パソコンで勉強するときの「画面の仕分け表」と寄り道の記録表。勉強に関係あるタブ・関係ないタブを分ける(ながら勉強とオンライン授業の研究から)

パソコンで講義動画を見ていたはずが、気づけば別のタブでニュースや動画を開いている。スマホと違って、勉強の道具そのものが寄り道の入り口になるのがパソコンの難しいところです。研究からいえるのは、「画面の寄り道で必ず成績が落ちる」とまでは言えないこと、そして勉強に関係ある使い方と関係ない使い方は分けて考えた方がいいことです。この記事では、画面を仕分ける表と、効いたかを自分で確かめる記録表を紹介します。
3行でわかる
- 大学生の3割ほどの勉強の場面で、別のことを同時にしていた(ドイツの88人、930場面)。多くは勉強と関係ない、SNSやメッセージなどだった。
- 関係ない画面の時間と成績の結びつきは、研究によって「弱い負の関係」から「関係なし」まで分かれた。調べもの・ノートなど勉強に関係ある使い方は、成績と正の関係だった。
- 表1で画面を「開いてよい」「調べたら戻る」「閉じる」に仕分け、表2で2週間、寄り道の回数と直後の3問テストを記録して比べる。
01 この表でできることパソコンでの勉強が脱線しやすいのは、なぜ?
教材を開く画面と、動画やSNSを開く画面が同じだからです。すべてを禁止するより、勉強に関係ある画面と関係ない画面を先に分けておくと、どこまでがよい使い方かで迷わずにすみます。
勉強中に別のことを同時にする「ながら勉強」で頭に入りにくくなる仕組みは、ながら勉強の記事で紹介しました。スマホの対策はスマホのネットを切る時間の記事にまとめています。
パソコンの場合は、スマホのように「別の部屋に置く」ことができません。辞書を引く、解説を検索する、ノートをとる、といった勉強に必要な使い方もあります。そこでこの記事の表は、画面を3つに仕分けてから勉強を始め、寄り道したら記録する形にしました。
02 表の根拠になった研究画面の寄り道は、どのくらい学びに響く?
勉強と関係ない画面の時間が長い人ほど点数が低い調査はありますが、関係は弱く、関係が見られない調査や実験もあります。一方、調べものなど勉強に関係ある使い方は、成績と正の関係でした。
Bachmannら(2024)[1]
2週間以内に大事な試験を控えた大学1年生に、1週間、1日5回スマホで「今何をしているか」を答えてもらった。勉強していた930の場面のうち、31%で別のことも同時にしていた。同時にしていたことの65%は勉強と関係ない余暇の行動で、その中ではSNSやメッセージが最も多かった。勉強を「やりたいから」している場面ほど、ながら勉強は少なかった。
対象: ドイツの大学の法学・教育学の学生88人(平均21歳) / 限界: その場の回答を集めた調査で、原因と結果の関係はわからない。ながら勉強が成績に響いたかは調べていない。
Ochsら(2024)[2]
会場とオンラインの両方で受けられる90分の心理学の講義6つの後に、寄り道の時間と小テスト(24点満点)を調べた。勉強と関係ないデジタルの寄り道の時間は平均10.16分で、オンラインで受けた学生の方が長かった。その時間が長いほど点数はわずかに低かった(相関 -0.14)。デジタルでない寄り道では、こうした関係は見られなかった。
対象: スイスの大学の学生690人(オンライン254人・会場436人) / 限界: 受け方は学生が自分で選んだ。寄り道の時間は本人の申告。オンラインと会場の点数の差は、寄り道を通じた分を合わせても24点中0.09点ほどと小さかった。
Fanら(2025)[3]
8週間オンライン授業を受けた大学生に、授業中の「ながら行動」の頻度を聞いた。授業の内容を調べる・ノートをとる・授業について話し合うといった勉強に関係ある使い方が多い人ほど、学習成果の自己評価が高かった(相関0.392)。動画・ゲーム・買い物・SNSなど関係ない使い方は、成績と関係が見られなかった(相関 -0.008)。
対象: 中国の大学生557人 / 限界: 1回の質問票の調査で、学習成果も本人の評価。関係ある使い方でも、ページの切り替えで負担が増える可能性があると著者らは書いている。
Marty-Dugasら(2024)[4]
22分の講義動画の横に、キーひとつで表示・非表示を切り替えられるヘビのゲームを置いた。ゲームを操作できる組は講義の平均63%、見るだけの組は平均51%の時間、ゲームを表示していた。それでも講義後の小テストの点数に差はなく、表示していた時間と点数にも関係は見られなかった。
対象: カナダの大学生220人あまり / 限界: ヘビのゲームはSNSや動画ほど引きつけないので、影響を小さく見積もっている可能性があると著者らは書いている。表示していても講義を聞いていた可能性もある。
Kuş(2025)[5]
スマホへの依存・SNS・ゲームと学業成績の関係を調べた63本の研究(28か国・12万4,166人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。使うほど成績が低いという関係はあったが、小さかった(d = -0.085)。
対象: 生徒・学生 / 限界: 勉強中の使い方に限ったまとめではなく、ふだんの使用量との関係。相関の研究が中心。
どの研究も、大学生の授業や短い講義での結果です。社会人がパソコンで資格や語学を学ぶ場合に同じかはわかりません。影響があるとしても小さく、人によって違う可能性があります。だから表2で、自分の場合を確かめます。
03 使える表画面の仕分け表と記録表は、どう使う?
勉強を始める前に表1で画面を3つに仕分け、関係ない画面を閉じます。寄り道したら表2に印をつけ、勉強の最後に3問だけ思い出して書き、2週間分を比べます。
開いている画面を、表1の3つに仕分ける
タブやアプリを1つずつ見て、「開いてよい」「調べたら戻る」「閉じる」に分けます。関係ある使い方と関係ない使い方で、研究の結果が違ったためです[3]。
所要 2分
「閉じる」の画面を閉じ、通知も止める
メッセージやSNSのタブは閉じ、パソコンの通知も切ります。勉強の場面の寄り道で多かったのは、SNSやメッセージでした[1]。
所要 1分
調べものは「1つ調べたら戻る」
わからない用語を調べるのは勉強に関係ある使い方です。ただし、調べ終わったら教材の画面に戻ります。調べたいことが勉強と関係なければ、紙の「あとで調べるメモ」に書いておきます。
所要 その都度
寄り道したら、表2に「正」の字を1画
関係ない画面を開いてしまったら、責めずに印をつけて戻ります。何を開いたかを一言残すと、次に閉じる画面がわかります。
所要 5秒
勉強の最後に、3つ思い出して書く
何も見ずに、今日の内容を3つ書き出し、教材で合っているか確かめます。寄り道の多い日と少ない日で、思い出せた数が違うかを2週間で比べます。思い出す練習そのものも、記憶に残りやすい勉強法です。
所要 3分
表1 画面の仕分け表(勉強を始める前に)。研究で分けられていた「勉強に関係ある使い方」と「関係ない使い方」[3]をもとに、このサイトが独学向けにまとめたものです。
| 仕分け | 当てはまる画面の例 | 決まり |
|---|---|---|
| 開いてよい | 教材のPDF・講義動画・問題集のページ・ノートのアプリ | 勉強のあいだ開いておく。同時に開くのは2つまで |
| 調べたら戻る | 辞書・用語の検索・公式の解説ページ | 1つ調べたら、すぐ教材の画面に戻る |
| 閉じる | SNS・メッセージ・動画サイト・ニュース・買い物・ゲーム | 始める前に閉じ、通知も切る。見るのは休憩のとき |
| 迷うもの | 勉強仲間とのチャット・BGMのアプリ | 勉強の内容を話すなら「調べたら戻る」、雑談なら「閉じる」。BGMは音楽の記事を見て決める |
表2 2週間の寄り道記録表。紙に書き写すか、メモに同じ列を作ります。記入例は架空の数字です。
| 日 | 勉強した時間 | 仕分けをしたか | 寄り道の回数 | 開いたもの | 最後に思い出せた数(3つ中) |
|---|---|---|---|---|---|
| 例 1日目 | 例 45分 | 例 した | 例 正(5回) | 例 ニュース・メッセージ | 例 2 |
| 例 2日目 | 例 40分 | 例 しない | 例 正正(10回) | 例 動画・SNS | 例 1 |
| 3日目 | |||||
| … | |||||
| 14日目 |
表3 2週間後の見直し表。研究の数字ではなく、記録の使い方の目安です。
| 記録に出ていること | 次の2週間にすること |
|---|---|
| 仕分けをした日の方が、寄り道が少なく、思い出せた数も多い | 仕分けを毎回の決まりにする |
| 寄り道は減ったが、思い出せた数は変わらない | 画面より、勉強のやり方を見直す。読み返すより思い出す時間を増やす |
| 同じ画面(例: 動画サイト)に何度も寄り道している | その画面だけ、勉強の時間はブロックするか、別の端末に移す |
| 「調べたら戻る」のはずが、そのまま戻れない | 調べものは勉強の最後にまとめてする。途中では「あとで調べるメモ」に書くだけにする |
| 寄り道がもともと少ない | 今のやり方を続ける。集中を切らす原因がほかにあれば中断の記録表で探す |
講義動画で勉強するときの見方は講義動画の見方の記事で、画面の横に別の動画を流す「2画面」については2画面の動画の記事で紹介しています。
04 続けるためのコツ画面の仕分けを、面倒にせず続けるには?
仕分けは勉強を始める前の2分だけにし、寄り道は印1つで記録します。寄り道をゼロにすることではなく、自分にとってどの画面が問題かを見つけることを目的にします。
- 勉強用の画面をまとめておく。教材・辞書・ノートを開いた状態を、ブラウザのブックマークのフォルダなどにまとめておくと、毎回の仕分けが早く終わります。
- 寄り道を責めない。大学生でも勉強の場面の3割ほどで別のことをしていました[1]。数えるのは、次に閉じる画面を決めるためです。
- 「やりたい勉強」の日は寄り道が減りやすい。勉強を「やらされている」と感じる場面ほど、ながら勉強は多かった研究があります[1]。気が乗らない日は、表2の回数が多くても当然と考えます。
- 休憩で見る画面を決めておく。「閉じる」の画面は、休憩のときに見てよいことにすると、勉強中に開かずにすみやすくなります。
05よくある質問
勉強中に別のタブを開くと、成績は下がるのですか?
下がると言い切れるほどの証拠はありません。スイスの大学生690人の調査では、授業中に勉強と関係ないデジタルの寄り道をした時間が長い人ほど小テストの点が低い傾向がありましたが、関係は弱いものでした(相関 -0.14)。中国の大学生557人の調査では関係が見られず、カナダの実験でもゲームを開けた組の点数は下がりませんでした。だからこそ、自分の記録で確かめるのが確実です。
調べものをするのも「ながら勉強」になりますか?
勉強の内容を調べる・ノートをとる・授業の内容を話し合うといった画面の使い方は、研究では「勉強に関係あるながら行動」として、関係ないものと分けて扱われています。中国の大学生の調査では、関係ある使い方をよくする人ほど学習成果の自己評価が高い傾向でした。ただし、調べものから関係ないページへ移ってしまうこともあるので、この記事の表では「調べたら戻る」を決まりにしています。
音楽を流しながら勉強するのは、関係ない画面に入りますか?
この記事で紹介した中国の調査では、音楽を聴くことは「勉強に関係ないながら行動」に数えられていました。ただ、音楽の影響は歌詞があるかどうかなどで変わります。音楽については別の記事でくわしく扱っています。
寄り道の記録は、どのくらいの期間つければいい?
研究で決まった期間はありません。この記事では、画面を仕分けた日とそうでない日を比べられるように、2週間をすすめています。1日ごとの差は体調などでも変わるので、何日分かを並べて見ます。
出典
- Bachmann, O., Grunschel, C., & Fries, S. (2024). Multitasking while studying: Grit moderates the relationship of situational motivation and multitasking. Frontiers in Psychology, 15, 1404767. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1404767
- Ochs, C., Gahrmann, C., & Sonderegger, A. (2024). Learning in hybrid classes: The role of off-task activities. Scientific Reports, 14, 1629. https://doi.org/10.1038/s41598-023-50962-z
- Fan, L., Pan, C., Bai, X., & Li, S. (2025). The impact of relevant versus irrelevant media multitasking on academic performance during online learning: A serial of mediating models. Frontiers in Psychiatry, 16, 1599827. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2025.1599827
- Marty-Dugas, J., McHardy, R. J., Ralph, B. C. W., Kim, J., & Smilek, D. (2024). Active vs passive media multitasking and memory for lecture materials. Heliyon, 10(11), e31935. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e31935
- Kuş, M. (2025). A meta-analysis of the impact of technology related factors on students' academic performance. Frontiers in Psychology, 16, 1524645. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1524645


