英語のLとRが聞き分けられないのはなぜ?日本語で育った耳と、大人になってからの聞き取り練習の研究

"light" と "right"。何度聞いても同じに聞こえて、リスニングの問題で迷ってしまう。英語の勉強を続けていると、自分の耳が悪いのではと不安になる人もいます。でも、LとRの聞き分けが難しいのは、日本語で育った耳としては自然なことです。研究からは、難しい理由と、大人になってからでも練習で伸びる余地の両方がわかっています。
3行でわかる
- 日本語にはLとRを分ける区別がなく、似た音が1つあるだけ。赤ちゃんは生後6〜12か月の間に、母語で使わない音の区別が苦手になっていく。
- 日本語を母語とする大人は、LとRを分けるのに大事な音の手がかりより、関係の薄い手がかりに注意を向けやすい。
- それでも練習で伸びる。大学生11人の訓練では、正答率が平均65%から81%に上がり、3か月後もほぼ保たれた。ただし完全に母語話者並みになるのは難しい。
01 悩みの正体日本人がLとRを聞き分けにくいのは、なぜ?
日本語にはLとRを区別する必要がないため、耳がその違いに注意を向けない状態で育つからです。耳の病気や才能の問題ではなく、日本語を聞いて育った結果です。
日本語の「ラ行」の音は1種類です。英語のLとRのどちらにも似ているため、日本語の中では2つを区別する必要がありません[1]。区別しなくても困らない違いには、耳が注意を向けなくなります。
英語を何年も使っている人でも、この難しさは残りやすいことが知られています[1]。単語をたくさん覚えても、LとRの聞き分けが自然に身につくわけではありません。
02 科学的にわかっていることLとRの聞き分けは、大人になってからでも伸びる?
伸びます。日本語を母語とする大人が、いろいろな話し手の声で聞き分けを練習すると、正答率が上がり、数か月後も保たれました。ただし伸び方は人によって大きく違います。
Kuhlら(2006)[2]
アメリカと日本の赤ちゃんに、英語のLとRを聞かせて調べた。生後6〜8か月から10〜12か月にかけて、アメリカの赤ちゃんは聞き分けが上手になり、日本の赤ちゃんは苦手になっていった。母語の音に耳が合わせていく過程と考えられている。
対象: 生後6〜8か月と10〜12か月の赤ちゃん / 限界: 大人が練習でどこまで取り戻せるかは、この研究ではわからない。
Iversonら(2003)[3]
日本・ドイツ・アメリカの大人に、英語のLとRを聞かせて比べた。日本語を母語とする大人は、英語でLとRを分けるのにあまり役立たない音の手がかりに、最も敏感だった。ドイツ語の話者は、区別に大事な手がかりに比較的敏感だった。
対象: 3か国の大人 / 限界: 聞こえ方の特徴を調べた研究で、練習の効果は調べていない。
Loganら(1991)[1]
それまでの、機械で作った音で練習させる方法は、実際の英語の発音に効果が広がりにくかった。そこで、5人の話し手が録音した実際の単語を使い、語のさまざまな位置にLとRがある組で3週間練習させた。正答率は平均78.1%から85.9%へ、小さいながらも確かに上がった。
対象: アメリカに6か月〜3年住んでいた日本人の大学生6人 / 限界: 人数がとても少なく、練習しない比較の組はない。
Bradlowら(1999)[4]
海外に住んだことのない京都の大学生11人が、3〜4週間で計45回(1回20〜30分)、LとRの聞き分けを練習した。正答率は平均65.1%から81.4%に上がり、3か月後も78.1%だった。練習しなかった比較の組は変わらなかった。練習した人の発音も、英語の母語話者が聞いて「前より良い」と判断する割合が増えた。
対象: 19〜22歳の大学生。2択の問題なので、当てずっぽうでも50% / 限界: 人数が少ない。3か月後に戻ってきたのは11人中9人。
Takagi(2002)[5]
日本語だけを話す8人が、10人の話し手の声で15日間練習した。聞き分けは上がったが、最初と最後の力には大きな個人差があった。練習の後も、一人ひとりに、偶然より明らかに低い正答率でまちがえ続ける単語が残った。
対象: 8人の事例研究 / 限界: 人数が少ない。著者は、大人が母語話者と同じように聞き分けるのは難しいかもしれない、と述べている。
Yaoら(2025)[6]
外国語の発音・聞き取りの訓練を調べた65の研究、計2,793人をまとめたメタ分析。訓練には大きな効果があった(効果量 d=0.762)。聞き取りの訓練は、発音の訓練や両方の組み合わせより効果が大きく、どの訓練も発音より聞き取りの力をよく伸ばした。
対象: 第二言語の学習者 / 限界: 研究ごとの差が大きい。LとRに限った結果ではない。
「いろいろな人の声で練習した方がよい」とよく言われます。しかし、話し手の数の効果を18の研究(計549人)でまとめたメタ分析では、練習直後の差は、極端な結果を除き、出版の偏りを補正すると、ほぼゼロ(g=−0.04)になりました[7]。一方、新しい話し手の声への広がりや、時間がたった後の保持では、大きな効果が出ていました。多くの話し手で練習すると良いかは、まだ決着していません。また、ここで紹介した研究の多くは、実験室で10〜20時間ほど練習した大学生です。独学で同じ伸びが出るかは確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩LとRの聞き分けは、どう練習すればいい?
"light" と "right" のように、LとRだけが違う単語の組を聞いて、どちらか答え、すぐに正解を確かめます。研究で使われたのと同じ形の練習で、1回20分から始められます。
LとRだけが違う単語の組を10〜20組集める
light/right、lead/read、glass/grass のような組です。研究では、語の頭、子音の後(glass など)、母音の間など、いろいろな位置の組を使いました[1]。音声つきの辞書で、ネイティブの発音を聞ける組を選びます。
所要 15分(最初の1回だけ)
聞いて2択で答え、すぐ正解を確かめる
文字を見ずに音を聞き、LかRかを先に決めてから答えを見ます。ただ聞き流すのではなく、答えを出して確かめるのが研究の練習の形です[4]。
所要 1回20分
男女や国の違う、複数の話し手の発音で聞く
同じ単語を、別の人の声でも聞きます。効果の大きさはまだ議論がありますが[7]、研究で効果が出た練習の多くは、複数の話し手の声を使っていました[4][5]。
所要 練習のたびに
正答率を記録し、まちがえやすい組を残す
何問中何問できたかを毎回書きます。まちがえ続ける単語は人によって違うことがわかっています[5]。できた組は減らし、まちがえる組を次の回に多めに入れます。
所要 1分
04 続けるためのコツ練習しても聞き分けられない単語が残るときは?
残っても問題ありません。研究でも、練習の後に苦手な単語が残る人は多くいました。会話では前後の文脈で意味がわかることも多く、完璧な聞き分けを目標にしすぎないことが続けるコツです。
- 研究の練習は3〜4週間で計45回でした[4]。1週間で伸びなくても、やめる理由にはならない。
- 聞き取りの練習が、発音の改善につながった研究もある[4]。発音の練習とは別に、聞く練習も続ける価値がある。
- 似た単語が混ざって覚えにくい問題は、聞き分けとは別の話。似た単語が混ざる記事で扱っている。
- 単語はわかるのに話すと出てこない悩みは、わかるのに言えない単語の記事へ。
05よくある質問
LとRが聞き分けられないのは、耳が悪いからですか?
いいえ。日本語にはLとRを区別する必要がないため、日本語で育った多くの人に共通する難しさです。赤ちゃんの研究でも、日本の赤ちゃんは生後1年の間にLとRの聞き分けが苦手になっていきました。
大人になってからでも、聞き分けられるようになりますか?
研究では、大学生が3〜4週間練習すると、正答率が平均65%から81%に上がり、3か月後もほぼ保たれました。ただし伸び方には大きな個人差があり、苦手な単語が残る人も多くいました。
聞き取りの練習をすると、発音も良くなりますか?
聞き分けの練習だけをした日本人の大学生で、LとRの発音も英語の母語話者から「前より良い」と判断される割合が増えた研究があります。ただし人数の少ない研究で、発音を直接練習した場合との比較ではありません。
出典
- Logan, J. S., Lively, S. E., & Pisoni, D. B. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. The Journal of the Acoustical Society of America, 89(2), 874–886. https://doi.org/10.1121/1.1894649
- Kuhl, P. K., Stevens, E., Hayashi, A., Deguchi, T., Kiritani, S., & Iverson, P. (2006). Infants show a facilitation effect for native language phonetic perception between 6 and 12 months. Developmental Science, 9(2), F13–F21. https://doi.org/10.1111/j.1467-7687.2006.00468.x
- Iverson, P., Kuhl, P. K., Akahane-Yamada, R., Diesch, E., Tohkura, Y., Kettermann, A., & Siebert, C. (2003). A perceptual interference account of acquisition difficulties for non-native phonemes. Cognition, 87(1), B47–B57. https://doi.org/10.1016/S0010-0277(02)00198-1
- Bradlow, A. R., Akahane-Yamada, R., Pisoni, D. B., & Tohkura, Y. (1999). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: Long-term retention of learning in perception and production. Perception & Psychophysics, 61(5), 977–985. https://doi.org/10.3758/BF03206911
- Takagi, N. (2002). The limits of training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: Eight case studies. The Journal of the Acoustical Society of America, 111(6), 2887–2896. https://doi.org/10.1121/1.1480418
- Yao, Y., He, M., Chen, F., & Zhu, J. (2025). A meta-analysis of second language phonetic training: Exploring overall effect and moderating factors. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 68, 1784–1802. https://doi.org/10.1044/2024_JSLHR-24-00432
- Zhang, X., Cheng, B., & Zhang, Y. (2021). The role of talker variability in nonnative phonetic learning: A systematic review and meta-analysis. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 64(12), 4802–4825. https://doi.org/10.1044/2021_JSLHR-21-00181


