r = 0.25)。関係が最も強かったのは学部生だった。
対象: 中国語と英語で発表された大学生の研究 / 限界: 関係を見た研究のまとめで、社会人の独学についての研究ではない。
HäfnerとStock(2010)[3]
ドイツの商社の社員71人を、時間管理の研修を受ける組(35人)と、後で受ける組(36人)にくじで分けた。研修は1日で、目標と優先順位の決め方、予定の立て方、割り込みや急な仕事への対応などを扱った。6週間後、研修組は「時間を自分で扱えている感覚」が上がり、ストレスが下がった。仕事の成績は変わらなかった。教わったやり方を実際に使うかどうかは、人によって大きく違った。
対象: ドイツの会社員71人 / 限界: 1つの会社の小さな試験で、勉強の成果は測っていない。
Youngら(2026)[4]
職場での時間管理の研修を調べた7本の研究(合計442人)をまとめたシステマティックレビュー。すべての研修が目標と優先順位の決め方を扱い、多くが予定の立て方や割り込みへの対処も扱っていた。ただし、心の健康への効果は一貫しておらず、研究の質も低かった。やることリストや予定表が「遅れている」と感じさせると、かえって時間を扱えている感覚が下がることがあるとも指摘している。
対象: 米国・オランダ・ドイツ・イランの職場の研究7本 / 限界: 研究の数が少なく、勉強の時間をつくる効果は調べていない。
時間管理の3つの要素を、独学に当てはめるとこうなります。
| 要素 | 独学でやること |
|---|---|
| 組む | 勉強の時間を、曜日と時刻を決めて先に予定に入れる |
| 守る | その時間にほかの用事を入れない。家族に伝え、通知を切る |
| 見直す | 崩れたときの代わりの時間を決め、週1回ずれを直す |
ここで紹介した研究は、大学生と職場の社員が対象です。働きながら独学する人で、勉強の時間や成果がどれだけ変わるかを直接確かめた研究は見当たりません。
03 今日からできる小さな一歩勉強の時間は、どうやってつくればいい?
まず1週間の予定を見て、勉強の時間を守れる量だけ先に入れます。その時間を割り込みから守り、崩れたときの代わりを決め、週末に5分で見直します。
来週の予定を見て、空いている時間を書き出す
手帳やカレンダーに、仕事・通勤・家事・寝る時間を入れ、残った時間を書き出します。「通勤電車の20分」「夕食後の30分」のように、場面と長さで書くのがコツです。
所要 10分
勉強の時間を、会議と同じ「予定」として先に入れる(組む)
書き出した時間から、守れそうなものを週3回ほど選び、「火・木・土 21:00〜21:30 簿記」のように曜日・時刻・科目まで入れます。最初は少なめにします。予定が多すぎると、守れなかったときに「遅れている」感覚が強くなり、逆効果になりやすいからです。
所要 5分
その時間を、割り込みから守る(守る)
家族や同居人に「この時間は勉強する」と伝え、その時間には別の約束を入れません。始める前にスマホの通知を切ります。置き方は勉強中のスマホの記事で扱っています。
所要 5分
崩れたときの「代わりの時間」を決めておく(見直す)
残業などで予定の時間がつぶれたら、「翌朝の15分に回す」「土曜の午前にまとめる」と、代わりを先に決めておきます。急な用事への対応は、ランダム化試験で使われた時間管理研修でも扱われていた内容です。
所要 3分
週末に5分、予定と実際のずれを見直す
予定に入れた回数のうち何回できたかを数え、できなかった枠は時間帯を変えるか、減らします。「できなかった自分」ではなく「合わなかった枠」を直すと考えます。記録のつけ方は勉強の記録の研究で紹介しています。
所要 5分
04 続けるためのコツつくった勉強時間を続けるには?
同じ曜日・同じ時刻に固定し、予定は守れる量にとどめます。崩れた週があっても、翌週の予定を直せば十分です。
- 勉強の時間は毎週同じ曜日・時刻にする。場面と行動を結びつける方法はif-thenプランの記事で扱っている。
- 予定は「全部できた」と言える量から始め、2〜3週続いたら1枠ずつ増やす。
- 時間管理の研修では、教わったやり方を使うかどうかに大きな個人差があった。合わないやり方は無理に続けず、自分が使えるものだけ残す。
- 時間管理は、成績より「時間を扱えている感覚」や満足度とのつながりが強い。勉強の量が少ない週でも、予定を守れたこと自体を記録しておく。
05よくある質問
時間管理のやり方を身につければ、勉強の成果は上がりますか?
上がるとまでは言い切れません。時間管理ができている人ほど学業成績が高い傾向はあります(158本の研究のメタ分析で r = 0.26)。ただ、その多くは関係を見た研究で、時間管理が成績を上げたとは限りません。会社員71人のランダム化試験では、研修で「時間を自分で扱えている感覚」は上がり、ストレスは下がりましたが、仕事の成績は変わりませんでした(HäfnerとStock 2010)。時間管理は、勉強の時間を確保し、気持ちの余裕をつくる手段と考えるのが妥当です。
平日はほとんど時間が取れません。どうすればいいですか?
平日は10〜15分の短い枠を1つだけ予定に入れ、まとまった時間は週末に置く形から始めます。研究でわかっているのは、勉強の時間を先に決めて守ることが時間管理の中心だということで、1回の長さに決まりはありません。短い時間で何をするかはスキマ時間の勉強の記事で扱っています。
予定を立てても守れず、かえって落ち込みます。
予定が多すぎる可能性があります。やることリストや予定表が「遅れている」と感じさせると、時間を扱えている感覚がかえって下がることがあると、時間管理の研究のまとめで指摘されています(Youngら 2026)。予定は守れる量まで減らし、崩れたときの代わりの時間を先に決めておきます。計画が崩れる理由は計画倒れの記事で扱っています。
勉強は朝と夜、どちらに入れるのがいいですか?
どちらが良いかは人によって違います。朝型・夜型に合った時間帯に学ぶと成績が上がるという研究はありますが、大規模な実験でははっきりした効果は確認されていません。詳しくは朝と夜の勉強の記事で紹介しています。時間管理の観点では、仕事や家の用事に割り込まれにくい時間帯を選ぶことが大切です。
勉強法の早見表で「勉強の時間を先に予定に入れる(時間管理)」の判定を見る
ほかの勉強法も45種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Aeon, B., Faber, A., & Panaccio, A. (2021). Does time management work? A meta-analysis. PLOS ONE, 16(1), e0245066. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0245066
- Liu, B., Ma, P., & Jia, F. (2026). Systematic review and meta-analysis of the impact of time management on college students' learning outcomes. Frontiers in Psychology, 17, 1700298. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1700298
- Häfner, A., & Stock, A. (2010). Time management training and perceived control of time at work. The Journal of Psychology, 144(5), 429–447. https://doi.org/10.1080/00223980.2010.496647
- Young, A. N., Di Blasi, Z., Foley, S., Bourke, A., Cronin, S., Dwyer, A., & Fitzgibbon, J. (2026). Do time management interventions support wellbeing in the workplace? A systematic review. Applied Psychology: Health and Well-Being, 18(3), e70149. https://doi.org/10.1111/aphw.70149


