英語の話す練習の記録表。言えた一言・詰まった一言・言い換えを残す使い方(ひとり英会話とくり返しの研究から)

英語を話す相手がいない。練習しても、うまくなっているのかわからない。ひとりで学ぶ人の多くがぶつかる壁です。研究では、同じ話題をくり返し話す練習や、自分に問いかけて英語で答える「ひとり英会話」で、話す速さが上がった報告があります。この記事では、その研究の条件を、ひとりで使える記録表にしました。
3行でわかる
- 台湾の大学生28人が、自分に問いかけて英語で答える練習を4週間(週4回、1回11〜14分)続けると、話す速さが1分あたり約105音節から約121音節に上がった。
- 同じ話題を3回くり返し、回ごとに持ち時間を4分・3分・2分と縮めた組は伸びが大きい傾向があった。ただし差は統計的にははっきりしなかった。
- 記録表は「言えた一言」「詰まった一言」「言い換え」を残し、詰まった一言を次の回の最初に思い出して言う形にした。比べる組のない小さな研究なので、効果は「速さが上がった報告がある」程度に受け取る。
01 この表でできること話す練習は、なぜ記録した方がいい?
話す力の伸びは毎回の手応えではわかりにくいからです。話した時間と詰まった一言を書き残すと、次に練習する一言が決まり、伸びたかどうかも録音で比べられます。
話す練習は、読む・書く練習と違って跡が残りません。「今日はうまく話せた気がする」という感覚だけでは、何を練習すればいいか決まりません。
目標に向けた進み具合を確かめる働きかけを調べた138本の実験のまとめでは、進み具合を確かめる回数を増やす働きかけは目標の達成を後押しし、特に紙などに記録したときに効果が大きくなりました[4]。ただし、これは運動や食事などを含む行動全体の研究で、話す練習で確かめたものではありません。
外国語を話そうとして頭が真っ白になった後の立て直しは英語を話そうとして頭が真っ白になった。どう立て直す?、単語が「わかるのに言えない」ときは英単語は見ればわかるのに、話す・書くときに出てこないにまとめています。
02 表の根拠になった研究ひとりで話す練習について、何がわかっている?
ひとり英会話で話す速さが上がった報告と、同じ話をくり返すと話し方が変わる報告があります。ただし人数は少なく、くり返しで伸びにくい面もあります。
HuangとLiu(2022)[1]
台湾の大学生28人(英語はCEFRのB1)が、自分に質問して英語で答える「ひとり英会話」を宿題として4週間、週4回(合計16回)続けた。1回は11〜14分で、同じ話題を1分の休みをはさんで3回話した。練習に使っていない話題で4分話してもらうと、言い直しや長い間を除いた話す速さは、1分あたり平均105.32音節から121.07音節に上がった。
対象: 台湾の大学生28人 / 限界: 練習をしない組と比べていないため、伸びのすべてが練習のおかげとは言い切れない。著者らも、練習の間隔などを完全には管理できなかったと書いている。
HuangとLiu(2022)の比較[1]
同じ話題を4分・3分・2分と持ち時間を縮めて3回話した組は、3回とも4分で話した組より伸びが大きい傾向があった(p = 0.059、効果の大きさは中〜大)。「えー」「あの」などのつなぎ言葉を禁止するかどうかは、伸びに差を生まなかった。
対象: 同じ28人を4つの組に分けた / 限界: 持ち時間を縮める効果は、統計的にはっきりした差の基準(p < 0.05)に届いていない。
Muhammadpourら(2023)[2]
イランの中級学習者36人が、音のないアニメを見て話の内容を英語で語り、すぐにもう一度語った。さらに3日後と1週間後にも、アニメを見直さずに同じ話を語った。記憶の容量(ワーキングメモリ)が小さい組では、最初から最後の回にかけて使う語の種類が増えた。
対象: イランの中級学習者36人 / 限界: 論文の要旨で確認。くり返しをしない組との比較ではない。
Kangら(2013)[3]
外国語の単語を覚えるとき、お手本の音声を聞いてまねして言うより、音声を聞く前に自分で思い出して言ってみる練習の方が、単語を聞いてわかる力も、自分で言える力も高かった。思い出す練習で発音が悪くなることもなかった。直後のテストでも2日後のテストでも同じだった。
対象: 実験室で絵と単語を覚えた参加者 / 限界: 論文の要旨で確認。単語の研究で、会話の練習そのものではない。
くり返して話す練習は、話す速さには効きやすい一方、文の複雑さや文法の正確さは伸びにくいことがわかっています。HuangとLiuの論文は、持ち時間を縮める練習を比べた先行研究(Boers 2014、Thai と Boers 2016)でも、複雑さと正確さには差が出なかったとまとめています[1]。同じ論文の面接でも、速く話せるようになった代わりに語彙や文法が簡単になったと答えた人が3人いました。
03 記録表の使い方話す練習は、どう組んで記録する?
1回15分ほどで、同じ話題を3回話し、録音を聞いて「言えた一言」「詰まった一言」「言い換え」を書きます。次の回は、詰まった一言を思い出して言うところから始めます。
表1 研究の条件を、ひとりの練習に置き換えた表
| 研究の条件 | ひとりでの練習 |
|---|---|
| 自分に質問して英語で答える[1] | 「自分の仕事を紹介して」「休みの日に何をする?」など、答えやすい質問とキーワード3〜5個を紙に書いてから話す |
| 同じ話題を3回、間に1分休む[1] | 1回目のあと1分休んで2回目、また1分休んで3回目 |
| 持ち時間を4分・3分・2分と縮める[1] | タイマーで1回目4分、2回目3分、3回目2分。縮めるのがつらい日は3回とも同じ時間でよい(差は統計的にはっきりしなかった) |
| つなぎ言葉の禁止は効果なし[1] | 「えー」「well」は気にしなくてよい。止まらずに話し続けることを優先する |
| 週4回、4週間[1] | 1回15分ほどを週4回。4週間を1区切りにする |
| 3日後・1週間後に同じ話をくり返す[2] | 前の週の話題を、メモを見ずにもう一度話す回を週1回入れる |
| まねより先に思い出して言う[3] | 詰まった一言の言い方を調べたら、次の回は答えを見る前に自分で言ってみる |
| 録画して見直す[1] | スマホで録音し、3回目だけ聞き直して表2に書く |
特定の教材やアプリを使う必要はありません。研究の参加者は話す様子を録画して提出していましたが、ひとりで使うなら録音で十分です。
表2 1回分の記録表(ノートに書き写して使う)
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 日付・話題 | 質問とキーワード | 10/17「自分の仕事を紹介して」営業・お客さん・提案 |
| 持ち時間 | 3回それぞれの時間 | 4分 / 3分 / 2分 |
| 言えた一言 | 前より楽に言えた言い方 | I'm in charge of ... |
| 詰まった一言 | 言いたかったのに出なかったこと(日本語でよい) | 「提案書を作り直す」 |
| 言い換え | その場で使った別の言い方と、あとで調べた言い方 | その場: make it again / 調べた: revise the proposal |
| 次の回の最初 | 詰まった一言を、答えを見ずに言う | 言えた / まだ |
記入例は説明用で、研究の内容ではありません。「詰まった一言」は1回に3つまでにします。多すぎると次の回に全部を思い出せません。
表3 4週間の振り返り表(1週目と4週目に同じ質問で話した録音を比べる)
| 見ること | 1週目 | 4週目 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 2分で話せた量(録音を書き起こした単語数) | 語 | 語 | 研究で伸びたのは話す速さ。まずここを見る |
| 3秒以上止まった回数 | 回 | 回 | 減っていれば、言葉が出るまでの時間が短くなっている |
| 「詰まった一言」が次の回に言えた割合 | % | % | 低ければ、1回に書く数を減らす |
| 文の長さ・使った文法 | 気づいたことをメモ | 速さだけ伸びて文が短くなっていたら、言い換えの欄で長い文を1つ足す | |
質問とキーワードを書き、同じ話題を3回話す
1回目4分、2回目3分、3回目2分。間に1分休みます。止まっても、つなぎ言葉を使っても話し続けます。
所要 約12分
3回目の録音だけ聞いて、表2を書く
言えた一言、詰まった一言(3つまで)、言い換えを書きます。詰まった一言の言い方は、ここで調べます。
所要 約5分
次の回は、詰まった一言を思い出して言うところから
表2の「次の回の最初」を見て、答えを見る前に声に出して言います。言えなかったら答えを見て、もう一度言います。
所要 約1分
4週目に、1週目と同じ質問で2分話して比べる
表3に数字を書きます。伸びていない欄があれば、次の4週間の話題や持ち時間を変えます。
所要 約15分
04 続けるためのコツひとりで話す練習が続かないときは?
話題が同じだと飽きやすく、確かめる手段がないと不安になります。話題は週ごとに変え、伸びは1週目と4週目の録音で確かめます。
- 話題は週ごとに変える。研究の面接では、40%の人が「話題がくり返さない方がいい」と答えました[1]。1日の中では同じ話題を3回、日が変われば別の話題にします。
- 毎回の出来で判断しない。研究で比べたのは4週間の前と後です[1]。途中の手応えより、表3の数字で見ます。
- 人に聞いてもらえる機会があれば使う。研究の面接では、33%の人が「伸びたかどうかの意見がほしい」と答えました[1]。ひとりの練習は相手との練習の代わりではなく、その準備として使います。
05よくある質問
ひとりで英語を話す練習に、効果はありますか?
話す速さが上がった報告があります。台湾の大学生28人が、自分に質問して英語で答える練習を4週間、週4回続けると、話す速さが1分あたり平均約105音節から約121音節に上がりました。ただし練習をしない組と比べていない小さな研究なので、効果の大きさははっきりしていません。
同じ話題を何回も話すのは、意味がありますか?
話す速さには効きやすいと考えられています。上の研究では、1回の練習で同じ話題を3回話しました。一方で、くり返して話す練習では、文の複雑さや文法の正確さは伸びにくいこともわかっています。記録表では、言い換えの欄で長い言い方を足すようにしています。
「えー」「あの」を使わないように練習した方がいいですか?
研究では、つなぎ言葉を禁止しても話す速さの伸びに差は出ませんでした。止まらずに話し続けることを優先し、つなぎ言葉は気にしなくてよいと考えられます。
出典
- Huang, S.-E., & Liu, Y.-T. (2022). How to talk to myself: Optimal implementation for developing fluency in EFL speaking through soliloquizing. English Teaching & Learning, 47(2), 145–169(2023年の号に掲載). https://doi.org/10.1007/s42321-022-00110-z
- Muhammadpour, M., Hassanzadeh-Taleshi, M., & Salehi-Amiri, F. (2023). The effects of different task repetition schedules on oral narratives of L2 learners with high and low working memory capacity. Acta Psychologica, 236, 103933. https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2023.103933
- Kang, S. H. K., Gollan, T. H., & Pashler, H. (2013). Don't just repeat after me: Retrieval practice is better than imitation for foreign vocabulary learning. Psychonomic Bulletin & Review, 20, 1259–1265. https://doi.org/10.3758/s13423-013-0450-z
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025


