集中・環境

勉強のあと、寝る前のスマホで眠りが削られる。寝る30分前にスマホを手放すやり方(寝る前のスマホを制限した実験と、その限界)

約8分で読めます

目覚まし時計
Photo: Raimond Spekking / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

勉強を終えてベッドに入り、少しだけのつもりでスマホを開く。気づけば寝る時刻をとうに過ぎている。そんな夜が続くと、翌日の勉強にも響きます。寝る30分前からスマホを使わないようにした実験では、寝つくまでの時間が縮み、睡眠時間も少し延びました。ただし、効果がはっきりしなかった実験もあります。研究で確かめられた範囲で、手放すやり方を紹介します。

3行でわかる

  1. 寝る30分前からスマホを使わない実験(中国の大学生38人、4週間)では、寝つくまでの時間が平均約31分から約18分に縮み、睡眠時間も約20分延びた。
  2. 画面を暖色にする夜間モードは、167人の実験で睡眠に差が出なかった。対象は眠りの悪い人や若い人が中心で、効果の大きさは研究によって違う。
  3. 手放すやり方は、①置く時刻を決める ②機能でロックするか電源を切る ③寝室の外で充電する ④代わりにやることを決める ⑤夜間モードに頼らない ⑥2週間記録する、の6つ。

01 悩みの正体寝る前のスマホがやめられないのはなぜ?

寝たくないからではなく、楽しい作業をやめたくないからだと考えられています。寝る時刻を決めていても、スマホを見続けて先送りしてしまう状態は「寝る前の先延ばし」と呼ばれます。

Kroeseら(2014)は、ほかに用事がないのに、決めた時刻に寝床に入れないことを「寝る前の先延ばし」と名づけました[7]。米国の大人177人の調査では、この先延ばしが多い人ほど、睡眠が足りないと答えていました。

著者らは、問題は「眠りたくない」ことより「ほかの活動をやめたくない」ことにあるのではないかと述べています[7]。ただしこれは調査からの推測で、確かめられた仕組みではありません。

勉強を頑張った日ほど、寝る前に自分の時間がほしくなります。意志の弱さを責めるより、スマホを手に取りにくい仕組みを先に作る方が、研究に沿ったやり方です。

02 科学的にわかっていること寝る前のスマホをやめると、眠りは良くなる?

寝る前のスマホを制限した実験では、寝つきが早くなり睡眠時間が延びた結果があります。一方、差が出なかった実験や、影響はごく小さいとする大規模な調査もあり、効果の大きさは人によって違います。

Heら(2020)[1]

寝る前に30分以上スマホを使い、眠りの質が悪い大学生を2組に分けた。寝る30分前からスマホを使わない組は、4週間で寝つくまでの時間が平均30.98分から18.38分に縮んだ。何もしない組は29.32分から26.54分だった。睡眠時間は6.20時間から6.56時間に延び、寝る前の頭のざわつきも減った。

対象: 中国の大学生38人(平均21歳ほど、19人ずつ) / 限界: 人数の少ない予備的な試験。睡眠は本人の記録と質問紙で測った。参加者は減らしたいと思っていた人たち。記憶の課題は、6つの指標のうち1つでしか組の差が出なかった。

Hillら(2025)[2]

働き始めたばかりの大人55人を、寝る前のスマホを別の行動に置き換えるプログラム2種類と、比べるための組に分けた。2週間で、どの組も寝る前の機器の使用が1日平均23.4分減り、睡眠時間が12.7分延びた。

対象: 社会人になったばかりの大人55人 / 限界: 比べるための組でも同じように改善しており、要旨では組の間の差は示されていない。記録をつけること自体が効いた可能性もある。論文の要旨で確認。

Duraccioら(2021)[3]

寝る前1時間を「夜間モードでスマホを使う」「夜間モードなしで使う」「スマホを使わない」の3組に分け、7晩の睡眠を腕の計測器で測った。3組の間に、はっきりした差は出なかった。睡眠が平均6.8時間より長い人だけを見た追加の分析では、スマホを使わない組の眠りの質が最もよかった。

対象: 米国西部の大学生167人(18〜24歳) / 限界: 7晩だけの実験。睡眠が6.8時間より短い人では、どの組も差がなかった。論文の要旨で確認。

Exelmans・Van den Bulck(2016)[4]、Brautschら(2023)[5]

ベルギーの18〜94歳の大人844人の調査では、10人に6人がスマホを寝室に持ち込んでいた。消灯後にメッセージや通話をする人ほど、寝つきが遅く、眠りの質が悪かった。16〜25歳を対象にした研究のまとめでも、夜のスマホの使用は、睡眠時間の短さや寝る時刻の遅さと結びついていた。

対象: ベルギーの大人844人/16〜25歳を対象にした42件の研究 / 限界: どちらも同じ時点で測った調査。スマホが睡眠を悪くしたのか、眠れない人がスマホを見るのかは区別できない。論文の要旨で確認。

Orben・Przybylski(2020)[6]

英国の13〜15歳の約1万1,900人のデータ(うち生活時間の日記は4,642人)を分析した。画面を見る時間が1日1時間増えるごとに、平日の睡眠は約9分短かった。寝る前30分の画面の使用は、睡眠時間との関係が約1分と小さかった。

対象: 英国の中学生ぐらいの年齢の子ども / 限界: 同じ時点の記録を分析した研究で、原因と結果は言えない。「寝る前の使用」の測り方はおおまか。大人の結果ではない。

研究を並べると、次のようになります。

研究やったこと結果
Heら(2020)寝る30分前から使わない(4週間)寝つき 約31分→約18分
Hillら(2025)別の行動に置き換える(2週間)全組で使用23.4分減、睡眠12.7分増
Duraccioら(2021)夜間モード・なし・使わない(7晩)全体では差なし
Orben・Przybylski(2020)英国の13〜15歳のデータの分析寝る前30分の使用で約1分短い

はっきり効果が出たのは、眠りが悪く、スマホを減らしたいと思っていた人たちの実験でした。だれにでも同じだけ効くとは言えません。研究の多くは大学生や10代が対象で、仕事のあとに勉強する社会人で同じ大きさの効果が出るかは確かめられていません。

それでも、眠りは勉強の記憶にかかわります。177本の論文をまとめた分析では、覚えた後に眠ると、起きていた場合よりよく思い出せました(効果量0.44、偏りを補正すると0.28)[8]。くわしくは寝る前の勉強と記憶の記事で紹介しています。

03 今日からできる小さな一歩寝る前のスマホを手放すには、どうする?

寝る30分前を「スマホを置く時刻」に決め、機能でロックするか電源を切ります。寝室の外で充電し、代わりにやることを1つ決めます。夜間モードだけで安心しないことも大切です。

1

ふだん寝る時刻の30分前を「置く時刻」に決める

この1週間の寝た時刻の平均から30分引きます。23時半に寝ているなら23時です。効果が出た実験も、ふだんの就寝時刻の30分前を区切りにしていました[1]。

所要 2分

2

スマホの標準の機能でロックするか、電源を切る

実験では、スマホに入っている就寝時刻の設定をパスワードつきで使うか、電源を切ってもらいました[1]。置く時刻の10分前に通知が来るようにすると、急に切られて慌てずにすみます。

所要 5分(設定は1回だけ)

3

充電する場所を、寝室の外にする

ベルギーの調査では10人に6人がスマホを寝室に持ち込み、消灯後に使う人ほど寝つきが遅い傾向がありました[4]。手の届く所にあると、ロックも外したくなります。目覚ましが必要なら、別の時計を使うか、スマホを部屋の離れた場所に置きます。

所要 1分

4

スマホの代わりにやることを1つ決めておく

寝る前の先延ばしは「楽しいことをやめたくない」ことから起きると考えられています[7]。「スマホを置いたら、紙の本を読む」「明日の勉強の範囲を1行書く」のように、置いた後の行動を先に決めます。決め方はif-thenプランの記事が参考になります。

所要 3分(決めるだけ)

5

夜間モードに切り替えただけで安心しない

画面を暖色にする夜間モードでは、睡眠に差が出ませんでした[3]。色を変えても、見続けて寝る時刻が遅れれば同じです。明かり全体の整え方は勉強部屋の明かりの記事で紹介しています。

所要 0分

6

寝ついた時刻と起きた時刻を2週間記録する

効果は人によって違います[3][6]。置く時刻を決める前の1週間と後の1週間で、寝つきと睡眠時間を比べます。記録の形は睡眠チェック表と記録表が使えます。

所要 1日1分

04 続けるためのコツ寝る前のスマホを、つい見てしまった夜はどうする?

見てしまった夜があっても、翌日から同じ時刻に置き直せば十分です。完全にやめるより、置く時刻を守れる日を増やすことを目指します。

  • 見てしまった夜は「何を見ていたか」を1語だけ記録する。同じ理由が続くなら、その通知だけを切る。
  • 勉強をスマホでしている人は、寝る前30分の復習を紙の暗記カードやノートに移す。
  • 置く時刻を一度に1時間早めない。まず30分を2週間守ってから見直す。
  • 心配ごとで眠れないときは、スマホより書き出す方法を試す。勉強の心配で眠れない夜の記事で紹介しています。

寝つけない、夜中に何度も目が覚めるといった状態が1か月以上続き、昼間の生活に支障があるときは、スマホの工夫より先に医療機関で相談してください。

05よくある質問

寝る前のスマホは、夜間モード(ブルーライトを減らす設定)にすれば大丈夫ですか?

夜間モードだけでは足りない可能性があります。米国の大学生167人の実験では、寝る前1時間に夜間モードでスマホを使った組と、夜間モードなしで使った組、使わなかった組の睡眠に、はっきりした差は出ませんでした。色よりも、使い続けて寝る時刻が遅れないことを優先しましょう。

寝る前のスマホを何分前にやめれば、眠りがよくなりますか?

研究で確かめられているのは「寝る30分前」です。中国の大学生38人の実験では、ふだん寝る時刻の30分前からスマホを使わないようにすると、4週間で寝つくまでの時間が平均約31分から約18分に縮みました。ただし眠りの悪い人を対象にした小さな実験なので、自分の記録で確かめるのが確実です。

寝る直前にスマホのアプリで単語を覚えるのはよくないですか?

寝る前の勉強そのものは、記憶にとって悪くありません。覚えた後に眠ると、起きていた場合よりよく思い出せることがわかっています。ただしアプリのつもりがほかの画面に移り、寝る時刻が遅れやすくなります。寝る前30分の復習は、紙のカードやノートで行うのがおすすめです。

出典

  1. He, J. W., Tu, Z. H., Xiao, L., Su, T., & Tang, Y. X. (2020). Effect of restricting bedtime mobile phone use on sleep, arousal, mood, and working memory: A randomized pilot trial. PLoS One, 15(2), e0228756. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0228756
  2. Hill, V. M., Ferguson, S. A., Rebar, A. L., Meaklim, H., & Vincent, G. E. (2025). A randomised pilot trial for bedtime procrastination: Examining the efficacy and feasibility of the Reducing Evening Screen Time online intervention (REST-O). Sleep Medicine, 129, 306-315. https://doi.org/10.1016/j.sleep.2025.02.043
  3. Duraccio, K. M., Zaugg, K. K., Blackburn, R. C., & Jensen, C. D. (2021). Does iPhone night shift mitigate negative effects of smartphone use on sleep outcomes in emerging adults? Sleep Health, 7(4), 478-484. https://doi.org/10.1016/j.sleh.2021.03.005
  4. Exelmans, L., & Van den Bulck, J. (2016). Bedtime mobile phone use and sleep in adults. Social Science & Medicine, 148, 93-101. https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2015.11.037
  5. Brautsch, L. A., Lund, L., Andersen, M. M., Jennum, P. J., Folker, A. P., & Andersen, S. (2023). Digital media use and sleep in late adolescence and young adulthood: A systematic review. Sleep Medicine Reviews, 68, 101742. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2022.101742
  6. Orben, A., & Przybylski, A. K. (2020). Teenage sleep and technology engagement across the week. PeerJ, 8, e8427. https://doi.org/10.7717/peerj.8427
  7. Kroese, F. M., De Ridder, D. T. D., Evers, C., & Adriaanse, M. A. (2014). Bedtime procrastination: Introducing a new area of procrastination. Frontiers in Psychology, 5, 611. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00611
  8. Berres, S., & Erdfelder, E. (2021). The sleep benefit in episodic memory: An integrative review and a meta-analysis. Psychological Bulletin, 147(12), 1309-1353. https://doi.org/10.1037/bul0000350