勉強法

読むのが遅くて教材が終わらない。どう立て直す?速読ではなく「読み方を使い分ける」研究(速読アプリの実験も)

約7分で読めます

机の上に積まれた本
Photo: Leon Brooks / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

参考書を開いて1時間。まだ20ページしか進んでいない。試験日から逆算すると、とても終わりそうにない。そんなとき「速読ができれば」と考えるのは自然なことです。けれど研究では、読む速さと理解はほぼ引き換えになることがわかっています。この記事では、遅さを無理に直すのではなく、教材の中で「速く読む所」と「ゆっくり読む所」を分けて立て直すやり方を、研究から紹介します。

3行でわかる

  1. 読む速さと理解は引き換えになる。理解を落とさずに速さを2〜3倍にするのは難しい、と速読の研究をまとめたレビューは結論づけている。
  2. 時間が半分しかない実験では、ざっと読みの方が、半分だけを読むより大事な点が残った。ただし細かい点や推論の問題には効かなかった。
  3. 立て直しは、①読む目的を章ごとに決める ②時間がない章はざっと読み ③出る所は戻り読みしながら丁寧に ④1語ずつ表示する速読アプリは使わない ⑤読んだら閉じて要点を書く ⑥速さは語彙と読む量で伸ばす、の6つ。

01 悩みの正体読むのが遅いのは、読み方が悪いから?

多くの場合、遅さそのものは問題ではありません。英語の研究では、大人が説明文を黙読する速さは平均1分に238語で、速さにはもともと個人差があります。問題は、教材のすべてを同じ丁寧さで読もうとすることです。

190の研究(1万8573人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)では、英語を母語とする大人が説明文を黙読する速さは、平均で1分に238語でした[1]。多くの人は175〜300語の範囲に入り、一般に言われる数字より遅かったと報告されています[1]。日本語の教材についての同じような数字は、今回は確認できませんでした。

つまり「自分だけ遅い」と感じても、平均から大きく外れていないことが多いのです。それでも教材が終わらないのは、試験に出ない所まで、覚えるつもりでゆっくり読んでいるからかもしれません。

速読の研究をまとめたレビューは、読む速さの中心にあるのは言葉の力(語彙など、言葉を使いこなす力)だと説明しています[2]。だから、読み方の練習で一気に速くするより、読む場所を選ぶ方が、すぐに効きます。

02 科学的にわかっていること速く読むと、理解はどれくらい落ちる?

速く読むほど理解は落ちます。ざっと読みは全体の要点をつかむには役立ちますが、細かい点や推論には向きません。理解を支えているのは、読み返す目の動き(戻り読み)でした。

Raynerら(2016)[2]

読む仕組みと速読の研究をまとめたレビュー。読む速さと正確さは引き換えになり、理解を同じに保ったまま速さを2〜3倍(1分に約250語から500〜750語)にするのは難しいと結論した。深く理解する必要がなければ、速読やざっと読みで、ほどほどの理解のまま速く読み終えられる。理解を保って速く読む方法は、読む練習を重ね、語彙を増やすことだとしている。

対象: 英語の読書についての多くの研究のまとめ / 限界: 日本語の教材での研究ではない。個々の実験の効果を数値でまとめたものではない。

StrukeljとNiehorster(2018)[3]

1ページの文章を「ふつうに読む」「じっくり読む」「ざっと読む」「誤字を探す」の4つの指示で読ませ、目の動きを記録した。じっくり読むと時間が長く、読み返しが増え、理解問題の点が上がった。ざっと読むと時間は短く、点は下がった。

対象: スウェーデン語を母語とする60人(平均22.9歳) / 限界: 1ページの短い文章で、理解は選択式5問で測った。長い教材を何週間もかけて読む場面とは違う。

DugganとPayne(2009)[4]

文章の半分しか読めない時間で読ませる実験。ざっと読んだ人は、文章の半分だけを読んだ人より、大事な考えをよく覚えていた。ただし、重要でない細かい点や、文章から推論する問題では差がなかった。別の実験では、各段落の前半か後半だけを読む方法と比べて、ざっと読みの有利さはなかった。

対象: 時間を区切った説明文の読解の実験 / 限界: 実験室の短い課題。論文の要旨で確認。

Schotterら(2014)[5]

読み終えた単語をすぐ隠して、戻り読みができないようにすると、理解が下がった。あいまいな文だけでなく、ふつうの文でも下がった。戻り読みは読みの自然な一部で、理解を支えていると著者らは結論した。

対象: 目の動きを記録する読みの実験 / 限界: 実験室の短い文の課題。論文の要旨で確認。

AcklinとPapesh(2017)[6]

1語ずつ画面に表示する速読アプリの方式(1分に700語・1000語)と、ふつうに文章を表示した場合を比べた。理解の点は、ふつうの表示の方が高かった。

対象: 文章の難しさ2段階で比べた実験 / 限界: アプリの方式を再現した実験で、特定の製品を調べたものではない。論文の要旨で確認。

まとめると、「全部を速く読む」方法は見つかっていません。わかっているのは、目的に合わせて読み方を変えると、時間と理解の配分を選べるということです。ここで紹介した研究は短い文章の実験が中心で、資格の参考書を何週間も読む社会人を調べた研究は見つかりませんでした。下の手順は、わかっていることを独学に当てはめた目安です。

03 今日からできる小さな一歩教材が終わらないとき、どう読み直せばいい?

章ごとに「全体をつかむ」か「覚える」かを決めます。時間がない章はざっと読みで要点を取り、試験に出る所だけ戻り読みしながら丁寧に読みます。1語ずつ表示する速読は使いません。

1

残りの章に「つかむ」か「覚える」かの印をつける

目次を開き、残りの章の横に「つ(全体をつかむ)」か「お(覚える)」を書きます。過去問や出題範囲を見て、よく出る章を「お」にします。読む指示を変えるだけで、読む時間も理解も変わりました[3]。

所要 10分

2

「つ」の章は、ざっと読みで要点だけ取る

見出し、太字、各段落の最初の1〜2文を中心に読み、全体の流れをつかみます。時間が半分しかない実験では、ざっと読みは大事な考えを残しやすかった一方、細かい点は残りませんでした[4]。「つ」の章の細かい数字は、問題を解いて出てきたときに戻って読みます。

所要 1章15〜30分

3

「お」の章は、わからない文に戻りながら丁寧に読む

読み返すことを恥ずかしがらなくて大丈夫です。戻り読みができないようにすると理解が下がりました[5]。じっくり読むよう指示された人は、読み返しが増え、理解の点も上がりました[3]。

所要 1章60分前後

4

1語ずつ表示する速読アプリには頼らない

単語を1つずつ高速で表示する方式は、ふつうの表示より理解が低くなりました[6]。目を動かさずに速く読む、という方法は戻り読みを奪います[5]。速く進めたいときは、読む範囲を減らす方を選びます。

所要 0分

5

読み終えたら本を閉じ、要点を3行書く

「お」の章を読み終えたら、本を閉じて要点を思い出して書きます。読み返すより思い出す方が残ることは、思い出す練習の記事で紹介しています。書けなかった所だけ読み直せば、全部を読み直すより短く済みます。

所要 5分

6

速さは「語彙」と「読む量」で、ゆっくり伸ばす

読む速さは言葉の力で決まる部分が大きく、語彙を増やし読む練習を重ねることが、理解を保って速く読む道だとされています[2]。専門用語を単語カードにして覚えると、同じ分野の文章が少しずつ速く読めるようになります。

所要 毎日10分

04 続けるためのコツ読み方を分けても、まだ終わらないときは?

「つ」の章をさらに増やすか、問題を先に解いて、出た所だけ読む順番に切り替えます。計画を立て直すときは、読む速さを実際に測った数字を使います。

  • 1章を読むのにかかった時間を記録する。残りの章数をかけると、終わるまでの時間が見積もれる。見積もりが甘くなりやすい理由は計画錯誤の記事で紹介しています。
  • 試験までの時間が足りないときは、問題を先に解き、間違えた所だけ教材で読む。何から手をつけるかは時間が足りないときの記事にまとめました。
  • 読んでいるうちに字を追うだけになったら、いったん止める。立て直し方は読書中の「心ここにあらず」の記事で紹介しています。
  • 内容が難しすぎて進まないときは、速さではなく教材の難しさが原因のことがある。教科書が難しいときの記事もあわせてどうぞ。

05よくある質問

速読を練習すれば、教材を早く終えられますか?

理解を保ったまま速さを2〜3倍にするのは難しい、と速読の研究をまとめたレビューは結論しています。速く読むと理解は落ちます。教材を早く終えたいなら、試験に出ない章をざっと読みにして、読む量そのものを減らす方が確実です。

ざっと読みだけで試験に受かりますか?

ざっと読みは全体の大事な点をつかむのに役立ちますが、細かい点や推論が必要な問題には効きませんでした。試験によく出る章や、計算・記述が必要な所は、戻り読みしながら丁寧に読み、閉じて思い出す練習を組み合わせます。

何度も同じ行を読み返してしまいます。直すべきですか?

直す必要はありません。読み終えた単語を隠して戻り読みをできなくすると、理解が下がった実験があります。戻り読みは理解を支える自然な動きです。ただ、何度読んでもわからないなら、読み方ではなく内容の難しさが原因かもしれません。

勉強法の早見表で「速読で教材を速く読み終える」の判定を見る
ほかの勉強法も57種類、研究で「効く・条件しだい・当てにならない」に分けています。

出典

  1. Brysbaert, M. (2019). How many words do we read per minute? A review and meta-analysis of reading rate. Journal of Memory and Language, 109, 104047. https://doi.org/10.1016/j.jml.2019.104047
  2. Rayner, K., Schotter, E. R., Masson, M. E. J., Potter, M. C., & Treiman, R. (2016). So much to read, so little time: How do we read, and can speed reading help? Psychological Science in the Public Interest, 17(1), 4-34. https://doi.org/10.1177/1529100615623267
  3. Strukelj, A., & Niehorster, D. C. (2018). One page of text: Eye movements during regular and thorough reading, skimming, and spell checking. Journal of Eye Movement Research, 11(1). https://doi.org/10.16910/jemr.11.1.1
  4. Duggan, G. B., & Payne, S. J. (2009). Text skimming: The process and effectiveness of foraging through text under time pressure. Journal of Experimental Psychology: Applied, 15(3), 228-242. https://doi.org/10.1037/a0016995
  5. Schotter, E. R., Tran, R., & Rayner, K. (2014). Don't believe what you read (only once): Comprehension is supported by regressions during reading. Psychological Science, 25(6), 1218-1226. https://doi.org/10.1177/0956797614531148
  6. Acklin, D., & Papesh, M. H. (2017). Modern speed-reading apps do not foster reading comprehension. The American Journal of Psychology, 130(2), 183-199. https://doi.org/10.5406/amerjpsyc.130.2.0183