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同じ行を何度も読み返してしまうのはなぜ?目の動きの研究でわかった「読み戻り」の役割

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本が並ぶ書店のショーウィンドウ
Photo: Chris Holifield / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

1行読んでは前に戻り、また同じところを読み返す。「自分は読むのが下手なのでは」と心配になる人は少なくありません。目の動きの研究では、少し前に戻って読み直す動きは読み慣れた大人にも普通にあり、理解を立て直す役目を持っています。読み返しが増えるのは、文が難しいか、頭に入っていなかったところがあるサインです。

3行でわかる

  1. 読書中の目の動きのうち5〜20%は、前の語へ戻る動き(読み戻り)で、読み慣れた大人にもある。
  2. 目が通り過ぎた語を消して読み戻れなくすると、文の理解が悪くなった。戻らずに読ませる速読のやり方には代償がある。
  3. 読み戻りは、意味が合わない文や考えがそれていた所で増える。回数を減らすより、戻った場所を「わからない所の目印」に使う。

01 悩みの正体何度も読み返すのは、読むのが下手だから?

そうとは限りません。前に戻って読む動きは、読み慣れた大人にもある普通の動きです。研究のまとめでは、読書中の目の動きの5〜20%が前に戻る動きでした。

文字を読むとき、目はなめらかに動いているようで、実際は小さく跳んでは止まるのをくり返しています。ほとんどは先へ進む動きです。

ただ、その一部は前の語へ戻ります。これを「読み戻り」と呼びます。Inhoffら(2019)のレビューでは、目の動きの5〜20%が読み戻りでした[1]。別の研究では、読み戻りは目の動きの10〜15%と説明されています[2]。

つまり、読み返しが「ある」こと自体は異常ではありません。気にした方がいいのは、同じ所で何度も戻るときや、段落ごと読み直しても頭に入らないときです。

02 科学的にわかっていること読み戻りは、読む人の何を助けている?

読み戻りは、意味が合わなかった所や読み飛ばした所を確かめ直し、理解を立て直すための動きです。読み戻れないようにした実験では、文の理解が悪くなりました。

Schotterら(2014)[3]

読む人の目が通り過ぎた語を、次々に別の記号で隠す実験をしました。1つの語を1回しか読めず、読み戻っても元の語は見えません。この条件では、普通に読んだときより文の理解が悪くなりました。紛らわしい文だけでなく、それ以外の文でも同じでした。

対象: 画面で1文ずつ読む実験室の課題 / 限界: 短い文の理解を測った実験で、教科書のような長い文章を何十分も読む場面ではない。

SturtとKwon(2018)[2]

「少年のころ乗った古い家」のように、意味の通らない文を読ませました。読む人は文の後ろから前へよく戻りました。読む人の目が文の後半へ進んだところで、気づかれないように「家」を「馬」に入れ替えておくと、入れ替えなしのときより、その後の読みが楽になりました。戻ったときに読んだ情報が、つまずきからの立て直しに使われていたことを示します。

対象: エディンバラ大学に関わる、英語を母語とする若い大人60人(主に学生) / 限界: 1文単位の英語の実験。

Inhoffら(2019)[1]

読み戻りの研究をまとめたレビューです。紹介された実験では、前の語と後の動詞の意味が合わない文で、文の終わりから前へ戻った試行は60%でした。意味が合う文では20%でした。わかりにくい所ほど、読み戻りは増えます。

対象: 目の動きの実験研究の整理 / 限界: 著者らは、大学生レベルの読み手でも、読み直せば理解できる場面で戻らないことが多いと述べている。読み戻りは多いほど良い、というわけではない。

Reichleら(2010)[4]

目は文字を追っているのに、頭は別のことを考えている「心ここにあらず」の読みを調べました。この間は、1か所に目が止まる時間が長くなり、語の難しさにも左右されなくなりました。文字を読む普段の頭の働きが、止まっていたと考えられます。

対象: 実験室で文章を読む課題 / 限界: 読む人の報告をもとに「心ここにあらず」の区間を分けた分析。Inhoffらのレビューは、読み戻りがこうして抜けた部分を埋めるのにも使われると紹介している[1]。

Raynerら(2016)[5]

速読の研究をまとめたレビューです。読む速さと理解には、どちらかを取るともう一方が下がる関係がありました。1分あたり約250語から500〜750語へ、理解を保ったまま2〜3倍に速くするのは難しいと結論しています。速く読めるようになる道は、読む練習と語彙を増やすことでした。

対象: 読書と速読の研究の整理 / 限界: 英語の研究が中心。日本語の文章にそのまま当てはまるとは限らない。

研究の結果を、独学で読み返しが増える場面に当てはめると次のようになります。3行目は研究の直接の結果ではなく、この記事による当てはめです。

読み返しが増える場面起きていること次にすること
文の意味が合わない読み違いや語の取り違えを直している[1][2]戻ってよい。戻った語に印をつける
段落ごと覚えていない読んでいる間、考えがそれていた[4]段落の終わりで一言まとめる
知らない用語が続く前提の知識が足りず、意味をつなげられない用語や前の章を先に確かめる

ここで紹介した実験は、大人が短い文や小説を画面で読む実験室の結果です。社会人が教科書を何時間も読む独学で、同じ割合になるとは限りません。

03 今日からできる小さな一歩読み返しが多いとき、どう読めばいい?

読み返しを無理に止めず、戻った場所を「わからない所の目印」として使います。同じ所で何度も戻るなら、読むのをいったんやめて前提を確かめます。

1

戻った所に小さく印をつける

鉛筆で余白にチェックを入れるだけです。章を読み終えたら、印が集まった段落だけを見直します。

所要 1回数秒

2

段落の終わりで一言まとめる

本から目を離し、今の段落を一言で言ってみます。言えなければ、段落の頭から1回だけ読み直します。

所要 10〜20秒

3

同じ所で3回戻ったら、読むのをやめる

わからない用語を調べるか、前の章に戻ります。3回という回数は、立ち止まる目安としてこの記事が決めたものです。

所要 5分ほど

04 続けるためのコツ読み返しの多さと、どう付き合えばいい?

読み返しは理解を助ける動きなので、「減らすこと」を目標にしないのがコツです。速さが気になるなら、読む練習と語彙を増やす方が研究に合っています。

05よくある質問

同じ行を何度も読み返すのは、読解力が低いから?

そうとは限りません。読書中の目の動きの5〜20%は前に戻る動きで、読み慣れた大人にもあります[1]。意味の合わない文では、戻る試行が60%と、合う文の20%より多くなった実験も紹介されています[1]。難しい所で戻るのは、理解しようとしている動きです。

速読で読み返しをなくせば、速く読めるようになる?

理解と引きかえになりやすいです。読んだ語を消して読み戻れなくすると、文の理解が悪くなりました[3]。速読のレビューも、理解を保ったまま2〜3倍に速くするのは難しく、読む練習と語彙を増やすことが近道だとしています[5]。

何度読み返しても頭に入らないときは、どうすればいい?

読み返しを続けるより、原因を分けます。考えがそれていたなら段落ごとに一言でまとめ、知らない用語が多いなら先に調べます。目は動いていても頭が別のことを考えている間は、文字を読む普段の働きが止まっていると考えられています[4]。

出典

  1. Inhoff, A. W., Kim, A., & Radach, R. (2019). Regressions during reading. Vision, 3(3), 35. https://doi.org/10.3390/vision3030035
  2. Sturt, P., & Kwon, N. (2018). Processing information during regressions: An application of the reverse boundary-change paradigm. Frontiers in Psychology, 9, 1630. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01630
  3. Schotter, E. R., Tran, R., & Rayner, K. (2014). Don't believe what you read (only once): Comprehension is supported by regressions during reading. Psychological Science, 25(6), 1218-1226. https://doi.org/10.1177/0956797614531148
  4. Reichle, E. D., Reineberg, A. E., & Schooler, J. W. (2010). Eye movements during mindless reading. Psychological Science, 21(9), 1300-1310. https://doi.org/10.1177/0956797610378686
  5. Rayner, K., Schotter, E. R., Masson, M. E. J., Potter, M. C., & Treiman, R. (2016). So much to read, so little time: How do we read, and can speed reading help? Psychological Science in the Public Interest, 17(1), 4-34. https://doi.org/10.1177/1529100615623267