集中を切らすものチェック表と1週間の中断記録表。中断と集中の研究から作った使い方

机に向かったのに、気づけばスマホを触っている。何に気が散ったのか思い出せないまま、1時間が過ぎている。そんな日は少なくありません。研究では、スマホを手に取った回数の「自分の見積もり」は、実際の回数とほとんど一致しませんでした。この記事では、研究をもとに作った「集中を切らすものチェック表」と「1週間の中断記録表」を載せます。感覚ではなく記録で、自分の集中を切らす相手を見つけるための表です。
3行でわかる
- 23人のスマホの使い方を2週間記録した研究では、1日に使った回数の見積もりと実際の回数の相関は0.11で、ほぼ一致しなかった。
- 中断は短くても響く。平均2.8秒の中断で、手順を飛ばすミスが約2倍になった実験がある。通知音だけでも課題の成績は下がった。
- この記事のチェック表で当てはまる原因に印をつけ、1週間の記録表で中断を数える。8日目の見直し表で、対策を1つだけ選ぶ。
01 悩みの正体集中が切れる原因は、自分で思っているものと同じ?
同じとは限りません。スマホを使った回数を本人が見積もっても、実際の記録とはほとんど一致しませんでした。原因を探すには、感覚より記録の方が確かです。
勉強の中断には2種類あります。1つは外から来る中断です。通知、家族からの声かけ、宅配のチャイムなどです。もう1つは自分から始める中断です。なんとなくスマホを手に取る、別の調べものを始める、考えがよそへ行く、などです。
どちらが多いかは人によって違います。そして自分では気づきにくいものです。だからこの記事では、対策を先に決めず、まず1週間数えることから始めます。スマホの置き場所の研究は勉強中のスマホはどこに置く?に、中断した後の戻り方はスマホを見て集中が切れた後の立て直し方にまとめています。
02 科学的にわかっていること中断を記録すると、何がわかる?
自分の見積もりは当てにならないこと、短い中断や通知だけでも作業が乱れること、そして記録して見直すこと自体が目標達成を後押しすることが、研究で示されています。
Andrewsら(2015)[1]
23人のスマホに記録用のアプリを入れ、2週間の実際の使い方と、本人の見積もりを比べた。参加者は1日に平均84.68回スマホを使い、合計は平均5.05時間だった。使った時間の55%は30秒未満の短い利用だった。1日に使った回数の見積もりと実際の回数の相関は0.11で、ほぼ一致しなかった。使った時間の長さの見積もりは、実際とある程度一致した(相関0.47)。
対象: 英国の大学の職員と学生(29人を募集し、23人の記録を比較。平均22.5歳) / 限界: 人数が少なく、勉強中に限った記録ではない。
Parryら(2021)[2]
スマホやネットの利用について、本人の申告と機械の記録の両方を測った研究をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。106の効果量を合わせると、申告と記録の関係は中くらいにとどまった。申告が実際の利用を正確に表していることはまれだった。
対象: 申告と記録を比べた研究(事前に計画を登録したメタ分析) / 限界: 学習中の利用に絞った分析ではない。
Altmannら(2014)[3]
手順を順番に進める課題の途中に、短い別の作業をはさんだ実験。平均4.4秒の中断で、手順を飛ばしたり戻ったりするミスが中断のないときの3倍になった。平均2.8秒の中断でも約2倍になった。
対象: 実験室で課題を行った参加者 / 限界: 手順を覚えておく課題での結果で、読書や暗記にそのまま当てはまるかはわからない。
Stothartら(2015)[4]
注意力を使う課題の最中に、参加者のスマホへ電話やメッセージの通知を送った。スマホに触れなくても、通知だけで課題の成績ははっきり下がった。下がり方は、通話やメッセージで実際にスマホを使ったときと同じくらいだった。
対象: 実験室で注意課題を行った参加者 / 限界: 短い注意課題での結果。通知音の影響を脳波で調べた別の研究では、反応は遅くなったが、注意をより強く働かせている様子も見られ、解釈は分かれている[7]。
Szpunarら(2013)[5]
21分の統計学の講義動画を約5.5分ずつ4つに分け、区切りごとに2分の小テストを入れた。講義中に「今、講義と関係ないことを考えていたか」を聞くと、小テストを入れた組は19%、入れない組は41%、見直しだけの組は39%だった。1つ目の実験では、小テストの組の方がメモを多く取り、最後の区切りの問題の正答率も高かった(84%対59%)。
対象: ハーバード大学の学生(2つ目の実験は48人) / 限界: 21分の動画という短い学習での結果。
Harkinら(2016)[6]
進み具合を記録して見直すように促す介入を調べた138の研究(19,951人)のメタ分析。介入は見直す回数を大きく増やし、目標の達成も後押しした(効果量 d = 0.40、小〜中くらい)。紙などに書いて記録したときや、人に報告したときの方が効果が大きかった。
対象: さまざまな目標を扱った、くじで組を分けた実験 / 限界: 集中や中断の記録だけを調べたものではない。
実験室の結果(大学生・短い課題)と、働きながら何か月も続ける独学とは条件が違います。以下の表は「必ず集中できる方法」ではなく、自分の中断のくせを見つけるための道具として使ってください。
03 使える表集中を切らすものは、どう記録して見直す?
表1で気になる原因に印をつけ、表2に1週間、中断の回数と原因を書きます。8日目に表3で見直し、次の1週間に試す対策を1つだけ選びます。
表1 集中を切らすものチェック表。この1週間の勉強を振り返り、当てはまるものに印をつけます。右の列は、その項目のもとになった研究です。
| チェック項目 | 種類 | 研究でわかっていること |
|---|---|---|
| □ 勉強中に通知音や振動が鳴る | 外から | 触れなくても、通知だけで課題の成績が下がった[4] |
| □ 家族や同居人に話しかけられることが多い | 外から | 数秒の中断でも、手順のミスが2〜3倍になった[3] |
| □ 用もないのにスマホを手に取ってしまう | 自分から | 利用の55%は30秒未満の短いものだった[1] |
| □ 調べものから、関係のないページへ移ってしまう | 自分から | 申告と実際の利用はずれやすく、気づかないうちに増える[2] |
| □ 長い動画や本で、考えがよそへ行く | 自分から | 区切りに小テストを入れると、考えがそれる割合が41%から19%に減った[5] |
| □ 何回中断したか、だいたいの感覚でしかわからない | 記録 | 使った回数の見積もりは実際とほぼ一致しなかった(相関0.11)[1] |
項目は、出典の研究をもとにこのサイトが独学向けにまとめたものです。研究で確かめられた質問票ではないので、点数の基準はありません。
表2 1週間の中断記録表。紙に書き写すか、メモに同じ列を作ります。勉強中に気が散ったら、その場で「正」の字を1画書き、原因を一言だけ残します。紙に書くのは、書いて記録した方が効果が大きかったため[6]です。
| 日 | 勉強した時間 | 中断の回数 | 外から/自分から | いちばん多かった原因 |
|---|---|---|---|---|
| 1日目 | 例 60分 | 例 正丁(7回) | 例 外2・自分5 | 例 スマホを手に取る |
| 2日目 | ||||
| 3日目 | ||||
| … | ||||
| 7日目 |
回数は「1時間あたり」に直すと日ごとに比べやすくなります。例えば30分で4回なら、1時間あたり8回です。
表3 8日目の見直し表。記録を見て、当てはまる行の「次の1週間に試すこと」を1つだけ選びます。
| 記録に見えたこと | 次の1週間に試すこと |
|---|---|
| 外からの中断が多く、通知が原因 | 勉強の時間だけ、通知を切るか機内モードにする[4] |
| 外からの中断が多く、人が原因 | 勉強する時間帯を家族に伝える。中断されたら、戻る前に「次にやること」を1行メモしてから応じる[3] |
| 自分からスマホを手に取る回数が多い | スマホを手の届かない場所に置く。置き場所の研究は結果が分かれているので、自分の記録で効いたかを確かめる |
| 本や動画で考えがよそへ行く | 15〜20分ごとに区切り、本を閉じて3つ思い出す小テストを入れる[5] |
| 勉強の後半ほど中断が増える | 1回の勉強を短くし、休憩をはさむ |
| 中断が少なく、特に目立つ原因がない | 今のやり方を続け、勉強の中身(覚え方)の見直しに時間を使う |
4行目の小テストは、思い出す練習(テスト効果)の研究で効果がくり返し確かめられているやり方でもあります。5行目の休憩の入れ方はポモドーロ・テクニックの研究を参考にしてください。
04 続けるためのコツ中断の記録を1週間続けるには?
記録は「正の字1画と一言」だけにし、対策は1週間に1つだけ試します。回数が多くても自分を責めず、原因を知る材料として使います。
- その場で1画だけ書く。後でまとめて思い出そうとすると、見積もりはずれやすくなります[1][2]。
- 対策は1つずつ。通知を切る・置き場所を変える・小テストを入れる、を一度に始めると、どれが効いたかわかりません。
- 2週目も同じ表で比べる。対策の前後で「1時間あたりの回数」を比べると、自分に効いたかを確かめられます。
- 数えるのは責めるためではない。中断は誰にでも起きます。ながら勉強がなぜ頭に入りにくいかはながら勉強の研究にまとめています。
05よくある質問
集中が続かないのは、意志が弱いから?
そうとは限りません。スマホの利用は短い利用の積み重ねで、本人の見積もりと実際の回数はほとんど一致しませんでした[1]。気づかないうちに起きる中断が多いので、意志の強さより、記録で原因を見つけて環境を変える方が確かです。
通知を切るだけで集中できるようになる?
通知だけで課題の成績が下がった実験があります[4]。ただし実験室の短い課題での結果で、解釈が分かれる研究もあります[7]。表2の記録で外からの中断が多い人には試す価値がありますが、自分から手に取る回数が多い人には別の対策が必要です。
記録をつけること自体が、集中の邪魔にならない?
正の字を1画書くだけなら、数秒で終わります。進み具合を記録して見直す介入は、138の研究のまとめで目標の達成を後押ししていました[6]。1週間だけと決めて試し、負担が大きければ回数だけの記録に減らしてください。
出典
- Andrews, S., Ellis, D. A., Shaw, H., & Piwek, L. (2015). Beyond Self-Report: Tools to Compare Estimated and Real-World Smartphone Use. PLOS ONE, 10(10), e0139004. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0139004
- Parry, D. A., Davidson, B. I., Sewall, C. J. R., Fisher, J. T., Mieczkowski, H., & Quintana, D. S. (2021). A systematic review and meta-analysis of discrepancies between logged and self-reported digital media use. Nature Human Behaviour, 5, 1535–1547. https://doi.org/10.1038/s41562-021-01117-5
- Altmann, E. M., Trafton, J. G., & Hambrick, D. Z. (2014). Momentary interruptions can derail the train of thought. Journal of Experimental Psychology: General, 143(1), 215–226. https://doi.org/10.1037/a0030986
- Stothart, C., Mitchum, A., & Yehnert, C. (2015). The attentional cost of receiving a cell phone notification. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 41(4), 893–897. https://doi.org/10.1037/xhp0000100
- Szpunar, K. K., Khan, N. Y., & Schacter, D. L. (2013). Interpolated memory tests reduce mind wandering and improve learning of online lectures. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(16), 6313–6317. https://doi.org/10.1073/pnas.1221764110
- Harkin, B., Webb, T. L., Chang, B. P. I., Prestwich, A., Conner, M., Kellar, I., Benn, Y., & Sheeran, P. (2016). Does monitoring goal progress promote goal attainment? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 142(2), 198–229. https://doi.org/10.1037/bul0000025
- Upshaw, J. D., Stevens, C. E., Ganis, G., & Zabelina, D. L. (2022). The hidden cost of a smartphone: The effects of smartphone notifications on cognitive control from a behavioral and electrophysiological perspective. PLOS ONE, 17(11), e0277220. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277220


