勉強中のスマホはどこに置く?集中を守る置き方と通知の切り方(研究とその再現)

机に向かっても、気づくとスマホを手に取っている。通知が鳴るたびに、読んでいた所がわからなくなる。それは意志が弱いからではなく、スマホがそれだけ注意を引きやすい物だからです。研究からいえる答えは「まず通知を切る。できれば別の部屋に置く」。この記事では、その手順を具体的にまとめます。
3行でわかる
- 通知の音や振動は、スマホを見なくても集中を乱した。その大きさは、通話やメッセージでスマホを実際に使ったときと同じくらいだった。
- スマホが近くにあるだけで成績が下がるという研究がある一方、同じ実験をくり返して差が出なかった研究もある。22本のメタ分析では、影響は全体として小さかった。
- やり方は、①通知を音・振動まで切る ②別の部屋かかばんに入れる ③見るのは休憩時間と決める、の3つ。手間はほぼかからない。
01 悩みの正体スマホがあると集中できないのはなぜ?
スマホは、本人にとって大事な連絡が来る物なので、注意が自然に向きやすい物です。通知が来れば、見なくても頭の中が勉強から離れます。
研究者は、通知が鳴ると勉強と関係のない考え(「誰からだろう」など)が浮かび、それが作業の邪魔をすると考えています。さらに、一度スマホを手に取ると、1つの用事のつもりが別のアプリへと操作が続きやすいことも指摘されています。
つまり、勉強中のスマホ対策は「我慢する力」をきたえることではありません。通知と置き場所を変えて、手に取るきっかけを減らすことです。意志と環境の関係は独学が続かないのは意志が弱いからかの記事で扱っています。
02 科学的にわかっていることスマホは近くにあるだけで集中を下げる?
通知が集中を乱すことは実験で示されています。近くに置くだけで成績が下がるかは、研究によって結果が分かれ、影響があるとしても小さいと考えるのが妥当です。
Stothartら(2015)[5]
注意力を使う課題の最中に、参加者のスマホに電話やメッセージの通知を送った。参加者がスマホにふれなくても、通知だけで課題の成績ははっきり下がった。その大きさは、通話やメッセージでスマホを実際に使ったときの影響と同じくらいだった。
対象: 実験室の実験 / 限界: 短い単純な注意の課題で、勉強の内容の理解や記憶を測ったものではない。
Wardら(2017)[1]
スマホを机の上・ポケットやかばんの中・別の部屋に置く条件に分けた2つの実験。スマホを見ないで課題に集中できていても、スマホが近くにあるだけで、作業記憶(頭の中で情報を一時的に覚えておく力)と推論の課題の成績が下がった。別の部屋に置いた条件の成績が最もよかった。影響は、スマホに強く頼っている人ほど大きかった。
対象: 米国の大学で行われた実験 / 限界: 下の再現実験では同じ結果が出なかった。
Ruiz PardoとMinda(2022)[2]
Wardら(2017)の2つ目の実験を、事前に計画を登録したうえで同じ課題・同じ条件でくり返した。置き場所(机の上・ポケットやかばん・部屋の外)と電源のオン・オフを組み合わせた6つの条件で比べたが、置き場所による成績の差は見られなかった。
対象: カナダの研究者による再現実験 / 限界: 1回の再現実験で、置き場所の影響がまったく無いとまでは言えない。
Skowronekら(2023)[3]
ドイツの大学生42人(20〜34歳)を2つに分け、電源を切って画面を伏せたスマホを机に置く組と、部屋の外に置く組で、注意力のテストを受けてもらった。部屋の外に置いた組の得点は108.95、机に置いた組は99.71で、外に置いた組の方が高かった。
対象: ドイツの大学生42人。コロナ禍のためビデオ会議でのオンライン実施 / 限界: 人数が少なく、自宅での実施で周りの環境をそろえられていない。
Böttgerら(2023)[4]
スマホの使用や存在が頭の働きに与える影響を調べた22本の研究(43の結果)をまとめたメタ分析。全体として悪い影響はあったが小さかった(g = -0.14)。分野別では記憶の課題(g = -0.23)だけがはっきりし、注意の課題と一般的な成績でははっきりしなかった。研究によるばらつきも大きかった。
対象: 22本の実験研究 / 限界: スマホを使った場合と置いただけの場合を合わせて分析している。研究の数が少ない。
研究から言えることを、置き場所ごとに並べました。
| スマホの状態 | 研究から言えること |
|---|---|
| 通知オンで机の上 | 通知が来るたびに、見なくても集中が乱れる[5] |
| 通知オフで机の上 | 成績が下がった研究[1][3]と、差がなかった研究[2]がある |
| かばんやポケットの中 | 机の上と別の部屋の中間と報告された[1] |
| 別の部屋 | 成績が最もよかった研究がある[1][3]。差がなかった研究もある[2] |
ここで紹介した研究は、大学生を対象にした数分〜数十分の実験です。何時間も一人で勉強する社会人の独学で、同じ大きさの差が出るかは確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩勉強中のスマホは、どうすればいい?
勉強を始める前の1分で、通知を切り、スマホを別の部屋かかばんに移します。見るのは休憩時間と決め、勉強に使う機能はできるだけスマホ以外で代わりを用意します。
通知を、音と振動まで切る
集中モードやおやすみモード、機内モードなどで、勉強時間中は通知が鳴らないようにします。画面の表示だけでなく、音と振動も止めます。通知は見なくても集中を乱すことが、もっともはっきりしている結果だからです。
所要 30秒
スマホを別の部屋に置く(無理ならかばんの中)
家なら充電器ごと別の部屋へ。図書館やカフェなら、かばんの奥にしまい、机の上には出しません。置き場所の効果は研究で分かれていますが、手間はほとんどかからず、手に取るきっかけも減ります。
所要 30秒
勉強で使う道具は、スマホ以外で用意する
タイマーはキッチンタイマー、辞書は紙の辞書やパソコンなど、代わりがきくものはスマホを使いません。スマホでどうしても使うアプリがあるときは、通知を切ったまま、そのアプリだけを使って戻します。1つの用事から別のアプリへ操作が続くのを防ぐためです。
所要 初回10分
スマホを見るのは、休憩のときと決める
「25分勉強したら5分休憩、そのときだけスマホを見る」のように、見てよい時間を先に決めます。この決め方そのものを試した研究は見当たりませんが、勉強中に通知を受けない状態を保ちやすくなります。休憩の入れ方はポモドーロ・テクニックの記事で扱っています。
所要 1分
04 続けるためのコツスマホを離すのを続けるには?
いきなり完全に離そうとせず、通知を切るところから始めます。急ぎの連絡が心配なら例外を決め、1週間試して集中の感じ方を比べます。
- まずは「通知を切る」だけでよい。根拠が最もはっきりしているのはここ。
- スマホに強く頼っている人ほど、近くにあるときの影響が大きかったという報告がある。離すのが不安な人ほど、少しずつ距離を広げる価値がある。
- 家族からの急ぎの連絡が心配なら、特定の相手の電話だけ鳴るように設定し、それ以外は切る。
- 1週間、勉強の終わりに「スマホを手に取った回数」を1行メモする。記録が続ける助けになることは勉強の記録の研究で紹介しています。
05よくある質問
スマホを裏返して机に置くだけではだめですか?
通知を切って裏返すだけでも、通知による中断は防げます。ただ、電源を切って裏返したスマホが机にあるだけで注意のテストの成績が下がった実験もあります(Skowronekら 2023、42人)。一方で、置き場所で差が出なかった再現実験もあります(Ruiz PardoとMinda 2022)。手間がほとんどかからないので、できるときは別の部屋かかばんの中に移すのがおすすめです。
勉強にスマホのアプリを使うときはどうすればいいですか?
通知を切ったうえで、勉強に使うアプリだけを開き、使い終わったら手の届かない所に戻します。スマホで1つ用事を済ませると、そのまま別のアプリへと操作が続きやすいことが、研究のレビューで指摘されています(Wilmerら 2017)。タイマーや単語の確認など、紙や別の道具で代わりがきくものはスマホ以外にすると、手に取る回数そのものが減ります。
スマホが近くにないと不安で、かえって集中できません。
スマホに強く頼っている人ほど、近くにあるときの影響が大きかったという報告があります(Wardら 2017)。いきなり別の部屋に置くのがつらければ、まず通知を切ってかばんにしまうところから始め、慣れたら距離を広げます。家族からの急ぎの連絡が心配なら、特定の相手の電話だけ鳴る設定にしておく方法もあります。
スマホが近くにあると成績が下がるのは確かですか?
確かとまでは言えません。22本の研究をまとめたメタ分析では、スマホの使用や存在の悪い影響は全体として小さく(g = -0.14)、はっきりしたのは記憶の課題だけでした(Böttgerら 2023)。最初の研究(Wardら 2017)の実験をそのままくり返した研究では、置き場所による差は出ませんでした。一方、通知が鳴るだけで集中が乱れることは別の実験で示されています(Stothartら 2015)。まず通知を切るのが、根拠のはっきりした一歩です。
勉強法の早見表で「勉強中、スマホを別の部屋に置く」の判定を見る
ほかの勉強法も45種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Ward, A. F., Duke, K., Gneezy, A., & Bos, M. W. (2017). Brain drain: The mere presence of one's own smartphone reduces available cognitive capacity. Journal of the Association for Consumer Research, 2(2), 140–154. https://doi.org/10.1086/691462
- Ruiz Pardo, A. C., & Minda, J. P. (2022). Reexamining the "brain drain" effect: A replication of Ward et al. (2017). Acta Psychologica, 230, 103717. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2022.103717
- Skowronek, J., Seifert, A., & Lindberg, S. (2023). The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Scientific Reports, 13, 9363. https://doi.org/10.1038/s41598-023-36256-4
- Böttger, T., Poschik, M., & Zierer, K. (2023). Does the brain drain effect really exist? A meta-analysis. Behavioral Sciences, 13(9), 751. https://doi.org/10.3390/bs13090751
- Stothart, C., Mitchum, A., & Yehnert, C. (2015). The attentional cost of receiving a cell phone notification. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 41(4), 893–897. https://doi.org/10.1037/xhp0000100
- Wilmer, H. H., Sherman, L. E., & Chein, J. M. (2017). Smartphones and cognition: A review of research exploring the links between mobile technology habits and cognitive functioning. Frontiers in Psychology, 8, 605. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00605


