同じ時間勉強しても、勉強法で身につき方が違うのはなぜ?「聞く・手を動かす・自分で作る・話し合う」の研究(ICAP)

同じ1時間、同じ教材で勉強したのに、身につき方がまるで違う。そう感じたことはありませんか。才能や集中力のせいにされがちですが、研究では「勉強している間、頭の中で何をしていたか」の違いで説明する考え方があります。聞くだけか、手を動かすか、自分で何かを作るか。その違いを研究から整理します。
3行でわかる
- 学び方を「聞くだけ」「手を動かす」「自分で作る」「話し合う」の4段階に分け、後ろほど身につくと予測する枠組みがある(ICAP、2014年)。
- 実験では、講義を聞いてまとめた組の平均が25点中12.52点、自分で読んで問いを作った組が17.19点だった。大学の理系の授業225研究のまとめでも、手と頭を動かす授業で試験の成績が上がった。
- ただし大学の授業を調べた2024年の研究では、予測どおりの順番は確認されなかった。「自分で作る」は効きやすい方向として使い、万能の順位表とは考えない。
01 悩みの正体勉強法で身につき方が違うのはなぜ?
勉強法の違いは、勉強中に頭の中で起きていることの違いだと考えられています。情報を受け取るだけより、自分で問いや説明を作り出すほうが、知識を結びつけ直す働きが起きやすいからです。
教科書を読む、動画を見る、線を引く、要約する、問題を作る。勉強法は数えきれないほどあります。一つずつ「効く・効かない」を覚えるのは大変です。
そこで、学習の研究者ChiとWylieは2014年に、勉強法を外から見える行動で4つに分ける枠組みを提案しました。4つの頭文字をとってICAP(アイキャップ)と呼ばれます[1]。
| 段階 | 勉強中にしていること | 独学での例 |
|---|---|---|
| P 聞くだけ(受け身) | 教材に注意を向け、情報を受け取る | 講義動画を見る、教科書を読む、解説を聞く |
| A 手を動かす | 教材に手を加えるが、新しい内容は足さない | 線を引く、書き写す、動画を止めて巻き戻す |
| C 自分で作る | 教材に書かれていないものを自分で作り出す | 自分の言葉で説明する、問題を作る、図にまとめる |
| I 話し合う | 相手と、互いの考えを足し合いながらやりとりする | 勉強仲間と問題を出し合い、説明し合う |
表は、2024年の研究[4]による枠組みの説明をもとに、独学向けの例をこのサイトが当てはめたものです。
枠組みの予測は「I>C>A>P」の順に身につく、というものです。理由として、受け身だと情報がばらばらに蓄えられやすく、自分で作るときには、すでに知っていることと新しい情報を結びつけ直す働きが起きる、と説明されています[4]。特に「P・A」と「C・I」の間の差が大きい、とされています[4]。
02 科学的にわかっていること「自分で作る」勉強は、本当に身につきやすい?
実験や授業のまとめでは、自分で読んで問いを作る、手と頭を動かすといった学び方が、聞くだけより成績が高い結果が多く出ています。ただし授業の現場では、予測どおりの順番にならない結果もあります。
ChiとWylie(2014)[1]
勉強中の行動を「受け身・手を動かす・自分で作る・話し合う」の4つに分け、後ろの段階ほど学習成果が高くなると予測する枠組み(ICAP)を提案した。ノートのとり方、図にまとめる学習、自分に説明する学習などの研究を、この枠組みで整理し直している。
種類: 理論と過去の研究の再整理(レビュー) / 限界: 2024年の研究[4]は、約40件の研究を整理したこの分析について、研究の選び方が体系的でなく、合う結果に偏っている可能性を指摘している。
Limら(2019)[2]
韓国の大学で医療系の学生を4組に分けた実験。18分間「講義を聞く」か「自分で読む」かのあと、5分で「問いを3つ作る」か「3文に要約する」かをして、話し合ってからテストを受けた。25点満点の平均は、自分で読んで問いを作った組が17.19点、自分で読んで要約した組が15.82点、講義を聞いて問いを作った組が13.14点、講義を聞いて要約した組が12.52点だった。
対象: 医学・歯学・獣医学・看護学の学生129人(その分野をよく知っていた21人を除き、108人を分析) / 限界: 読んで問いを作った組と読んで要約した組の差は、統計的にはっきりしなかった。慣れない法律の教材を使った、1回きりの短い実験。
Freemanら(2014)[3]
大学の理系の授業で、講義だけの授業と、学生が手と頭を動かす授業(アクティブ・ラーニング)をくらべた225研究のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。手と頭を動かす授業では、試験などの成績が平均0.47標準偏差高かった。単位を落とす割合は、手と頭を動かす授業で21.8%、講義だけの授業で33.8%だった。
対象: 大学の理系の授業 / 限界: 多くはくじ引きで組を分けた実験ではない。ICAPの4段階を区別した分析ではなく、授業の形式をくらべたもの。
Wekerleら(2024)[4]
ドイツの大学の42の授業(170回分)で、その回にどの段階の活動をしたかと、学生の回答3820件を照らし合わせた。「学べた」という実感と関係したのは「話し合う」活動だけで、「自分で作る」活動が「聞くだけ」「手を動かす」より上回る結果は見られなかった。「聞くだけ」の活動が多いほど、楽しさは低かった。
対象: 主に人文・社会科学の授業 / 限界: 成績ではなく、学生の自己評価で学びを測った。活動の種類は先生の報告にもとづく。
まとめると、「聞くだけより、自分で作り出すほうが身につきやすい」という方向は、実験や授業の研究でくり返し見られます。一方で、4段階がいつでも順番どおりになるとまでは確認されていません。実験は大学生が短い時間で学ぶ場面が中心で、社会人が何か月も独学する場面で4段階をくらべた研究は見当たりません。
03 今日からできる小さな一歩自分の勉強を「作る」側に寄せるには?
今の勉強を4段階で仕分け、「聞くだけ」「手を動かすだけ」で終わっている時間の最後に、自分で作る作業を5分足します。教材を変える必要はありません。
昨日の勉強を4段階で仕分ける
読んだ、見た、線を引いた、書き写した、説明した。昨日やったことを書き出し、表のP・A・C・Iのどれかに分けます。
所要 3分
読んだあとに、問いを3つ作る
実験[2]と同じように、読み終えたら5分で「この内容から出そうな問い」を3つ書きます。答えは教材を閉じて考えます。やり方は読みながら問題を作る勉強法の記事にまとめています。
所要 5分
線を引いた箇所を、自分の言葉で言い換える
線を引くのは「手を動かす」段階です。引いた箇所を1つ選び、教科書の言葉を使わずに1〜2文で説明し直すと「自分で作る」段階になります。
所要 3分
04 続けるためのコツ「自分で作る」勉強がつらいときは、どうする?
まったく知らない分野では、まず読む・聞くで基礎を入れてから作る作業に移ります。作る作業は手応えが少なく感じやすいので、気分ではなく、翌日に思い出せたかで確かめます。
- 基礎がないうちは、作る作業を短くする。予備知識が少ない人には、説明つきの例題を読むほうが効く場合があります(人に効いた勉強法が自分に合わない理由の記事)。
- 「聞くだけ」をゼロにしなくてよい。実験[2]でも、全員がまず18分読むか聞くかしてから、問いや要約を作っていました。
- 手応えのなさで、やめない。作る作業は頭が疲れるぶん、身についていない気がしやすいことが知られています(効く勉強ほど効いていない気がする研究の記事)。
- 線を引くだけで終わらせない。線を引くことそのものの効果は、研究では弱いとされています(蛍光ペンの研究の記事)。
05よくある質問
講義動画を見るだけの勉強は、意味がない?
意味がないわけではありません。ICAPの枠組みでも、まず情報を受け取る段階は必要です。ただ、実験では、講義を聞いて要約した組の平均が25点中12.52点、自分で読んで問いを作った組が17.19点でした。動画を見たあとに、何も見ずに要点を書き出す、問いを作るといった作業を足すのがおすすめです。
要約するのは「自分で作る」勉強になる?
自分の言葉でまとめ直すなら「作る」段階に近づきますが、教科書の文を抜き出してつなぐだけなら「手を動かす」段階にとどまります。実験では、自分で読んだあとに問いを作った組と要約した組の差は、統計的にはっきりしませんでした。
一人で勉強していると、「話し合う」段階はできない?
相手がいないとできませんが、一人でも「自分で作る」段階までは届きます。大学の授業を調べた2024年の研究では、「自分で作る」活動が「聞くだけ」より上回る結果は見られず、順番は研究によって揺れています。一人で作る作業を中心にし、ときどき人に説明する機会を足せば十分です。
ICAPの順番は、どの科目でも当てはまる?
すべての科目で確かめられたわけではありません。提案者は幅広く当てはまると考えていますが、元になった研究の選び方には偏りの指摘があり、授業の現場では予測どおりにならない結果も出ています。「作るほうが身につきやすい方向」として使い、自分の勉強で確かめるのが確かです。
出典
- Chi, M. T. H., & Wylie, R. (2014). The ICAP framework: Linking cognitive engagement to active learning outcomes. Educational Psychologist, 49(4), 219–243. https://doi.org/10.1080/00461520.2014.965823
- Lim, J., Ko, H., Yang, J. W., Kim, S., Kim, S., Lee, S., Chun, M. S., Ihm, J., & Park, J. (2019). Active learning through discussion: ICAP framework for education in health professions. BMC Medical Education, 19, 477. https://doi.org/10.1186/s12909-019-1901-7
- Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(23), 8410–8415. https://doi.org/10.1073/pnas.1319030111
- Wekerle, C., Daumiller, M., Janke, S., Dickhäuser, O., Dresel, M., & Kollar, I. (2024). Putting ICAP to the test: How technology-enhanced learning activities are related to cognitive and affective-motivational learning outcomes in higher education. Scientific Reports, 14, 16295. https://doi.org/10.1038/s41598-024-66069-y


