大人の学び直し、どう勉強すればいい?年齢に合わせた勉強のやり方(研究でわかった5つの手順)

資格や語学の勉強を、大人になってから始めた。でも、学生のころのやり方ではうまくいかない気がする。そう感じる人は少なくありません。研究から言えるのは、大人の学び直しは「思い出す練習」「間をあけた復習」「知っていることへの結びつけ」「優先順位をつけた暗記」で進めるとよいということです。どれも、中高年でも効果や強みが確かめられています。
3行でわかる
- 本を閉じて思い出す練習は、55〜65歳の人にも18〜25歳と同じくらい効いた。2日後のテストでも同じだった。
- 間をあけて混ぜて学ぶやり方は、平均77歳の人でも成績を上げた。ただし本人は「続けて学ぶ方が効く」と感じていた。
- 大人は知識が伸びるか保たれ、「大事な物を選んで覚える力」も保たれている。新しいことは知っていることに結びつけ、重要な所から覚える。
01 悩みの正体大人の勉強が若いころとちがって感じるのはなぜ?
年齢とともに、出来事をそのまま覚える力は落ちやすくなります。一方、言葉や一般的な知識は保たれるか伸びます。弱くなった所を補い、強くなった所を使うやり方に変えればよいのです。
心理学の研究では、年齢による変化は一様ではないとされています。特定の出来事や新しい情報をそのまま覚える力は、年をとるほど苦手になりやすい。一方で、言葉や世の中の知識を使う力は、変わらないか、むしろ伸びます。
年齢と学ぶ力の関係そのものは、大人の学び直しは若い頃より不利なのかの記事でくわしく紹介しました。この記事では、では実際にどう勉強すればいいかに絞ります。
02 科学的にわかっていること中高年でも効く勉強法はある?
あります。思い出す練習と間をあけた学び方は、若い人と同じように中高年でも効きました。さらに大人には、知識を土台にして覚える力と、大事な物を選んで覚える力が残っています。
MeyerとLogan(2013)[1]
大学生(18〜25歳)、大学に通っていない同年代の人(18〜25歳)、地域の中高年(55〜65歳)を60人ずつ比べた。テストの形で思い出す練習をすると記憶が助けられ、その効果は3つの組で同じくらいだった。直後のテストでも、2日後のテストでも同じだった。
対象: 3つの年齢・立場の組、計180人 / 限界: 2日後までの実験で、何か月も続く独学での効果を直接測ったものではない。65歳より上の人は含まれていない。
Kornellら(2010)[2][5]
若い人と高齢の人が、12人の画家の作風を絵から学んだ。同じ画家の絵を続けて見るより、ほかの画家の絵と混ぜて間をあけて見た方が、初めて見る絵の画家を当てる成績がよかった。この差は年代に関係なく見られた。それなのに参加者は、続けて見る方が効くと答えていた。
対象: 若い人64人(平均21歳)と高齢の人48人(平均77歳)[5] / 限界: 絵の作風という特定の課題。教科書の内容でも同じ大きさの差が出るとは限らない。
UmanathとMarsh(2014)[3]
年齢と記憶の研究をまとめたレビュー。高齢になるほど出来事を思い出すのは難しくなるが、一般的な知識を使う力は伸びるか保たれる。この知識が、新しいことを覚える助けになる場合があると論じた。一方で、知識が思い違いを生む場合もあると指摘している。
対象: 既存の研究のレビュー / 限界: 知識がいつ助けになり、いつ思い違いにつながるかには、未解決の問いが残っていると著者ら自身が述べている。
Castelら(2011)[4]
5〜96歳の320人に、点数のついた単語を覚えてもらい、点数を多くとるよう求めた。思い出した単語の数は若い大人がいちばん多かった。一方、点数の高い単語を選んで覚える力では、若い大人と高齢の人はどちらも、子どもや10代より上だった。
対象: 5〜96歳の320人(年齢ごとの組を比べた研究) / 限界: 同じ人を追いかけた研究ではない。単語リストという短い課題での結果。
ここで紹介した実験の多くは、短い時間で終わる課題です。仕事や家事の合間に、何か月も続ける独学とは条件がちがいます。それでも「思い出す」「間をあける」「知識に結びつける」「大事な物から覚える」という方向は、どの研究とも矛盾しません。
03 今日からできる小さな一歩大人の学び直しは、何から始める?
次の5つの手順で進めます。勉強時間を増やすのではなく、同じ時間の使い方を変えるやり方です。1回15〜20分から始められます。
覚えることに、優先順位をつける
教材の目次を見て、試験や仕事でよく使う所に印をつけます。全部を同じ重さで覚えようとせず、印の所から覚えます。大事な物を選んで覚える力は、大人でも保たれていました。
所要 10分(最初の1回だけ)
新しい内容を、知っていることに結びつける
新しい用語や仕組みを読んだら、「仕事のあの場面と同じだ」「前に聞いたあの話に近い」と、自分の経験や知識で1行メモします。結びつけた知識が正しいかは、教材で一度確かめます。
所要 1項目につき1分
読み終えたら、本を閉じて思い出す
読み返す代わりに、本を閉じて要点を3つ書き出すか、章末の問題を解きます。出てこなかった所だけ読み直します。やり方は思い出す練習(テスト効果)の記事にまとめています。
所要 5〜10分
似た問題は、混ぜて練習する
1種類ずつまとめて解くより、似た種類の問題を混ぜて解きます。最初は手応えが少なく感じますが、それは効いていないという意味ではありません。くわしくは交互練習(インターリービング)の記事で説明しています。
所要 いつもの問題演習の時間
5つの手順と、根拠になった研究を表にまとめました。
| 手順 | 大人にとっての意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 優先順位をつける | 大事な物を選んで覚える力は保たれやすい | Castelら [4] |
| 知っていることに結びつける | 知識は年齢とともに伸びるか保たれる | UmanathとMarsh [3] |
| 本を閉じて思い出す | 55〜65歳でも若い人と同じくらい効いた | MeyerとLogan [1] |
| 日をあけて復習する | 平均77歳でも間をあける方が成績がよかった | Kornellら [2] |
| 混ぜて練習する | 同上(混ぜて学ぶ実験)。手応えは少なく感じやすい | Kornellら [2] |
「15〜20分」「1項目1分」などの時間は、研究で決まった数字ではなく、日々の勉強に当てはめるための目安です。
04 続けるためのコツ効いている実感がないときは、どうする?
手応えではなく、数日後に思い出せた量で判断します。間をあける・混ぜる学び方は、本人には効かないように感じられやすいからです。
- 週に1回、前の週に学んだ範囲を本を閉じて書き出し、思い出せた数を記録する。記録には勉強の記録シートが使えます。
- 「覚えが悪い」と感じたら、年齢のせいにする前に、読み返しだけになっていないかを確かめる。
- 勉強時間が足りないときは、量を減らして毎日の短い時間を守る。時間のつくり方は社会人が勉強時間をつくるにはの記事で紹介しています。
- 知識に結びつけて覚えた所は、思い違いがないかを問題で確かめる。知識は助けにもなりますが、思い違いのもとにもなるからです。
05よくある質問
大人になってから、学生のころと同じ勉強法で大丈夫ですか?
基本は同じで大丈夫です。55〜65歳の人も18〜25歳の人と同じくらい、思い出す練習の効果を得ていました(Meyer & Logan, 2013)。違いを出すなら、読み返しや丸暗記に頼るより、知っている知識に結びつけて覚え、重要な所から覚える比重を上げることです。
年をとると、間をあけて復習すると忘れてしまいませんか?
研究では逆でした。平均77歳の人48人と平均21歳の人64人が画家の作風を学んだ実験では、同じ画家の絵を続けて見るより、ほかの画家の絵と混ぜて間をあけた方が、どちらの年代でも成績がよくなりました(Kornell et al., 2010)。ただし参加者自身は、続けて見る方が効くと感じていました。
社会人で時間が少なくても、このやり方はできますか?
できます。5つの手順はどれも、勉強時間を増やすのではなく、同じ時間の使い方を変えるものです。1回15〜20分でも、最初に前回の内容を思い出す時間を入れるだけで始められます。時間のつくり方は別の記事にまとめています。
出典
- Meyer, A. N. D., & Logan, J. M. (2013). Taking the testing effect beyond the college freshman: Benefits for lifelong learning. Psychology and Aging, 28(1), 142–147. https://doi.org/10.1037/a0030890
- Kornell, N., Castel, A. D., Eich, T. S., & Bjork, R. A. (2010). Spacing as the friend of both memory and induction in young and older adults. Psychology and Aging, 25(2), 498–503. https://doi.org/10.1037/a0017807
- Umanath, S., & Marsh, E. J. (2014). Understanding how prior knowledge influences memory in older adults. Perspectives on Psychological Science, 9(4), 408–426. https://doi.org/10.1177/1745691614535933
- Castel, A. D., Humphreys, K. L., Lee, S. S., Galván, A., Balota, D. A., & McCabe, D. P. (2011). The development of memory efficiency and value-directed remembering across the life span: A cross-sectional study of memory and selectivity. Developmental Psychology, 47(6), 1553–1564. https://doi.org/10.1037/a0025623
- Mammarella, N., Fairfield, B., & Di Domenico, A. (2015). Commentary: Spacing as the friend of both memory and induction in young and older adults. Frontiers in Aging Neuroscience, 7, 226. https://doi.org/10.3389/fnagi.2015.00226


