集中・環境

カフェだと勉強がはかどる気がするのはなぜ?ほどよい雑音と集中の研究(とその限界)

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カフェの店内のテーブルといす
Photo: Bob Harvey / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

静かな自分の部屋より、ざわざわしたカフェの方が勉強が進む気がする。そう感じる人は少なくありません。では、カフェの雑音は本当に頭の働きを助けているのでしょうか。研究を調べると、「ほどよい雑音が役に立つ作業」と「雑音が小さく邪魔をする作業」がはっきり分かれていました。

3行でわかる

  1. カフェ程度の雑音(約70dB)の中では、静かな部屋(約50dB)よりアイデアを出す課題の成績が上がった。大きすぎる雑音(約85dB)では下がった。
  2. 一方、読んで理解する課題では、話し声・雑音・音楽のどれも成績を小さく下げていた。いちばん邪魔になったのは、意味のわかる話し声だった。
  3. カフェは「考えを広げる作業」に使い、「読む・覚える作業」は会話から離れた席か静かな場所でやると、研究と合う。

01 悩みの正体カフェで勉強がはかどる気がするのはなぜ?

研究で確かめられているのは、ほどよい雑音が「アイデアを出す作業」を助けたことです。読む・覚える作業まで助けるという研究は見当たらず、むしろ話し声は理解を邪魔していました。

ほどよい雑音が働く仕組みとして、研究者は次のように説明しています。少しうるさいと、頭の中の処理がやや難しくなります。すると細かいことより全体を大きくとらえる考え方に切り替わり、離れた考えどうしを結びつけやすくなる、というものです[1]。

ここで大事なのは、雑音の中の人が「集中できた」と感じていたわけではない点です。同じ研究では、ほどよい雑音の中の人の方が「気が散って集中しにくい」と答えていました[1][5]。つまり、はかどった感じの正体は、雑音で集中力が上がったことではなさそうです。家にある誘惑(スマホ・ベッド・家事)から離れることも理由の候補ですが、これをカフェと家で比べた研究は見つかりませんでした。家の環境の整え方は家で集中できないときの勉強場所の整え方にまとめています。

02 科学的にわかっていること雑音は勉強の成果にどのくらい影響する?

影響は作業によって逆向きになります。アイデア出しでは、ほどよい雑音で成績が上がった研究があります。読んで理解する作業では、65件の研究をまとめると、音は小さいながら成績を下げていました。

Mehtaら(2012)[1]

5つの実験で、まわりの雑音の大きさを変えて創造的な課題を解いてもらった。雑音は、大勢の話し声・道路の車の音・遠くの工事の音を混ぜたもの。約70dB(カフェ程度)では、約50dBより課題の成績が上がり、約85dBでは下がった。課題は、ものの使い道をたくさん考える・言葉どうしのつながりを見つけるなど、発想を広げるものだった。

対象: 成人(条件ごとに別の人を比べる方式) / 限界: 暗記や読解ではなく発想の課題。同じ条件で大人を対象にやり直した研究(再現の研究)は、今回の調査では見つからなかった。

Vasilevら(2018)[2]

音のある中で文章を読む実験65件をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。静かな条件と比べると、読解の正しさは、音全体でg=−0.21(54件)と小さく下がっていた。種類別では、話し声がg=−0.26、雑音がg=−0.17、音楽がg=−0.19。意味のわかる話し声と、歌詞のある音楽がいちばん邪魔になった。大人と子どもで、下がり方に大きな差はなかった。

対象: 大人と子どもの実験 / 限界: どれも「小さい」効果で、1つ1つの実験では差が出ないこともある。著者らはこれまでの研究の整理で、視線の動きを測った実験では、話し声で読解の正しさが下がる結果が再現されていないとも書いている。

SzalmaとHancock(2011)[3]

雑音と作業の成績を調べた242件の研究(797の効果量)をまとめたメタ分析。雑音の影響は一様ではなく、雑音が続くか途切れ途切れか、雑音の種類、作業の種類によって変わっていた。

対象: 主に大人の実験 / 限界: 職場や作業全般の研究が中心で、独学の勉強そのものを調べたものではない。

Niggら(2024)[4]

「集中のためにホワイトノイズ(ザーッという雑音)を流す」効果を調べた研究のメタ分析。ADHD(注意欠如・多動症)やその傾向が強い子どもと若い大人(13件、335人)では、白い雑音・ピンクノイズで課題の成績が小さく上がった(g=0.249)。一方、そうでない比較群(11件、335人)では、逆に小さく下がった(g=−0.212)。

対象: 子どもから大学生の年齢まで / 限界: 実験室の短い課題での結果。著者らは、安全で適切な音量を含め、さらに研究が必要としている。

Massonniéら(2019)[5]

Mehtaらの結果が子どもにも当てはまるかを試した。5〜11歳の44人が、静かな条件と教室の雑音(平均約64dB)の両方で、アイデアを出す課題に取り組んだ。雑音で成績が上がった条件はなく、5〜8歳で注意を絞る力が弱い子は、雑音の中でアイデアが減り、独創性も下がった。

対象: 英国の大学で開かれたイベントに参加した小学生 / 限界: 人数が少なく、大人を対象にした研究ではない。同じ人を両方の条件で比べる方式で、Mehtaらとは方法が違う。

これらは実験室で、数分〜数十分の課題を解いた結果です。カフェで何時間も勉強する、社会人が何か月も独学を続ける、といった条件とは違います。「カフェ=悪い」「カフェ=良い」ではなく、作業の種類で分けて考える材料にしてください。

03 今日からできる小さな一歩カフェと家、どう使い分ければいい?

次の勉強の前に、作業を「考えを広げる」か「読む・覚える」かに分けます。カフェは前者に、後者は静かな席で。1週間、両方の場所で思い出せた量を比べると、自分に合う場所がわかります。

1

今日の作業を2つに分ける

「計画を立てる・まとめ方を考える・作文のネタを出す」は考えを広げる作業。「教科書を読む・単語や用語を覚える・問題を解く」は読む・覚える作業として、場所を決めます。

所要 3分

2

カフェでは会話から離れた席を選ぶ

いちばん邪魔になるのは意味のわかる話し声でした[2]。読む作業をカフェでするなら、話し声が近い席を避けるか、耳栓で声を小さくします。歌詞のある音楽を重ねるのも避けます。

所要 1分

3

「はかどった感じ」ではなく、思い出せた量で比べる

勉強の最後に本を閉じ、覚えたことを3つ書き出します。カフェの日と家の日で、1週間ぶん並べて比べます。手応えと実際の出来はずれやすいので、書き出した数で判断します。

所要 1回3分

04 続けるためのコツ雑音に強い人と弱い人がいるのはなぜ?

注意の向けやすさや、ADHDの傾向などで、雑音の影響は変わります。他人に合う場所が自分にも合うとは限らないので、自分の記録で決めます。

  • 人の体験談をそのまま信じない。雑音で成績が上がる人も下がる人もいました[4][5]。
  • 途切れ途切れの音に気をつける。雑音の影響は、続く音か途切れる音かでも変わっていました[3]。食器の音や呼び出しの声が多い店は、読む作業には向きにくい可能性があります。
  • 場所を変えること自体も工夫の1つ。覚えた場所と思い出す場所の関係は勉強する場所と記憶(文脈依存記憶)の研究に、音楽との付き合い方は歌詞あり・なしで変わるBGMの研究にまとめています。

05よくある質問

カフェの雑音は暗記に向いている?

向いているという研究は見当たりません。ほどよい雑音で成績が上がったのは、アイデアを出す課題でした[1]。読んで理解する課題では、話し声・雑音・音楽のどれも、小さいながら成績を下げていました[2]。

ホワイトノイズを流すと集中できる?

人によります。研究をまとめたメタ分析では、ADHDやその傾向が強い若い人では小さな上積みがあり、そうでない人ではむしろ小さく下がっていました[4]。実験室の短い課題の結果なので、試すなら自分の記録で確かめてください。

家で勉強できないなら、カフェに行くのはあり?

あります。ただし読む・覚える作業なら、会話から離れた席を選ぶか耳栓を使い、カフェではアイデア出しや計画づくりを中心にすると、研究の結果と合います。

出典

  1. Mehta, R., Zhu, R. (J.), & Cheema, A. (2012). Is noise always bad? Exploring the effects of ambient noise on creative cognition. Journal of Consumer Research, 39(4), 784–799. https://doi.org/10.1086/665048
  2. Vasilev, M. R., Kirkby, J. A., & Angele, B. (2018). Auditory distraction during reading: A Bayesian meta-analysis of a continuing controversy. Perspectives on Psychological Science, 13(5), 567–597. https://doi.org/10.1177/1745691617747398
  3. Szalma, J. L., & Hancock, P. A. (2011). Noise effects on human performance: A meta-analytic synthesis. Psychological Bulletin, 137(4), 682–707. https://doi.org/10.1037/a0023987
  4. Nigg, J. T., Bruton, A., Kozlowski, M. B., Johnstone, J. M., & Karalunas, S. L. (2024). Systematic review and meta-analysis: Do white noise or pink noise help with task performance in youth with attention-deficit/hyperactivity disorder or with elevated attention problems? Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 63(8), 778–788. https://doi.org/10.1016/j.jaac.2023.12.014
  5. Massonnié, J., Rogers, C. J., Mareschal, D., & Kirkham, N. Z. (2019). Is classroom noise always bad for children? The contribution of age and selective attention to creative performance in noise. Frontiers in Psychology, 10, 381. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.00381