勉強を後回しにしてしまうのはなぜ?先延ばしの研究でわかった3つの理由

やらなければいけないのはわかっている。時間もある。それでも参考書を開く前に、別のことを始めてしまう。勉強の先延ばしは、だらしなさだけで起きるものではありません。研究では、課題の「嫌さ」、先にある成果の「遠さ」、そして嫌な気分から逃げたい気持ちが重なって起きることがわかってきました。
3行でわかる
- 691の相関をまとめたメタ分析では、先延ばしと強く一貫して結びついていたのは、課題の嫌さ・成果までの遠さ・自信の低さ・衝動性だった。
- 先の報酬を割り引いて感じる人ほど、109日間の課題を後回しにしていた(大学生84人、r=0.28)。気分をうまく扱えない人ほど先延ばしが多い、という研究もある。
- 先延ばしは、その後の気分の落ち込みやストレスと結びついていた。心理的な取り組みの効果は「小さい」が、認知行動療法では中くらいだった。
01 悩みの正体勉強の先延ばしは、怠けとどう違う?
先延ばしは、やらないと困るとわかっているのに、自分の意思で必要もなく遅らせてしまうことです。計画的に後に回す「戦略的な遅らせ」とは区別されます。
研究では、先延ばしを「害があるとわかっていながら、大事な予定を自分から遅らせること」と定義します[3][5]。ポイントは「わかっているのに」という点です。やる気がまったく無い人の話ではありません。
また、先延ばしは珍しいことではありません。研究者による推定では、学生の約半数と、大人の15〜25%が慢性的に先延ばしをするとされています(この推定は過去の調査を引用したもの)[5]。
02 科学的にわかっていること人はなぜ勉強を後回しにしてしまう?
研究が示す主な理由は3つです。課題が嫌だと感じること、成果が遠い先にあること、そして嫌な気分を今すぐ和らげたい気持ちです。
Steel(2007)[1]
先延ばしの原因と結果を調べた研究の691の相関をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。強く一貫して結びついていたのは、課題の嫌さ、成果や締め切りまでの遠さ、自分にはできるという感覚(自己効力感)の低さ、衝動性だった。不安を感じやすい性格などとの関係は弱かった。
対象: 先延ばしを調べた多数の研究 / 限界: 多くは相関の研究で、どれが原因かは区別しきれない。
ZhangとMa(2024)[2]
ニューヨーク大学の学生が、109日の学期中に7時間ぶんの研究参加を終える課題をどう進めたかを記録した。「今すぐの少ないお金」と「後の多いお金」の選び方で、先の報酬をどれだけ割り引くかを測ると、割り引きが大きい人ほど課題を後半に回していた(r=0.28)。
対象: 84人(93人のうち注意確認で9人除外) / 限界: 勉強そのものではない課題で、1つの大学の学生だけ。終えた日や質問票で先延ばしを測ると、はっきりした関係は出なかった。過去の3研究のうち2つでも関係は見つかっていない。
Wiwatowskaら(2025)[3]
ポーランドの大学生206人にオンラインで質問票と注意の課題を行った。気分や感情をうまく扱えない程度と、先延ばしの傾向にはr=0.527の相関があった。注意を保つ力との関係は、感情の扱いにくさや心のさまよいを考えに入れると消えた。
対象: ポーランドの大学生、平均24.4歳 / 限界: 1回の調査で、著者ら自身が「因果を確かめる設計ではない」と書いている。
Johanssonら(2023)[4]
スウェーデンの大学生3,525人を9か月追跡した。先延ばしの得点が1標準偏差高いと、9か月後の抑うつ・不安・ストレスの症状がわずかに高く、睡眠の質の悪さや運動不足も起きやすかった。
対象: 8大学の学生、平均24.8歳 / 限界: 観察研究で、多くの要因を調整しても因果は言い切れない。差の大きさは小さい。
SiroisとMonaghan(2026)[5]
36の調査(8,603人)をまとめたメタ分析。先延ばしの傾向が強い人ほど自分の健康を悪く感じていた(平均r=0.21)。その一部は、ストレスの高さで説明された。
対象: カナダと英国で集めた一般成人28調査と学生8調査 / 限界: すべて1回の調査で、先延ばしが健康を悪くしたとは言えない。
ここからわかるのは、先延ばしが「気分の問題」と「時間の問題」の両方を持つことです。嫌な課題を前にすると、今の気分を守るために先へ送る。その結果、締め切り前にストレスが集まる。Steelは、これらの結果が「できそうか・やる価値があるか」という期待の理論と、遠い報酬ほど小さく感じる性質を組み合わせた理論(時間的動機づけ理論)と合っているとしています[1]。
ここで紹介した研究の多くは大学生のもので、ほとんどが相関の研究です。働きながら独学する大人に同じ大きさで当てはまるかは、まだわかっていません。
03 今日からできる小さな一歩先延ばしの理由がわかったら、何から変える?
理由に合わせて手を打ちます。嫌さには「5分だけ」、遠さには「今週の小さな締め切り」、気分には「いやな気持ちを1行書く」が対応します。
| 先延ばしの理由 | 自分に当てはまるサイン | まず試すこと |
|---|---|---|
| 課題が嫌[1] | 教材を見るだけで気が重い | 最初の5分でやる作業を1つだけ決める(問題1問、1ページ) |
| 成果が遠い[1][2] | 試験が数か月先で、今週やらなくても困らない | 試験日ではなく「今週の金曜までに何をやるか」を書く |
| 気分から逃げたい[3] | 不安やもやもやを感じると別のことを始める | 「何がいやか」を1行書いてから、5分の作業に入る |
| できる気がしない[1] | どうせわからない、と感じる | 確実に解ける問題から始め、終えたら印をつける |
この表は、上の研究で見つかった「理由」に、このサイトが手を対応させたものです。それぞれの手を研究で直接比べたわけではありません。
今日の5分を決める
「勉強する」ではなく「問題集の12ページ、1問目を解く」のように、すぐ始められる大きさにします。いつ・どこでやるかも決めると、さらに始めやすくなります(if-thenプランの研究)。
所要 2分
締め切りを手前に引き寄せる
試験日から逆算して、今週の締め切りを1つ作ります。先の報酬は小さく感じられるので、近くに区切りを置きます[2]。
所要 5分
いやな気持ちを1行だけ書く
「範囲が多すぎて不安」など、何がいやかを書いてから始めます。先延ばしたことを責める必要はありません。自分を責めずに立て直す方法はセルフ・コンパッションの研究にまとめています。
所要 1分
04 続けるためのコツ先延ばしグセは、どのくらい直せる?
心理的な取り組みをまとめた研究では、効果は平均すると小さめでした。ただし認知行動療法(考え方と行動を少しずつ変える方法)では中くらいの効果が出ていました。
ランダム化比較試験12本(718人)のメタ分析では、先延ばしへの心理的な取り組みの効果はg=0.34でした。認知行動療法の3研究に絞ると、g=0.55でした[6]。著者らは、研究数が少なく結果のばらつきも大きいとしています。一度の工夫で消えるものではないと考え、次のように続けます。
- 完全に直そうとしない。先延ばしの日があっても、次の5分を決め直せば十分です。
- 計画の見積もりを長めにする。人は作業時間を短く見積もりがちです(計画錯誤の研究)。
- 誘惑を手の届かない所に置く。意志の強さより環境の方が頼りになります(自制心と環境づくりの研究)。
先延ばしで気分の落ち込みや不安が続き、生活にさしつかえるときは、一人で抱え込まずに相談してください(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)。
05よくある質問
勉強を先延ばしにするのは意志が弱いから?
意志だけの問題ではありません。メタ分析では、課題の嫌さや成果までの遠さ、自信の低さ、衝動性が先延ばしと強く結びついていました[1]。気分をうまく扱えないことも関係しています[3]。課題の大きさや締め切りの置き方を変えることで、手を打てる部分があります。
締め切り直前の方が集中できるから、先延ばしでもいい?
直前に集中できる感覚はあっても、先延ばしの傾向は9か月後のストレスや睡眠の質の悪さと結びついていました[4]。前もって小さく進める方が、体と心の負担は小さくなります。
先延ばしは年齢とともに減る?
先延ばしは学生に多いと報告されることが多いものの[3]、大人でも15〜25%が慢性的に先延ばしするという推定があります[5]。年齢だけで解決するとは考えず、課題の大きさや締め切りを工夫する方が確かです。
出典
- Steel, P. (2007). The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure. Psychological Bulletin, 133(1), 65–94. https://doi.org/10.1037/0033-2909.133.1.65
- Zhang, P. Y., & Ma, W. J. (2024). Temporal discounting predicts procrastination in the real world. Scientific Reports, 14, 14642. https://doi.org/10.1038/s41598-024-65110-4
- Wiwatowska, E., Prost, M., Coll-Martin, T., & Lupiáñez, J. (2025). Is poor control over thoughts and emotions related to a higher tendency to delay tasks? The link between procrastination, emotional dysregulation and attentional control. British Journal of Psychology, 116(4), 807–830. https://doi.org/10.1111/bjop.12793
- Johansson, F., Rozental, A., Edlund, K., et al. (2023). Associations between procrastination and subsequent health outcomes among university students in Sweden. JAMA Network Open, 6(1), e2249346. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.49346
- Sirois, F. M., & Monaghan, C. (2026). Procrastination, stress, and self-rated health: A multi-sample meta-analysis. British Journal of Health Psychology, 31(3), e70099. https://doi.org/10.1111/bjhp.70099
- Rozental, A., Bennett, S., Forsström, D., et al. (2018). Targeting procrastination using psychological treatments: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology, 9, 1588. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.01588


