時間・計画

試験本番の時間配分表と、模試の時間記録表。見積もりのずれと見直しの研究から作った使い方

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棚に置かれた2つの砂時計
Photo: Aaaatu / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(独自の実験ではありません。出典は末尾)。

最後の大問に手をつけたところで「残り5分です」。見直しどころか、解けるはずの問題まで落としてしまった。そんな経験があると、次の試験が不安になります。時間が足りなくなるのは、あなたの手が遅いからとは限りません。人は作業にかかる時間をうまく見積もれないことが、研究でくり返し示されています。この記事では、見積もりを「記憶」から「記録」に置きかえる2つの表を用意しました。

3行でわかる

  1. 人は過去の作業にかかった時間を短めに覚えていて、それをもとに見積もるため、予定が短くなりやすい(レビュー研究)。大学生210人では、47.1%が短く、31.9%が長く見積もった。
  2. 一度やった作業と同じ作業なら、2回目の見積もりのずれは小さくなった。一方、前回の所要時間を教えられただけでは、ずれは減らなかった(3つの実験、合計200人)。
  3. 使い方は、①本番と同じ形式の模試で大問ごとの時間を測る ②実測から本番の配分と通過時刻を決める ③見直しの時間を最初から残す、の3つ。

01 悩みの正体試験で時間が足りなくなるのはなぜ?

1問や大問にかかる時間を、記憶で見積もっているからです。人は過去にかかった時間を短めに覚えていて、それをもとに予定を立てるため、ずれが出ます。

「この大問は20分あれば解ける」。そう思っても、実際に測ったことがなければ、その数字は記憶と感覚から作ったものです。Royら(2005)は多くの研究を見直し、人は過去の作業にかかった時間を実際より短く覚えている、と論じました[1]。短く覚えた時間をもとにすれば、予定も短くなります。

ずれる向きは人によって違います。短く見積もる人が多い一方で、長く見積もる人もいます[2]。だから「いつも多めにとる」より、自分の実測を記録して配分を決める方が確かです。

02 科学的にわかっていること時間の見積もりは、どうすれば正確になる?

同じ作業を一度やると、次の見積もりのずれは小さくなりました。所要時間を教えられるだけでは効果がありませんでした。本番と同じ形で、実際に解いて測ることが大切です。

Royら(2005)[1]

作業にかかる時間を短く見積もってしまう理由を、多くの研究から検討したレビュー。人は過去の似た作業にかかった時間を思い出して予測するが、その記憶自体が実際より短い。そのため、未来の作業の時間も短く見積もる、という説明を示した。

対象: 時間の見積もりに関する多くの研究 / 限界: 試験の時間配分を直接調べたものではない。楽観的に考えすぎる、という別の説明も否定はしていない。

Bradyら(2022)[2]

アメリカの大学生210人が、自分で選んだ勉強の課題にかかる時間を予想し、実際の時間と比べた。短く見積もった人が47.1%、長く見積もった人が31.9%、ぴったりだった人が21%。予想と実際の比は0.29倍から12倍まで、大きくばらついた。前の課題が難しかったと感じた人ほど、ずれ方が変わった。

対象: 学び方を学ぶ授業をとっていた大学生 / 限界: 時間は本人の報告。この授業の受講生以外に当てはまるかは未確認。

ThomasとKönig(2018)[3]

イギリスの心理学の学生が、1週間あけて2回作業をした(3つの実験、合計200人)。2回とも同じ文書の修正作業をした人は、1回目に別の作業(おもちゃの城づくり)をした人より、2回目の時間の見積もりのずれが小さかった。一方、1回目にかかった正確な時間を教えても、ずれは減らなかった。

対象: 18〜36歳の大学生 / 限界: 実験室での短い作業。試験問題で確かめたものではない。

Bauerら(2007)[4]

ドイツ・ミュンヘン大学の医学生79人の選択式試験(78問)で、答えを変えた跡を調べた。1回目の変更は、平均して48.2%が誤り→正解、21.6%が正解→誤り、30.2%が誤り→誤りで、変えた学生は平均1.4点増えた。2回目以降の変更は77.9%が誤り→誤りで、点はほとんど増えなかった。

対象: 医学部3年生 / 限界: 1つの大学・1回の試験。「迷ったら変えてよい」と伝えた組は変更が増えたが、点の差は統計的にはっきりしなかった。

Bentleyら(2026)[5]

カナダの大学で解剖学を学ぶ35人が、同じ合計時間の実技試験を2通りで受けた。1問60秒ごとにベルで強制的に進む形と、自分のペースで進む形。正答率はほぼ同じ(82.8%と81.1%)だったが、ベルで進む形では試験の前後で不安が強まった。

対象: 学部生35人、順番をランダムに入れかえて比較 / 限界: 人数が少なく、筆記試験ではない。

ここで紹介した研究は、大学生の実験や1つの大学の試験です。資格試験の本番で、時間配分表を使った人と使わなかった人の点を比べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。下の表は、見積もりと見直しの研究でわかっていることを、試験の準備に当てはめたものです。

03 使える表本番の時間配分は、どう決めて記録する?

本番と同じ形式の模試で、大問ごとの時間を2回以上測ります。その実測から本番の目安と「通過時刻」を決め、見直しの時間を最初から残します。

表1 本番の時間配分表(試験の2〜3週間前に作り、模試のたびに直す)

大問・分野配点模試1回目の実測模試2回目の実測本番の目安通過時刻
(記入例)大問1 知識問題30点22分19分20分開始+20分
(記入例)大問2 計算問題40点41分38分40分開始+60分
(記入例)大問3 事例問題30点35分31分35分開始+95分
見直し―――25分終了まで
合計(試験時間)100点120分

「通過時刻」は、その大問を終えていたい時刻です。本番では時計を見て、通過時刻を過ぎていたら、迷っている問題に印をつけて次へ進みます。記入例の数字は説明用で、研究の数字ではありません。

表2 模試の時間記録表(模試を1回解くたびに書く)

日付大問本番の目安実際ずれ時間がかかった理由
(記入例)10/20大問240分47分+7分問3の計算で迷い、2回やり直した

「ずれ」の理由を書くと、時間がかかる問題の型が見えてきます。理由が毎回同じなら、そこが試験前に練習する所です。

表3 模試と本番のチェック表

いつ確かめること研究とのつながり
模試の前本番と同じ問題数・時間・形式で解く準備をしたか同じ作業をした後の方が、見積もりのずれが小さかった[3]
模試の最中大問が終わるたびに、時計の時刻を問題用紙の余白に書いたか時間は記憶すると短めになりやすい。その場で書く[1]
模試の最中迷った問題に印をつけ、いったん先に進んだか見直しで答えを変えるには、残り時間が必要
模試の後記録表に「目安・実際・ずれ・理由」を書いたか人によって短くも長くも見積もる。自分のずれの向きを知る[2]
本番の見直し印をつけた問題を見直し、はっきりした理由があるときだけ1回変えたか1回目の変更は誤り→正解が多かった。2回目以降はほとんど点が増えなかった[4]
1

本番と同じ形式で模試を解き、大問ごとの時刻を書く

過去問や模試を、本番と同じ問題数・制限時間で解きます。大問を終えるたびに時刻を余白に書き、表2に写します。同じ作業を一度やった後の方が、見積もりは正確になりました[3]。

所要 試験時間+5分

2

2回分の実測から、表1の目安と通過時刻を決める

感覚ではなく、記録した実測を使います。前回の時間を「覚えている」だけでは、短めにずれやすいからです[1]。見直しの時間を先に確保し、残りを大問に分けます。

所要 10分

3

本番では通過時刻で進み、印をつけた問題を最後に見直す

通過時刻を過ぎたら、迷った問題に印をつけて先へ進みます。最後に印の問題を見直し、はっきりした理由があるときだけ1回変えます[4]。見直しのくわしいやり方は答えを変えていいかの記事へ。

所要 本番の見直し時間

04 続けるためのコツ模試のたびに記録するのは面倒では?

記録は大問ごとの時刻だけで十分です。模試の後に表2を1行ずつ書き、ずれが続く大問だけ配分を直します。

  • 時計の時刻を書くだけにする。経過時間の計算は、模試が終わってからでよい。
  • 配分を直すのは、同じ大問で2回続けてずれたときだけ。1回のずれは問題の難しさによることもある。
  • 模試は「実力を測る」より「本番の練習」と考える。練習と本番の形をそろえる理由は練習ではできたのに本番で解けない理由の記事で、過去問の使い方は過去問の記事で紹介している。
  • 本番で緊張して時間配分が崩れた経験があるなら、試験の緊張からの立て直しの記事も役に立つ。

05よくある質問

時間配分は「配点に比例」で決めればいいですか?

配点だけで決めると、時間のかかる計算問題などで足りなくなることがあります。まず本番と同じ形式の模試で、大問ごとに実際にかかった時間を測り、その実測と配点の両方を見て決めるのがおすすめです。同じ作業を一度やった後の方が、時間の見積もりのずれが小さかった研究があります。

見直しの時間は、どのくらい残せばいいですか?

研究で決まった時間はありません。表1の記入例では120分のうち25分としていますが、これは説明用の数字です。模試で印をつけた問題の数と、見直しにかかった時間を記録し、自分に必要な時間を決めてください。見直しで答えを変えるときは、はっきりした理由があるときに1回だけにします。

時間が足りないのは、自分の手が遅いからでしょうか?

そうとは限りません。人は作業の時間を見積もるとき、過去にかかった時間を短めに覚えていることが多く、予定が短くなりやすいと考えられています。大学生210人の研究でも、47.1%が短く見積もっていました。手の速さより、配分の決め方を変える方が近道です。

出典

  1. Roy, M. M., Christenfeld, N. J. S., & McKenzie, C. R. M. (2005). Underestimating the duration of future events: Memory incorrectly used or memory bias? Psychological Bulletin, 131(5), 738–756. https://doi.org/10.1037/0033-2909.131.5.738
  2. Brady, A. C., Wolters, C. A., & Yu, S. L. (2022). Self-regulation of time: The importance of time estimation accuracy. Frontiers in Psychology, 13, 925812. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.925812
  3. Thomas, K. E., & König, C. J. (2018). Knowledge of previous tasks: Task similarity influences bias in task duration predictions. Frontiers in Psychology, 9, 760. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.00760
  4. Bauer, D., Kopp, V., & Fischer, M. R. (2007). Answer changing in multiple choice assessment: Change that answer when in doubt – and spread the word! BMC Medical Education, 7, 28. https://doi.org/10.1186/1472-6920-7-28
  5. Bentley, D. C., Sotto, A., & Lombardi, P. (2026). Comparison of examination performance and test anxiety during bell-paced and self-paced gross anatomy laboratory examinations. Anatomical Sciences Education, 19(5), 732–742. https://doi.org/10.1002/ase.70215