四択・選択肢の問題集はどう解く?選択肢を隠して思い出し、外れの理由まで言うやり方(選択肢テストの研究)

資格試験の問題集を、何周も解いている。それなのに本番では、似た選択肢で迷ってしまう。四択の問題は「答えが目の前にあるから、覚える力がつかない」とも言われます。研究から見ると、選択肢の問題集は使い方しだいで、記述の練習と同じくらい役に立ちます。この記事では、その解き方を手順にまとめます。
3行でわかる
- 選択肢の問題を解くこと自体が、読み直すより記憶に残る練習になる。中学・高校の授業の研究では、選択肢の小テストも記述の小テストと同じくらい後の試験の点を上げた。
- ただし、間違った選択肢を読むと、それを正しいと覚えてしまうことがある。答え合わせをすると、この悪い影響は小さくなった。
- 解き方は、①選択肢を隠して先に答えを思い出す ②ほかの選択肢がなぜ違うかを言う ③その日のうちに答え合わせ ④誤りの文を正しい文に直す ⑤数日あけて解き直す、の5つ。
01 悩みの正体選択肢の問題集だけで力はつく?
つきます。ただし、正解に印をつけて次へ進むだけでは、もったいない使い方です。選択肢の問題には、覚える助けになる面と、誤りを覚えてしまう面の両方があります。
問題を解いて思い出す練習は、教科書を読み直すより記憶に残りやすいことがわかっています(読み返すより思い出す練習の研究)。選択肢の問題も、この「思い出す練習」の1つです。
一方で、選択肢には「もっともらしい間違い」がわざと並んでいます。正解を確かめずに先へ進むと、その間違いが頭に残ることがあります。
つまり大事なのは、問題集を何周したかより、1問をどう解いて、どう確かめたかです。過去問から始めるべきかどうかは資格試験は過去問から解くべきかの記事で扱っています。
02 科学的にわかっていること選択肢の問題は、どう解くと身につく?
選択肢の小テストは記述の小テストと同じくらい役に立った研究があります。誤りの選択肢を覚える害は、答え合わせで小さくなりました。選択肢がなぜ違うかまで考えると、関連する知識も残りやすくなりました。
McDermottら(2014)[1]
中学1年の理科と高校の歴史の授業で、ときどき小テスト(記述式か選択肢式。どちらも正解を伝える)を受けた内容は、小テストをしなかった内容より、単元テストと学期末テストの成績が良かった。小テストの形式と本番の形式が一致していなくても効果が出た。選択肢式は記述式と同じくらい効果があった。同じ内容を読み直すだけの条件は、小テストほど成績を上げなかった。
対象: 米国の中学1年と高校の授業(成績のつくテスト) / 限界: 先生が作った問題と正解の確認がそろった授業での研究。大人が一人で問題集を解く場合は調べていない。
Roediger・Marsh(2005)[2]
一般知識の選択肢問題を先に解くと、後で答えを書くテストの成績がはっきり上がった。ただし、誤りの選択肢を多く読んだ問題ほど良い効果が小さくなり、その誤りの選択肢を答えとして書く間違いが増えた。著者らは、選択肢のテストが知らないうちに誤った知識を作るおそれがあると述べている。
対象: 学生の実験(一般知識の問題。後のテストでは当て推量をしないよう指示) / 限界: この実験では、選択肢の問題の後に正解を見せていない。
Butler・Roediger(2008)[3]
文章を読んだ後に選択肢のテストを受け、正解をすぐ見る・時間をおいて見る・見ない、のどれかに分かれた。正解を見なかった場合に比べ、すぐ見ても時間をおいて見ても、後の記述のテストで正答の割合が上がり、選択肢の誤りを答えてしまう間違いが減った。著者らは、選択肢のテストを使うときは正解を伝えるべきだとしている。
対象: 実験室で文章を読んだ参加者 / 限界: 短い文章を使った実験。何百問もある資格試験の範囲で同じ大きさになるかはわからない。
Littleら(2012)[4]
2つの実験で、どれも本当らしく見える選択肢を並べた選択肢問題と、答えを書く問題(手がかりを見て思い出す形式)を比べた。どちらも、テストされた内容の記憶を助けた。さらに選択肢問題では、正解でなかった選択肢に関する内容も後で思い出しやすくなったが、書く問題ではそうならなかった。選択肢がなぜ正しく、なぜ違うかを思い出させる作りなら、選択肢問題も「思い出す練習」になると著者らは述べている。
対象: 実験室での2つの実験 / 限界: 研究者が選択肢を本当らしく作った問題での結果。問題集の選択肢が雑なら、同じ効果は期待しにくい。
Smith・Karpicke(2014)[5]
4つの実験(計372人)で、学習用の文章を読んだ後、記述・選択肢・「まず書いて思い出し、次に選択肢で選ぶ」形式のどれかで練習した。1週間後のテストでは、どの形式も読むだけより成績が良く、文章どおりの問題と、推論が必要な問題の両方で効果があった。ただし3つの実験では、記述やまず書く形式の、選択肢に対する上乗せはほとんど無いか、無かった。最初に書いて思い出せる割合を高めた4つ目の実験でだけ、記述とまず書く形式が選択肢を上回った。
対象: 4つの実験の学生372人 / 限界: 思い出せない段階で無理に書いても上乗せは小さい、ということでもある。
Yangら(2021)[6]
教室で行われた222の研究(48,478人分)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。小テストを受けると、成績が中くらいの大きさで上がった(効果量 g = 0.499)。効果の大きさは、正解の確認があるか、小テストと本番の形式がそろっているか、くり返した回数などによって変わった。
対象: 学校・大学の教室での研究 / 限界: 研究によって条件の違いが大きい。独学の資格試験そのものを調べたものではない。
研究を、問題集の1問ごとの作業に当てはめて整理しました。
| やること | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 選択肢の問題を解く | 読み直すより後の試験の点が上がった[1][6] |
| 答え合わせをしない | 誤りの選択肢を正しいと覚えることがある[2] |
| すぐ、または後で答え合わせ | 正答が増え、誤りの混入が減った[3] |
| ほかの選択肢がなぜ違うか考える | 関連する内容も思い出しやすくなった[4] |
| 選択肢を隠して先に書く | 思い出せる段階なら上乗せがあった。思い出せない段階では差は小さい[5] |
ここで紹介した研究の多くは、実験室の短い文章や一般知識の問題、または中学・高校・大学の授業のものです。社会人が何か月もかけて一人で資格試験の問題集を解く場合に、同じ大きさの効果が出るかは確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩選択肢の問題集は、どう解けばいい?
選択肢を隠して先に答えを思い出し、選んだ後はほかの選択肢がなぜ違うかを一言ずつ言います。答え合わせはその日のうちに。誤りの文は正しい文に直し、数日あけて解き直します。
選択肢を紙で隠し、問題文だけで答えを思い出す
頭の中か余白に、答えを一言で書いてから選択肢を見ます。まったく思い出せない問題は、こだわらずに選択肢を見てかまいません。思い出せない段階で書いても上乗せは小さかったためです[5]。2周目以降の問題で特に試します。
所要 1問につき+30秒
選んだら、ほかの選択肢が「なぜ違うか」を一言ずつ言う
「イは期限が逆」「ウは対象外の人」のように短くてかまいません。外れの選択肢にも、試験に出る知識が入っています。理由が言えない選択肢には印をつけます[4]。
所要 1問につき1分
その日のうちに答え合わせをする
1問ごとでも、10問ごとでもかまいません。答え合わせをせずに次の日へ持ち越さないことが大事です。正解を確かめると、誤りの選択肢を覚えてしまう害が小さくなりました[2][3]。
所要 10問で5〜10分
間違えた選択肢の文を、正しい文に書き直す
「誤っているものはどれか」の問題なら、誤りの文の間違っている部分に線を引き、正しい言葉を書き込みます。選んでしまった誤りの選択肢を、そのまま覚えて終わらないためです。
所要 1問につき1〜2分
手順4は、誤りの選択肢を覚えてしまうおそれ[2]と、正解を確かめると害が小さくなる結果[3]から考えた工夫です。「正しい文に直す」こと自体の効果を確かめた研究ではありません。
04 続けるためのコツ全部の問題でやると時間が足りないときは?
手間のかかる手順は、間違えた問題と自信のなかった問題にしぼります。正解して理由も言える問題は、次の周回で飛ばしてかまいません。
- 1周目は普通に解き、答え合わせだけは毎回する。手順1と2は2周目から足す。
- 選択肢の位置や番号で答えを覚えていないか、ときどき選択肢を隠して確かめる。
- 間違えた問題の直し方は試験に落ちた後の立て直し方、本番の時間配分は時間配分表も参考にする。
05よくある質問
記述式の試験なのに、選択肢の問題集で練習していい?
使えます。中学・高校の授業の研究では、小テストの形式と本番の形式が一致していなくても、小テストをした内容の成績が上がりました。ただ、教室の研究をまとめたメタ分析では、形式がそろっているかで効果の大きさが変わったため、本番が記述なら、選択肢を隠して書く練習も混ぜると安心です。
何周もして答えを覚えてしまった問題は、解く意味がある?
選択肢の位置や番号で答えを覚えているだけなら、思い出す練習になっていない可能性があります。選択肢を隠して問題文だけで答えが言えるか、ほかの選択肢がなぜ違うかを言えるかで確かめ、言えれば次の周回では飛ばしてかまいません。
答え合わせは1問ごとと、まとめてと、どちらがいい?
文章を読んで選択肢のテストを受けた実験では、正解をすぐ見ても、時間をおいて見ても、見ない場合より後のテストの成績が良くなりました。どちらでもよいので、答え合わせをせずに終わらないことを優先します。
出典
- McDermott, K. B., Agarwal, P. K., D'Antonio, L., Roediger, H. L., III, & McDaniel, M. A. (2014). Both multiple-choice and short-answer quizzes enhance later exam performance in middle and high school classes. Journal of Experimental Psychology: Applied, 20(1), 3–21. https://doi.org/10.1037/xap0000004
- Roediger, H. L., III, & Marsh, E. J. (2005). The positive and negative consequences of multiple-choice testing. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(5), 1155–1159. https://doi.org/10.1037/0278-7393.31.5.1155
- Butler, A. C., & Roediger, H. L., III (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36(3), 604–616. https://doi.org/10.3758/MC.36.3.604
- Little, J. L., Bjork, E. L., Bjork, R. A., & Angello, G. (2012). Multiple-choice tests exonerated, at least of some charges: Fostering test-induced learning and avoiding test-induced forgetting. Psychological Science, 23(11), 1337–1344. https://doi.org/10.1177/0956797612443370
- Smith, M. A., & Karpicke, J. D. (2014). Retrieval practice with short-answer, multiple-choice, and hybrid tests. Memory, 22(7), 784–802. https://doi.org/10.1080/09658211.2013.831454
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. https://doi.org/10.1037/bul0000309


