集中・環境

「青い色は集中力を上げる、赤は試験の点を下げる」は本当?勉強部屋・ノートの色と成績の研究(効く・効かないの判定)

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色とりどりの布の見本
Photo: Textile and Fibre Technology, CSIRO / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「青は集中力を高める色」「赤は焦りを生むので勉強や試験に向かない」。勉強部屋のカーテンやノート、ペンの色を選ぶときに、こんな話を目にしたことがあるかもしれません。色と成績の研究を調べると、判定は「当てにならない」でした。最初は大きな効果が報告されましたが、追試やメタ分析で裏付けが弱まっています。

3行でわかる

  1. 判定:「当てにならない」。「試験の前に赤を見ると点が下がる」という実験は、67の効果をまとめたメタ分析で、発表されにくい結果を補正すると裏付けが残らなかった。
  2. 「青で集中できる」も確かめられていない。有名な実験で青が良かったのは発想を広げる課題で、細かい点に気づく課題では赤のほうが良かった。その一部の追試では、同じ結果が出なかった。
  3. 勉強の環境を整えるなら、色を選び直すより、明るさ・音・スマホの置き場所を見直すほうが手軽で確実。赤ペンで丸つけをしても心配はいらない。

01 通説の中身「青は集中、赤は不利」はどこから来た?

2007年と2009年に発表された、色と成績の実験がもとになっています。赤は「失敗」や「危険」を思い出させて慎重にさせ、青は気持ちを前向きにさせる、という説明が広まりました。

2007年、Elliotらは、知能テストなどの前に赤を少し見せるだけで成績が下がったと報告しました[1]。テスト用紙の隅の番号を赤で書く、表紙に赤い四角を置く、といった小さな違いです。研究者らは、成績が問われる場面では赤が「失敗の危険」と結びついているため、赤を見ると失敗を避けたい気持ちが強まると説明しました。

2009年には、科学誌『Science』に、赤と青で得意な課題が変わるという実験が載りました[2]。赤は細かい点に気づく課題を、青は発想を広げる課題を助けた、という内容です。「青は集中力の色」という話は、この結果を単純にしたものと考えられます。実際には、注意深さが要る課題で良かったのは赤のほうでした。

02 科学的にわかっていること色で勉強や試験の成績は変わる?

はっきり変わるとは言えません。最初の実験では大きな差が出ましたが、その後の大きな研究や追試では差が小さいか、見られないことが続きました。メタ分析でも、裏付けは残りませんでした。

Elliotら(2007)[1]

4つの実験で、知能テストのような大事なテストの前に赤を少し見ると、緑や黒・灰色を見たときより成績が下がった。研究者らは、本人が気づかないうちに起きる効果だとした。残り2つの実験では、課題の選び方と脳の活動に、失敗を避ける反応が見られたとした。

対象: 6つの実験の参加者 / 限界: 後のメタ分析によると、この研究の効果の大きさ(d = -0.51〜-1.14)は、その後の研究よりずっと大きかった[6]。

MehtaとZhu(2009)[2]

赤か青の色を見せながら課題をしてもらった。赤は細かい点に気づく課題の成績を上げ、青は発想を広げる課題の成績を上げた(208人と118人の実験)。研究者らは、赤は失敗を避ける気持ちを、青は前に進む気持ちを強めると説明した。

対象: 6つの実験、42〜208人 / 限界: 短い実験室の課題。何時間も勉強する場面は調べていない。

Steele(2014)[3]

MehtaとZhuの実験の1つ(文字の並べ替えを解く速さ)を、同じ問題・同じ説明・同じ色で、もとの3倍以上の人数でやり直した。色による差は再現されなかった。効果があれば見つけられるだけの人数だったと、著者は書いている。

対象: もとの実験の3倍以上の参加者 / 限界: 6つの実験のうち1つの追試。ほかの課題の結果まで否定したものではない。

Xiaら(2016)[4]

中国の大学生125人と81人で、背景の色(赤・青・灰色)を変えて課題をしてもらった。簡単な見比べの課題では赤が、難しい見比べの課題と発想の課題では青が良かった。著者らは、色の効果は課題の種類と難しさの組み合わせで変わるとまとめた。

対象: 中国の大学生206人 / 限界: 1つの大学の学生で、1回の短い課題。「青なら集中できる」と言い切れる結果ではない。

Gnambs(2020)[6]

赤と別の色を見た後のテストの成績を比べた38のグループ・67の効果をまとめたメタ分析。並べ替えの課題(d = -0.06)と知識のテスト(d = -0.04)では差がなかった。推理のテストだけは赤のほうが低かった(d = -0.34)。ただし大きな効果は初期の研究に集中し、発表されにくい結果を補正すると、赤が成績を下げる裏付けは残らなかった。

対象: 1グループの人数は中央値76人、平均年齢17〜35歳 / 限界: まとめた研究の約59%だけが査読論文で、残りは論文になっていない研究も含む。

色と心の研究をまとめたElliot(2015)は、2007年の実験の著者の一人です。その本人が、この分野は「まだ始まったばかり」で、人数の少ない研究が多く、実生活への応用には慎重であるべきだと書いています[5]。ここで紹介した研究はどれも短い実験で、何か月も独学する社会人を調べたものではありません。

03 今日からできる小さな一歩色の代わりに、何を整えれば集中できる?

色を選び直す前に、明るさ・音・スマホの置き場所から見直します。ペンやノートの色は、見やすさと気分で決めてかまいません。

1

部屋の色を変える前に、明るさを確かめる

カーテンや壁紙の色に手間をかけるより、昼は手元を明るくし、寝る前は明かりを落とします。やり方は 勉強部屋の明かりの整え方 にまとめています。

所要 5分

2

スマホを、手の届かない場所に置く

色を変えるより手軽なのが、スマホを離すことです。別の部屋かかばんの中に入れてから始めます。研究の中身と再現の結果は 勉強中のスマホの置き方 にまとめています。

所要 1分

3

机の上を、使う教材だけにする

色を選ぶより先に、目に入る物を減らします。片付けの研究は 机の散らかりと集中の研究 にまとめています。

所要 5分

4

ペンの色は「見分けやすさ」で決める

赤ペンで丸つけをしても、点が下がる心配はほとんどありません[6]。「間違い」「覚え直す」「理解した」のように、色ごとの意味を2〜3色に決めておくと、見直しが速くなります。

所要 決めるだけなら2分

5

気になるなら、2週間だけ自分で比べる

青いデスクマットなどを試したいなら、使う週と使わない週で、1日の小テストの正答数を記録します。研究では差が出ていないため、差がなければ元に戻します。記録には 勉強する場所と時間帯の記録表 が使えます。

所要 1日1分

04 続けるためのコツ「集中できる〇〇」という話は、どう見分ける?

最初の実験だけで広まった話は、追試やメタ分析で効果が小さくなることがよくあります。「何人で」「何回確かめられたか」を見る習慣をつけると、手間とお金をかける前に見分けられます。

05よくある質問

勉強部屋の壁やカーテンを青にすると、集中できる?

研究からは、そう言える根拠はありません。有名な実験では、青で成績が上がったのは発想を広げる課題で、細かい点に気づく課題では赤のほうが良い結果でした。その追試も結果が分かれています。色を変える前に、明るさや音、スマホの置き場所を見直すほうが手軽です。

赤ペンで丸つけや書き込みをすると、点が下がる?

心配はいりません。赤を見ると点が下がるという研究はありますが、67の効果をまとめたメタ分析では、知識のテストでは差が見られず、発表されにくい結果を補正すると効果の裏付けは残りませんでした。間違いに気づきやすい色なら、赤ペンを使ってかまいません。

試験の前に赤い物を見ないほうがいい?

気にする必要はほとんどありません。2007年の実験では、試験の前に赤を見ると点が下がりましたが、その後の大きな研究や追試では同じ結果が出ないことが続きました。試験前は色より、睡眠と直前の思い出す練習に時間を使います。

色で集中力が変わるという話は、全部うそ?

うそと決まったわけではなく、まだ確かめられていない段階です。色と心の研究をまとめた研究者自身が、この分野はまだ始まったばかりで、人数の少ない研究が多く、実生活への応用には慎重であるべきだと書いています。

出典

  1. Elliot, A. J., Maier, M. A., Moller, A. C., Friedman, R., & Meinhardt, J. (2007). Color and psychological functioning: the effect of red on performance attainment. Journal of Experimental Psychology: General, 136(1), 154–168. https://doi.org/10.1037/0096-3445.136.1.154
  2. Mehta, R., & Zhu, R. J. (2009). Blue or red? Exploring the effect of color on cognitive task performances. Science, 323(5918), 1226–1229. https://doi.org/10.1126/science.1169144
  3. Steele, K. M. (2014). Failure to replicate the Mehta and Zhu (2009) color-priming effect on anagram solution times. Psychonomic Bulletin & Review, 21, 771–776. https://doi.org/10.3758/s13423-013-0548-3
  4. Xia, T., Song, L., Wang, T. T., Tan, L., & Mo, L. (2016). Exploring the effect of red and blue on cognitive task performances. Frontiers in Psychology, 7, 784. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.00784
  5. Elliot, A. J. (2015). Color and psychological functioning: a review of theoretical and empirical work. Frontiers in Psychology, 6, 368. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00368
  6. Gnambs, T. (2020). Limited evidence for the effect of red color on cognitive performance: A meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 27, 1374–1382. https://doi.org/10.3758/s13423-020-01772-1