勉強動画の横でゲーム動画を流しても頭に入る?2画面の「スラッジ動画」の実験でわかったこと(効く・効かないの判定)

講義動画の横に、ゲームのプレイ画面を流しておく。SNSで「スラッジ動画」と呼ばれる2画面の動画です。「横に何か動いている方が集中できる」という人もいれば、「頭に入るはずがない」という人もいます。実験で確かめると、理解のテストの点は、どちらの見方とも違い、ほとんど変わりませんでした。この記事では、その実験と、代わりに点が伸びた方法を紹介します。
3行でわかる
- 講義動画の横に音なしのゲーム動画などを流した実験(2回・合計175人)では、理解テストの正答率の差は3%と1%で、どちらも統計的な差はなかった。判定は「集中が上がる効果は当てにならない。害も短い動画では小さい」。
- ただし、横の動画は音なし・人の顔なし・内容と無関係で、動画は7〜15分、テストは見た直後だった。長い勉強や、音や通知のある動画で同じかはわかっていない。
- 点が伸びたのはメモを取ったとき。45分の講義を聞いた172人の実験では、メモを取った組が28問中19.09問正解で、聞くだけの組(16.63問)や落書きの組より多かった。
01 通説の中身2画面の動画を見ながら勉強すると、集中できる?
「横で何かが動いている方が飽きずに集中できる」という説と、「気が散って頭に入らない」という説があります。実験では、どちらの説ほどの差も出ませんでした。
スラッジ動画は、メインの動画(解説や話)の横や下に、内容と関係のない動画を並べたものです。横の動画は音がなく、ゲームのプレイ画面やビー玉が転がる映像などがよく使われます。
「刺激が多すぎて記憶が落ちる」という見方と、「退屈がまぎれて注意が続く」という見方があり、論文でもこの2つを比べています[1]。勉強中にほかのことを同時にする害については、ながら勉強だと頭に入らないのはなぜ?にまとめました。
02 研究でわかっていること横で別の動画が流れていると、理解は落ちる?
短い講義動画では、横の動画があってもなくても、理解テストの正答率はほぼ同じでした。集中しにくさや頭の負担の感じ方にも、はっきりした差はありませんでした。
Schuetze(2026)[1]
事前に計画を登録した2つの実験。同じ人が、ふつうの講義動画と、横に音なしの動画が流れる講義動画の両方を見て、直後に理解テストを受けた。正答率の差は、1回目(75人、TEDの講演)が3%、2回目(100人、アニメーションの解説動画)が1%で、どちらも統計的な差はなかった。
対象: アメリカの大学の参加者とオンラインの参加者(1回目は18〜65歳) / 限界: 動画は7〜15分、テストは見た直後。横の動画は音なし・人の顔なしで、メインの内容と関係がなかった。著者は「10%を超えるような大きな差は考えにくい」が、効果が全くないとまでは言えないと書いている。
Schuetze(2026)の続き[1]
2回目の実験では、2画面の動画の方が「おもしろさ」の評価がやや低かった(平均4.02と4.25)。1回目では、年齢が高い人ほど2画面で点が下がる傾向が出たが、2回目では再現されなかった。
対象: 上と同じ / 限界: 著者は、この2つの差は、たくさんの比較をしたことを補正すると残らない、弱い結果だと書いている。
表1 2画面の動画で勉強するときの判定
| よく言われること | 研究の結果 | 判定 |
|---|---|---|
| 横で動画が動いている方が集中できる | 正答率は上がらなかった。集中しにくさの感じ方も変わらなかった[1] | 当てにならない |
| 2画面だと頭に入らない | 短い動画では正答率の差は1〜3%で、統計的な差はなかった[1] | 条件しだい(短い動画では害は小さい) |
| 2画面の動画ばかり見ていると、気が散りやすい人になる | 「ながら視聴が多い人ほど気が散りやすい」という有名な実験は、再現の試みで多くが再現されなかった[4] | 当てにならない(はっきりしない) |
| 手を動かしていると集中できる(落書きなど) | 落書きでは退屈も考えごとも減らず、記憶も伸びなかった。メモを取ると伸びた[2] | 落書きは当てにならない。メモは効く |
判定は、出典の結果をこの記事が3段階に整理したものです。
Spencer-MuellerとFenske(2024)[2]
カナダの大学生172人が、退屈な歴史の講義の音声を45分聞いた。聞くだけ・図形を塗る落書き・自由な落書き・メモを取る、の4組(各43人)に分けた。28問の記憶テストの平均は、メモの組が19.09問で、聞くだけの組(16.63問)や2つの落書きの組(15.95問・15.69問)より多かった。落書きでは、退屈や考えごとは減らなかった。
対象: 大学生 / 限界: 1回の講義で、テストは聞いた直後。落書きが記憶を助けるとした有名な研究(Andrade, 2010)を確かめようとした実験で、その結果は再現されなかった。
Hefter(2024)[3]
ドイツの大学生59人が、配管の作り方を説明する約12分の動画を自宅で見た。実際にメモを取った人は、取らなかった人より事後テストの点が高かった(効果量 d = 0.70)。1日のスマホの使用時間が長い人ほど、点が低い傾向もあった(β = −0.30)。
対象: 心理学の大学生 / 限界: メモを取るよう頼む組と頼まない組にくじで分けたが、比べたのは「実際に取ったと答えた人」どうし。スマホの使用時間と点の関係は相関で、原因とは言えない。
WiradhanyとNieuwenstein(2017)[4]
「複数のメディアを同時に使う人ほど、気が散りやすい」という2009年の有名な実験を、インドネシアとオランダの大学生で2回くり返した。14のテストのうち、気が散りやすさの差が統計的に出たのは5つだけで、より厳しい分析で残ったのは2つだった。39の結果をまとめた分析では、弱い関係が出たが、小さい研究の偏りを補正すると統計的な差はなくなった。
対象: 大学生 / 限界: 測ったのは実験室の注意の課題で、勉強の成績ではない。
紹介した実験は、どれも1回だけの短い動画や講義で、テストは見た直後か当日です。社会人が何時間も続けて勉強する場面や、数日たってからの記憶で同じ結果になるかは、確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩動画で勉強するとき、画面はどうする?
2画面の動画をやめる必要まではありません。ただ、集中のためにわざわざ流す理由もありません。手元ではメモを取り、見終わったら何も見ずに要点を書き出すと、点が伸びた研究に近い使い方になります。
横の動画を流すなら「音なし・顔なし」に限る
差が出なかった実験の横の動画は、音がなく、人の顔も映っていませんでした。音のある動画や、通知の出るスマホの画面は、この実験の条件の外です。
所要 0分(選ぶだけ)
見終わったら、何も見ずに要点を3つ書く
メモを伏せて、覚えていることを書き出します。2画面で見た日と1画面で見た日で、書き出せた数を比べると、自分に合うかがわかります。
所要 3分
スマホは手の届かない所に置く
動画で学んだ大学生の研究では、1日のスマホの使用時間が長い人ほど点が低い傾向がありました(原因かどうかはわかっていません)[3]。置き方は勉強中のスマホはどこに置く?にまとめました。
所要 1分
04 続けるためのコツ2画面の動画が手放せないときは?
短い動画なら、無理にやめなくても理解はほぼ変わりません。気になるなら、1画面の日と2画面の日で、見終わった後に書き出せた要点の数を記録して比べます。
- 長い勉強では、1画面に戻してみる。実験は7〜15分の動画でした。1時間を超える勉強で同じかはわかっていません。
- 音のある動画や音楽は、別の問題として考える。実験の横の動画は音なしでした。音楽を流す場合は音楽を聴きながらの勉強は集中を妨げるのかで、歌詞のある・なしの研究を確かめられます。
- 「手を動かすと集中できる」なら、落書きよりメモ。描くなら、内容と関係のある絵にします。くわしくは絵を描いて覚える勉強法にまとめました。
05よくある質問
ゲーム動画を横に流しながら勉強動画を見ても、頭に入りますか?
短い講義動画なら、ほとんど変わらなかったという実験があります。2回の実験(合計175人)で、横に音なしの動画を流しても、理解テストの正答率の差は3%と1%で、統計的な差はありませんでした。ただし集中が上がるわけでもありません。
2画面の動画を見続けると、集中力が落ちますか?
はっきりしません。複数のメディアを同時に使う人ほど気が散りやすいという有名な実験はありますが、再現の試みでは14のテスト中5つしか差が出ず、偏りを補正したまとめの分析では統計的な差がなくなりました。
勉強動画を見るとき、何をすれば一番身につきますか?
紹介した研究の中では、メモを取ることです。45分の講義を聞いた実験では、メモを取った組が28問中19.09問正解で、聞くだけの組の16.63問より多くなりました。見終わった後に何も見ずに要点を書き出すと、さらに確かめになります。
落書きをすると集中できるというのは本当ですか?
確かめた実験では、効果は見られませんでした。大学生172人の実験で、落書きをしても退屈や考えごとは減らず、記憶テストの点も聞くだけの組と変わりませんでした。点が伸びたのはメモを取った組でした。
出典
- Schuetze, B. A. (2026). Split-screen distraction: The role of extraneous visual demands in learning from video. Cognitive Research: Principles and Implications, 11, 27. https://doi.org/10.1186/s41235-026-00720-2
- Spencer-Mueller, E. K., & Fenske, M. J. (2024). Note-taking for the win: Doodling does not reduce boredom or mind-wandering, nor enhance attention or retention of lecture material. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 77(8), 1780–1796. https://doi.org/10.1177/17470218231222402
- Hefter, M. H. (2024). Note-taking fosters distance video learning: Smartphones as risk and intellectual values as protective factors. Scientific Reports, 14, 16962. https://doi.org/10.1038/s41598-024-67898-7
- Wiradhany, W., & Nieuwenstein, M. R. (2017). Cognitive control in media multitaskers: Two replication studies and a meta-analysis. Attention, Perception, & Psychophysics, 79(8), 2620–2641. https://doi.org/10.3758/s13414-017-1408-4


