勉強法

計算問題の例題と解説はどう使う?研究でわかった例題学習のやり方(資格試験の独学)

約10分で読めます

古い電卓
Photo: Mister rf / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

資格試験の計算問題や、簿記・数学のような手順のある問題。問題集を開くと、まず例題と解説があります。「例題は読み飛ばして、すぐ問題を解いた方が力がつく」と考える人も多いでしょう。研究の答えは「初めて学ぶ単元では、例題をていねいに読む方が身につきやすい。慣れてきたら例題を減らして自分で解く」です。例題は、学ぶ段階に合わせて使い分けるものです。

3行でわかる

  1. 解き方の手本(例題)を読んで学ぶ方法は、算数・数学の55本の研究をまとめた分析で、問題を解くだけの練習より成績を上げた。効果は学び始めの段階で大きかった。
  2. 例題の手順を少しずつ隠して、自分で埋める部分を増やすやり方(フェーディング)は、小学6年生の実験で事前から事後への伸びが最も大きかった。ただし事後テストの点そのものには、グループ間ではっきりした差は出なかった。
  3. 大学生249人の実験では、例題の使い方で差が出なかった。例題は万能ではなく、「初めての単元で、手順を理解するまで」使うのが研究に沿った使い方。

01 悩みの正体例題を読むのは「楽をしている」だけ?

初めての単元では、例題を読むことは手抜きではありません。いきなり解こうとすると、解き方を探すことに頭を使い切り、手順そのものが残りにくいと考えられています。

「自分で解かないと身につかない」という感覚は自然です。けれど、まだ解き方を知らない問題に向き合うと、頭の中では「次に何をすればいいか」を探す作業が大部分を占めます。

認知負荷理論(一度に頭で扱える量には限りがあるという考え方)では、この探す作業が、手順を覚える余裕を奪うと説明します。例題は、探す作業を省いて、手順を1つずつ追う時間に変えてくれます。

ただし、これは「初めて学ぶとき」の話です。解き方を知っている人にとっては、例題を読むことが二度手間になります。例題をいつまで使い、いつ手放すかが、このやり方のかなめです。

02 科学的にわかっていること例題で学ぶと、問題を解くより身につく?

算数・数学では、例題で学ぶ方が問題を解くだけの練習より成績が上がるという結果が、多くの研究で確かめられています。ただし効果は学び始めに大きく、大人の実験では差が出なかった例もあります。

Barbieriら(2023)[1]

算数・数学での例題学習の55本の研究をまとめたメタ分析(たくさんの研究を統計でまとめる方法)。例題で学ぶと、練習問題を解くだけより成績が安定して上がり、その効果は学び始めの段階で大きかった。誤った解き方を見せる例題や、正誤を混ぜた例題より、正しい例題の方が成績の伸びが大きかった。

対象: 主に小中高生(学齢期の子ども)の算数・数学 / 限界: この論文の本文は確認できなかったため、内容は2026年に出た2本の査読論文での紹介[2][4]に基づく。効果の大きさの数値はここには書かない。

Miller-CottoとMedrano(2026)[4]

米国の小学6年生が、オンラインの宿題で立体の表面積・体積を3日間学んだ。①例題+説明を促す問い ②フェーディング+説明を促す問い ③フェーディングだけ ④問題を解くだけ、の4つに分けた。事前から事後への伸び(効果量g)は、フェーディングだけが1.08と最も大きく、例題+問いは0.32、問題を解くだけは0.24だった。

対象: 米国の小学6年生(最初に114人) / 限界: 事後テストの点を4グループで比べると、統計的な差はなかった。フェーディングのグループは事前テストの点が低めだった。子どもが対象で人数も少なく、著者らも結果は暫定的だとしている。

van GogとKester(2012)[3]

学生40人を、例題を4題続けて読むグループと、「例題を読む→似た問題を解く」をくり返すグループに分けた。5分後のテストでは差がなく、1週間後のテストでは例題を読み続けたグループの方が成績がよかった。著者らは、思い出す練習(テスト効果)は、例題から解き方を学ぶ場面には当てはまらないかもしれないと結論づけた。

対象: 学生40人(電気回路の故障を見つける課題) / 限界: 人数が少ない。中国の大学生120人の別の実験でも、例題の後に問題を解く形が1週間後の成績を上げることはなかった[5]。

IbrahimとShah(2026)[6]

米国の大学生249人が、10分の動画で「10進数を別の進数に直す計算」を学び、例題だけ・問題だけ・フェーディングなど、例題と問題の割合が違う4通りの方法で練習した。テストの成績には、学び方によるはっきりした差は見られなかった。

対象: 米国の大学生249人 / 限界: 練習の直後(5分の休憩後)のテストだけ。著者らは、成績の高い学生が多かったことを差が出なかった理由の1つに挙げている。

もう1つ、例題が向かない場面もあります。韓国の大学生32人が「議論の組み立てを見分ける」課題を学んだ実験では、解き方の例だけを見せるより、例を使わない説明を聞いた方が問題をよく解けました[7]。決まった手順で解く計算問題と違い、考え方そのものを理解する課題では、例題より説明が役立つことがあります。

03 今日からできる小さな一歩問題集の例題は、どの順番で使えばいい?

初めての単元は「例題を読む→手順を隠して埋める→例題なしで解く」の順に進めます。解ける単元は例題を飛ばして問題から始めます。

1

初めての単元は、例題を「解かずに」読む

例題の解説を1行ずつ追い、「この行で何をしているか」を確かめます。わからない行に印をつけ、テキストの説明に戻ります。

所要 1題5〜10分

2

同じタイプの例題を2〜3題続けて読む

1題読んですぐ問題に移るより、例題をいくつか読む方が1週間後の成績がよかった実験があります[3]。数字や設定が違っても、手順が同じことを確かめます。

所要 15〜20分

3

例題の後半を紙で隠し、残りの手順を自分で書く

フェーディングを独学で行う方法です。最初は最後の1ステップだけ、次は後半すべて、と隠す部分を増やします。書いたら解説と見比べます。小学生の実験では、この形の伸びが最も大きくなりました[4]。

所要 1題5分

4

例題を閉じて、類題を解く

手が止まったら例題に戻ってよいとします。戻った箇所には印をつけ、次の日に同じ類題を例題なしで解き直します。

所要 10〜20分

5

解ける単元は、例題を飛ばして問題から

すでに解き方を知っている人には、例題の効果が薄れたり逆になったりすると考えられています[8]。例題を読まずに解いてみて、解けたらその単元の例題は卒業です。

所要 —

04 続けるためのコツ例題から問題演習へ、いつ切り替える?

切り替えの目安は「例題を見ずに類題が解けたかどうか」です。単元ごとに、例題の段階・問題の段階のどちらにいるかを分けて考えます。

その単元の状態例題の使い方
初めて学ぶ例題を2〜3題、解かずに読む(手順1・2)
手順はなんとなくわかる例題の後半を隠して埋める(手順3)
例題なしで類題が解けた例題は使わず、問題演習・過去問へ(手順5)
  • 例題を読むときは、正しい解き方の例題を中心にする。誤った解き方を探す形の例題は、正しい例題より伸びが小さかった[1]。
  • 手順を覚えた単元は、過去問や問題集で解く練習に移る。解く練習の効果と進め方は資格試験の過去問の記事で扱っています。
  • 先に自力で悩んでから教わる方法もあります。理解を深めるには役立ちますが、決まった手順の習得では差が小さいことは生産的失敗の記事で紹介しています。

ここで紹介した研究の多くは、子どもや大学生が短い期間で学んだ実験です。何か月もかけて独学する社会人で同じ効果が出るかは、まだ確かめられていません。

05よくある質問

例題を読むだけで、本当に解けるようになりますか?

読むだけで終わらせず、最後は例題を見ずに類題を解いて確かめます。例題は「解き方を理解する段階」で役立つもので、手順を覚えたら問題演習に移ります。例題を読んで解けたつもりになっていないかは、例題を閉じて解いてみるとわかります。

例題の解説を読んでも意味がわからないときは?

例題が今の自分には難しすぎる可能性があります。わからない行に印をつけ、テキストの説明に戻るか、1つ前の基本の例題から読み直します。考え方を理解する問題では、例題より説明を読む方が解けたという実験もあります。

例題を読んだ後、すぐに類題を解くべきですか?

初めての単元では、急ぐ必要はありません。例題を1題読むごとに問題を解く形が、例題を続けて読む形より1週間後の成績を上げることはなかったという実験が複数あります。まず例題を2〜3題読み、手順をつかんでから類題に進みます。

例題を自分の言葉で説明しながら読むと、効果は上がりますか?

例題と組み合わせた場合は、はっきりしません。例題の研究をまとめた分析では、説明を促す問いを加えても学びが増えるとは限らなかったと紹介されています[4]。自分で説明しながら学ぶこと全般の研究は自己説明の記事で扱っています。

勉強法の早見表で「例題を読んでから解く(例題学習)」の判定を見る
ほかの勉強法も46種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Barbieri, C. A., Miller-Cotto, D., Clerjuste, S. N., & Chawla, K. (2023). A meta-analysis of the worked examples effect on mathematics performance. Educational Psychology Review, 35, 11. https://doi.org/10.1007/s10648-023-09745-1(本文は未確認。[2][4]での紹介に基づく)
  2. Stone, T., Fish, L. R., Chernyak, N., Guadalupe, G., & Cordes, S. (2026). The Role of Worked Examples in Supporting Early Math Learning. Journal of Intelligence, 14(9), 192. https://doi.org/10.3390/jintelligence14090192
  3. van Gog, T., & Kester, L. (2012). A test of the testing effect: Acquiring problem-solving skills from worked examples. Cognitive Science, 36(8), 1532–1541. https://doi.org/10.1111/cogs.12002
  4. Miller-Cotto, D., & Medrano, J. (2026). Does working memory moderate the effect of fading on math performance? British Journal of Educational Psychology, 96(1), 108–126. https://doi.org/10.1111/bjep.12781
  5. Huang, X., Zheng, S., Yu, Z., & Chen, S. (2023). Retrieval practice may not benefit mathematical word-problem solving. Frontiers in Psychology, 14, 1093653. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1093653
  6. Ibrahim, A. F. A., & Shah, P. (2026). Math anxiety predicts initial acquisition of new math skills over and above math competence and study strategy. Frontiers in Psychology, 17, 1829468. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1829468
  7. Lange, C., Almusharraf, N., Koreshnikova, Y., & Costley, J. (2021). The effects of example-free instruction and worked examples on problem-solving. Heliyon, 7(8), e07785. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2021.e07785
  8. van Merriënboer, J. J. G. (2015). Worked examples in the classroom. Perspectives on Medical Education, 4(6), 282–283. https://doi.org/10.1007/s40037-015-0226-4