集中・環境

図書館や自習室だと、家より勉強がはかどるのはなぜ?「人がいると集中できる」の研究でわかったことと限界

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書棚が何層にも並ぶ図書館の閲覧室
Photo: Matthew Petroff / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

家では30分ともたないのに、図書館や自習室に行くと2時間たっていた。周りの人が黙々と勉強しているのを見ると、自分も手が止まらない。そんな経験がある人は多いはずです。人がいる場所ではかどる理由は、心理学で100年以上調べられてきました。ただし、わかっていることは「人がいると何でもうまくいく」という単純な話ではありません。

3行でわかる

  1. 理由は大きく2つ考えられる。人がそばにいると注意が引き締まる効果(社会的促進)と、家にあるスマホや布団などの誘惑から物理的に離れられることだ。
  2. 33の研究をまとめたメタ分析では、人がいると、紛らわしい情報を無視して答える課題で反応が速くなった(g = 0.30)。ただし間違いの数は変わらなかった。「周りが頑張っていると自分も頑張れる」という実験は、176人と120人の再現で確かめられなかった。
  3. 新しい単語を目の前の先生から教わった大学生は、同じ先生の動画で学んだときより覚えた数が少なかった実験もある。人のいる場所が合うかどうかは、作業の種類で比べてみるのが確実だ。

01 悩みの正体図書館や自習室だと、なぜ勉強がはかどる?

人がそばにいるだけで注意が引き締まる効果と、家の誘惑から離れられる効果の2つが重なるためと考えられます。どちらの効果がどれだけ大きいかは、人と作業によって違います。

1つめは、周りに人がいると作業の成績が変わる現象です。心理学では社会的促進と呼ばれ、100年以上前、一人で走るより競争している方が速く走る自転車選手の観察から研究が始まりました[2]。図書館や自習室では、知らない人でも「誰かがいる」状態が続きます。

2つめは、誘惑から離れられることです。自制心の研究者たちは、その場で我慢するより、誘惑の少ない場所を先に選ぶ方が楽で効果的だと論じています[5]。その例として挙げられているのが、「スマホを持たずに図書館へ行く学生」です[5]。家にはスマホ、テレビ、布団、家事があり、目に入るたびに我慢が必要になります。

つまり図書館の「はかどる感じ」は、人の目の効果だけでなく、家から離れたこと自体の効果も含んでいます。この2つは、研究でもまだ切り分けられていません。

02 科学的にわかっていること人がいると、本当に集中できる?

人がいると反応が速くなる効果は確認されています。一方で、間違いが減るとは限らず、新しいことを覚える場面では逆に成績が下がった実験もあります。

Garcia-MarquesとFernandes(2026)[1]

33の研究をまとめたメタ分析。赤いインクで「あお」と書かれた文字のインクの色を答えるような、紛らわしい情報を無視する課題(ストループ課題)を調べた。人がいると、一人のときより紛らわしさによる遅れが小さくなった(g = 0.30、小さめの効果)。一方、間違いの数には差がなかった。課題の回数が多い研究ほど、効果は小さかった。

対象: 実験室で反応の速さを測った研究 / 限界: 1回数分の課題で、勉強の理解や記憶は測っていない。採点される・評価されるとわかっている場面では効果がなかった。

McHughら(2025)[2]

100年以上前の有名な実験(Triplettの実験)を、事前に計画を公開してやり直した。アイルランドの7〜13歳の子ども445人が、ハンドルを回して目印を動かす作業を、一人と二人で2回ずつ行った。二人のときの方が速かった(平均58.4秒→55.0秒)。二人で行った直後の一人の回でも、速さが続くようだった。

対象: 小学校などに通う子ども445人 / 限界: 単純な手作業。著者らは、速くなった理由が「人がいること」なのか「競争」なのかは区別できないと述べている。

Mazzaら(2025)[3]

「隣の人が難しい課題で頑張ると、自分も頑張るようになる」という2016年の実験(38人)を、2つの実験でやり直した。そのままの方法で再現した176人でも、より難しい課題にした120人でも、隣の人の頑張りが移る効果は確認できなかった。元の研究の効果は、より頑健な方法で分析し直すと消えた。

対象: 大学生(176人と120人) / 限界: 反応の速さを測るコンピューター課題で、隣の人の様子が見えにくかった可能性を著者らも挙げている。

Martinら(2019)[4]

英語を学ぶスペインの大学生36人が、新しい英単語12語ずつを3通りの方法で覚えた。同じ先生が目の前で教えたときは、動画で教えたときより、覚えた単語が少なかった。別の36人の実験(新しく作った単語)でも同じ結果だった。著者らは、人がいると難しい作業の成績が下がる「社会的抑制」と考えている。

対象: スペインの大学生(各実験36人) / 限界: 先生が直接話しかける場面で、図書館で知らない人が近くにいる状況とは違う。

人がいる効果の研究は、ほとんどが数分の課題で反応の速さや作業の速さを測ったものです。図書館や自習室で何時間も勉強したときに、理解や記憶がどう変わるかを直接調べた研究は見当たりませんでした。

03 今日からできる小さな一歩図書館と家、どう使い分ければいい?

家では誘惑を先に遠ざけ、図書館では手を動かす作業を中心にします。どちらで何がはかどるかは、同じ量の問題で比べて記録すると確かめられます。

1

家で勉強する日は、誘惑を「見えない場所」へ先に移す

図書館の効果の一部は、誘惑から離れることです[5]。家でも、スマホを別の部屋に置く、テレビのない場所に座るなど、始める前に場所を変えます。置き場所の工夫は勉強中のスマホの置き方で紹介しています。

所要 2分

2

図書館では、問題演習や復習など「手を動かす作業」を中心にする

人がいると速くなる効果は、作業や反応の速さで確認されています[1][2]。問題を解く、暗記カードで思い出すなど、手が止まりにくい作業を持っていくと、効果を生かしやすいと考えられます。

所要 行く前の準備5分

3

新しい内容を覚えるのが進まないなら、静かな一人の場所も試す

新しい単語を人の前で覚えると、成績が下がった実験があります[4]。図書館で教科書の新しい章が頭に入らないと感じたら、家の静かな時間にも同じ量を読んで比べます。

所要 各30分×1回

4

場所ごとに「解けた問題数」を2週間記録する

「はかどった気がする」と実際の成果は、ずれることがあります。同じ種類の問題を、図書館と家で同じ時間ずつ解き、解けた数を書き残します。記録の表は勉強する場所と時間帯の記録表が使えます。

所要 1回1分の記録

04 続けるためのコツ図書館に行けない日は、どうする?

家の中に勉強だけをする場所を決め、誘惑を遠ざけます。人の目に頼りすぎず、場所と時間を決めること自体を習慣にします。

05よくある質問

図書館だと勉強がはかどるのは気のせい?

気のせいとは言い切れません。33の研究をまとめた分析では、人がいると紛らわしい情報を無視して答える課題で反応が速くなりました。ただし間違いの数は変わらず、どれも数分の実験です。図書館で何時間も勉強したときの理解や記憶を直接調べた研究は見当たりません。

周りが頑張っている自習室だと、自分も頑張れる?

「隣の人の頑張りが移る」という2016年の実験は、176人と120人の大学生で再現を試みても確かめられませんでした。周りに人がいる効果はあっても、他人の頑張りそのものが移るかははっきりしていません。周りの様子より、自分が何をどれだけやるかを先に決める方が確実です。

人がいると、かえって集中できないのは自分だけ?

自分だけではありません。英単語を覚える実験では、先生が目の前にいると、動画で教わるより覚えた数が少なくなりました。人がいると難しい作業の成績が下がる「社会的抑制」と呼ばれる現象です。新しい内容を覚えるときは、一人の静かな場所の方が合う人もいます。

出典

  1. Garcia-Marques, T., & Fernandes, A. C. (2026). Meta-analysis of social presence effects on Stroop task performance. Psychological Reports, 129(1), 29–62. https://doi.org/10.1177/00332941241227150
  2. McHugh, C., Griffin, S. M., Kinsella, E. L., Quayle, M., Strunz, B., & Muldoon, O. T. (2025). A replication of Triplett's 'social facilitation experiment'. Scientific Reports, 15, 40366. https://doi.org/10.1038/s41598-025-25608-x
  3. Mazza, A., Voorrips, E., Hughes, G., Desender, K., Van den Bussche, E., & Stuyck, H. (2025). Is mental effort exertion contagious? A replication study. Journal of Cognition, 8(1), 43. https://doi.org/10.5334/joc.456
  4. Martin, C. D., Underwood, A., & Molinaro, N. (2019). I'm doing better on my own: Social inhibition in vocabulary learning in adults. Frontiers in Psychology, 10, 1350. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.01350
  5. Duckworth, A. L., Gendler, T. S., & Gross, J. J. (2016). Situational strategies for self-control. Perspectives on Psychological Science, 11(1), 35–55. https://doi.org/10.1177/1745691615623247