集中・環境

徹夜・寝不足で勉強してしまった。翌日からどう立て直す?睡眠不足と学習の研究でわかった戻し方

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赤い目覚まし時計
Photo: Jacek Halicki / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

試験が近くて、つい徹夜してしまった。気づけば何日も寝不足のまま勉強している。そんなとき、「また無駄なことをした」と落ち込む必要はありません。研究から言えるのは、寝不足の後は「勉強の中身」と「その後の睡眠」を変えれば立て直せるということです。ただし、1晩寝ただけでは戻りきらないこともあります。

3行でわかる

  1. 徹夜の後に新しいことを覚えると、よく眠った後より成績が下がる(31本の報告をまとめたメタ分析で中くらいの差)。寝不足の日は新しい範囲を詰め込まない。
  2. 徹夜の前に覚えた内容は、回復の睡眠をとるとかなり戻る。眠った後に思い出す練習で抜けを確かめる。午後の10分の昼寝も眠気と作業の成績を上げた。
  3. 睡眠不足が続いた後は、1〜2晩では戻りきらないことがある。2〜3日は勉強量を控えめにし、睡眠を削って勉強を足す計画は次から立てない。

01 悩みの正体寝不足の翌日、頭が働かないのはなぜ?

眠らずにいると、注意が一瞬途切れる「抜け」が増え、新しいことを覚える力も落ちるからです。気合いの問題ではありません。

睡眠不足のとき、いちばん目立って落ちるのは、ひとつのことに注意を向け続ける力です。文字を読んでいるつもりでも、ふっと意識が途切れる瞬間が増えます。

さらに、眠っている間には、その日に覚えたことを長く残す形に整える働きがあると考えられています。くわしい仕組みは寝る前の勉強は記憶に残りやすいのかの記事で紹介しました。この記事では、もう寝不足になってしまった後、どう戻すかに絞ります。

02 科学的にわかっていること寝不足の後、何が落ちて、どこまで戻る?

寝不足の後は、注意と新しく覚える力が大きく落ちます。覚えた内容は回復の睡眠でかなり戻りますが、何日も続いた寝不足は1〜2晩では戻りきらないことがあります。

LimとDinges(2010)[2]

48時間以内の徹夜が頭の働きに与える影響を、70本の論文(147の検査)でまとめたメタ分析。いちばん大きく落ちたのは単純な注意で、反応が抜ける回数が大きく増えた(g=−0.776)。一方、筋道立てて考える問題の正確さへの影響は小さく、はっきりした差にならなかった(g=−0.125)。

対象: 48時間以内の徹夜の実験 / 限界: 短い検査課題の結果。何時間もかける勉強の成績を直接測ったものではない。

Newburyら(2021)[1]

1晩以上の徹夜と記憶の研究を2つのメタ分析でまとめた。徹夜の後に新しく覚えると、よく眠った後より記憶が下がった(g=0.62、31本の報告・927人)。覚えた後に徹夜した場合の差はg=0.28で、テストの前に回復の睡眠をとった研究では差が小さかった(g=0.18、とらなかった研究ではg=0.41)。

対象: 1970〜2020年に発表された徹夜の実験 / 限界: 著者自身が、出版の偏り(効果の出た研究ほど発表されやすい)と、人数の少ない研究が多いことを指摘している。偏りを補正すると、覚える前の徹夜の影響はg=0.46に下がった。

BrooksとLack(2006)[3]

前の晩の睡眠を約5時間に減らした若い大人に、午後3時に5・10・20・30分の昼寝をしてもらい比べた。10分の昼寝は、眠気・疲れ・作業の成績のすべてをすぐに改善し、一部の効果は最長155分続いた。30分の昼寝では、起きた直後にかえって頭がぼんやりする時間があった。

対象: よく眠れていて昼寝の習慣がない若い大人24人 / 限界: 1晩の軽い寝不足の後の実験。徹夜の後や、何日も続いた寝不足で同じ効果が出るかはわからない。

Loら(2016)[4]、Belenkyら(2003)[5]

Loらは、高校生を7晩続けて寝床にいる時間を5時間にする組と9時間の組に分けた。5時間の組では注意・作業記憶などが日ごとに下がり、2晩の回復睡眠の後も、眠気と注意を保つ力は元に戻らなかった。Belenkyらの大人の実験でも、寝床にいる時間を1日5時間か7時間にして7日続けた後、3日間の回復睡眠では反応の速さが戻らなかった。

対象: Loらは15〜19歳の高校生56人、Belenkyらは大人66人 / 限界: どちらも決められた条件での実験。回復にかかる日数には個人差がある。

Gillen-O'Neelら(2013)[6]、Okanoら(2019)[7]

高校生535人が9・10・12年生のときに14日ずつ日記をつけた研究では、いつもより睡眠を削って勉強を増やした日の翌日ほど、授業の内容がわかりにくく、課題やテストでつまずきやすかった。大学生88人の睡眠を活動量計で測った研究では、試験前の1晩の睡眠と成績には関係がなく、関係していたのはその前の1週間と1か月の睡眠だった。

対象: 高校生535人(日記の調査)、米国マサチューセッツ工科大学の化学入門の受講者88人 / 限界: どちらも観察した研究で、睡眠が成績を変えた(因果)とは言い切れない。

ここで紹介した実験の多くは、実験室で決められた時間だけ眠らせた研究です。仕事や家事をしながら独学する社会人の寝不足で、同じ大きさの差が出るとは限りません。それでも「寝不足の日は覚える量を減らし、睡眠を先に戻す」という方向は、どの研究とも矛盾しません。

03 今日からできる小さな一歩徹夜・寝不足の後、勉強はどう立て直す?

当日は新しい範囲を覚えず、思い出す練習に切り替えます。午後に短く眠り、その夜はいつもの時間に寝て、2〜3日は量を控えめにします。

1

寝不足の日は、新しい範囲を覚えない

新しく覚える力がいちばん落ちる日です。教科書の新しい章や、新しい単語の暗記は翌日以降に回します。その日は「もう一度読めば思い出せる範囲」だけを扱います。

所要 1分(予定の入れ替え)

2

読むより、手を動かして思い出す

注意が途切れやすい日に、長い文章を目で追うだけの勉強は頭に入りにくくなります。過去に解いた問題を解き直す、本を閉じて要点を書き出すなど、答えを自分で出す作業を15〜20分ずつ区切って行います。思い出す練習のやり方は思い出す練習(テスト効果)の記事を参考にしてください。

所要 15〜20分×数回

3

午後の早い時間に、10〜20分だけ眠る

机に伏せるだけでもかまいません。30分を超えると、起きた直後にかえって頭が重くなることがあります。起きた後の最初の時間は、軽い復習から始めます。昼寝のとり方は勉強の合間の昼寝の記事にまとめています。

所要 10〜20分

4

その夜は、いつもの時間に寝る

「今日できなかった分を取り返そう」と夜ふかしすると、寝不足が続きます。寝る時間を遅らせず、勉強はいつもの終了時刻で切り上げます。

所要 0分(やめるだけ)

5

眠った翌朝、徹夜で覚えた範囲を思い出して確かめる

本を閉じて、徹夜した夜に覚えたはずの内容を書き出します。出てこなかった所だけ印をつけ、その日に覚え直します。回復の睡眠の後は、記憶の差が小さくなっていた研究があります。忘れた所の覚え直しは忘れた後の覚え直し(再学習)の記事が参考になります。

所要 10〜15分

6

何日も寝不足が続いた後は、2〜3日は量を7割に

1〜2晩眠っても、注意力は元に戻りきらないことがあります。計画の量をいつもの7割ほどに下げ、遅れは予備の日で取り戻します。崩れた計画の作り直し方は勉強の計画が崩れたときの記事で紹介しています。

所要 5分(計画の見直し)

寝不足の後にやること・避けることを、表にまとめました。

タイミングやること避けること
寝不足の当日覚えた範囲の問題を解き直す・書き出す(15〜20分ずつ)新しい範囲の暗記、長い文章を読むだけの勉強
当日の午後10〜20分の昼寝30分を超える昼寝の直後に難しい問題
当日の夜いつもの時間に寝る取り返すための夜ふかし
翌朝徹夜で覚えた範囲を思い出して確かめる最初から全部やり直す
その後2〜3日量をいつもの7割に、遅れは予備の日へ寝だめで一気に取り返そうとする

「7割」や「15〜20分」は、研究で決まった数字ではなく、研究の結果を日々の勉強に当てはめるための目安です。

04 続けるためのコツまた徹夜しないためには?

睡眠を「余った時間」ではなく、先に予定に入れる時間として扱います。勉強が足りないときは、睡眠ではなく範囲を削ります。

  • 寝る時刻を先に決め、そこから逆算して勉強の終わりの時刻を決める。
  • 試験の1か月前からは、睡眠を削って勉強時間を足す計画を立てない。研究で成績と関係していたのは、前の晩より、前の1週間と1か月の睡眠でした。
  • 間に合わないと気づいたら、出題の多い範囲から順に絞る。計画が楽観的になりやすい理由は計画が毎回倒れるのはなぜかの記事で説明しています。
  • 一夜漬けそのものの効果は一夜漬けは本当に効かないのかの記事で扱っています。
この記事は勉強のしかたについての情報で、睡眠の病気の診断や治療についての情報ではありません。眠れない日が続く、日中の強い眠気が続くなど、つらい状態が続くときは医療機関に相談してください。

05よくある質問

徹夜した次の日は、勉強しない方がいいですか?

休む必要はありませんが、やることを変えるのが無難です。Newburyら(2021)のメタ分析では、徹夜の後に新しいことを覚えると、よく眠った後より成績が下がり、その差は中くらいでした(g=0.62)。新しい範囲は翌日以降に回し、すでに学んだ範囲の問題を解く・思い出す練習に切り替えます。

徹夜で覚えた内容は、もう忘れてしまいますか?

全部が消えるわけではありません。同じメタ分析では、覚えた後に徹夜すると記憶は下がりましたが、その後に回復の睡眠をとってからテストした研究では、差は小さくなりました(g=0.18、とらなかった研究ではg=0.41)。眠った後に、思い出す練習で抜けた所を確かめます。

試験の前の晩に眠れませんでした。もう駄目でしょうか?

1晩で決まるわけではないと考えられます。大学生88人の睡眠を活動量計で測ったOkanoら(2019)の研究では、試験前の1晩の睡眠と成績には関係が見られず、関係していたのはその前の1週間と1か月の睡眠でした。ただし観察した研究で、因果関係までは言えません。

寝不足を週末の寝だめで取り返せますか?

1〜2晩で完全に戻るとは限りません。1週間の睡眠制限の後、2晩の回復睡眠をとっても、眠気と注意力が元に戻らなかった実験があります(Loら、2016)。寝だめに頼るより、2〜3日かけていつもの睡眠時間に戻す方が確実です。

出典

  1. Newbury, C. R., Crowley, R., Rastle, K., & Tamminen, J. (2021). Sleep deprivation and memory: Meta-analytic reviews of studies on sleep deprivation before and after learning. Psychological Bulletin, 147(11), 1215–1240. https://doi.org/10.1037/bul0000348
  2. Lim, J., & Dinges, D. F. (2010). A meta-analysis of the impact of short-term sleep deprivation on cognitive variables. Psychological Bulletin, 136(3), 375–389. https://doi.org/10.1037/a0018883
  3. Brooks, A., & Lack, L. (2006). A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: Which nap duration is most recuperative? Sleep, 29(6), 831–840. https://doi.org/10.1093/sleep/29.6.831
  4. Lo, J. C., Ong, J. L., Leong, R. L. F., Gooley, J. J., & Chee, M. W. L. (2016). Cognitive performance, sleepiness, and mood in partially sleep deprived adolescents: The Need for Sleep Study. Sleep, 39(3), 687–698. https://doi.org/10.5665/sleep.5552
  5. Belenky, G., Wesensten, N. J., Thorne, D. R., Thomas, M. L., Sing, H. C., Redmond, D. P., Russo, M. B., & Balkin, T. J. (2003). Patterns of performance degradation and restoration during sleep restriction and subsequent recovery: A sleep dose-response study. Journal of Sleep Research, 12(1), 1–12. https://doi.org/10.1046/j.1365-2869.2003.00337.x
  6. Gillen-O'Neel, C., Huynh, V. W., & Fuligni, A. J. (2013). To study or to sleep? The academic costs of extra studying at the expense of sleep. Child Development, 84(1), 133–142. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2012.01834.x
  7. Okano, K., Kaczmarzyk, J. R., Dave, N., Gabrieli, J. D. E., & Grossman, J. C. (2019). Sleep quality, duration, and consistency are associated with better academic performance in college students. npj Science of Learning, 4, 16. https://doi.org/10.1038/s41539-019-0055-z