勉強法

学び直しの講座・教材を選ぶ前のチェック表。「わかりやすさ」より、練習問題・解説・くり返しがあるかを見る(オンライン学習と授業の研究から)

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Photo: Jonas Muth / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

学び直しを始めようとして、講座や教材の多さに迷う人は少なくありません。口コミの「わかりやすい」を頼りに選んでも、身につくとは限らないことが研究でわかっています。見るべきなのは、練習問題、解説つきの答え合わせ、くり返しの仕組みがあるかどうか。この記事では、それを選ぶ前のチェック表にしました。

3行でわかる

  1. ネットで学ぶ教材の工夫を調べた51研究のまとめでは、練習問題(効果量0.40)、答え合わせの解説(0.68)、くり返し(0.19)、考えて操作する場面(0.27)がある教材ほど成績がよかった。
  2. 授業で小テストを使った222研究(4万8478人)のまとめでは、小テストで成績が中くらい上がった(g=0.499)。教材に「解いて確かめる場面」があるかを見る。
  3. 話のうまい講師の授業は「よくわかった」と感じさせるが、身につく量は変わらなかった実験がある。評判や体験版の印象より、見終わったあと何も見ずに解けるかで選ぶ。

01 悩みの正体学び直しの講座や教材は、何を見て選べばいい?

講師の話のうまさや「わかりやすい」という評判ではなく、練習問題・解説つきの答え合わせ・くり返しの仕組み・自分で考えて答える場面があるかを見て選びます。

講座を選ぶとき、多くの人は口コミや体験版の「わかりやすさ」を手がかりにします。けれど、わかりやすく感じることと、あとで思い出せることは別でした。

研究で身につく量との関係が見えているのは、教材の「中身の作り」です。この記事では、その作りを5項目のチェック表にしました。特定の講座やサービスをすすめるものではありません。オンライン講座と教室の講座の比較はオンライン講座は教室より身につかない?の記事にまとめています。

02 科学的にわかっていること身につく講座と、身につかない講座のちがいは?

練習問題、解説つきのフィードバック(答え合わせの情報)、くり返し、自分で考えて答える場面がある学び方ほど、成績が高くなっていました。いっぽう「よくわかった」という感じは、身につく量とずれることがあります。

Cookら(2010)[1]

医療職がネットで学ぶ教材の「作りのちがい」をくらべた51研究(うち30がランダム化比較試験)のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。考えて操作する場面が多い教材(効果量0.27、15研究)、練習問題(0.40、10研究)、答え合わせのフィードバック(0.68、2研究)、内容のくり返し(0.19)がある教材ほど、学習の成績がよかった。

対象: 医師・看護師・薬剤師などと、その学生 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、著者らも結論は控えめにすべきとしている。フィードバックは2研究だけ。

Yangら(2021)[2]

実際の授業で小テスト(思い出して答える練習)を使った222研究、4万8478人分のデータをまとめたメタ分析。小テストをすると、成績が中くらい上がった(g=0.499)。効果の大きさは、答え合わせの解説があるか、テストを何回くり返すか、本番のテストと形式が同じかなどで変わった。

対象: 実験室ではなく、実際の授業で行われた研究 / 限界: 社会人が講座で学ぶ場面を直接調べたものではない。

Wisniewskiら(2020)[3]

学習へのフィードバック(できたか・どう直すかを伝えること)を調べた435研究、6万1000人以上のメタ分析。全体では中くらいの効果(d=0.48)だった。正誤と直し方を伝えるフィードバックは0.46、さらに自分の取り組み方まで振り返らせるものは0.99と大きく、ほめる・叱るだけのものは0.24と小さかった。

対象: 教育の場でのさまざまな研究 / 限界: 研究ごとのばらつきが大きく、フィードバックは1種類の方法として扱えないと著者らは述べている。

Freemanら(2014)[4]

大学の理系の授業で、講義を聞くだけの授業と、学生が考えて答える活動を入れた授業をくらべた225研究のメタ分析。活動を入れた授業では、試験の成績が平均0.47標準偏差(点数でおよそ6%)高く、講義だけの授業では単位を落とす割合が1.5倍だった。

対象: 大学の理系の授業 / 限界: 教室での授業の研究で、一人で受けるオンライン講座にそのまま当てはまるかはわからない。

Deslauriersら(2019)[5]

米ハーバード大学の物理の入門授業で、149人を2つのグループに無作為に分け、同じ内容を「評価の高い講師の講義」と「考えて答える活動を入れた授業」で受けさせた。活動を入れた授業のほうがテストの成績は高かったが、「よく学べた」という感じは講義のほうが高かった。

対象: 大学生、授業2回分の実験 / 限界: 1つの大学の物理の授業での結果。

Carpenterら(2013)[6]

同じ内容の短い講義動画を、講師がよどみなく話すものと、つかえながらメモを見て話すものの2種類で見せた。よどみなく話す講師のほうが「どれだけ覚えられそうか」の予想も、講師の評価も高かった。しかし、実際に覚えていた量には差がなかった。

対象: 短い動画を使った2つの実験 / 限界: 1回の短い動画での結果で、長い講座で同じかはわからない。

ここで紹介した研究は、学校や大学の授業、医療職の教育を調べたものです。社会人が自分でお金を払って講座を選ぶ場面を直接くらべた研究はまだ見当たりません。チェック表は「研究で成績と結びついていた作り」を確かめるためのものとして使ってください。

03 使える表講座を申し込む前に、何を確かめればいい?

表1の5項目を、講座の説明ページと体験版で確かめます。2つ以上の講座で迷ったら、体験版を見たあとに何も見ずに問題を解き、表2で採点してくらべます。

表1 講座・教材を選ぶ前のチェック表。研究の結果を、学び直し向けにこのサイトがまとめたものです。

確かめること説明ページ・体験版で見るところもとになった研究
1 練習問題・小テストがあるか各回の終わりに、自分で答える問題があるか。動画や読み物だけで終わらないか練習問題(0.40)[1]、小テスト(g=0.499)[2]
2 答え合わせに解説があるか正解・不正解だけでなく、なぜそうなるか・どう直すかが書かれているか正誤と直し方を伝えるフィードバック(0.46)[3]、答え合わせ(0.68)[1]
3 くり返しの仕組みがあるか前の回の問題がまた出る、まとめテストや復習の回があるかくり返し(0.19)[1]、テストの回数で効果が変わった[2]
4 考えて答える場面があるか聞くだけでなく、途中で手を止めて考える問い・書く課題があるか考えて操作する教材(0.27)[1]、活動を入れた授業[4]
5 体験版で「解けるか」を試せるか体験版を見たあと、何も見ずに問題を解けるか。「わかりやすかった」だけで判断しないわかった感じと実際の成績はずれた[5][6]

表2 体験版の採点表(2つの講座をくらべるとき)。体験版を見終えたら、すぐに何も見ずに書き出します。○=2点、△=1点、×=0点で合計します。

項目講座A講座B
表1の1〜4のうち、当てはまった数例 3例 1
見終わって5分後、何も見ずに要点を3つ書けたか例 ○例 △
体験版の問題(なければ要点から自分で作った問題)が解けたか例 △例 △
「わかりやすかった」の感じ(1〜5)※参考。合計に入れない例 3例 5
合計(1行目の数+2・3行目の点)例 6例 3

4行目を合計に入れないのは、話のうまさで「わかった感じ」が上がっても、覚えた量は変わらなかった実験があるためです[6]。点数の付け方は研究で決まったものではなく、くらべるための目安です。

表3 足りない項目の補い方。選んだ講座に足りない項目があっても、自分で補えます。

足りない項目自分でできる補い方
1 練習問題がない各回を見たあと、見出しを問いの形にして、何も見ずに答える。やり方は読みながら問いを作る記事に
2 解説がない間違えた問題だけ、正解の理由を自分の言葉で1〜2文書く。書けなければ教科書で確かめる
3 くり返しがない1日後・1週間後・1か月後に、前の回の問いをもう一度解く。復習カレンダーが使える
4 考える場面がない動画を10〜15分ごとに止めて、ここまでの要点を口で言う。やり方は講義動画の見方の記事に

表の使い方(今日からできる3つの手順)。

1

候補を2つにしぼり、説明ページで表1の1〜4を確かめる

カリキュラムやサンプル画面に「確認テスト」「演習」「解説」「復習」などがあるかを見ます。書かれていなければ、問い合わせで聞きます。

所要 10分

2

体験版を見たあと、何も見ずに書き出す

見終えて5分たったら、要点を3つ書き、問題を解きます。表2に点を入れます。

所要 15分

3

足りない項目の補い方を決めてから申し込む

点の高い講座を選び、足りない項目は表3の補い方を最初の週の予定に入れます。

所要 5分

04 続けるためのコツ選んだ講座で、身につく使い方を続けるには?

講座を見る時間より、解く時間を先に予定に入れます。「わかった感じ」が弱くても、問題が解けていれば順調だと考えます。

  • 見る時間と解く時間をセットで予定に入れる。例えば動画30分なら、問題15分を同じ日に入れます。
  • 難しく感じても、すぐにやめない。考えて答える授業では、成績は上がったのに「学べた感じ」は低くなりました[5]。手ごたえの弱さは、うまくいっていない印とは限りません。
  • 1か月たったら表2の2・3行目をもう一度やる。最初の回の要点を何も見ずに書けるかで、講座が合っているかを確かめます。
  • どこから学び直すかは、先に小テストで決める。やり方は学び直しのスタート地点チェック表にあります。

05よくある質問

学び直しの講座は、口コミの評価で選んでいい?

口コミは参考程度にとどめるのが安全です。話のうまい講師の動画は「よく覚えられそう」と感じさせ、講師の評価も高くなりましたが、実際に覚えていた量は変わりませんでした。練習問題や解説の有無を確かめ、体験版のあと何も見ずに解けるかで判断します。

動画だけの講座では身につかない?

動画だけでも学べますが、練習問題やくり返しがある教材のほうが成績がよい研究がまとまっています。動画だけの講座なら、10〜15分ごとに止めて要点を言う、見たあとに自分で問題を作って解くなどで補えます。

オンライン講座と通学の講座、どちらを選ぶべき?

形式そのものより、中身の作りのほうが大切です。オンラインと教室をくらべた研究の結果は、別の記事にまとめています。どちらを選ぶ場合も、このチェック表の5項目を確かめてください。

出典

  1. Cook, D. A., Levinson, A. J., Garside, S., Dupras, D. M., Erwin, P. J., & Montori, V. M. (2010). Instructional design variations in internet-based learning for health professions education: A systematic review and meta-analysis. Academic Medicine, 85(5), 909–922. https://doi.org/10.1097/ACM.0b013e3181d6c319
  2. Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. https://doi.org/10.1037/bul0000309
  3. Wisniewski, B., Zierer, K., & Hattie, J. (2020). The power of feedback revisited: A meta-analysis of educational feedback research. Frontiers in Psychology, 10, 3087. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.03087
  4. Freeman, S., Eddy, S. L., McDonough, M., Smith, M. K., Okoroafor, N., Jordt, H., & Wenderoth, M. P. (2014). Active learning increases student performance in science, engineering, and mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 111(23), 8410–8415. https://doi.org/10.1073/pnas.1319030111
  5. Deslauriers, L., McCarty, L. S., Miller, K., Callaghan, K., & Kestin, G. (2019). Measuring actual learning versus feeling of learning in response to being actively engaged in the classroom. Proceedings of the National Academy of Sciences, 116(39), 19251–19257. https://doi.org/10.1073/pnas.1821936116
  6. Carpenter, S. K., Wilford, M. M., Kornell, N., & Mullaney, K. M. (2013). Appearances can be deceiving: Instructor fluency increases perceptions of learning without increasing actual learning. Psychonomic Bulletin & Review, 20(6), 1350–1356. https://doi.org/10.3758/s13423-013-0442-z