朝と夜、勉強に向いている時間はあるのか。体内時計(クロノタイプ)と学習の研究

「勉強は朝がいい」と聞いて早起きしたのに、頭が働かなかった。そんな経験はありませんか。結論から言うと、誰にとっても一番よい時間帯は研究で示されていません。朝に強い人・夜に強い人という体内時計の違いはありますが、「自分の得意な時間に合わせると成績が上がる」という効果も、大きな実験でははっきり確認されませんでした。
3行でわかる
- 人には朝型・夜型の違い(クロノタイプ)があり、時間帯によって頭の働きは変わる。
- 「自分の得意な時間に学ぶと成績が上がる」という結果を示した研究はあるが、446人の大規模な実験では、はっきりした効果は確認されなかった。
- 学校の時間割と体内時計が合わないと成績が下がりやすい、という調査はある。独学なら、眠る時間を削らない範囲で「頭が冴える時間」を自分で選べばよい。
01「朝型が正しい」は本当か
朝型が正しいわけではありません。朝に強いか夜に強いかは人によって違い、その違いを「クロノタイプ」と呼びます。どちらが優れているという話ではありません。
体には約1日のリズムをきざむ体内時計があります。眠くなる時間や、頭がよく働く時間は、このリズムの影響を受けます。
朝に頭が冴える人を「朝型」、夕方から夜に冴える人を「夜型」と呼びます。2007年のレビューは、注意力や記憶の成績が1日の中で上下すること、その上下の形がクロノタイプによって違うことをまとめています[1]。
年齢でも変わります。1993年の研究では、若い成人の多くが夜型か中間型だったのに対し、高齢の人は大半が朝型でした[2]。「朝が一番」は、誰かにとっては正しく、誰かにとっては合わない話なのです。
02科学的にわかっていること
得意な時間に合わせると成績が良くなる、という「同期効果」を示した研究はあります。ただし小さな実験が中心で、大規模な検証では一般的な効果は確認されませんでした。
Mayら(1993)[2]
若い人と高齢の人に、朝か午後遅くに記憶のテストをした。午後遅くは若い人の方が成績がよかったが、高齢の人が得意な朝には、年齢による差が見られなかった。
対象: 若い成人と高齢者(米デューク大学の研究) / 限界: 「見たことがあるか」を答える記憶テストのみ。年齢差の研究で、独学の成績を測ったものではない。
Goldsteinら(2007)[3]
朝型と夜型の中学生くらいの子どもに、朝(8〜10時)か午後(13〜15時)に知能検査をした。考える力を使う問題では、自分の得意な時間に受けた方が成績がよく、合計するとIQの推定値で6点の差になった。
対象: 11〜14歳の80人(朝型40人・夜型40人) / 限界: 人数が少ない。語彙(すでに知っている言葉の知識)の問題では、時間帯の差は出なかった。
Rey-Mermet・Rothen(2023)[4]
若い成人446人に、得意な時間と不得意な時間の両方で、記憶と注意の8つの課題をしてもらった。2つの課題で弱い効果があっただけで、全体としては「得意な時間に頭が冴える」はっきりした効果は確認されなかった。
対象: 若い成人446人(朝型・夜型がはっきりした191人でも同じ結果) / 限界: 短時間の課題で、何週間もかけて学ぶ場面は調べていない。
一方、学校の現場では別の形で影響が見えます。
Goldinら(2020)[5]
アルゼンチンの中等学校の生徒753人は、朝(7時45分)・昼(12時40分)・夕方(17時20分)のどれかの登校時間に、くじで割り振られていた。朝の登校では朝型の生徒の方が全科目で成績がよく、差は数学で最も大きかった。昼の登校ではこの差は消え、夜型の生徒は夕方の授業で成績がよかった。
対象: アルゼンチンの中等学校の生徒753人 / 限界: 学校の時間割の研究で、自分で時間を選べる独学とは状況が違う。
Smarr・Schirmer(2018)[6]
アメリカの大学生14,894人の、2年分のオンライン学習システムへのログイン記録を分析した。多くの学生は、平日と休日で生活リズムが平均30分以上ずれていた。ずれが大きい学生ほど成績が低く、夜型の学生で特にその傾向があった。
対象: アメリカの大学生14,894人 / 限界: 記録を見た調査で、ずれが成績を下げた(因果)とは言い切れない。
研究を一覧にすると、次のようになります。
| 研究 | 何を調べたか | 得意な時間の効果 |
|---|---|---|
| Goldsteinら(80人) | 短時間の知能検査 | あり(考える問題のみ) |
| Rey-Mermetら(446人) | 記憶・注意の8課題 | はっきりした効果なし |
| Goldinら(753人) | 学校の成績と登校時間 | 朝の登校で夜型が不利 |
実験室の結果は、大学生や子どもが短い課題を解いたものです。仕事のあとに何か月も資格の勉強をする社会人に、同じ大きさで当てはまるとは限りません。
03今日からできる小さな一歩
「朝か夜か」を決め打ちせず、自分の頭が冴える時間を1週間記録して選びます。考える勉強をその時間に置き、睡眠は削りません。
1週間、頭の冴え具合をメモする
勉強を始めるときに「冴えている・ふつう・ぼんやり」の3段階で記録します。朝と夜の両方で試すと比べやすくなります。
所要 1日10秒
考える勉強を、冴える時間に置く
問題演習や新しい単元など、頭を使う勉強を冴える時間に回します。Goldsteinら(2007)では、すでに知っている知識の問題には時間帯の差が出ませんでした。単語の見直しなどは、ぼんやりする時間でもかまいません。
所要 30分〜
朝に勉強するために、睡眠を削らない
夜型の人が無理に早起きすると、睡眠が短くなりがちです。眠る時間は変えずに、勉強の時間帯だけを動かします。眠ることと記憶の関係は睡眠と記憶の記事で紹介しています。
所要 0分
04続けるためのコツ
時間帯そのものより、毎日同じ時間に同じことをする方が続きます。平日と休日で起きる時間を大きく変えないことも助けになります。
- 勉強の時間帯を1つ決め、「いつもの行動の直後」に置く。決め方は「もし〜したら」で決める記事を参考にする。
- 休日も、起きる時間を平日と大きくずらさない。生活リズムのずれが大きい学生ほど成績が低い、という調査がある[6]。
- 計画は短めに見積もる。時間帯を決めても予定どおり進まないのは普通のことで、計画倒れの記事に対策をまとめている。
この記事は勉強の時間帯についての情報で、睡眠の悩みの診断や治療についての情報ではありません。眠れない日が続いてつらいときは、医療機関に相談してください。
05よくある質問
勉強は朝と夜、どちらがいいの?
研究では、誰にとっても一番よい時間帯は示されていません。朝型・夜型という個人差があり、Goldinら(2020)では朝の授業で夜型の生徒が不利でした。自分の頭が冴える時間を記録して選ぶのが現実的です。
夜型の人は早起きして勉強した方がいいの?
無理に早起きする根拠はありません。夜型の人が睡眠を削って朝に勉強すると、睡眠不足になりがちです。眠る時間を確保した上で、夜の冴えている時間に勉強する方が理にかなっています。
自分の得意な時間に勉強すると、成績は上がるの?
上がったとする小さな研究はありますが、確かとは言えません。446人を調べたRey-Mermet・Rothen(2023)では、得意な時間に頭が冴えるという一般的な効果は確認されませんでした。時間帯より、睡眠と続けやすさを優先してかまいません。
勉強法の早見表で「朝型・夜型に合わせた時間に勉強する」の判定を見る
ほかの勉強法も30種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Schmidt C, Collette F, Cajochen C, Peigneux P (2007). A time to think: circadian rhythms in human cognition. Cognitive Neuropsychology, 24(7), 755-789. https://doi.org/10.1080/02643290701754158
- May CP, Hasher L, Stoltzfus ER (1993). Optimal time of day and the magnitude of age differences in memory. Psychological Science, 4(5), 326-330. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.1993.tb00573.x
- Goldstein D, Hahn CS, Hasher L, Wiprzycka UJ, Zelazo PD (2007). Time of day, intellectual performance, and behavioral problems in Morning versus Evening type adolescents: Is there a synchrony effect? Personality and Individual Differences, 42(3), 431-440. https://doi.org/10.1016/j.paid.2006.07.008
- Rey-Mermet A, Rothen N (2023). The interplay of time-of-day and chronotype results in no general and robust cognitive boost. Collabra: Psychology, 9(1), 88337. https://doi.org/10.1525/collabra.88337
- Goldin AP, Sigman M, Braier G, Golombek DA, Leone MJ (2020). Interplay of chronotype and school timing predicts school performance. Nature Human Behaviour, 4, 387-396. https://doi.org/10.1038/s41562-020-0820-2
- Smarr BL, Schirmer AE (2018). 3.4 million real-world learning management system logins reveal the majority of students experience social jet lag correlated with decreased performance. Scientific Reports, 8, 4793. https://doi.org/10.1038/s41598-018-23044-8


