読んでも頭に入らない。気づいたら字を追っていただけのとき、どう立て直す?読書中の「心ここにあらず」の研究

ページをめくったのに、何が書いてあったか一つも思い出せない。目は字を追っていたのに、頭は別のことを考えていた。研究の答えは「読書中に心がそれるほど理解は下がりやすい。立て直すときは、最初から読み直すより、覚えている所まで戻って、本を閉じて要点を言う方がよい」です。今日の読書から使える手順をまとめました。
3行でわかる
- 25本の論文(合計3,926人)をまとめたメタ分析では、読書中に心がそれる頻度が高いほど、読解の成績が低い傾向があった(相関 r=−0.21)。ただし、どちらが原因かはまだわかっていない。
- 同じ文章を丸ごと2回読んだ実験では、理解は上がらず「わかった感」だけが増えた。2回目は、心がそれる割合がむしろ増えた。
- 立て直しは、①気づいた所に印 ②覚えている段落まで戻る ③本を閉じて1文で言う ④言えなかった所だけ読む ⑤区切りを短くする、の5つ。
01 悩みの正体本を読んでも頭に入らないのはなぜ?
目は字を追っていても、考えが別のことにそれているためです。この状態は「マインドワンダリング(心がさまよう状態)」と呼ばれ、文章が難しいほど起きやすくなります。
気づかないまま心がそれて、字だけを追い続ける状態は「ゾーンアウト」と呼ばれます。探偵小説を読ませた実験では、ゾーンアウトは話の筋(誰が何をしたか)を頭の中で組み立てる働きを妨げていました。物語の序盤でそれたときほど、影響が大きかったと報告されています[3]。
難しい文章では、心がそれる回数が増え、それたときに理解が落ちる幅も大きくなりました[4]。教科書や専門書が「頭に入らない」のは、意志の弱さではなく、難しさとこの仕組みが重なっているためと考えられます。
02 科学的にわかっていること最初から読み直せば、頭に入るようになる?
丸ごとの読み直しでは、理解は上がりませんでした。読み直している間は、心がそれる割合がむしろ増えています。途中で思い出す問題を挟むと、心がそれにくくなった実験があります。
Bonifacciら(2023)[1]
読書中の心のそれと読解の関係を調べた25本の論文(73の相関係数、合計3,926人)のメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。心がそれる頻度が高いほど読解の成績が低い傾向があった(r=−0.21)。読書中にその場で「今どこに注意があったか」を尋ねた研究でははっきり負の関係が見られ、質問紙で「ふだん心がそれやすいか」を尋ねた研究では関係が見られなかった。
対象: 主に10代後半〜若い大人、英語圏の研究が約7割 / 限界: 相関の研究で、著者らは「原因と結果の道筋はまだ示されていない」と書いている。関係が見られなかった研究も含まれる。
Phillipsら(2016)[5]
2つの実験で、参加者は1つの文章を1回、別の文章を2回読んだ。2回読んでも理解のテストは良くならなかったのに、参加者は「よくわかった」と感じていた。2回目を読んでいる間は、心がそれる割合が増え、増えたのは自分から考えを別に向ける種類のそれだった。
対象: 成人の参加者による2つの実験 / 限界: 文章を丸ごと読み直す条件の比較で、覚えていない所だけを選んで読み直す方法は調べていない。
Szpunarら(2013)[6]
21分の統計学の講義動画を4つに区切って見せた実験。区切りごとに小テストを挟んだグループは、心がそれた割合が19%で、見直しを挟んだグループ(39%)や計算問題を挟んだグループ(41%)より低かった。最後のまとめテストの正答率も、小テストのグループが90%と、見直し(76%)・計算(68%)より高かった(2つの実験の合計)。
対象: 米ハーバード大学の学部生80人 / 限界: 本ではなく講義動画の実験で、人数も少ない。読書に当てはめるのは、研究からの推測を含む。
注意がそれることと課題の出来の関係を、88のサンプル(参加者の集団)でまとめた別のメタ分析でも、心がそれるほど成績は低く、その関係は複雑な課題ほど強くなっていました[2]。読んでいる内容が難しいときこそ、立て直し方が大事になります。
03 今日からできる小さな一歩頭に入らなかった所は、どう読み直せばいい?
気づいた所に印をつけ、内容を覚えている段落まで戻ります。本を閉じてその段落を1文で言い、言えなかった所だけを読み直します。次からは区切りを短くします。
気づいたら、その場で印をつける
「あれ、何も覚えていない」と気づいた所に、鉛筆で小さく線を引きます。気づけたこと自体が立て直しの始まりです。自分を責める時間は使いません。
所要 10秒
内容を覚えている段落まで戻る
章の最初からではなく、「ここまでは言える」という最後の段落まで戻ります。丸ごとの読み直しは理解を上げず、心がそれやすくなりました[5]。戻るのは必要な所だけにします。
所要 1分
本を閉じて、要点を1文で言う
覚えている段落の要点を、本を見ずに声に出すか、ノートの端に1文で書きます。思い出す作業を挟むと、心がそれにくくなった実験があります[6]。思い出す練習の効果は読み返しとの比較の記事で詳しく書いています。
所要 1〜2分
言えなかった所だけ読み、もう一度閉じて言う
印の所から先を読み、段落ごとに本を閉じて1文で言います。言えたら先へ進みます。読んで「わかった気」になるだけでは足りないためです(わかったつもりの記事)。
所要 5分ほど
次からは区切りを短くする
「1節読んだら1文で言う」のように、思い出す区切りを先に決めてから読みます。講義の実験では、約5分ごとに小テストを挟んでいました[6]。難しい本ほど区切りを短くします。
所要 決めるのに30秒
頭に入らない理由によって、立て直し方を少し変えます。研究から考えられる組み合わせを表にしました。
| こんなとき | 立て直し方 |
|---|---|
| 文章が難しくて、すぐ心がそれる | 1段落ごとに閉じて1文で言う。難しい文章ほどそれやすい[4] |
| 同じページを何度も読み直している | 読み直しをやめ、閉じて言えるかを試す[5] |
| 読む前から何を探せばいいかわからない | 章末の問題に先に目を通す(事前テストの記事) |
| スマホの通知で途切れた | 止まった場所を確かめて戻る(スマホで集中が切れた後の記事) |
04 続けるためのコツ読書中に何度も心がそれるときは、どうする?
心がそれるのを完全に防ぐことは目指しません。それに早く気づき、短い区切りで思い出す仕組みを読書に組み込みます。
- 読み始める前に「何ページまで読んだら閉じて言う」を決めて、ページに鉛筆で印をつけておく。
- 難しい専門書は、先に易しい入門書や図の多い解説で全体をつかんでから読む(難しい文章ほど心がそれやすいため[4])。
- 要点を自分の言葉でまとめる方法は、要約しながら読む記事も参考にする。
ここで紹介した研究の多くは、大学生などが短い文章を実験室やオンラインで読んだものです。資格の参考書を何週間も独学する場面をそのまま調べたものではありません。手順は、わかっていることを独学に当てはめたものです。
05よくある質問
本を読んでも頭に入らないとき、最初から読み直すべきですか?
最初から読み直す必要はありません。文章を丸ごと読み直した実験では理解は上がらず、読み直している間に心がそれる割合が増えました。内容を覚えている段落まで戻り、本を閉じて要点を1文で言い、言えなかった所だけ読み直します。
難しい本ほど頭に入らないのはなぜですか?
難しい文章では心がそれる回数が増え、それたときに理解が落ちる幅も大きくなることが実験で示されています。1段落ごとに閉じて要点を言うなど、区切りを短くすると立て直しやすくなります。
講義動画でもぼーっとしてしまいます。どうすればいいですか?
21分の講義動画を4つに区切った実験では、区切りごとに小テストを挟んだ人は、心がそれた割合が19%で、見直しを挟んだ人(39%)より低くなりました。数分ごとに止めて、内容を思い出して書く時間を入れてみてください。
出典
- Bonifacci, P., Viroli, C., Vassura, C., Colombini, E., & Desideri, L. (2023). The relationship between mind wandering and reading comprehension: A meta-analysis. Psychonomic Bulletin & Review, 30(1), 40–59. https://doi.org/10.3758/s13423-022-02141-w
- Randall, J. G., Oswald, F. L., & Beier, M. E. (2014). Mind-wandering, cognition, and performance: A theory-driven meta-analysis of attention regulation. Psychological Bulletin, 140(6), 1411–1431. https://doi.org/10.1037/a0037428
- Smallwood, J., McSpadden, M., & Schooler, J. W. (2008). When attention matters: The curious incident of the wandering mind. Memory & Cognition, 36(6), 1144–1150. https://doi.org/10.3758/MC.36.6.1144
- Feng, S., D'Mello, S., & Graesser, A. C. (2013). Mind wandering while reading easy and difficult texts. Psychonomic Bulletin & Review, 20(3), 586–592. https://doi.org/10.3758/s13423-012-0367-y
- Phillips, N. E., Mills, C., D'Mello, S., & Risko, E. F. (2016). On the influence of re-reading on mind wandering. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(12), 2338–2357. https://doi.org/10.1080/17470218.2015.1107109
- Szpunar, K. K., Khan, N. Y., & Schacter, D. L. (2013). Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6313–6317. https://doi.org/10.1073/pnas.1221764110


