やる気・心

ご褒美で勉強を続けるのは逆効果か。やる気と報酬の研究(アンダーマイニング効果)

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Photo: Jpquidores / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

「1時間やったらケーキ」「合格したら旅行」。ご褒美で自分を動かすのは、よくある工夫です。ところが「ご褒美はやる気を下げる」という話も聞きます。研究の答えは「ご褒美の種類と、勉強が好きかどうかで変わる」です。前もって約束した物のご褒美は好きな勉強への興味を下げやすい一方、ほめ言葉や「できた」という手ごたえは興味を高めていました。

3行でわかる

  1. 好きでやっていたことに物のご褒美を約束すると、ご褒美がなくなったあとに自分からやる量が減る。これを「アンダーマイニング効果」と呼ぶ。
  2. 128件の実験をまとめた分析では、約束した物のご褒美はやる気を下げ、ほめ言葉は高めた。ただし「悪影響は限られる」とする反論の分析もある。
  3. 気の進まない作業にはご褒美、好きで始めた勉強には「できたことの確認」。使い分けるのが研究から言える現実的な線。

01「ご褒美でやる気が下がる」とはどういうことか

ご褒美があると、「好きだからやる」が「ご褒美のためにやる」にすり替わることがあります。するとご褒美がなくなったとき、前より手が伸びにくくなります。

自分の中から湧く「面白いからやる」気持ちを、心理学では内発的動機づけと呼びます。お金や物、点数など外から与えられる理由は、外発的動機づけです。

アンダーマイニング効果は、外からのご褒美が内側の「面白い」を弱める現象です。ただし「ご褒美は全部だめ」という意味ではありません。どんなご褒美を、どんな勉強に使うかで結果が変わります。

02科学的にわかっていること

約束した物のご褒美は、好きな課題への興味を下げやすいことが繰り返し報告されています。一方で、悪影響は限られた条件だけだとする分析もあり、議論は決着していません。

Lepperら(1973)[5]

この分野の出発点になった実験。自分から進んで取り組んでいた活動に「やったらご褒美」と約束された子どもは、その後の活動への興味が、予告なしで後からもらった子や、もらわなかった子より低かった。

対象: 子ども / 限界: 短い実験の1件で、大人や長期の勉強にそのまま当てはまるとは限らない。

Deciら(1999)[1]

128件の実験をまとめたメタ分析(複数の研究を統合して分析する方法)。取り組むだけでもらえるご褒美(d=−0.40)、やり終えたらもらえるご褒美(d=−0.36)、成績しだいのご褒美(d=−0.28)は、いずれも自由時間に自分から取り組む行動を下げた。物のご褒美、前もって約束したご褒美でも同様だった。一方、ほめ言葉などの前向きなフィードバックは、自分から取り組む行動(d=0.33)と興味(d=0.31)を高めた。

対象: 実験室の研究(子どもと大学生が中心) / 限界: 物のご褒美の悪影響は、大学生より子どもで大きい傾向があった。

CameronとPierce(1994)、Cameronら(2001)[2][3]

同じ研究群を別の方法で分析し、「ご褒美は全体としてはやる気を下げない」と反論した。悪影響が出たのは、興味のある課題に、前もって約束した物のご褒美を、出来ばえとゆるくしか結びつけずに渡したときだった。興味の薄い課題では、ご褒美がむしろ自分から取り組む行動を高めた。

対象: 1994年は96件の実験 / 限界: Deciらとは研究の選び方・まとめ方が違い、どちらが正しいかは今も議論が続いている。

Cerasoliら(2014)[4]

学校・職場・運動の183件、計212,468人をまとめたメタ分析。「好きだから・面白いから」というやる気は、ご褒美の有無にかかわらず成果を予測した(相関 ρ=.21〜.45)。やる気は成果の「質」を、ご褒美は成果の「量」をよりよく予測していた。

対象: 183件の研究 / 限界: 学校・職場・運動を合わせた結果で、独学だけを取り出したものではない。

Murayamaら(2010)[6]

日本の研究チームが28人を2組に分け、ストップウォッチを5秒ぴったりで止めるゲームをしてもらった。成功1回ごとに200円をもらった組は、報酬のない3分間の自由時間に、そのゲームを自分から遊ぶ回数が少なかった。

対象: 28人 / 限界: 人数が少なく、勉強ではなく短いゲームでの結果。

2つの立場を並べると、次のように整理できます。

  • もともと好きな課題に、前もって約束した物のご褒美を出すと、興味が下がりやすい。
  • ほめ言葉など「うまくできた」と伝える言葉は、興味を下げず、むしろ高めることが多い。
  • 興味の薄い課題では、ご褒美がむしろ取り組みを高めたという分析もある(Cameronら)。

なお、これらの研究の多くは、実験者がご褒美を渡す短い実験です。社会人が自分で自分にご褒美を出し、何か月も独学を続ける場面を直接調べたものではありません。

03今日からできる小さな一歩

ご褒美は、気の進まない作業を乗り切るために使います。好きで始めた勉強は、物ではなく「できたこと」を確かめる仕組みで支えます。

1

勉強を「好きな部分」と「作業の部分」に分ける

語学なら「映画のセリフを読む」は好き、「単語の書き取り」は作業、のように2列で書き出します。ご褒美は作業の列だけに使います。

所要 3分

2

ご褒美は「量」の目標に結びつける

「単語カード50枚を回したらコーヒー」のように、数えられる作業に使います。Cerasoliら(2014)では、ご褒美は成果の質より量とよく結びついていました。

所要 1分

3

終わったら「できたこと」を1行書く

「昨日より3問多く解けた」「この文法が説明できた」など、伸びを具体的に書きます。ほめ言葉と同じように、できたという手ごたえを自分に返す工夫です。

所要 1分

04続けるためのコツ

ご褒美を外したあとも続くかどうかが分かれ目です。ご褒美に頼りきらず、「わかった」「解けた」と感じられる場面を勉強の中に増やします。

  • ご褒美の条件を「1時間座ったら」にしない。座った時間より、解けた問題数のように中身に結びつける。
  • 好きで始めた勉強に、あとから大きな物のご褒美を足さない。続いているなら、そのままでよい。
  • 「できた」を感じるには、本を閉じて思い出す練習で答え合わせをするのが手っ取り早い。
  • やる気が出ない日の始め方は、「もし〇〇したら△△する」の決め方も参考になる。

05よくある質問

アンダーマイニング効果とは何ですか?

もともと楽しくてやっていたことに、物やお金のご褒美を約束すると、ご褒美がなくなったあとに自分からやる量が減る現象です。Deciら(1999)の128件の実験をまとめた分析で確認されています。

自分へのご褒美(勉強後のケーキなど)も逆効果になるの?

はっきりとはわかっていません。研究の多くは、実験者がご褒美を渡す場面を調べたものです。好きで始めた勉強なら物のご褒美を条件にしすぎず、気の進まない作業の後押しに使うのが無難です。

ほめるのは逆効果にならないの?

研究ではむしろ逆です。Deciら(1999)では、よくできたことを伝えるほめ言葉が、自分から取り組む行動(d=0.33)と興味(d=0.31)を高めていました。

勉強法の早見表で「物のご褒美でやる気を出す」の判定を見る
ほかの勉強法も22種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668. https://doi.org/10.1037/0033-2909.125.6.627
  2. Cameron, J., & Pierce, W. D. (1994). Reinforcement, reward, and intrinsic motivation: A meta-analysis. Review of Educational Research, 64(3), 363–423. https://doi.org/10.3102/00346543064003363
  3. Cameron, J., Banko, K. M., & Pierce, W. D. (2001). Pervasive negative effects of rewards on intrinsic motivation: The myth continues. The Behavior Analyst, 24(1), 1–44. https://doi.org/10.1007/BF03392017
  4. Cerasoli, C. P., Nicklin, J. M., & Ford, M. T. (2014). Intrinsic motivation and extrinsic incentives jointly predict performance: A 40-year meta-analysis. Psychological Bulletin, 140(4), 980–1008. https://doi.org/10.1037/a0035661
  5. Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children's intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the "overjustification" hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137. https://doi.org/10.1037/h0035519
  6. Murayama, K., Matsumoto, M., Izuma, K., & Matsumoto, K. (2010). Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(49), 20911–20916. https://doi.org/10.1073/pnas.1013305107