部屋で勉強すると頭がぼんやりする。換気はどうする?こもった空気を入れかえるやり方(二酸化炭素と換気の研究とその限界)

窓を閉めきった部屋で勉強していると、だんだん頭がぼんやりして、眠くなってきます。研究からのおすすめは、勉強を始める前と休憩のたびに、窓やドアを開けて空気を入れかえることです。換気を増やすと頭の働きの成績が良くなった実験がある一方、二酸化炭素そのものの影響は研究によって結果が分かれています。わかっていることと、勉強での換気のやり方をまとめます。
3行でわかる
- 換気を増やした実験では、子どもの計算や読解の正答数が3〜7%増えた。大人でも、換気を増やして化学物質を減らした日に意思決定の成績が高かった。換気を良くすることは、勉強の環境づくりとして試す価値がある。
- ただし「二酸化炭素そのものが頭を鈍らせる」かどうかは結果が分かれる。純粋な二酸化炭素を足しただけでは、成績が変わらなかった実験もある。
- 勉強では、①始める前に入れかえる ②休憩のたびに窓とドアを開ける ③人が多い・部屋が狭いときは回数を増やす ④寝室も換気する、の順で取り入れる。
01 悩みの正体閉めきった部屋だと、なぜ頭がぼんやりする?
閉めきった部屋では、人の吐く息に含まれる二酸化炭素や、体から出るにおいなどがたまっていきます。換気の悪い空気で頭の働きが落ちることは実験で示されていますが、どの成分が原因かはまだはっきりしていません。
人は呼吸のたびに二酸化炭素を吐き出します。窓やドアを閉めきると、部屋の二酸化炭素の濃さ(ppmという単位で表します)は少しずつ上がります。
そのため二酸化炭素の濃さは、部屋の空気がどれだけ入れかわっているかの目印として使われてきました。研究では、この目印と頭の働きの関係が調べられています。
音や目に入る物など、ほかの環境の整え方は家だと勉強に集中できないときの記事で扱いました。この記事では空気の入れかえに絞ります。
02 科学的にわかっていること換気を良くすると、勉強の成績は上がる?
換気を増やすと、計算・読解・意思決定などの成績が上がった実験があります。一方で、二酸化炭素だけを増やしても成績が変わらなかった実験もあり、「換気の悪い空気全体」が影響している可能性があります。
Petersenら(2016)[1]
2つの小学校(4教室)で、教室に入れる外の空気を1人あたり毎秒1.7Lから6.6Lに増やした。すると4種類のテストすべてで正答数が増えた(足し算6.3%、数の比較4.8%、文法の推論3.2%、読解7.4%)。間違いの数は変わらなかった。
対象: 10〜12歳の子ども。どちらの条件か子どもにも測る側にも知らせない形で、同じ教室で両方の条件をくらべた / 限界: 子どもの短時間のテストで、慣れや疲れの影響は補正していない。
Allenら(2016)[2]
事務所の環境を再現した部屋で、24人が6日間、朝9時から夕方5時まで働いた。化学物質が少なく外の空気を多く入れた日は、化学物質の多いふつうの事務所を再現した日にくらべ、意思決定の成績が平均101%高かった。二酸化炭素だけを足した日は、外の空気を多く入れた日にくらべ、約945ppmで15%、約1,400ppmで50%成績が低かった。
対象: 米国の建築・設計・プログラミングなどの仕事をする人24人。本人はどの条件か知らされていない / 限界: 少人数で、意思決定の成績は1種類の検査(SMS)で測った。
Zhangら(2017)[3]
25人が各条件で255分過ごした実験。純粋な二酸化炭素を足して1,000ppmや3,000ppmにしても、空気の感じ方・体調・頭の働きの成績に差はなかった。一方、換気を減らして人から出る物質がたまった3,000ppmの条件では、頭痛・疲れ・眠気・考えにくさが強まり、計算の速さなども落ちた。
対象: 成人25人 / 限界: 影響が報告されたのは、換気をかなり減らした3,000ppmの条件。ふだんの部屋に近い濃さでどうなるかは、この実験だけではわからない。
Duら(2020)[4]、Satishら(2012)[5]
二酸化炭素と頭の働きを調べた37の実験をまとめたレビューでは、結果は一致していなかった。質の高い研究にしぼると、純粋な二酸化炭素の影響が見られたのは、Satishらが使ったような高度な意思決定の検査だけだった。換気を減らした場合は、作業の速さが落ちたが、正確さは変わらなかった。
Satishら(2012)は、主に大学生22人が1,000ppmで9項目中6項目、2,500ppmで7項目の成績低下を示した最初の実験。著者ら自身も「確認が必要」と書いている。
4つの研究を表にまとめます。
| 研究 | 変えたもの | 結果 |
|---|---|---|
| Petersenら(子ども) | 換気の量 | 4つのテストで正答数が3〜7%増えた |
| Allenら(大人24人) | 換気の量・化学物質・二酸化炭素 | どちらでも意思決定の成績が変わった |
| Zhangら(大人25人) | 二酸化炭素だけ | 差なし |
| Zhangら(大人25人) | 換気の量(3,000ppm) | 眠気・頭痛が増え、計算が遅くなった |
まとめると、換気を良くすることには根拠がありますが、二酸化炭素の数字だけで判断できるほど単純ではありません。どれも数時間〜数日の実験で、長い独学の成績を測ったものではありません。
03 今日からできる小さな一歩勉強部屋の換気は、どうすればいい?
勉強を始める前に空気を入れかえ、休憩のたびに窓とドアを開けます。何分ごとが最適かは研究で決まっていないので、休憩の区切りに合わせるのが続けやすいやり方です。
勉強を始める前に、窓を開けて空気を入れかえる
しばらく閉めきっていた部屋や、寝起きの寝室で勉強するときは、始める前に窓を開けます。向かい合う窓や、窓とドアを両方開けると、空気が通りやすくなります。
所要 3〜5分
人が多い・部屋が狭いときは、回数を増やす
二酸化炭素は人の呼吸から出るので、狭い部屋や家族と同じ部屋で勉強すると早くたまります。ドアを少し開けておく、換気扇や24時間換気を止めない、なども使えます。
所要 0分
寝室も、眠る前に換気しておく
学生寮の1人部屋で行われた実験では、窓を開けたり換気扇を回したりして二酸化炭素を下げると、睡眠の質と翌日の集中のしやすさ、論理的な思考のテストが良くなりました[6]。夜に勉強する部屋と寝る部屋が同じなら、寝る前にも入れかえます。
所要 3〜5分
眠気と進み具合を、換気した日としない日でくらべる
1〜2週間、勉強の終わりに「換気した回数」と「眠気・進み具合」を1行ずつ書きます。記録のつけ方は勉強する場所と時間帯の記録表が使えます。
所要 1日30秒
二酸化炭素を測る機器を使う場合も、数字は「換気が足りているかの目印」と考えます。上の研究では、1,000ppm前後で影響が出た実験と出なかった実験があり、安全か危険かの境目を示すものではありません。
04 続けるためのコツ換気を、忘れずに続けるには?
換気を単独の作業にせず、「休憩で立ったら窓を開ける」のように、すでにある行動とセットにします。暑さ・寒さで体調をくずさないことを優先します。
- 「タイマーが鳴ったら窓を開けて立つ」と、休憩の合図と換気を1つにまとめる。
- 真夏や真冬は、窓を全開にしなくてよい。少しだけ開ける、ドア側から空気を通すなど、室温を保てる方法を選ぶ。
- 眠気が強いときは、換気だけで解決しようとしない。寝不足の影響は寝不足で勉強した後の立て直しの記事を参考に。
- カフェや図書館など、家以外の場所の選び方はカフェだと勉強がはかどる気がする理由の記事で扱っている。
05よくある質問
部屋の二酸化炭素が増えると、勉強に集中できなくなるの?
換気の悪い空気で頭の働きが落ちることは実験で示されていますが、二酸化炭素そのものが原因かははっきりしません。37の実験をまとめたDuら(2020)のレビューでは結果が一致せず、純粋な二酸化炭素を足したZhangら(2017)の実験では、3,000ppmでも成績は変わりませんでした。
勉強中は何分ごとに換気すればいい?
研究で決まった正解はありません。この記事で紹介した実験は、換気の量をくらべたもので、窓を開ける間隔を調べたものではありません。勉強なら、始める前と休憩のたび(30分〜1時間ごと)に入れかえるのが、取り入れやすい目安です。
空気清浄機があれば、換気しなくてもいい?
この記事で紹介した研究は、外の空気を入れる量(換気)を変えたものです。人の吐く息で増える二酸化炭素を減らすには、外の空気と入れかえる必要があります。空気清浄機の効果は、ここで紹介した研究では調べられていません。
寝る部屋の換気も関係ある?
関係する可能性があります。学生寮の1人部屋で行われたStrøm-Tejsenら(2016)の実験では、二酸化炭素を平均2,585ppmから660ppmに下げると、睡眠の質と翌日の集中のしやすさ、論理的な思考のテストの成績が良くなりました。ただし参加者は14人と16人の少人数です。
出典
- Petersen, S., Jensen, K. L., Pedersen, A. L. S., & Rasmussen, H. S. (2016). The effect of increased classroom ventilation rate indicated by reduced CO2 concentration on the performance of schoolwork by children. Indoor Air, 26(3), 366–379. https://doi.org/10.1111/ina.12210
- Allen, J. G., MacNaughton, P., Satish, U., Santanam, S., Vallarino, J., & Spengler, J. D. (2016). Associations of cognitive function scores with carbon dioxide, ventilation, and volatile organic compound exposures in office workers: A controlled exposure study of green and conventional office environments. Environmental Health Perspectives, 124(6), 805–812. https://doi.org/10.1289/ehp.1510037
- Zhang, X., Wargocki, P., Lian, Z., & Thyregod, C. (2017). Effects of exposure to carbon dioxide and bioeffluents on perceived air quality, self-assessed acute health symptoms, and cognitive performance. Indoor Air, 27(1), 47–64. https://doi.org/10.1111/ina.12284
- Du, B., Tandoc, M. C., Mack, M. L., & Siegel, J. A. (2020). Indoor CO2 concentrations and cognitive function: A critical review. Indoor Air, 30(6), 1067–1082. https://doi.org/10.1111/ina.12706
- Satish, U., Mendell, M. J., Shekhar, K., Hotchi, T., Sullivan, D., Streufert, S., & Fisk, W. J. (2012). Is CO2 an indoor pollutant? Direct effects of low-to-moderate CO2 concentrations on human decision-making performance. Environmental Health Perspectives, 120(12), 1671–1677. https://doi.org/10.1289/ehp.1104789
- Strøm-Tejsen, P., Zukowska, D., Wargocki, P., & Wyon, D. P. (2016). The effects of bedroom air quality on sleep and next-day performance. Indoor Air, 26(5), 679–686. https://doi.org/10.1111/ina.12254


