記憶・覚え方

音読と黙読、どちらが覚えられるのか。音読効果(プロダクション効果)の研究

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木の机の上に開かれた本とりんご
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

声に出して読む方が覚えられる気がする。でも、全部を音読するのは時間がかかる。そんな迷いには、研究がかなりはっきり答えています。声に出して読んだ部分は、黙読した部分より覚えやすくなります。ただし効果が大きいのは、覚えたい所だけを選んで声に出すときです。

3行でわかる

  1. 声に出して読んだ言葉は、黙読した言葉より覚えやすい。この現象を「音読効果(プロダクション効果)」と呼びます。
  2. 効果がはっきり出るのは、一部だけを声に出して、残りを黙読したときです。全部を音読すると、差が小さくなるか、消える研究があります。
  3. 試すなら、覚えたい要点だけを声に出して読みます。1週間後のテストや、文章の穴埋めでも効果が見られました。

01声に出すと覚えやすいのは「目立つ」から

声に出した部分は「自分で言った」という記憶が加わり、ほかと区別しやすくなります。研究では、この目立ちやすさが音読の効果の中心だと考えられています。

声に出すと覚えやすいことは、古くから知られていました。2010年にMacLeodらが8つの実験で詳しく調べ、「プロダクション効果」と呼んだことで、研究が一気に増えました[1]。この記事では「音読効果」と呼びます。

MacLeodらの説明はこうです。声に出した言葉には「口を動かした」「自分の声が聞こえた」という手がかりが加わります。あとで思い出すとき、その手がかりが、ほかの言葉と見分ける助けになります[1]。

この考え方のとおりなら、全部を声に出すと、どれも同じように目立つので効果は薄れるはずです。実際、研究の結果も読み方によって変わります。違いを表にまとめました。

読み方研究でわかっていること判定
一部だけ音読し、残りは黙読音読した部分の方がよく覚えていた。何度も確かめられている[1][3]効く
全部を音読(全部を黙読した人と比べる)見覚えのテストでは中くらいの差(g = 0.37)[2]。自分で書き出すテストでは差が見られなかった[4]条件しだい
口だけ動かす・ささやく・書く黙読よりは覚えやすいが、はっきり声に出すほどではない[6]条件しだい
他人が読むのを聞くだけ自分で声に出すより覚えにくく、気が散りやすい[7][8]当てにならない

判定は、出典の結果をもとに独学の科学が整理したものです。g は効果の大きさを表す数字で、0.2が小さい、0.5が中くらいの目安です。

02科学的にわかっていること

一部を声に出すと、その部分を覚えやすくなることは繰り返し確かめられています。一方で、その差の一部は「黙読した部分が弱くなる」ことから生まれている、という研究もあります。

MacLeodら(2010)[1]

8つの実験で、声に出して読んだ単語は、黙読した単語より見覚えのテストでよく当てられました。口だけ動かす読み方でも効果があり、意味のない作り物の単語でも同じでした。最初の3つの実験では、効果は同じリストの中で音読と黙読を混ぜたときに限られていました。

対象: 実験室での単語の学習 / 限界: 単語のリストを覚え、短い時間でテストする実験です。

Fawcett(2013)[2]

「全部を音読した人」と「全部を黙読した人」を比べた研究をまとめたメタ分析(複数の研究を統計でまとめる方法)です。見覚えのテストでは、音読した人の方が成績がよく、効果の大きさはg = 0.37の中くらいでした。

対象: 見覚えのテスト(再認)を使った研究 / 限界: この効果量は見覚えのテストについての値です。自分で思い出して書き出すテストの結果は、次の研究を見てください。

Bodnerら(2014)・JonesとPyc(2014)[3][4]

音読と黙読を混ぜた読み方では、音読した部分が得をするというより、黙読した部分の成績が下がっていました。音読と黙読を混ぜず、まとまりごとに分けると、この下がり方は消えました。思い出して書き出すテストでは、全部を音読しても、全部を黙読した人と差がありませんでした。

対象: 単語のリストを覚える実験 / 限界: 見覚えのテストでは、全員音読でも効果が出た研究があり(Bodnerら)、結果はテストの種類で分かれます。

Ozubkoら(2012)[5]

3つの実験で、勉強法として使えるかを確かめました。1週間あけたテストでも、音読した単語の方がよく覚えていました。単語の組や文でも効果があり、勉強向けの文章を読んで穴埋めテストを受けると、音読した部分を問う問題の方がよくできていました。

対象: 実験室での単語・文・文章の学習 / 限界: 長くても1週間のテストで、何か月も続く試験勉強とは条件が違います。

Varao Sousaら(2013)[8]

大学生235人が、文章を「音読」「黙読」「人が読むのを聞く」の3通りで読みました。考えがよそにそれる割合は、聞くだけで約51%、黙読で約36%で、音読はそれより少なくなりました。一方、文章の内容テストでは、音読と黙読で目立った差は見られませんでした。聞くだけの読み方は、内容テストの成績もいちばん低くなりました。

対象: カナダの大学生(分析は211人) / 限界: 別の研究では、音読の方が気がそれやすいという逆の結果も出ています。

ここで紹介した実験の多くは、単語や短い文章を覚え、数分後から1週間後にテストを受けたものです。資格試験のように何か月もかけて広い範囲を学ぶ社会人の独学で、同じ大きさの効果が出るとは限りません。

03今日からできる小さな一歩

次に教科書を読むとき、覚えたい要点だけを声に出して読みます。全部を音読するより時間がかからず、研究で効果が出たやり方に近くなります。

1

1ページで声に出す所を2〜3か所に絞る

用語の定義、試験に出る数字、間違えやすい規則など、覚えたい部分を先に決めます。線を引くときと同じく、選びすぎると目立たなくなります。

所要 1分

2

その部分だけ、はっきり声に出して読む

ささやくより、ふつうの声の方が効果は大きいとされています。声を出せない場所では、口を動かすか、紙に書き写します。

所要 1か所につき10〜20秒

3

翌日、本を閉じて思い出す

音読は「覚える入口」です。思い出す練習と組み合わせると、覚えたかどうかを確かめられます。

所要 5分

04続けるためのコツ

音読は「全部やる」と決めると続きません。要点だけに絞り、黙読と使い分けることが、研究の結果にも、続けやすさにも合っています。

  • 音読するのは「あとで思い出したい所」だけにする。黙読した部分は相対的に弱くなりやすいので、選ぶ所は大事なものに限る。
  • 声に出した手ごたえを、覚えた証拠と思わない。理由はわかったつもりの記事で紹介しています。
  • 「なぜそうなる?」と自分に問いながら読む方法もあります。精緻化質問の記事と組み合わせて使えます。
  • 録音を聞くだけの復習は、自分で声に出すより効果が小さい。移動中に使うなら、聞いたあとに口に出して言い直す。

05よくある質問

音読と黙読、結局どちらが覚えられますか?

覚えたい部分だけを声に出し、ほかは黙読する読み方がいちばん研究に合っています。混ぜて読むと、声に出した部分は黙読した部分より覚えやすくなります。全部を音読した人と全部を黙読した人の比較では、差は中くらいだった研究と、見られなかった研究があります。

教科書をまるごと音読するのは意味がありますか?

覚える効果を狙うなら、おすすめしにくい方法です。全部を音読すると、声に出した部分が目立たなくなり、効果が小さくなると考えられています。時間もかかるので、要点だけに絞る方が向いています。

声を出せない場所ではどうすればいいですか?

口だけ動かす、小さくささやく、書く、タイピングするといった方法でも、黙読より覚えやすくなった実験があります。ただし、はっきり声に出すときほどの効果はありませんでした。

自分の声を録音して聞くのは効きますか?

自分の声の録音を聞いた場合は、他人の声を聞くより覚えやすく、自分で声に出すよりは劣りました。録音を聞くのは、その場で声に出せないときの代わりと考えるのが無難です。

大人や年をとってからでも効果はありますか?

高齢の人でも音読効果は確かめられています。ただ、若い人よりは効果が小さくなりました。

勉強法の早見表で「声に出して読む(音読)」の判定を見る
ほかの勉強法も39種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. MacLeod, C. M., Gopie, N., Hourihan, K. L., Neary, K. R., & Ozubko, J. D. (2010). The production effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(3), 671-685. https://doi.org/10.1037/a0018785
  2. Fawcett, J. M. (2013). The production effect benefits performance in between-subject designs: A meta-analysis. Acta Psychologica, 142(1), 1-5. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2012.10.001
  3. Bodner, G. E., Taikh, A., & Fawcett, J. M. (2014). Assessing the costs and benefits of production in recognition. Psychonomic Bulletin & Review, 21(1), 149-154. https://doi.org/10.3758/s13423-013-0485-1
  4. Jones, A. C., & Pyc, M. A. (2014). The production effect: Costs and benefits in free recall. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 40(1), 300-305. https://doi.org/10.1037/a0033337
  5. Ozubko, J. D., Hourihan, K. L., & MacLeod, C. M. (2012). Production benefits learning: The production effect endures and improves memory for text. Memory, 20(7), 717-727. https://doi.org/10.1080/09658211.2012.699070
  6. Forrin, N. D., MacLeod, C. M., & Ozubko, J. D. (2012). Widening the boundaries of the production effect. Memory & Cognition, 40(7), 1046-1055. https://doi.org/10.3758/s13421-012-0210-8
  7. Forrin, N. D., & MacLeod, C. M. (2018). This time it's personal: The memory benefit of hearing oneself. Memory, 26(4), 574-579. https://doi.org/10.1080/09658211.2017.1383434
  8. Varao Sousa, T. L., Carriere, J. S. A., & Smilek, D. (2013). The way we encounter reading material influences how frequently we mind wander. Frontiers in Psychology, 4, 892. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2013.00892
  9. Lin, O. Y., & MacLeod, C. M. (2012). Aging and the production effect: A test of the distinctiveness account. Canadian Journal of Experimental Psychology, 66(3), 212-216. https://doi.org/10.1037/a0028309