勉強の先延ばしチェック表と1週間の記録表。「嫌さ・遠さ・自信・誘惑」の4つから原因を見つける使い方(先延ばしの研究)

「今日こそやる」と決めたのに、気づけば夜になっている。勉強の先延ばしは、多くの人が悩むことです。研究では、先延ばしは性格のせいだけでなく、課題の嫌さや締め切りの遠さなど、変えられる条件と強く結びついていました。この記事では、その研究をもとに、先延ばしの原因を見つけるチェック表と、1週間の記録表、見直し表をまとめました。
3行でわかる
- 691の相関をまとめたメタ分析では、先延ばしと強く結びついていたのは「課題の嫌さ」「結果までの遠さ」「できる自信のなさ」「衝動性(目の前の誘惑への弱さ)」だった。
- チェック表で4つのうちどれが自分に多いかを見つけ、原因ごとに対策を1つ選ぶ。記録表で「予定した時刻」と「始めた時刻」のずれを1週間つける。
- 先延ばしへの心理的な支援の効果は「小さいが確かにある」程度(12研究のメタ分析でg=0.34)。表は1回で直す道具ではなく、くせを知って少しずつ変える道具として使う。
01 悩みの正体勉強を先延ばしにするのは、意志が弱いから?
意志の弱さだけでは説明できません。先延ばしのメタ分析では、課題の嫌さ・結果までの遠さ・自信のなさ・誘惑への弱さが強く結びついていました。どれが多いかは人によって違います。
先延ばしとは、「遅らせると自分が困るとわかっているのに、自分から予定を遅らせること」です[1]。わかっているのにやってしまうので、自分を責めやすくなります。
けれど研究をまとめると、先延ばしが起きやすい条件はある程度決まっていました[1]。嫌な課題、先の締め切り、「どうせできない」という気持ち、手の届く所にある誘惑です。条件が違えば、効く対策も違います。だからまず、自分の先延ばしがどの条件で起きているかを見分けることが役に立ちます。
先延ばしが起きる仕組みは勉強を後回しにしてしまうのはなぜ?で詳しく説明しています。この記事は、それを自分に当てはめるための表です。
02 科学的にわかっていること先延ばしと強く結びつく原因は何?
メタ分析では、課題の嫌さ・結果までの遠さ・自信・衝動性が強く一貫して結びついていました。学生向けのレビューは、気が散る環境や、自由すぎて区切りのない勉強も先延ばしを招くとまとめています。
Steel(2007)[1]
先延ばしの原因と結果について、691の相関をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。強く一貫して結びついていたのは、課題の嫌さ、結果までの時間の遠さ、自己効力感(できるという自信)、衝動性だった。勤勉性とその一部である自制心・気の散りやすさ・整理する力も関係していた。神経症傾向(不安になりやすさ)との関係は弱かった。
対象: 先延ばしを調べた多くの先行研究 / 限界: 多くは相関の研究で、どれが原因でどれが結果かは決められない。
Svartdalら(2020)[2]
学生の先延ばしを招く学習環境の条件を、9つに整理したレビュー。控えめな見積もりでも、学生の半数以上が大事な課題を習慣的に先延ばししている。気の散りやすさと先延ばしの相関はr=0.64〜0.72と非常に高く、自己効力感との相関はr=−0.44だった(いずれも先行研究の数値)。自由に予定を決められる状況、遠い締め切り、進み具合が見えないことも、先延ばしを招く条件に挙げている。
対象: 大学などの学習環境 / 限界: 研究者の判断で条件を選んだ解説型のレビューで、著者らも因果について強い主張はしないと述べている。
Rozentalら(2018)[3]
先延ばしへの心理的な支援を、何もしない群とくらべたランダム化比較試験のメタ分析。12研究(21の比較、718人)で、効果は小さいが確かにあった(g=0.34)。認知行動療法(考え方と行動の両方を変える方法)の3研究だけでまとめると、g=0.55だった。
対象: 12研究のうち9研究が高校生・大学生、3研究が一般の大人(いずれも自分から応募した人) / 限界: 12研究のうち4研究は博士論文。研究どうしの結果のばらつきが大きく、認知行動療法の結果は3研究・236人だけで、著者らは「暫定的」としている。
GollwitzerとSheeran(2006)[4]
「いつ・どこで・何をするか」を「もしXなら、Yをする」の形で決める実行意図の効果を、94研究でまとめたメタ分析。決めない場合とくらべて、目標の達成に中程度以上の効果があった(d=0.65)。
限界: 先延ばしの支援をまとめた研究[3]は、このメタ分析の多くは目標達成一般の研究で、先延ばしそのものにどこまで効くかははっきりしないと指摘している。
ここでの研究は主に学生が対象です。働きながら独学する社会人を直接調べた研究ではありません。以下の表の項目は、研究で確かめられた質問票ではなく、出典をもとにこのサイトが独学向けにまとめたものです。
03 使える表自分の先延ばしの原因は、どう見つける?
表1で4つの原因のどれに印が多いかを見ます。表2に1週間、予定と実際に始めた時刻を記録し、8日目に表3で対策を1つ選びます。
表1 先延ばしの原因チェック表。この1週間を振り返って、当てはまるものに印をつけます。印が一番多い原因が、まず手を打つ所です。
| 原因 | チェック項目 | 対策の例 |
|---|---|---|
| 課題の嫌さ[1][2] | □ 始める前から「つまらない」「面倒」と感じる □ 難しすぎて、何から手をつけるかわからない | 最初の一歩を「問題を1問だけ読む」まで小さくする。難しすぎるなら、1段やさしい教材に戻る |
| 結果までの遠さ[1][2] | □ 試験日や締め切りが数か月以上先 □ 今週やらなくても困らないと感じる | 試験日までを週ごとの小さな締め切りに区切り、カレンダーに書く |
| 自信のなさ[1][2] | □ 「どうせ受からない」と思うことがある □ 前に挫折した科目・単元だ | 確実に解ける問題から始め、解けた数を記録する |
| 誘惑・気の散りやすさ[1][2] | □ 始める前にスマホや動画を見てしまう □ 勉強中に別のことを始めてしまう | スマホを別の部屋に置く。勉強する場所と時刻を「もしXなら、Yをする」で決める[4] |
| 区切りのなさ[2] | □ いつ勉強するか、日によってばらばら □ どこまで進んだか、自分でもわからない | 勉強する曜日と時刻を固定し、表2で進み具合を見える形にする |
表2 1週間の先延ばし記録表。紙に書き写すか、メモアプリに同じ列を作ります。勉強を予定した日だけ、1行書きます。
| 日 | 予定した時刻 | 実際に始めた時刻 | 直前にしていたこと | 課題の嫌さ(1〜5) |
|---|---|---|---|---|
| 例 月 | 20:00 | 21:15 | 動画 | 4 |
| 火 | ||||
| 水 | ||||
| … | ||||
| 日 |
「直前にしていたこと」は、誘惑の正体を知るための列です。「課題の嫌さ」は、始める直前に感じた嫌さを1(まったく嫌でない)〜5(とても嫌)でつけます。
表3 8日目の見直し表。記録を見て、当てはまる行の「次の1週間にやること」を1つだけ選びます。
| 記録に見えたこと | 次の1週間にやること |
|---|---|
| 嫌さが4以上の日ほど、始めるのが遅い | その科目の最初の一歩を小さくする。嫌さの低い科目から始めて、続けて嫌な科目に移る |
| 「直前にしていたこと」に同じ物(スマホ・動画など)が3回以上 | 予定の時刻の前に、その物を手の届かない所に移す[2] |
| 予定した時刻が日によってばらばら | 「平日の夕食の後、机に座ったら単語カードを開く」のように、時刻と場所を1つに決める[4] |
| ずれは小さいが、始めてすぐ止まる | 原因は「始められない」より「続かない」側。集中が切れた後の戻り方を参考にする |
| どの日も始められなかった | 予定の量が多すぎる可能性がある。1日の予定を半分にして、まず「始めた日」を増やす |
表3の対策は、出典の研究で挙がった原因に合わせてこのサイトが整理したものです。どの対策が一番効くかを直接くらべた研究はまだありません。
04 続けるためのコツ先延ばしの記録を、自分を責める材料にしないには?
記録は「どの条件で起きるか」を見るためのもので、反省文ではありません。変える対策は1週間に1つだけにし、遅れた日も書き続けます。
- 遅れた日こそ書く。始められなかった日の記録が、原因を見つける一番の手がかりになる。
- 対策は1つずつ。表3から1行だけ選ぶ。全部を一度に変えると、何が効いたかわからなくなる。
- 自分を責めすぎない。失敗した自分への接し方は勉強をサボった自分を責めてしまうときの研究にまとめています。
- 何日も空いてしまったら。再開のしかたは勉強を何日も休んでしまった後の再開のしかたを参考にしてください。
先延ばしが仕事や生活全体に広がっている、気分の落ち込みや強い不安が続くといった場合は、一人で抱えずに医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)に相談してください。
05よくある質問
勉強の先延ばしは性格だから直らない?
性格の影響はありますが、それだけではありません。先延ばしのメタ分析では、課題の嫌さや締め切りまでの遠さなど、状況によって変わる条件も強く結びついていました[1]。心理的な支援をくらべた研究でも、小さいながら効果が確認されています[3]。
締め切りを自分で決めると先延ばしは減る?
学生のレビューでは、遠い締め切りは先延ばしを招く条件の1つとされ、近い小さな目標に区切ることが勧められています[2]。ただし、自分で決めた締め切りは先延ばしを減らしても、成績はかえって下がるかもしれないという研究も紹介されています[2]。区切りは無理のない間隔にしてください。
「もしXなら、Yをする」と決めるだけで本当に違う?
目標の達成一般について94研究をまとめたメタ分析では、中程度以上の効果がありました[4]。ただし、先延ばしそのものに対する効果は、まだはっきりしていないと指摘されています[3]。表2の記録で、自分に効いているかを確かめながら使うのがおすすめです。
出典
- Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65–94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
- Svartdal, F., Dahl, T. I., Gamst-Klaussen, T., Koppenborg, M., & Klingsieck, K. B. (2020). How study environments foster academic procrastination: Overview and recommendations. Frontiers in Psychology, 11, 540910. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.540910
- Rozental, A., Bennett, S., Forsström, D., Ebert, D. D., Shafran, R., Andersson, G., & Carlbring, P. (2018). Targeting procrastination using psychological treatments: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology, 9, 1588. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01588
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1


