過去問を何周もしたら答えを覚えてしまい、初めての問題が解けない。どう立て直す?問い方を変える・理由まで思い出す・混ぜて解く研究

過去問を3周、4周と解いて、正解できる問題が増えてきた。ところが模試で少し聞き方の違う問題が出ると、手が止まってしまう。「問題を見た瞬間に答えの番号が浮かぶけれど、理由は説明できない」という人も多いはずです。努力が無駄だったわけではありません。研究では、問い方を変える・理由まで思い出す・計算問題は単元を混ぜる、の3つで、解いた力が新しい問題に広がりやすくなりました。
3行でわかる
- 問題を解いて思い出す練習は、新しい問題にも力が広がる(122の実験のメタ分析で効果量 d = 0.40)。ただ、広がりやすさは練習のやり方で大きく変わる。
- 広がりやすかったのは、問い方を変えたとき、理由まで思い出したとき、最初の練習でよく正解できていたとき。問いと答えを入れ替えたり、練習しなかった所を聞かれたりすると広がりにくかった。
- 立て直しは、①答えだけ覚えた問題を見分ける ②選択肢を隠して書いて答える ③理由を言う ④計算問題は単元を混ぜる ⑤初めて見る問題で確かめる、の5つ。
01 悩みの正体過去問の答えを覚えてしまうのは悪いこと?
答えを覚えること自体は悪くありません。困るのは、問題文の見た目と答えの番号だけが結びつき、なぜその答えになるかが頭に残っていない状態です。この状態だと、聞き方が変わると思い出せません。
問題を解いて思い出す練習は、読み直すよりも記憶に残りやすい勉強法です(読み返すより思い出す練習の研究)。過去問をくり返すのも、その1つです(過去問から解くべきかの記事)。
ただ、同じ問題を同じ順番で何度も解くと、「この問題文なら答えはウ」という近道ができます。研究では、覚えた力が別の場面や問題に広がることを「転移」と呼びます。立て直しの目的は、答えの番号ではなく、答えにたどり着く理由を思い出す練習に戻すことです。
02 科学的にわかっていること問題を解いた力が、新しい問題に広がる条件は?
思い出す練習の効果は、新しい問題にもある程度広がります。広がりやすいのは、練習と本番で問い方が違うとき、理由まで思い出したとき、練習でよく正解できていたときです。計算問題では、単元を混ぜた練習が初めての問題で成績を上げました。
Pan・Rickard(2018)[1]
122の実験(1万382人)をまとめたメタ分析(多くの研究を統計でまとめる方法)。思い出す練習をすると、読み直しなどに比べて、新しい問い方や問題にも力が広がった(効果量 d = 0.40)。広がりが大きかったのは、問題の形式が変わるとき、応用や推論の問題、医療の診断問題など。小さかったのは、問いと答えを入れ替えたとき、最初に勉強しても練習しなかった所を聞かれたとき、例題を使う問題。理由まで思い出す練習や、最初の練習での正答率の高さが、広がりやすさを大きく左右した。
対象: 40年以上の研究から集めた実験 / 限界: 発表されなかった研究の影響を補正すると、これらの条件がそろわない場合は、広がりが見られないことが多いと著者らは述べている。
Butler(2010)[2]
4つの実験で、文章を読んだ後に、くり返し読み直すか、くり返しテストを受けた。1週間後のテストは、同じ問題、同じ分野の新しい推論問題、別の分野に当てはめる推論問題のいずれか。どの場合も、くり返しテストを受けた方が成績が良かった。
対象: 実験室で文章を学んだ参加者 / 限界: 短い文章の実験。何百問ある資格試験の範囲で同じ差が出るかはわからない。
Samani・Pan(2021)[4]
米国の大学の物理の授業(350人)で、8週間、週3回の宿題を「1つの単元ずつ」と「単元を混ぜる」の2通りで出した(同じ学生が前半と後半で両方を経験)。予告なしの新しい問題のテストでは、混ぜた宿題の後の方が成績の中央値が50%と125%高かった。ところが学生は、混ぜた方が難しく、学べていないと感じていた。
対象: 1つの大学の2クラス / 限界: 3日後の中間試験では、2つのやり方の差ははっきりしなかった。著者らは、多くの学生が中間試験の前に詰め込みをしていたことを理由の1つに挙げている。
Brunmair・Richter(2019)[3]
59の研究をまとめたメタ分析。種類の違う問題を混ぜて練習する効果は中くらい(g = 0.42)。絵(g = 0.67)では大きく、数学の問題(g = 0.34)では小さめ。文章の内容では、はっきりした効果はなかった。単語の学習では、まとめて練習した方がむしろ良かった(g = −0.39)。
対象: 59の研究(158の参加者グループ) / 限界: 何を混ぜるかで結果が大きく変わる。著者らは、文章や単語では慎重に使うべきだとしている。
Onanら(2024)[5]
大学生91人が画家ごとの絵の作風を見分ける練習をしたとき、自分で順番を決めると、多くは1種類ずつ続けて練習した。混ぜる方が効くという説明と、自分の思い込みを見直す問いかけを受けた人は、混ぜて練習するようになった。混ぜて練習した割合が高い人ほど、見分けるテストの成績が良かった。
対象: オランダの大学生91人 / 限界: 絵の作風を見分ける課題の結果で、資格試験の問題で同じになるかはわからない。成績との関係は、相関の結果。
研究を、過去問を解くときの作業に当てはめて整理しました。
| 練習のやり方 | 新しい問題への広がり |
|---|---|
| 同じ問題を同じ形でくり返す | 同じ問題は解けるが、問いと答えを入れ替えると広がりにくい[1] |
| 問題の形式を変えて答える | 広がりやすい[1] |
| 理由まで思い出す | 広がりやすさを大きく左右した[1] |
| 計算問題の単元を混ぜる | 新しい問題の成績が上がった[3][4] |
| 単語の暗記を混ぜる | まとめた方が良かった[3] |
紹介した研究の多くは、実験室の短い課題や大学の授業のものです。社会人が一人で何か月も資格試験の過去問を解く場合に、同じ大きさの効果が出るかは確かめられていません。
03 今日からできる小さな一歩答えを覚えてしまった過去問は、どう解き直す?
まず「答えだけ覚えた問題」を見分けます。そうした問題は、選択肢を隠して書いて答え、理由を一言で言います。計算問題は単元を混ぜて解き、最後に初めて見る問題で本当に解けるか確かめます。
答えだけ覚えた問題を見分ける
正解した問題も、「なぜその答えか」を30秒で言えるか試します。番号は浮かぶのに理由が言えない問題に印をつけます。理由まで言える問題は、次の周回で飛ばしてかまいません。
所要 20問で10分
印の問題は、選択肢を隠して書いて答える
選択肢の問題なら、問題文だけを見て答えを一言で書いてから選択肢を見ます。正誤の問題なら、誤りの文を正しい文に直します。形式を変えて答えると、力が広がりやすかったためです[1]。
所要 1問につき1分
答えの理由を、教材を閉じて一言で言う
「この条文が適用されるから」「単位をそろえると割り算になるから」のように、答えにたどり着く理由を言います。言えなければ解説で確かめ、翌日にもう一度言えるか試します。理由まで思い出す練習は、広がりやすさを大きく左右しました[1]。
所要 1問につき1分
計算や事例の問題は、単元を混ぜて解く
問題集の章ごとではなく、3〜4章の問題をシャッフルして解きます。「この問題はどの解き方を使うか」を自分で選ぶ練習になります。混ぜると難しく感じますが、それは失敗のサインではありません[4]。用語や単語の暗記は混ぜなくてかまいません[3]。
所要 1回 30分
初めて見る問題で、本当に解けるか確かめる
別の年度や別の問題集から、まだ解いていない問題を10問ほど選び、時間を計って解きます。解き慣れた過去問の正答率ではなく、この正答率を実力の目安にします。
所要 20〜30分
手順1と5は、研究で示された「広がりやすい条件」をもとに考えた確かめ方です。この手順そのものを試した研究ではありません。
04 続けるためのコツ全部の過去問でやると時間が足りないときは?
手順2〜4は、印をつけた問題と、模試で間違えた分野にしぼります。理由まで言える問題は、くり返さずに飛ばして時間を浮かせます。
- 過去問の正答率と、初めての問題の正答率を並べて記録する。差が大きい分野ほど、答えだけ覚えている可能性が高い。
- 選択肢の問題の解き方は四択の問題集の解き方、答え合わせの進め方は答え合わせのタイミングの記事も参考にする。
- 似た用語が混ざってしまうときは並べて比べ、混ぜて解く「見分ける練習」を使う。
05よくある質問
過去問を何周もするのは、やめた方がいいですか?
やめる必要はありません。くり返し問題を解くことは、読み直しより記憶に残り、新しい問題にも力が広がった研究があります。ただ、同じ問題を同じ形で解くだけだと、答えの記号を覚えるだけになりやすいので、2周目からは問い方を変えたり、理由まで言ったりします。
混ぜて解くと難しくて、できていない気がします。
それはよくある感じ方です。大学の物理の授業の研究では、混ぜた宿題の方が新しい問題の成績が良かったのに、学生は混ぜた方が難しく、学べていないと感じていました。手ごたえではなく、初めて見る問題で解けるかどうかで判断します。
用語や英単語の暗記でも、混ぜて解いた方がいいですか?
用語や単語の暗記では、無理に混ぜなくてかまいません。メタ分析では、単語を使った研究ではまとめて練習した方がむしろ良く、混ぜる効果がはっきりしていたのは絵や数学の問題でした。暗記は、日をあけて思い出す練習を優先します。
出典
- Pan, S. C., & Rickard, T. C. (2018). Transfer of test-enhanced learning: Meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin, 144(7), 710–756. https://doi.org/10.1037/bul0000151
- Butler, A. C. (2010). Repeated testing produces superior transfer of learning relative to repeated studying. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(5), 1118–1133. https://doi.org/10.1037/a0019902
- Brunmair, M., & Richter, T. (2019). Similarity matters: A meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin, 145(11), 1029–1052. https://doi.org/10.1037/bul0000209
- Samani, J., & Pan, S. C. (2021). Interleaved practice enhances memory and problem-solving ability in undergraduate physics. npj Science of Learning, 6, 32. https://doi.org/10.1038/s41539-021-00110-x
- Onan, E., Biwer, F., Abel, R., Wiradhany, W., & de Bruin, A. (2024). Optimizing self-organized study orders: Combining refutations and metacognitive prompts improves the use of interleaved practice. npj Science of Learning, 9, 33. https://doi.org/10.1038/s41539-024-00245-7


