寝る前の勉強は記憶に残りやすいのか。睡眠と記憶の研究でわかったこと

「寝る前に覚えると忘れにくい」と聞いたことはありませんか。結論から言うと、学んだあと数時間以内に眠ると、起きていた場合より覚えている量は多くなります。この効果は多くの実験で確かめられています。ただし、睡眠を削って勉強時間を増やすと、逆に覚える力が落ちます。
3行でわかる
- 学んだあとに眠ると、同じ時間起きていたときより多く思い出せる。177本の論文をまとめた分析でも、中くらいの効果が確認された。
- 夜に覚えて、眠って、翌朝に復習した人は、復習の回数が約半分で済み、6か月後も多く覚えていた。
- 徹夜は、新しく覚える力を最も弱める。睡眠を削って勉強時間を増やすのは得にならない。
01「寝る前の勉強がいい」は、どこまで本当か
本当なのは「学んだあと、あまり時間をあけずに眠ると忘れにくい」という部分です。寝る直前である必要や、睡眠中に新しく覚える効果は、ここで扱う研究では示されていません。
眠っている間、脳は休んでいるだけではありません。その日に覚えた内容をもう一度呼び出し、長く残る形に整理し直していると考えられています。これを「記憶の固定」と呼びます。
100年以上の研究から、特に深い眠りのあいだの働きが重要だとされています[3]。大事なのは「寝る直前か」ではなく、「覚えてから眠るまでに長く起きていないか」です。
02科学的にわかっていること
学んだあとの睡眠は、記憶を残すのを助けます。効果の大きさは「中くらい」で、何度も繰り返し学んだ内容ほど大きくなります。一方で、睡眠不足は新しく覚える力を弱めます。
Berres・Erdfelder(2021)[1]
1967〜2019年の177本の論文(271グループ・823の効果量)をまとめたメタ分析。眠った人は、同じ時間起きていた人より多く思い出せた。効果の大きさは g = 0.44(中くらい)。
対象: 単語や出来事を覚える課題の実験 / 限界: 結果が良かった研究ほど発表されやすい偏りを補正すると、効果は g = 0.28 に小さくなった(それでも効果はあった)。
1回だけ見た内容より、何度か学んだ内容で効果が大きくなりました[1]。
Gaisら(2006)[2]
英語とドイツ語の単語の組を、朝8時か夜8時に覚えた。夜に覚えて数時間以内に眠った方が、朝に覚えて14時間以上起きていたときより、忘れる量が少なかった。
対象: アメリカの高校生12人(実験1)と14人(実験2) / 限界: 人数がとても少ない。テストは覚えてから24〜48時間後までの短い期間。
2つ目の実験では、夜に覚えたあと徹夜した日と眠った日を比べました。取り戻しの睡眠のあと、2晩後にテストしても、眠った日の方が多く覚えていました[2]。
Mazzaら(2016)[4]
スワヒリ語とフランス語の単語16組を、全部言えるまで練習し、12時間後にもう一度全部言えるまで復習した。間に睡眠をはさんだグループは、復習の回数が約半分で済み、6か月後も多く覚えていた。
対象: フランス・リヨンの18〜29歳40人(各群20人) / 限界: 単語の暗記だけで、人数も少ない。朝と夜の時間帯の違いの影響を完全には切り離せない。
この研究の数字を表にまとめました(16問中の正解数の平均)。
| 夜に学ぶ→眠る→朝に復習 | 朝に学ぶ→起きたまま→夜に復習 | |
|---|---|---|
| 全部言えるまでの復習回数 | 3.05回 | 5.80回 |
| 1週間後の正解数 | 15.20問 | 11.25問 |
| 6か月後の正解数 | 8.67問 | 3.35問 |
どちらのグループも、復習の終わりには16問すべて言えていました。それでも、間に睡眠をはさんだ方が後まで残りました[4]。
Cousins・Fernández(2019)[5]
睡眠不足と記憶の研究をまとめたレビュー。睡眠不足で最も弱るのは「新しく覚える力」で、徹夜でも数晩の睡眠不足でも、その影響が観察されていた。思い出す力は比較的影響を受けにくかった。
対象: 睡眠を削る実験や脳画像研究の整理 / 限界: 何日も続く軽い睡眠不足の影響は、まだ研究が足りないとされる。
ただし、多くの実験は大学生や高校生が、短い単語リストを覚える課題です。仕事のあとに資格の勉強をする社会人で、同じ大きさの効果が出るとは限りません。
03今日からできる小さな一歩
覚えたい内容は、夜の勉強の終わりに置き、翌朝に短く思い出します。睡眠時間を削ってまで勉強時間を延ばすのはやめます。
暗記ものを、夜の勉強の最後に回す
単語や用語など「覚える」内容を、その日の勉強の終わりに置きます。
所要 10〜15分
試験前でも、睡眠を勉強時間の「貯金」に使わない
寝る時間を削ると、翌日に新しく覚える力が落ちます。残り時間が少ない日は、量を減らして眠る方を選びます。
所要 0分
04続けるためのコツ
「夜に覚えて、朝に思い出す」を1セットにすると、睡眠と復習が自然に組み合わさります。間をあけた復習とも相性がよい方法です。
- 夜の最後の10分を「暗記の時間」と決め、毎日同じ順番にする。
- 朝の思い出しは、歯みがきや通勤など毎日必ずすることの直後に置く。
- 2回目以降の復習は、日をあけて入れる。間隔の目安は分散学習の記事を参考にする。
この記事は勉強のしかたについての情報で、睡眠の悩みの治療についての情報ではありません。眠れない日が続いてつらいときは、医療機関に相談してください。
05よくある質問
寝る前に勉強すると本当に覚えやすいの?
学んだあと数時間以内に眠ると、起きていた場合より多く覚えています。177本の論文をまとめたBerres・Erdfelder(2021)のメタ分析では、効果の大きさは中くらい(g = 0.44)でした。寝る直前である必要はなく、学んでから長く起きていないことがポイントです。
徹夜で勉強するのは意味がないの?
得にはなりにくいです。Cousins・Fernández(2019)のレビューでは、睡眠不足で最も弱るのは新しく覚える力でした。Gaisら(2006)でも、覚えたあと徹夜した日は、眠った日より2晩後の成績が低くなりました。
昼寝でも記憶に効果はあるの?
効果を示す研究はありますが、Berres・Erdfelder(2021)の分析では、昼寝より夜の自然な睡眠の方が効果は大きいという結果でした。昼寝は夜の睡眠の代わりではなく、補助と考えるのが無難です。
勉強法の早見表で「学んだあとに眠る」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。
出典
- Berres, S., & Erdfelder, E. (2021). The sleep benefit in episodic memory: An integrative review and a meta-analysis. Psychological Bulletin, 147(12), 1309–1353. https://doi.org/10.1037/bul0000350
- Gais, S., Lucas, B., & Born, J. (2006). Sleep after learning aids memory recall. Learning & Memory, 13(3), 259–262. https://doi.org/10.1101/lm.132106
- Rasch, B., & Born, J. (2013). About sleep's role in memory. Physiological Reviews, 93(2), 681–766. https://doi.org/10.1152/physrev.00032.2012
- Mazza, S., Gerbier, E., Gustin, M.-P., Kasikci, Z., Koenig, O., Toppino, T. C., & Magnin, M. (2016). Relearn faster and retain longer: Along with practice, sleep makes perfect. Psychological Science, 27(10), 1321–1330. https://doi.org/10.1177/0956797616659930
- Cousins, J. N., & Fernández, G. (2019). The impact of sleep deprivation on declarative memory. Progress in Brain Research, 246, 27–53. https://doi.org/10.1016/bs.pbr.2019.01.007


